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戌
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いぬ
ふりがな文庫
“
戌
(
いぬ
)” の例文
「ちょうど、時刻もはや、
戌
(
いぬ
)
の下刻に近かろう。——そち一名が、いつまで、見えぬので、仲間の者が皆、案じているにちがいない」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十二支というのは、子、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
、卯、
辰
(
たつ
)
、
巳
(
み
)
、
午
(
うま
)
、
未
(
ひつじ
)
、
申
(
さる
)
、
酉
(
とり
)
、
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
の十二で、午の年とか酉の年とかいうあの呼び方なのです。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
戌
(
いぬ
)
の下刻になった時、九郎右衛門は文吉に言った。「さあ、これから捜しに出るのだ。見附けるまでは足を
摺粉木
(
すりこぎ
)
にして歩くぞ」
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「私近頃、犬の玩具が好きになったのよ。それも無理はないわ、私は
戌
(
いぬ
)
年の生れだもの。あらなぜそんな怖い顔するの?」
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ひとつ所を行きつ戻りつして暫くは捕手の眼を逃れていたが、その夜の
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
(午後八時)頃にとうとう縄にかかった。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
朔日
(
ついたち
)
が
酉
(
とり
)
でしたから、……酉、
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
……、あっ、
子
(
ね
)
の四日……。それで、鼠が四匹か……。どっちみち、あの碁石を
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ある
夜
(
よ
)
の
戌
(
いぬ
)
の
上刻
(
じょうこく
)
頃、数馬は南の
馬場
(
ばば
)
の下に、
謡
(
うたい
)
の会から帰って来る三右衛門を
闇打
(
やみう
)
ちに打ち果そうとし、
反
(
かえ
)
って三右衛門に斬り伏せられたのである。
三右衛門の罪
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幸いこの火も室町
小路
(
こうじ
)
にて止まりました。そうそう、松王様はその夕刻、おっつけ
戌
(
いぬ
)
の刻ほどにひょっくりお見えになり、わたくしがお
怨
(
うら
)
みを申すと
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
謡曲
(
ようきょく
)
羽衣
(
はごろも
)
の一節、
柄
(
がら
)
になく風流なところのある男で、大迫玄蕃が、余念なくおさらいに
耽
(
ふけ
)
っていると、夜は
戌
(
いぬ
)
の
上刻
(
じょうこく
)
、五ツどき、今でいう午後八時だ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
謝
(
しや
)
しいよ/\明日の
早天
(
さうてん
)
に
出立
(
しゆつたつ
)
致す故御
暇乞
(
いとまごひ
)
に參り候なりと村中へ暇乞に
廻
(
まは
)
れり此時寶澤は
漸
(
やうや
)
く十四歳の少年なり頃は
享保
(
きやうほ
)
三
戌
(
いぬ
)
年二月二日成し
幼年
(
えうねん
)
より
住馴
(
すみなれ
)
し土地を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『嬉遊笑覧』八に、この
呪
(
じゅ
)
、もと漢土の法なり。『博物類纂』十に、悪犬に遇わば左手を以て
寅
(
とら
)
より起し、一口気を吹き
輪
(
めぐ
)
って
戌
(
いぬ
)
に至ってこれを
搯
(
つか
)
めば犬すなわち退き伏すと。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この時は二度受けたので、初度は正月二十八日
戌
(
いぬ
)
の刻から始めて、四月八日
午
(
うま
)
の刻まで七十日あまりで終り、再度は六月十二日
巳
(
み
)
の刻から七月二十五日巳の刻まで四十日余で成就した。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
寄せてくる動きも思切ったもので西側から侵入してきた一部はほとんど前庭の方まで斬込んだ……
戌
(
いぬ
)
の上刻(午後八時)になると、塀際へ取着いた一部が、三ヶ所で築地塀を崩しはじめた。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その犬に向かい、「我は虎いかになくとも犬は犬獅子のはがみをおそれざらめや」とよみ、右の手の親指より、
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
、
子
(
ね
)
、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
と指を折りてつよく握るなり。犬、恐れてにぐること奇妙なり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「——(仲秋望の夜
戌
(
いぬ
)
の刻、石筍の影地に落つるところ)——とある」
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
便所は
鬼門
(
きもん
)
を避け、腹帯は
戌
(
いぬ
)
の日に結ぶというごときことは、これだけを考えれば、別に他人に迷惑をかけるわけでもないから、めいめいの勝手のようではあるがかようなことを是認すれば、やがて
改善は頭から
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
戌
(
いぬ
)
の日に里から二
疋
(
ひき
)
白と赤
犬
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
以手紙申上
(
てがみをもってもうしあげ
)
候
然
(
しか
)
れば先刻大津銚子屋に於て御面会の
折柄
(
おりから
)
何等の遺恨候てか満座の中にて存外の
御過言
(
ごかごん
)
其の儘には捨置難く
依之
(
これによって
)
明晩
戌
(
いぬ
)
の
中刻
(
ちゅうこく
)
小原山に於て
再応
(
さいおう
)
承わり
度
(
たく
)
候間
能
(
よ
)
く/\御覚悟候て右時刻
無遅滞
(
ちたいなく
)
御出
(
おい
)
で
有之度
(
これありたく
)
此段
申進
(
もうししん
)
じ候御返答
可有之
(
これあるべく
)
候也
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
明日をも待たないで——今夜の
戌
(
いぬ
)
の刻という
遽
(
にわ
)
かな指定をしてやったのは、伝七郎もそれがよいと考えたし、親族や門下の者も
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幸ひこの火も室町
小路
(
こうじ
)
にて止まりました。さうさう、松王様はその夕刻、おつつけ
戌
(
いぬ
)
の刻ほどにひよつくりお見えになり、わたくしがお
怨
(
うら
)
みを申すと
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
都の
寺
(
てら
)
でらの鐘が
戌
(
いぬ
)
の刻(午後八時)を告げるのを待ち侘びて、千枝太郎は
土御門
(
つちみかど
)
の屋敷を忍んで出ると、八月九日の月は霜を置いたように彼の袖を白く照らした。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
伝吉の倉井村へはいったのは
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
を少し過ぎた頃だった。これは
邪魔
(
じゃま
)
のはいらないためにわざと夜を選んだからである。伝吉は
夜寒
(
よさむ
)
の
田舎道
(
いなかみち
)
を山のかげにある地蔵堂へ行った。
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見分の役人は
戌
(
いぬ
)
の上刻に引き上げた。見分が済んで、鵜殿吉之丞から西丸目附松本助之丞へ、酒井家留守居
庄野慈父右衛門
(
しょうのじふえもん
)
から酒井家目附へ、酒井家から用番大久保
加賀守忠真
(
かがのかみただざね
)
へ届けた。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
あとの笑い声は、折柄の濃い
戌
(
いぬ
)
の刻の暗黒に、潮鳴りのように消えて行った。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
また、犬が吠えつくときに、犬伏せと申して、親指を犬と立て、これを伏して
戌
(
いぬ
)
、
亥
(
い
)
、
子
(
ね
)
、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
と数えて、寅に当たる小指をもって戌(すなわち親指)を押すと、犬が吠えるのをやめると申します。
妖怪学一斑
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「明日は
戌
(
いぬ
)
で仏滅で、やぶるという日だ。祝言には一番嫌われる」
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ぞ
取結
(
とりむす
)
ばせける夫より夫婦
間
(
なか
)
も
睦
(
むつま
)
しく暮しけるが
幾程
(
いくほど
)
もなく妻は
懷妊
(
くわいにん
)
なし嘉傳次は
外
(
ほか
)
に
家業
(
なりはひ
)
もなき事なれば
手跡
(
しゆせき
)
の指南なし
傍
(
かたは
)
ら
膏藥
(
かうやく
)
など
煉
(
ねり
)
て
賣
(
うり
)
ける月日早くも
押移
(
おしうつ
)
り
十月
(
とつき
)
滿
(
みち
)
て頃は寶永二年
戌
(
いぬ
)
三月十五日の
夜
(
よ
)
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
に
安産
(
あんざん
)
し玉の如き男子
出生
(
しゆつしやう
)
しける嘉傳次夫婦が
悦
(
よろこ
)
び大方ならず
程
(
ほど
)
なく
七夜
(
しちや
)
にも成りければ名を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
今し方、花頂山の寺々から、ちょうど
戌
(
いぬ
)
の刻——五ツの鐘がなりわたった。雪の夜のせいか今夜に限って、鐘の音は
腸
(
はらわた
)
に沁みるほど冴えて聞えた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人はただ身軽に
扮装
(
いでた
)
つだけのことにして、
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
を過ぎる頃から城下の村へ忍んで行くと、お
誂
(
あつら
)
えむきの暗い夜で、今にも雨を運んで来そうな
生温
(
なまぬる
)
い南風が彼らの頬をなでて通った。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「明日は
戌
(
いぬ
)
で
佛滅
(
ぶつめつ
)
で、やぶるといふ日だ。祝言には一番嫌はれる」
銭形平次捕物控:100 ガラツ八祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あれは確かに
戌
(
いぬ
)
の刻であった。そうすると、約束の戌の下刻は、もうやがて迫っているところだが——と思う。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高輪
(
たかなわ
)
まで燃えぬけて、夜の
戌
(
いぬ
)
の刻(午後八時)を過ぎる頃にようよう鎮まった。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
などと一同をよろこばせ、また
呉々
(
くれぐれ
)
も念を押して町へ帰って行った。それが
宵
(
よい
)
の
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
ころだったのである。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秋の宵はまだ
戌
(
いぬ
)
の刻(午後八時)をすぎて間もないのに、
山科
(
やましな
)
の村は明かるい月の下に眠っていた。どこの
家
(
いえ
)
からも灯のかげは洩れていなかった。大きい柿の木の下に藻は立ちどまった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
蜂須賀七内をはじめ、
岐阜
(
ぎふ
)
に入り込んでいる
乱波
(
らっぱ
)
の衆が、
戌
(
いぬ
)
の
下刻
(
げこく
)
に集まることになっている場所だった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この頃の五月雨に水嵩増して、ドンドンドウドウと鳴る音物すごく、
況
(
ま
)
して大雨の夜であるから、水の音と雨の音の外には物の音も聞えず、
往来
(
ゆきき
)
も絶えたる
戌
(
いぬ
)
の刻頃、一寸先も見え分かぬ闇を辿って
河童小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると、
戌
(
いぬ
)
の下刻(九時過)墨のように広間で沈んでいた諸士の顔に、ぼっと、灯の色がさわいで
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「母は六十で、
戌
(
いぬ
)
年の生まれでございます」と、半七は答えた。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
椿ヶ浦の船頭、よく申した。そちの申すに従って、やはり今日の
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
(午後八時)にここを
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして目ざす木之本に着いたのは、まさに
戌
(
いぬ
)
の
刻
(
こく
)
(午後八時)——夜なお宵であった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風雨の
戌
(
いぬ
)
ノ
刻
(
こく
)
といえば、海上はさだめし、
漆
(
うるし
)
のごとき闇と白浪だったであろう。
室
(
むろ
)
ノ
津
(
つ
)
を出て、室のひがし
杓子
(
しゃくし
)
ヶ
浦
(
うら
)
でいちど休んだ。大小の五千
艘
(
そう
)
の船影が船陣を
整
(
ととの
)
えていたのである。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは十一月七日の夜、
戌
(
いぬ
)
の刻とおぼしき頃だったとある。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「耳を
藉
(
か
)
すな。もう、
戌
(
いぬ
)
の
下刻
(
げこく
)
は過ぎているぞッ」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この時、
戌
(
いぬ
)
の
下刻
(
げこく
)
(午後九時頃)ごろ。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“戌”の意味
《名詞》
いぬ。十二支の11番目。いぬ。
いぬ。方角を表す語。西から北へ30度。
いぬ。時刻を表す語。午後8時頃。午後8時~10時もしくは、午後7時~9時。
いぬ。戌年のこと。
いぬ。陰暦の9月。
(出典:Wiktionary)
“戌”の解説
戌(いぬ、じゅつ)は、十二支のひとつ。通常十二支の中で第11番目に数えられる。
前は酉、次は亥である。
(出典:Wikipedia)
戌
漢検1級
部首:⼽
6画
“戌”を含む語句
戌刻
壬戌
戌刻半
甲戌
戊戌
丙戌
戌亥
戌年
庚戌
戌刻過
戌刻頃
辰戌
見戌
衛戌兵
至正丙戌
戌牌
戌歳
戌時
戌刻前
寅卯戌亥
...