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愈々
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いよいよ
ふりがな文庫
“
愈々
(
いよいよ
)” の例文
愈々
(
いよいよ
)
また東上してたしか明治座での再度の旗揚であった、そこで我輩もまあ一度だけは東京であのまま演らせて見るほかはあるまい
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかも其の恋は
愈々
(
いよいよ
)
外れて行くだけだった。彼はいつか運命ということを考え詰めるようになった。彼はしきりに手相に
凝
(
こ
)
り出した。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
先生はこの頃になって酒を
被
(
こうむ
)
ること
益々
(
ますます
)
甚
(
はなは
)
だしく倉蔵の言った通りその言語が益々荒ら荒らしくその
機嫌
(
きげん
)
が
愈々
(
いよいよ
)
難
(
むず
)
かしくなって来た。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
彼はその後も彼の異様な恋情を
棄
(
す
)
てなかったばかりか、それは月日がたつに従って、
愈々
(
いよいよ
)
濃
(
こまや
)
かに、愈々深くなりまさるかと思われた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
勝平の態度には、
愈々
(
いよいよ
)
乱酔の
萌
(
きざし
)
が見えていた。彼の眸は、怪しい輝きを帯び、狂人か何かのように瑠璃子をジロ/\と見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
愈々
(
いよいよ
)
上京したとし子が民子の家庭で、一とおりならぬ民子の気づかいを引起しつつ暮す次第が、すらすらと巧に描かれているのである。
村からの娘
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると両方へどこからともなく他の悪魔が来て、加勢するものですから、その喧嘩が
愈々
(
いよいよ
)
大きくなり、
遂
(
つひ
)
に戦争になつてしまひました。
悪魔の尾
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
而
(
しか
)
してその権勢は
愈々
(
いよいよ
)
確立せられた。幾度となく欺かれ、裏切られ、
蹂躙
(
じゅうりん
)
せられた犠牲者等はひたすら勝利者のためにのみ計つた。
少数と多数
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
然し、万事は親戚や出入りの衆によって、何の
滞
(
とどこお
)
りもなく運ばれ、
愈々
(
いよいよ
)
四月のはじめに、自宅で式を挙げることになったのである。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
さて、私は
愈々
(
いよいよ
)
語らなければならなくなってきた。私は何を語り、何を隠すべきであろうか。私は、なぜ、語らなければならないのか。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これが別離の歌なのであるが、つまり
愈々
(
いよいよ
)
俥に乗って福島の町を去ろうとした時にもお寿賀さんは送ってもくれなかったのである。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これが果して賢秀の上を
嘲
(
あざけ
)
ったとならば、賢秀は仕方の無い人だが、又其子に忠三郎氏郷が出たものとすれば、氏郷は
愈々
(
いよいよ
)
偉いものだ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は
怏々
(
おうおう
)
として楽しまず、
狂悖
(
きょうはい
)
の性は
愈々
(
いよいよ
)
抑え
難
(
がた
)
くなった。一年の後、公用で旅に出、
汝水
(
じょすい
)
のほとりに宿った時、遂に発狂した。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
愈々
(
いよいよ
)
引き上げという前になって、私は今一度十勝へ上った。もう三月の声をきくのも間もないこととて、
流石
(
さすが
)
に寒さはずっと
軟
(
やわら
)
いでいた。
雪後記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と思ふ、
愈々
(
いよいよ
)
胸さきが苦しくなつた。其に今がつくりと
仰向
(
あおむ
)
いてから、
天窓
(
あたま
)
も重く、耳もぼつとして、気が遠くなつて
行
(
ゆ
)
く。——
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
愈々
(
いよいよ
)
H海岸の病院に入院する日が来た。お前たちの母上は全快しない限りは死ぬともお前たちに逢わない覚悟の
臍
(
ほぞ
)
を堅めていた。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この悪俗が
愈々
(
いよいよ
)
養われて、愈々大規模のものとなり、もはや今日に至って、
如何
(
いか
)
なる智者もこれを
能
(
よ
)
く禁ずる事なしという有様となった。
三たび東方の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「私は
操
(
みさお
)
を売ろう」そこで彼女は、生命力の最後の一滴を
涸
(
か
)
らしてしまったんではあるまいか。そしてそこでも
愈々
(
いよいよ
)
働けなくなったんだ。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
其次に植木屋の来た時に、
愈々
(
いよいよ
)
その松には望を絶つてそれを掘り起して、
雪隠
(
せつちん
)
の蔭になつてゐた一本の槙をそこに移し植ゑた。
発行所の庭木
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
愈々
(
いよいよ
)
する事に窮すれば、私は女工になつて働く位は何んでもない事です。体も丈夫ですし、育ちだつて大して上品でもありませんからねえ。
書簡 大杉栄宛:(一九一六年五月七日 二信)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
吻
(
ほ
)
っとして見ると、再び、探偵作家の星田代二のことが思い出された。
愈々
(
いよいよ
)
検事局に廻されて、今日は、検事の第一回訊問の行われる日だ。
殺人迷路:09 (連作探偵小説第九回)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
今年の四月頃から懐妊の気味で、其の前から出るの
入
(
はい
)
るのと言つて居たが、
愈々
(
いよいよ
)
上京の話が決ると、『
私
(
わたし
)
ばかり置いて行くのかえ、
母
(
おつか
)
さん』
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
谷が
愈々
(
いよいよ
)
急になって
其
(
その
)
中が通れなくなると、右に切れて短い
偃松
(
はいまつ
)
の間を
魚貫
(
ぎょかん
)
して登った。登って
終
(
つい
)
に広やかな高原のような尾根の上に出た。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「兄貴は
愈々
(
いよいよ
)
本気だな——」そう思うと、一と掴みほどの汚い少年の前に居る足の勇も、何んとなく
武者顫
(
むしゃぶる
)
いらしいものを感ずるのでした。
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
空は
愈々
(
いよいよ
)
青澄み、
昏
(
くら
)
くなる頃には、
藍
(
あい
)
の様に色濃くなって行った。見あげる山の端は、横雲の空のように、
茜色
(
あかねいろ
)
に輝いて居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
その寝るには表の往来を枕にして、二つ並べて
展
(
の
)
べた
褥
(
とこ
)
の
枕辺
(
まくらもと
)
の方にはランプを置いて、
愈々
(
いよいよ
)
睡る時はそのランプの火を吹き消して
昏
(
くら
)
くする。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
ヒマラヤ天文台の報告によると来たる十二月には
愈々
(
いよいよ
)
暗黒星と太陽と衝突する、との事ですが、私は無益に人々を驚かせることを好みません。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
『これで
愈々
(
いよいよ
)
、後生も悪くはないようなものだ』などと云い云い、石段を下りて無明の橋のへんに差しかかった頃であった。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
暫くして、又刑事は押入の隅から望遠鏡のサックを
曳
(
ひ
)
っ張り出した。——赤羽主任の頭は
愈々
(
いよいよ
)
混乱して来るのであった。……
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
というのは、そのだぼはぜ嬢が、
愈々
(
いよいよ
)
、
瞳
(
ひとみ
)
に
媚
(
こび
)
をたたえて、「けっして、助平とは思わないでね」とウインクをするのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
だからあの光弾の打上げられている方向がヴェルダンの要塞の位置で、
愈々
(
いよいよ
)
攻撃が始まったら、ここいらまでも砲弾が飛んで来ないとは限らない。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
愈々
(
いよいよ
)
遠島と決ったと聞いて、兄の勘一郎と共に江戸へ出て来る途中も、却ってそれが、左内を自分の許へ取戻す機会になるような気さえしていた。
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
云うことによって
愈々
(
いよいよ
)
頭に血をのぼらせながら、そして、言葉は一層よろめくのであった。まだ誰も、とめようとも
遮
(
さえぎ
)
ろうともしないのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
いいえ、でも、その
青蚊帳
(
あおがや
)
に写した幻燈のような、ぼやけた思い出が奇妙にも私には年一年と
愈々
(
いよいよ
)
はっきりして参るような気がするのでございます。
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
古典といわれるものは善い本であるに相違ないが、その古典も多数であって選択が必要であり、殊に新刊書の場合においては選択は
愈々
(
いよいよ
)
困難である。
如何に読書すべきか
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
大正四年五月上旬から下旬までかかって、
愈々
(
いよいよ
)
型ばかりの結婚式を挙げた時、席に列してくれたのは、この今井君と
角田浩々
(
かくだこうこう
)
歌客
(
かかく
)
の二人だけであった。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
そうして
愈々
(
いよいよ
)
別れる時、もうこれで旦那とも一生のお別れだろうが、と言われてとうとう私も涙を落してしまった。
青年僧と叡山の老爺
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
愈々
(
いよいよ
)
寝
(
しん
)
につく時が来た。藤次郎は予定通り短刀を要之助の目の前で戸棚にしまった。あとはもうねるばかりである。
夢の殺人
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
森はだんだん少なくなる、河は涸れてゆく、鳥はいなくなる、気候はだんだん荒くなる、そして土地は日ましに、
愈々
(
いよいよ
)
ますます
痩
(
や
)
せて醜くなってゆく。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
しかして
愈々
(
いよいよ
)
開始の際には汽笛長声一発とともに銅鑼を連打致します故、直ぐ救命
胴衣
(
チョッキ
)
あるいは救命
浮帯
(
ヴイ
)
を御着用のうえ、定めの場所へ御参集を願います。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
勢
(
いきおい
)
を得た
山名
(
やまな
)
方は九月
朔日
(
ついたち
)
ついに
土御門万里
(
つちみかどまで
)
の小路の三宝院に火をかけて、ここの陣所を奪いとり、
愈々
(
いよいよ
)
戦火は
内裏
(
だいり
)
にも室町殿にも及ぼう勢となりました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
マキシミリヤンの実話にちなんだ答えは、リュシエンヌの心を慰めずに、却って
愈々
(
いよいよ
)
不安をつのらせた。
感傷主義:X君とX夫人
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
愈々
(
いよいよ
)
私はとりつきかねるのだが、何だか忌々しく阿呆らしいので相手をじろじろ眺めてやると、向もこちらを忌々しげに睥み返し、用事がなければさっさと帰れ
曲者
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
それでどうやらこうやら御飯を炊きましたが、それも残らず食べ切ってしまいまして、
愈々
(
いよいよ
)
夜になりますと、まるで氷の中に
埋
(
うず
)
められたかと思うような寒さです。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
私は、立つなら物をやるから時日を知らせ、などという手紙の書き方を、不快に感じないわけに行かなかったが、しかし
愈々
(
いよいよ
)
立とうという時にその事を知らせた。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
頗る粗大な、脳髄に余計な要求をしない事柄で好い。
却
(
かえっ
)
て
愈々
(
いよいよ
)
粗大なだけ愈々適当であるかも知れない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼の主家は引続く不景気に破産しかかっていたので、その金がなければ
愈々
(
いよいよ
)
破滅の他はなかった。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
倉田工業では六百人の臨時工を
馘
(
くび
)
きるということが
愈々
(
いよいよ
)
確実になり、十円の手当も出しそうにないことが(共産党のビラが
撒
(
ま
)
かれてから)誰の眼にもハッキリしてきた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
見るにつけ、
愈々
(
いよいよ
)
余は、師の情操品性の稀有なる高潔さを証明し、かつて至純の動機以外の何物によっても行動せることなき人物たるを確言するの義務を痛感する者である
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
その上この文を草している今日は又奇しくも母が
愈々
(
いよいよ
)
掘り返しをはじめましたと云って来た。
故郷を想う
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
愈
漢検準1級
部首:⼼
13画
々
3画
“愈々”で始まる語句
愈々益々