)” の例文
心配した時子の病氣も、だん/\い方に向って来ると、朝子は毎日ぼんやりした顔をして子供のベッドの裾の方に腰をおろしてゐた。
秋は淋しい (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
白い瓜の白い皮の下には白いい肉が包まれて居ますし、青い瓜の青い皮の下にはほんのりと青い爽かな潤ひを持つて居ます。
白瓜と青瓜 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「いや、まだ悉皆すっかりいという訳には行かないよ。何でも三週間ぐらいはかかるだろうと思うが……。しかしまあ、生命いのちに別条の無いのが幸福しあわせさ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
絹子さんも郁子も追々い方へ向いたが、一番始めに発病した千代子は中途でぶり返して又高熱に戻った。安心の積りで帰って来たお父さんは
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昼飯を食って汗になったので、天日で湯といて居る庭のかめの水を浴び、とうの寝台に横になって新聞を見て居る内に、い心地になって眠って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お前さんとこうして——今朝こうして酌をしてもらッて、い心持に酔ッてかえりゃ、もう未練は残らない。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
い心持で見ておりましたが、その百松が自分の本当の親と判ると、自分が口添えして縛らせたような気がして、もう一刻もジッとしてはいられなかったのでした。
そうしてややしばらく痛い腫物しゅもつさわるようない心持ちで男と女の二足の下駄をじっと見つめていた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
さっぱりとい気持でしょう、したしたというこの音たまらないわね、みんな鱗の色も悪いし痩せているのね、硬い麩ばかり食べているからよ、ほら、お好きなお塩よ
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
看護婦がどうも分らないと答えると、隣の人はだいぶんいので朝起きるすぐと、運動をする、その器械の音なんじゃないかうらやましいなと何遍なんべんも繰り返したと云う話である。
変な音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしね、こんな塩梅あんばいならば、まあ結構だと思って、新さん、あなたの処へおたよりをするのにも、段々い方ですからお案じなさらないように、そういってあげましたっけ。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ、ちっとは新さんもい方だと見えるね? そうやってお前が出歩くとこを見ると」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
巴里パリイで飲むなら一びん八フランも取られる三鞭シヤンペン質の美味うまい酒だが、此処ここでは産地が近くて税が軽いからわづかに二フラン五十の散財でい気持に酔ひながら、更に村外れまで徒歩を試みた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
海が近いし、しかも夜は秋、丘の上の宏壮な豪族の館なので、寝ごこちは実にい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あによめの病気は少しもい方に向わないで、だんだん重くなって行きそうであった。それを岸本は自分で見舞に行った時にて来たばかりでなく、谷中から来る種々な報告で知るように成った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今日けふ天氣てんきいからとて、幻花子げんくわし先導せんだうで、狹衣さごろも活東くわつとう望蜀ばうしよくの三が、くわかついで權現臺ごんげんだい先發せんぱつした。あとからつてると、養鷄所やうけいじよ裏手うらて萱原かやはらなかを、四にんしきりに掘散ほりちらしてる。
出来るものならば、この天地を引裂ひつさいて、この世の中を闇にして、それで、自分も真逆様まつさかさまにその暗い深い穴の中に落ちて行つたなら、んなに心地がいだらうといふやうな浅ましい心が起る。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ここ産落うみおとされては大変と、むりに行李へ入れて押え付けつつ静かに背中から腰をさすってやると、い気持そうにやっと落付いて、暫らくしてから一匹産落し、とうとう払暁あけがたまで掛って九匹を取上げたと
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
瑠璃草るりさう、アンゴラの生れか、手ざはりのい、柔かい女猫めねこ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「このごろはちっとはいかね。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「もういのですか」
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
「はあ、お庇様かげさま大分だいぶほうで……。何、大丈夫だとお医者も云って居ますが……。何しろ、一時はきもを潰しましたよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「えゝ。あの通り性急せっかちですから、いとなるともうっとしていられないのです。その節は種々いろいろとお世話を戴きまして、宜しくお礼を申上げてくれと言いつかって参りました」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし、そのためにひとしお静けさを増すかのように思われる。あんまりい気持ちなので、私はひじを枕にしたまま、足の先を褞袍どてらすそにくるんで、うつらうつらとなっていた。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
風はつめたし、呼吸いきぬきかたがた、買った敷島をそこで吸附けて、かしながら、堅い薄縁うすべりの板の上を、足袋の裏冷々ひやひやと、い心持ですべらして、懐手で、一人で桟敷へ帰って来ると
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
村中で唯一人ただひとりのチョン髷の持主、彼に対してはいつも御先生ごせんせいと挨拶する佐平爺さんは、荒蓆あらむしろの上にころり横になって、肱枕ひじまくらをしたが、風がソヨ/\吹くので直ぐい気もちに眠ってしまったと見え
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ガラッ八はそんな事を言って、い心持そうにニヤニヤしました。
顔いろもよし、気分もこの二、三日は、わけていという。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあ、無理をしずに寝て居たまえ。阿父おとっさんはうも飛んだ事だったね。そこで、君の痛所いたみしょうだ。もういのか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「有難う。お蔭でもう悉皆すっかりい。あゝ、店へ帰ると生き返ったような心持がする」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「なに、昨日きのう一日休んでいたからもういんですよ。わがままばかりいっているんですよ。……ほんとにあなたにお気の毒さまです。あんなひとだと思ってどうぞ末永く可愛かわいがってやって下さい」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「だんだんいようで、外科も驚いていますよ」
彼は少しく酔っていたので、茶屋から駕籠にゆられながらい心持ちにうとうとと眠って行くと、夢かうつつか、温かい柔かい手が蛇のように彼のくびにからみ付いた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「もう全然すっかりんですよ。いいけれども、何か薬を当てがってもう一日寝かして置きましょう。又何をするか知れませんから其方が安全です。彼様ああいう子は床の中へ入れて置きさえすれば間違ないです」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「段々いやうで、外科も驚いてゐますよ」
「兎に角来る度にい方へ向いていますから、張合がありますよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いかにもい心持そうです。
最早もう悉皆すっかりいんです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)