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屈託
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くったく
ふりがな文庫
“
屈託
(
くったく
)” の例文
彼はホテルの十日間を、何の
屈託
(
くったく
)
もなく、
腕白小僧
(
わんぱくこぞう
)
の様にほがらかに暮した。ホテルのボートを借りて湖水を
漕
(
こ
)
ぎ
廻
(
まわ
)
るのが日課だった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「それにも及ぶまい。どっちにしても何とか埒をあけるからくよくよするな。胸に
屈託
(
くったく
)
があると粗匇をする。奉公を専一に気をつけろ」
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
学校時代には学科の点数が主な
屈託
(
くったく
)
だった。点数を余計せしめるものを秀才と認めて、これに敬意を表した。しかし今はサラリーマンだ。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
朝夕
(
ちょうせき
)
禅房の掃除もするし、
聴聞
(
ちょうもん
)
の信徒の世話もやくし、師の法然にも
侍
(
かしず
)
いて、
一沙弥
(
いちしゃみ
)
としての勤労に、毎日を明るく
屈託
(
くったく
)
なく送っていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「船長は何か心に
屈託
(
くったく
)
があるのではありませんか。それが船長を興奮させたり、また非常に苦労させたりしているのでしょう」
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
▼ もっと見る
こう
考
(
かんが
)
えるのは、
当然
(
とうぜん
)
のことでした。しかし
若
(
わか
)
いものは、
元気
(
げんき
)
よく
見
(
み
)
られました。
男
(
おとこ
)
も、
女
(
おんな
)
も、なんの
屈託
(
くったく
)
もなさそうな
顔
(
かお
)
つきをしています。
台風の子
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
津田の腹には、その治療にとりかかる前に、是非金の
工面
(
くめん
)
をしなければならないという
屈託
(
くったく
)
があった。その額は無論大したものではなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
殊に、そんな楽しい時代には、地上の子供達も、
屈託
(
くったく
)
というものにまるで
慣
(
な
)
れていなかったので、それをどうしていいか分らなかったのです。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
あとは、駕籠と駕籠を一そう近づけて、耳打ちのように
密談
(
みつだん
)
になったが、そのまま二人は、やがて、
屈託
(
くったく
)
のない笑い声を残して左右に別れた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
このような
太平楽
(
たいへいらく
)
を、何の
屈託
(
くったく
)
もなしに平然と口にすることのできた自分の浅墓さに私は
憤
(
いきどお
)
りをかんじないではいられぬ。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
兵馬はこの人のいつも元気であって、好んで虎の尾を踏むようなことをして、
屈託
(
くったく
)
しない勇気に感服することであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
明日
(
あす
)
の暮しを考える
屈託
(
くったく
)
と、そう云う屈託を抑圧しようとする、あてどのない不愉快な感情とに心を奪われて、いじらしい鼠の姿も眼にはいらない事が多い。
仙人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし少年の一点の
僻
(
ひが
)
みも
屈託
(
くったく
)
もない顔つきと行雲流水のような行動とは人々の心に何か気分を
転換
(
てんかん
)
させ、生活に張気を起させる容易なものがあったらしい。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そのために登勢はかえって
屈託
(
くったく
)
がなくなったようで、生れつきの
眇眼
(
すがめ
)
もいつかなおってみると、思いつめたように見えていた表情もしぜん消えてえくぼの深さが目だち
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
と思い案ずる目を
半
(
なか
)
ば閉じて、
屈託
(
くったく
)
らしく、
盲目
(
めくら
)
が
歎息
(
たんそく
)
をするように、ものあわれな
装
(
よそおい
)
して
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たしかにこの娘さんは、可愛らしいところはあるが、何か心に
屈託
(
くったく
)
がありそうにも見えた。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
いつものような
屈託
(
くったく
)
もなければ心配もなく、よし心配があったにしてもそんなものはわきの方へと押しやって、その晩一晩は何も考えずに、全くの人生の傍観者ででもあるかのように
日本橋附近
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
娘の顔には、昨日の絶望的な色はありませんが、大きい
屈託
(
くったく
)
が、その弱い身体を押しひしぐらしく、日蔭の花のような痛々しさと、言うに言われぬ、病的な美しさを感じさせるのです。
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それで妻の
屈託
(
くったく
)
を慰めようとし、夫人に向って度々外出や
遊山
(
ゆさん
)
をすすめた。『外に参りよき物見る。と聞く。と帰るの時、少し私に話し下され。ただ家に本を読むばかり、いけません』
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
木村を
良人
(
おっと
)
とするのになんの
屈託
(
くったく
)
があろう。木村が自分の
良人
(
おっと
)
であるのは、自分が木村の妻であるというほどに軽い事だ。木村という仮面……葉子は鏡を見ながらそう思ってほほえんだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その間の仕事は何だと
云
(
い
)
うと、
唯
(
ただ
)
著書
飜訳
(
ほんやく
)
にのみ
屈託
(
くったく
)
して歳月を
送
(
おくっ
)
て居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
いまの
現在
(
げんざい
)
の
位置
(
いち
)
すらも、そろそろゆれだしたような気がする。ものに
屈託
(
くったく
)
するなどいうことはとんと知らなかった糟谷も、にわかに
悔恨
(
かいこん
)
の
念
(
ねん
)
禁
(
きん
)
じがたく、しばしば
寝
(
ね
)
られない夜もあった。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
永遠に塗りつぶされた唯一色の暗夜を独り行くような
劇
(
はげ
)
しい
屈託
(
くったく
)
を感じたのである。全て
波瀾
(
はらん
)
曲折も無限の薄明にとざされて見え、止み難い退屈を驚かす何物も予想することが出来なかった。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
堀尾君もお客に来た以上然う
屈託
(
くったく
)
ばかりしていられない。勧められるまゝ風呂に入って、浴衣に着替えた。食卓についてから
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
白砡
(
はくぎょく
)
に彫った仏像みたいにその寝顔は気品にかがやいていた。やや面長で
下膨
(
しもぶく
)
れの豊かな
相形
(
そうぎょう
)
である。何の
屈託
(
くったく
)
もないような
鼾
(
いびき
)
すら聞かれた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わたくしはさっきから気が付かないでもなかったのですが、話の方に
屈託
(
くったく
)
して、ついその
儘
(
まま
)
になっていたのでございます。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかしこの四五日ぼんやり
屈託
(
くったく
)
しているうちによくよく考えて見ると、彼自身が今までに、何一つ突き抜いて痛快だという感じを得た事のないのは
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お君がこうして
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
ない胸をいだいて物思いに沈んでいる時にも、お松はものに
屈託
(
くったく
)
しない晴れやかな
面
(
かお
)
をして
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
明るい色が、控えの間のさかいに動いて、そこに何の
屈託
(
くったく
)
もなさそうなお糸の顔があった。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
或年の
春
(
はる
)
、
僕
(
ぼく
)
は原稿の出来ぬことに
少
(
すくな
)
からず
屈託
(
くったく
)
していた。滝田
君
(
くん
)
はその時
僕
(
ぼく
)
のために谷崎潤一郎
君
(
くん
)
の原稿を
示
(
しめ
)
し、(それは
実際
(
じっさい
)
苦心
(
くしん
)
の痕の
歴々
(
れきれき
)
と見える原稿だった。)大いに
僕
(
ぼく
)
を
激励
(
げきれい
)
した。
滝田哲太郎君
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もはや、
空
(
そら
)
には、
太陽
(
たいよう
)
の
光
(
ひかり
)
と
熱
(
ねつ
)
とがみなぎっていました。とんぼは、ちょうど
昨日
(
きのう
)
、
屈託
(
くったく
)
も
知
(
し
)
らずに、
遊
(
あそ
)
んでいたように、
圃
(
たんぼ
)
へ
降
(
お
)
りると、そこで、ぼんやりと、また一
日
(
にち
)
を
過
(
す
)
ごしたのでした。
寒い日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
山には
木樵唄
(
きこりうた
)
、水には
船唄
(
ふなうた
)
、
駅路
(
うまやじ
)
には
馬子
(
まご
)
の唄、
渠等
(
かれら
)
はこれを
以
(
もっ
)
て心を
慰
(
なぐさ
)
め、
労
(
ろう
)
を休め、
我
(
おの
)
が身を忘れて
屈託
(
くったく
)
なくその
業
(
ぎょう
)
に服するので、
恰
(
あたか
)
も時計が動く
毎
(
ごと
)
にセコンドが鳴るようなものであろう。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
毎日二三度ずつ見に行くのだが、今日は遊びに
屈託
(
くったく
)
していて、一遍も行って見ない。事によると
孵
(
かえ
)
ってるかも知れない。今日は大分暑かった。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だが——ひとみを
拭
(
ぬぐ
)
って、都の
巷
(
ちまた
)
を見てゆくと、なんと、ここには皆、暗い顔や、迷いのある影や、
屈託
(
くったく
)
の多い
俯向
(
うつむ
)
き顔や
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
節季師走にいろいろの忙がしい用をかかえた半七は、いつまでも加賀屋の女中のことなどに
屈託
(
くったく
)
してもいられなかった。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大迫に頭髪を預けたまま、それは
屈託
(
くったく
)
のない笑い声だった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
病気にのみ
屈託
(
くったく
)
する余も、これには少からず悩まされた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それにひかれて、勝家はよく
局
(
つぼね
)
へ渡った。そして彼女たちの明るい中に、
屈託
(
くったく
)
の多い心を一時でも忘れようとした。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕食の卓上、二千円のダイヤが
屈託
(
くったく
)
になった。大谷さんは奥さんの訴えに耳傾けて、むずかしい顔をしていた。何うも丸尾夫人の為めに問題ばかり起る。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
溜め息をついている母の
屈託
(
くったく
)
らしい顔をのぞいて、十吉も思わず箸をやめた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
(——実に陽気な御主人だ。天下の春は御主人の顔から立ち昇っているようだ。戦場にあっても、こういう旅のあいだも、
屈託
(
くったく
)
らしいお顔はみたことがない)
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我輩は還暦に達した時から、もう据置期間が経過したと思って、生の
屈託
(
くったく
)
よりも死の支度に重きを
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
兄弟とも
漆
(
うるし
)
をひいたような顔色である。何の
屈託
(
くったく
)
もないように、餅を喰い、湯をのみ、笑い興じていたが
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生活問題を念頭に置かず、二円五十銭を大金と思っている時代は
貴
(
とうと
)
い。正に聖人君子の心境である。然るに僕はもう慾が出て来た。何になろうかと、将来の生活問題に
屈託
(
くったく
)
している。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「貴公もおれも踊れない人間だ。ああして、何もかも忘れ果てて踊るべく、あまりに
屈託
(
くったく
)
があり過ぎる」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同じ教室に机を並べる三十余個の西瓜頭は入学試験以外に
屈託
(
くったく
)
がない。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
何の
憚
(
はばか
)
りも
屈託
(
くったく
)
も彼にはない。藤吉郎は、彼女のやや小麦色に
陽焦
(
ひや
)
けした顔をのぞきこんで
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀才もほかに
屈託
(
くったく
)
があるとこのとおりだ。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
帰るのをあきらめて、兼好も
屈託
(
くったく
)
なく酔って寝た。べつの寝所へ入るとき、彼にもひとりの女がついて来た。が、兼好はあえて拒みもしない。またそれ以上のこともしない。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と母親には母親らしい
屈託
(
くったく
)
があった。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
“屈託”の意味
《名詞》
屈託(くったく)
いろいろ心配すること。くよくよすること。
疲労や退屈なことでいやになること。
(出典:Wiktionary)
屈
常用漢字
中学
部首:⼫
8画
託
常用漢字
中学
部首:⾔
10画
“屈託”で始まる語句
屈託顔
屈託気