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夜中
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やちゅう
ふりがな文庫
“
夜中
(
やちゅう
)” の例文
十歳を越えて
猶
(
なお
)
、
夜中
(
やちゅう
)
一人で、
厠
(
かわや
)
に行く事の出来なかったのは、その時代に育てられた人の
児
(
こ
)
の、敢て私ばかりと云うではあるまい。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とこの時はずれの
夜中
(
やちゅう
)
、御寝所でお眼通りをおおせつける——よほどの大事件に相違ないと、近侍は眼をまるくしてさがってゆく。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
だが、こいつは下手人であろうと、なかろうと、異様な
面体
(
めんてい
)
といい、
夜中
(
やちゅう
)
他人の邸内をさまよう曲者、取押さえない訳には行かぬ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
手足を洗うならば、風呂場に
火打石
(
ひうち
)
も
薪
(
まき
)
もある、ともあれ、
夜中
(
やちゅう
)
では里へも出られまいから、今夜はこの空家にやすんでゆくとするさ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「だが、それだけの単純な出来事だとしても、
他
(
よそ
)
の男が
夜中
(
やちゅう
)
にお前の寝室で死んだという事実は打消すわけに行かんじゃないか」
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
毎日何するという事もなしにごろごろしていて、それでいつ
夜中
(
やちゅう
)
に
俄然
(
がぜん
)
として出発の令が下るかも判らんから、市中以外には足を
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ヘロドタスの説に従って見ますと
猶太人
(
ユダヤじん
)
はエジプトを去る以前から
夜中
(
やちゅう
)
死骸を
曝
(
さら
)
されることを痛く
忌
(
い
)
み嫌ったように思われます。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
祝酒
(
しゅくしゅ
)
とは云いながら屠蘇を勧めたは
私
(
わし
)
が悪かった、又酔っておる者に大切な物を
持
(
もた
)
して帰し、殊に
夜中
(
やちゅう
)
なり、何うも私が
過
(
あやまり
)
だ
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一般の入院患者さん達よ。病院泥棒が怖いと思ったら、ドアの
把手
(
ハンドル
)
を繃帯で巻いてはいけませんよ。すくなくとも
夜中
(
やちゅう
)
だけは繃帯を解いて鍵を
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そう聞くと、島田の辺で、
夜中
(
やちゅう
)
の流し三味線とその唄はお新によく似ていると、表の廊下へ出た事などが思出された。
新訂雲母阪
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「はい、あの十津川筋とやらから、こちらへ悪者が落ちて参りましたそうで、それがため
夜中
(
やちゅう
)
のお調べでございます」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
もっとも
夜中
(
やちゅう
)
の儀につき、しかと様子相わからず候段、
在所表
(
ざいしょおもて
)
より申し越し候間、この段御届け申し上げ候。以上。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夜中
(
やちゅう
)
、殊に御忙しい所を御邪魔に上りまして、何とも申し訳の致しようはございませんが、ちと折入って先生に御願い申したい儀がございまして、失礼を
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜中
(
やちゅう
)
の事とて不意に
閃電
(
せんでん
)
のごとくマグネシヤを爆発させて撮影するので、その音に驚き、キャッと叫ぶ女もあれば、閃光に
眼
(
まなこ
)
を射られて
暫時
(
しばし
)
は四方真暗
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
ソコで両人は
夜中
(
やちゅう
)
勝手も知れぬ海浜に上陸して、探り/″\に江戸の方に
向
(
むかっ
)
て足を進める中に夜が明けて
仕舞
(
しま
)
い
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
で、私はすぐさま
夜中
(
やちゅう
)
に乗り込んで、今朝お目にかかって、そのままバーミングハムへ私と一しょに来ていただこうと思ってやって来たわけなのでございます
株式仲買店々員
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
四里間に家無きも、山間或は原野にして、シオポロ川の源に出で、川畔に
傍
(
そ
)
うて
降
(
くだ
)
る。終日暴雨なり。
后
(
ご
)
三時愛冠に着す。全身は肌迄
湿
(
うるお
)
うたり。
夜中
(
やちゅう
)
熟眠す。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
こういうと、
乙
(
おつ
)
は、がっかりとして、
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
を
砂
(
すな
)
の
上
(
うえ
)
に
投
(
な
)
げて
泣
(
な
)
きだしました。
彼
(
かれ
)
は、
疲
(
つか
)
れた
頭
(
あたま
)
に、いろいろの
幻影
(
げんえい
)
を
見
(
み
)
ました。
夜中
(
やちゅう
)
、うなされつづけました。
幽霊船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
どんな用事の御都合にいたせ、
夜中
(
やちゅう
)
、近所が静まりましてから、お艶様が、おたずねになろうというのが、代官婆の
処
(
ところ
)
と承っては、一人ではお出し申されません。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
第一、なにかの子細があって人間の生首を持参するならば、
夜中
(
やちゅう
)
ひそかに持ち運ぶべきであろう。
西瓜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「泥棒と疑われても仕方がねえ。こんな
夜中
(
やちゅう
)
に
弁解
(
ことわ
)
りもせず、こんな
穢
(
きたな
)
い
身装
(
みなり
)
をして
他人
(
ひと
)
の
家
(
うち
)
へ
窃
(
こっそ
)
り忍び込んだんだからな……早く縛るがいい何を為ているんだろう?」
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夜中
(
やちゅう
)
に一人でその壁を乗り越えて、少年は父を救い出す決心なのである。バルメラ男爵はいった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
まして
夜中
(
やちゅう
)
にあわたゞしい御しゅったつでござりましたから、なんの花やかなこともなく、中にはまた、ひでよし公のぐんぜいが途中でおくがたをいけどりに来るなどゝ
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
病気でないばかりか
夜中
(
やちゅう
)
時どき
寝所
(
しんじょ
)
から姿を消して、
黎明方
(
よあけがた
)
でないといないことさえあった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「お上の御用で、
夜中
(
やちゅう
)
この辺を廻っておりますと、いきなり私に斬りかけた奴がございます」
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜
(
よ
)
はだいぶ更けた。有り難いことには月の夜である。それに、動物にも明かりが必要なのか、それとも
夜中
(
やちゅう
)
に人間が見回る必要があるのか、動物園の中には方々に電灯がついている。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「早瀬が組下とあらば腕利きの者共よな。
夜中
(
やちゅう
)
役目御苦労じゃ。充分に警備致せよ」
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
夜中
(
やちゅう
)
真黒
(
まっくら
)
な中に坐禅ということをしていたのか、坐りながら眠っていたのか、眠りながら坐っていたのか、今夜だけ偶然にこういう
態
(
てい
)
であったのか、始終こうなのか、と
怪
(
あやし
)
み
惑
(
まど
)
うた。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
法水はしばらく黙考していたが、何と思ったか、
夜中
(
やちゅう
)
にもかかわらず伸子を
喚
(
よ
)
んだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「箱王ではないか。
夜中
(
やちゅう
)
にどうした」
曽我の暴れん坊
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
夜中
(
やちゅう
)
をえらんで焼け跡の整理とは、聞こえぬ話だ。穴でも埋める仕事があるなら、わしも手つだってやろうかと思ってナ」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
伴「なに、そんな訳ではありません、
私
(
わっち
)
が今日用が有って
他
(
ほか
)
へ行って、
夜中
(
やちゅう
)
に
帰
(
けえ
)
ってくると、萩原様の
家
(
うち
)
で女の声がするから
一寸
(
ちょっと
)
覗
(
のぞ
)
きました」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お
拒
(
こば
)
みのあろうはずはないが、改めて、御加盟のことおすすめに、一党の使者として、わざと
夜中
(
やちゅう
)
、
推参
(
すいさん
)
したわけでござる
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
夜中
(
やちゅう
)
彼の身辺にどのような怪異が起ったのであるか。我々は暫らく川手氏の
影身
(
かげみ
)
に添って、世にも不思議な事の次第を観察しなければならぬ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「いったい、お豊のあまは、何のために、この
夜中
(
やちゅう
)
に、あの社内へ出かけたものでござんしょうねえ、お武家様」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
けれども彼は細君がこの赤ん坊のために
夜中
(
やちゅう
)
何度となく眼を覚ますのを知っていた。大事な睡眠を犠牲にして、少しも不愉快な顔を見せないのも承知していた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或
(
あ
)
るときそのものが
何処
(
どこ
)
に何をしたか
夜中
(
やちゅう
)
酒に
酔
(
よっ
)
て生意気な
風
(
ふう
)
をして
帰
(
かえっ
)
て来たゆえ、貴様は今夜寝ることはならぬ、起きてチャント正座して居ろと
申渡
(
もうしわた
)
して
置
(
おい
)
て
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
または落雷に砕かれ候て
隠置
(
かくしおき
)
候大金、木の葉の如く地上に
墜
(
お
)
ち来り候やうの事有之候ては一大事なりと、天気
宜
(
よろ
)
しからざる折には
夜中
(
やちゅう
)
にも時折
起出
(
おきい
)
で、書院の
窓
(
まど
)
を明け
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「なんという大胆なことを……。
夜中
(
やちゅう
)
に馬絆の
虞
(
おそ
)
れあるところを越えておいでになるとは……」
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夜中
(
やちゅう
)
しば/\
厠
(
かわや
)
へ立って行かれましたところ、丹羽五ろざえもんのじょうどのお廊下において秀吉公をよびとめられ、天下にのぞみを持たれますならかついえを斬っておしまいなされと
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
(
夜中
(
やちゅう
)
何事です。人を馬鹿にした。奥は病気だからお目には
懸
(
かか
)
れません。)
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、
夜中
(
やちゅう
)
書見の
清興
(
せいきょう
)
を破られた事は、依然として不快に違いなかった。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ことにこんなジメジメした
夜中
(
やちゅう
)
には、
蝮
(
まむし
)
が多く
叢
(
くさむら
)
から途中に出ているので、それを踏み付けようものなら、
生命
(
いのち
)
にも係わる危険であるが、咽の渇きも
迚
(
とて
)
も
怺
(
こら
)
える事が出来ぬので、一同は評議の上
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
と、叫ぼうとした時、内玄関にある訪鐘が、誰かこの
夜中
(
やちゅう
)
の訪問者の手によって、静かに二つ三つ鳴り揺れて聞こえます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蟠「ウーム、かく申す大伴の道場へ
夜中
(
やちゅう
)
切込んで、泥坊同様なことをしたのは其の方どもだな、よし、片ッ端から切伏せくれん、さア支度いたせ」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「その言いわけは暗い。他国の者、
夜中
(
やちゅう
)
このあたりを
徘徊
(
はいかい
)
致すは不審の至り、尋常に縄にかからっしゃい」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奉書到来と云う儀式で、
夜中
(
やちゅう
)
差紙
(
さしがみ
)
が来たが、
真平
(
まっぴら
)
御免だ、私は病気で
御座
(
ござ
)
ると
云
(
いっ
)
て取合わない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼は
夜中
(
やちゅう
)
悪夢にうなされ続けていたのだった。親と名のつく人を、監禁しなければならぬ様な、この日頃の心痛に、彼の神経が平静を失っていたのは無理もないことである。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
殆
(
ほとんど
)
そのまゝ所持致をり候事故、当山の御厄介に相なり候に付いては、またもやその
隠
(
かくし
)
場所に困りをり候処、唯今にても当寺
表惣門
(
おもてそうもん
)
の
旁
(
かたわら
)
に立ちをり候
榎
(
えのき
)
の大木に目をつけ、
夜中
(
やちゅう
)
攀上
(
よじのぼ
)
り
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
殺される十日程前、
夜中
(
やちゅう
)
、
合羽
(
かっぱ
)
を着て、傘に雪を
除
(
よ
)
けながら、足駄がけで、四条から三条へ帰った事がある。その時
旅宿
(
やど
)
の二丁程手前で、突然
後
(
うしろ
)
から長井直記どのと呼び懸けられた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“夜中”の意味
《名詞》
夜の間。
(出典:Wiktionary)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
中
常用漢字
小1
部首:⼁
4画
“夜中”で始まる語句
夜中の太陽
夜中参
夜中近
夜中頃
夜中投函
夜中時分
夜中郵便