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嚏
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くさめ
ふりがな文庫
“
嚏
(
くさめ
)” の例文
鉤は鼻へ触ったり、頬へ止ったりしたが、其内に間違って口に入った。その時伯父さんは止せばよいのに
嚏
(
くさめ
)
をして口を堅く閉じてしまった。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
すると不意に、茂作の家の屋根のあたりでそれは/\大きな声で、つづけさまに、二つ三つ
嚏
(
くさめ
)
をするものがありました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
不意に先達の婦がエイッチェと
嚏
(
くさめ
)
をした。吃男はそれには目もやらずに又いきなり火でも燃え附いたようにはね起きた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
碁を打つてめちやめちやになる信仰や
嚏
(
くさめ
)
をしてけし飛んでしまふ哲学なぞも、牧師の
抽斗
(
ひきだし
)
にはたんと有るものと見える。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「この目玉はこれで三代目なんですよ。初代のやつも二代目も、大きな
嚏
(
くさめ
)
をした時飛び出しましてね、運悪く石の上だったものですから割れちゃいました」
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
▼ もっと見る
四邊
(
あたり
)
は
其香
(
そのにほ
)
ひで
大變
(
たいへん
)
でした。
公爵夫人
(
こうしやくふじん
)
でさへも、
坊
(
ぼ
)
ッちやんと
殆
(
ほと
)
んど
交
(
かは
)
る/″\
嚏
(
くさめ
)
をして、
噎
(
む
)
せる
苦
(
くる
)
しさに
互
(
たがひ
)
に
頻切
(
しツきり
)
なしに
泣
(
な
)
いたり
喚
(
わめ
)
いたりして
居
(
ゐ
)
ました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
やがて、読み終ると、ためいきのような、
嚏
(
くさめ
)
のような、妙な
咳
(
せき
)
を、一つした。それから、手紙を、机のうえに、一枚目から、ずらりと、順に横にならべて
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
一度
嚏
(
くさめ
)
をするのは、誰かが讃めているしるし、二度すれば女が惚れている、三度すれば誰かがほめるなりけなすなりしている、四度すれば風邪を引いたのだ。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「おじさまに、それが判るもんですか。ほら、いま、おじさまは
嚏
(
くさめ
)
をなすった、ぞっとお寒気がしたのでしょう、ほら、ほら、なんだか、すうとしちゃった。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
日中はまだ暑かつた東京から、薄着をして來た姉妹は、伊香保の宿に着くまでに、いく度も
嚏
(
くさめ
)
をした。
新婚旅行
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
夫は心
猛
(
たけ
)
く、人の
憂
(
うれひ
)
を見ること、犬の
嚏
(
くさめ
)
の如く、
唯貪
(
ただむさぼ
)
りて
饜
(
あ
)
くを知らざるに引易へて、
気立
(
きだて
)
優しとまでにはあらねど、鬼の女房ながらも尋常の人の心は
有
(
も
)
てるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
下総
(
しもふさ
)
は
市川
(
いちかは
)
、
中山
(
なかやま
)
、
船橋辺
(
ふなばしへん
)
の
郊行
(
かう/\
)
の
興深
(
きようふか
)
からず、
秋風
(
あきかぜ
)
の
嚏
(
くさめ
)
となるを
覚
(
おぼ
)
えたる時の事に
候
(
そろ
)
。(十七日)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
さていよいよ駒を生んでより馬ども耳を垂れて
嚏
(
くさめ
)
噫
(
おくび
)
にも声せず、商主かの牝馬飛んだものを生んでわが群馬を煩わすと
悪
(
にく
)
む事大方ならず、
毎
(
いつ
)
もこれに乗り
好
(
よ
)
き食物を与えず。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この間も
汪克児
(
オングル
)
は、ところ狭しと独りでふざけ廻って、馬の尻っ尾を引っ張ったり、駱駝と
白眼
(
にら
)
めくらをしたり、自分の鼻の孔へ指を入れて
嚏
(
くさめ
)
をするやら、もんどりを打つやら
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
下人は、大きな
嚏
(
くさめ
)
をして、それから、大儀さうに立上つた。
夕冷
(
ゆふひ
)
えのする京都は、もう
火桶
(
ひをけ
)
が欲しい程の寒さである。風は門の
柱
(
はしら
)
と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
例えば茶柱が来客を代表したり、
嚏
(
くさめ
)
が人の
噂
(
うわさ
)
を代表したりするようなものであります。これは偶然の約束から成立した象徴でありますから、ここに云う種類には属しない訳であります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
式台は
悪冷
(
わるつめた
)
く外套を脱ぐと
嚏
(
くさめ
)
が出そうなのに
御内証
(
ごないしょう
)
は
煖炉
(
だんろ
)
のぬくもりにエヘンとも言わず、……蒔絵の
名札受
(
なふだうけ
)
が出ているのとは
些
(
ち
)
と勝手が違うようだから——私ども夫婦と、もう一人の若い方
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寒風身にしみて
嚏
(
くさめ
)
をし、気がついたらうたた寝をしていたなどというのでは困るが、とにかくアイスアックスは、我をして山を思わしめ、山を思えば私はアイスアックスを取り出して愛撫する。
可愛い山
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
居候
(
いそうろう
)
なりとはいえ、今を時めくABCDS株式国家のC支店長の号令である。それに
愕
(
おどろ
)
いて医師は診察鞄をそこに忘れて立ち上ると、部屋附のボーイは、出かかった
嚏
(
くさめ
)
を途中で停めて部屋を出た。
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
朝日の光秋の如く隣家に人の
嚏
(
くさめ
)
する聲も聞ゆ。午後中河與一氏來話。
荷風戦後日歴 第一
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
何かいたずらをして
嚏
(
くさめ
)
でもさせてやりたいような気持になった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
墓地裏を肥桶載せてゆく駄馬の
嚏
(
くさめ
)
大きなりまめんぶしの花
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
どうしたんだ、どうしてそんなに
嚏
(
くさめ
)
をするんだ
測量船
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
時あつて、猛烈
可笑
(
をか
)
しい
嚏
(
くさめ
)
も出れば
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
吉里は二ツ三ツ続けて
嚏
(
くさめ
)
をした。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
「四遍も見ると、
嚏
(
くさめ
)
が出る」
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
泥棒の
嚏
(
くさめ
)
も寒し雪の
夜半
(
よわ
)
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
厨房
(
だいどころ
)
に
居
(
ゐ
)
るもので
嚏
(
くさめ
)
をしないのは
只
(
たゞ
)
料理人
(
クツク
)
と、それから
竈
(
へツつひ
)
の
上
(
うへ
)
に
坐
(
すわ
)
つて、
耳
(
みゝ
)
から
耳
(
みゝ
)
まで
剖
(
さ
)
けた
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
いて、
齒
(
は
)
を
露出
(
むきだ
)
して
居
(
ゐ
)
た一
疋
(
ぴき
)
の
大猫
(
おほねこ
)
ばかりでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
袖
(
そで
)
や
履物
(
はきもの
)
も夜露にぬれ、筒井はちいさい
嚏
(
くさめ
)
をしたほどだった。彼らはやっと
更
(
ふ
)
けた星を見上げた。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一息にここまで
驀
(
まく
)
し立てると、
後
(
あと
)
が続かなくなつたのと、
葉巻
(
シガー
)
の
煙
(
けぶり
)
が咽喉に入つたのとで、大森氏は一寸言葉を切つて、大きな
嚏
(
くさめ
)
をした。そして苦しさうに涙を目に一杯溜めて
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お前達船酔いしそうになったらな、みんな取っ組み合って腕角力するんだぞう。すると血が顔に上って船酔いしねえそうだ。
億劫
(
おっくう
)
だったら、そうだな、より紙でもこさえて鼻穴をつついて
嚏
(
くさめ
)
を
親方コブセ
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
シャヴァンヌの
聖
(
サン
)
・ジュヌヴィエヴのごとく、月の光に照らされた瓦屋根を眺めて立っていたが、やがて
嚏
(
くさめ
)
を一つすると、窓の障子をばたりとしめて、また元の机の
際
(
きわ
)
へ横坐りに坐ってしまった。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
余
(
あんま
)
り早過ぎたので、動物の方を見物に廻った。パンに
唐辛
(
とうがらし
)
を入れて猿に喰わせたら、
嚏
(
くさめ
)
をして
可笑
(
おか
)
しかった。もう少しやろうとしていると、番人が来て大変怒ったから、乃公達は象の方へ行った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
生きた人形でも買ってもらったように喜んで、
閑
(
ひま
)
さえあると、新らしい
妹
(
いもと
)
の
傍
(
そば
)
に寄りたがった。その妹の
瞬
(
またた
)
き一つさえ驚嘆の種になる彼らには、
嚏
(
くさめ
)
でも
欠
(
あくび
)
でも何でもかでも不可思議な現象と見えた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ハ、ハッショイ。——」と、そのとき突然大きな
嚏
(
くさめ
)
の音がした。
空気男
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
『まァ、
澤山
(
たくさん
)
胡椒
(
こせう
)
が
入
(
はい
)
つてること、
肉汁
(
スープ
)
の
中
(
なか
)
に!』
愛
(
あい
)
ちやんは
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ひながら
大變
(
たいへん
)
嚏
(
くさめ
)
をしました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
と、いつたが、鷦鷯はその魂に沁み透る孤寂が何よりも好物で、「自然」が
嚏
(
くさめ
)
一つしても、けし飛んで無くなりさうな小さな体で、絶えず寂をもとめて、陰湿な物蔭を物蔭をと捜し歩いてゐる。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一度この弟子の代りをした
中童子
(
ちゅうどうじ
)
が、
嚏
(
くさめ
)
をした拍子に手がふるえて、鼻を
粥
(
かゆ
)
の中へ落した話は、当時京都まで
喧伝
(
けんでん
)
された。——けれどもこれは内供にとって、決して鼻を苦に病んだ
重
(
おも
)
な理由ではない。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もしか同じ問が
紐育
(
ニユーヨーク
)
の新聞記者からでも訊かれたのだつたら、ロツクフエラアは急に
感冒
(
かぜ
)
をひいたやうな顔をして、大きな
嚏
(
くさめ
)
でもしたのだらうが、相手が
可愛
(
かあい
)
らしい子供だけに、にこ/\して
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
小僧は首を縮めるが早いか、つづけさまに大きい
嚏
(
くさめ
)
をした。
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と
胡散
(
うさん
)
さうな顔でもすると、直入は急に風邪でも引いたやうに
嚏
(
くさめ
)
をして
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
嚏
漢検1級
部首:⼝
17画