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夕冷
下人は、大きな
嚏をして、それから、大儀さうに立上つた。
夕冷えのする京都は、もう
火桶が欲しい程の寒さである。風は門の
柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。
しみしみと
夕冷えまさるしら雪に岩うつり啼くは
河原鶸かも
先づ
衣桁に在りける
褞袍を
被ぎ、
夕冷の火も
恋く引寄せて
莨を
吃しゐれば、天地
静に
石走る水の響、
梢を渡る風の声、
颯々淙々と鳴りて、幽なること太古の如し。
向つ山
夕冷早しくろぐろと此の
面のなだり焼け果てにけり