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一寸
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いっすん
ふりがな文庫
“
一寸
(
いっすん
)” の例文
一寸
(
いっすん
)
の虫にも
五分
(
ごぶ
)
の魂というが当節はその虫をばじっと殺していねばならぬ世の中。ならぬ堪忍するが堪忍とはまず
此処
(
ここ
)
らの事だわ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「まだ面白い事があります首を
縊
(
くく
)
ると
背
(
せい
)
が
一寸
(
いっすん
)
ばかり延びるそうです。これはたしかに医者が計って見たのだから間違はありません」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
一寸
(
いっすん
)
のばしが、
目覚
(
めざま
)
し時計の音を聞いてから、温かい
蒲団
(
ふとん
)
の中にもぐっているように、何とも云えず
物憂
(
ものう
)
く、こころよかった。
女妖:01 前篇
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
よく見ると、そこがすり切れていて、
一寸
(
いっすん
)
ばかり裾綿が覗きだしているのだった。それを眺めているうちに、彼は酒の酔がさめかかった。
立枯れ
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
とうとう
一寸
(
いっすん
)
逃れを云って、その場は納まったが、後で聞くとやはりその女は、それから三日ばかりして、
錺屋
(
かざりや
)
の職人と心中をしていた。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
足を「
一寸
(
いっすん
)
」すべらすと、ゴンゴンゴンとうなりながら、地響をたてて転落してくる角材の下になって、南部センベイよりも薄くされた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
尤も、地方の高等学校なら這入れたのかも知れませんが、彼は東京の地を
一寸
(
いっすん
)
も離れるのが嫌だと云って、甘んじて落第して了ったのです。
金色の死
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無慈悲のようでもいっそ一日も早い方がいい、
一寸
(
いっすん
)
逃がれに日を延ばしてゆくほどいよいよ
二進
(
にっち
)
も
三進
(
さっち
)
もいかないことになる。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それゆえイザとなっては、思い切って出ることも出来ない。そうしていて、たゞ
一寸
(
いっすん
)
逃れにお宮の処に行っていたかった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
おれは
一文
(
いちもん
)
なしになって、皆にばかにされて、うえ死にをしなければならないんだ。五分
切
(
ぎ
)
り、
一寸
(
いっすん
)
だめしも同様だ。
かたわ者
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その女を養母とした七歳のお貞は、子供に似合わぬピンとした気性だったので、
一寸
(
いっすん
)
のくるいもないように、養母と娘の心はぴったりと合ってしまった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一寸
(
いっすん
)
の仕合せには一尺の魔物が必ずくっついてまいります。人間三百六十五日、何の心配も無い日が、一日、いや半日あったら、それは仕合せな人間です。
ヴィヨンの妻
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
まあまあと
一寸
(
いっすん
)
延
(
のば
)
しにしていたが、いつまで
擲
(
ほう
)
って置くわけにも行かないので、遂に決心してそれを伐った。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
運転手は、夢から
醒
(
さ
)
めたように、運転手席に着いた。が、発動機の
壊
(
こわ
)
れている上に、前方の車軸までが曲っているらしい自動車は、
一寸
(
いっすん
)
だって動かなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「いけねえいけねえ。たとえ天下の往来であろうと、てめえだけは通すことはならねえ、その
地境
(
じざかい
)
から
一寸
(
いっすん
)
でも踏み込んで見やがれ、胴と首の生別れだぞッ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、やうやくはっと飛んだと思った時には、わづか彼女の足元は
一寸
(
いっすん
)
位しか動いてゐなかった。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
さっそくつかまえて、
一寸
(
いっすん
)
だめし
五分
(
ごぶ
)
だめし、なぶり殺してやらねば、こっちの気がおさまらないわ
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ソレでホテルに案内されて
行
(
いっ
)
て見ると、
絨氈
(
じゅうたん
)
が
敷詰
(
しきつ
)
めてあるその絨氈はどんな物かと云うと、
先
(
ま
)
ず日本で云えば余程の
贅沢者
(
ぜいたくもの
)
が
一寸
(
いっすん
)
四方
幾干
(
いくら
)
と
云
(
いっ
)
て金を出して買うて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それは私の右足に相違ない……
瘠
(
や
)
せこけた、青白い股の切り口が、薄桃色にクルクルと引っ
括
(
くく
)
っている。……そのまん中から灰色の
大腿骨
(
だいたいこつ
)
が
一寸
(
いっすん
)
ばかり抜け出している。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
月日の経つのは早いもので、十一年が其の間奉公に
陰陽
(
かげひなた
)
なく、実に身を
粉
(
こ
)
に砕いての働き、
子
(
ね
)
に
臥
(
ふ
)
し寅に起き、
一寸
(
いっすん
)
の
間
(
ま
)
も油断せず身体を苦しめ、身を惜まず働きまする。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ご存じの
楚蟹
(
ずわえ
)
の方ですから、何でも茨を買って帰って——時々話して聞かせます——
一寸
(
いっすん
)
幅の、ブツ
切
(
ぎり
)
で、
雪間
(
ゆきま
)
の
紅梅
(
こうばい
)
という身どころを
噛
(
や
)
ろうと、家内と徒党をして買ったのですが
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
帰る
途々
(
みちみち
)
、彼は何処か
楽書
(
らくがき
)
をするに都合の好さそうな処をと捜しながら歩いた。
土蔵
(
どぞう
)
の墨壁は一番魅力を持っていた。けれども余り
綺麗
(
きれい
)
な壁であると
一寸
(
いっすん
)
ほどの線を引いて満足しておいた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
やがて日は
暮
(
く
)
れた。日が暮れると短い夏の夜はすぐ
更
(
ふ
)
けていった。
一寸
(
いっすん
)
先も見えない
真
(
ま
)
っ
暗
(
くら
)
な寺の中はガランとして物音一つしない。勘太郎は息を
殺
(
ころ
)
し、今か今かと鬼どもの来るのを待っていた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
三輪の万七は
一寸
(
いっすん
)
も引かなかったのです。
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうしてもう一度
無二無三
(
むにむさん
)
に、妻の体を梁の下から引きずり出そうと致しました。が、やはり妻の下半身は
一寸
(
いっすん
)
も動かす事は出来ません。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは二枚折の時代のついた金屏風で、極彩色の六歌仙が描かれていたが、その丁度
小野
(
おの
)
の
小町
(
こまち
)
の顔の所が、無惨にも
一寸
(
いっすん
)
許
(
ばか
)
り破れたのだ。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
よほど厚い石と見えて爪から余った先が
一寸
(
いっすん
)
ほどもある。したがって馬は一寸がた
跛
(
ちんば
)
を引いて車体を前へ運んで行く訳になる。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まあ兎も角も明日まで待ってくれと、お菊は
一寸
(
いっすん
)
逃れの返事をして、ようよう
其処
(
そこ
)
から逃げ出して来たのであった。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
閾際
(
しきいぎわ
)
に
跪
(
ひざまず
)
いて、音を立てぬように障子に手をかけて、
一寸
(
いっすん
)
ばかりする/\と開けて見ると、正面に
普賢菩薩
(
ふげんぼさつ
)
の
絵像
(
えぞう
)
を
懸
(
か
)
け、父はそれに向い合って寂然と端坐していた。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
謝るまでは其処を
一寸
(
いっすん
)
も動かさぬから、そう思っとるがいい。……おい車掌は何処へ行ったんだ?
電車停留場
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
古くさい文学観をもって、彼は、
一寸
(
いっすん
)
も身動きしようとしない。頑固。彼は、それを美徳だと思っているらしい。それは、
狡猾
(
こうかつ
)
である。あわよくば、と思っているに過ぎない。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
旦那を殺すの恥を掻かせるのとは
何
(
なん
)
のことでござんす、
此方
(
こち
)
とらア自分の命を棄てゝも旦那を助ける覚悟だ、又一旦思い込んだ
事
(
こた
)
ア
一寸
(
いっすん
)
も
後
(
あと
)
へ
退
(
ひ
)
かねえ此の亥太郎でござんすぜ
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「畜生ッ
太
(
ふて
)
え
外道
(
げどう
)
だ。そんな野郎にご領内の地べたを
一寸
(
いっすん
)
でも踏ませてなるもんけえ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると
一寸
(
いっすん
)
ばかり
蚯蚓脹
(
みみずば
)
れになっていた。涙がまたなんとなく眼の中に湧いてきた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
がまた一方から考えて見ると、それは
畢竟
(
ひっきょう
)
無益なことであって、たとい
一寸
(
いっすん
)
逃れに居士及自己を欺いておいたところで、いつかは道灌山の婆の茶店を実現せずにはおかなかったのである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
清左衛門は
一寸
(
いっすん
)
も引きませんでした。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
思うに小野さんは事実の判決を
一寸
(
いっすん
)
に
逃
(
のが
)
れる学士の亀であろう。亀は早晩首を出す。小野さんも今に封筒の裏を返すに違ない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すると、帽子のひさしと、外套の襟との
僅
(
わず
)
か
一寸
(
いっすん
)
ばかりの
隙間
(
すきま
)
から、目を射る様にギラギラと光ったものがある。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
信一にこう云われて、二人ともだらしなく大の字なりに土間へ倒れたまゝ、
一寸
(
いっすん
)
も動けなかった。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一寸
(
いっすん
)
さきは闇だということだけが、わかっている。あとは、もう、何もわからない。
八十八夜
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
が、彼の手は不思議にも、
万力
(
まんりき
)
か何かに
挟
(
はさ
)
まれたように、
一寸
(
いっすん
)
とは自由に動かなかった。その内にだんだん
内陣
(
ないじん
)
の中には、
榾火
(
ほたび
)
の
明
(
あか
)
りに似た
赤光
(
しゃっこう
)
が、どこからとも知れず流れ出した。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一寸
(
いっすん
)
のびれば
尋
(
ひろ
)
ッてえこともあるんだ、
左様
(
そう
)
くよ/\
心配
(
しんぺえ
)
して身体でも悪くしちゃア詰らねえからなア、まさか間違ったら其の時にまた
何
(
なん
)
とでも仕ようがあらアな、え、何うするって
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
見る見る葉子は
一寸
(
いっすん
)
の身動きもできないくらい
疼痛
(
とうつう
)
に痛めつけられていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
川島君は砲弾の破片に撃たれたのです。私もその時、小銃弾に帽子を撃ち落されましたが、幸いに無事でした。その弾丸がもう
一寸
(
いっすん
)
と下がっていたら、
唯今
(
ただいま
)
こんなお話をしてはいられますまい。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と一同は鯉口切って
犇々
(
ひしひし
)
と、ここ
一寸
(
いっすん
)
も
退
(
ひ
)
かぬ気色だ。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人に押されて入り込むと真暗である。ただ
一寸
(
いっすん
)
のセキもないほど
詰
(
つ
)
んでいる。そうして互に懸命な声を
揚
(
あ
)
げる。火は明かに向うに燃えている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折角
(
せっかく
)
決心して出かけて来たのだから、
一寸
(
いっすん
)
のばしにしても仕方がない、ともかく話をつけてしまおうと考えた。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
影と影とはいつの間にやら
一寸
(
いっすん
)
の出入りもなく並び合った。私は始めて、ちらりと女の横顔を覗き込んだ。笠の緒の向うにやっと彼女のふっくらとした
頬
(
ほお
)
の線の持ち上りが見えた。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
君の三十年間の忠勤も、
今宵
(
こよい
)
の無礼で、あとかたも無く消失した。はかないものだね。人の運命なんて、
一寸
(
いっすん
)
さきも予測出来ないものだね。どんな事になるものか、まるっきり、わからない。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
見え透いた
一寸
(
いっすん
)
逃れと、弟はなかなか得心しなかった。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
“一寸”の意味
《形容動詞》
一寸(ちょっと 別表記:鳥渡)
数量や程度がわずかであること。
《名詞》
一寸(いっすん)
一尺の十分の一。約3㎝。
ほんのわずかな物の例え。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
寸
常用漢字
小6
部首:⼨
3画
“一寸”で始まる語句
一寸法師
一寸々々
一寸見
一寸角
一寸試
一寸前後
一寸位
一寸遁
一寸刻
一寸前