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髣髴
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はうふつ
ふりがな文庫
“
髣髴
(
はうふつ
)” の例文
髣髴
(
はうふつ
)
たる海天に
青螺
(
せいら
)
のごとく浮いてゐる美しい島島の散在を望んでも、も早詩が胸から無くなつた。人間墳墓の地を忘れてはならない!
故郷に帰りゆくこころ
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
彼の眼の前に、再び、現実のそれよりはなほ一層高き神秘なる美と権威とに於て、長老と、モニカとの結合体が
髣髴
(
はうふつ
)
と現はれた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
足本國の外を
踐
(
ふ
)
まざる
我徒
(
ともがら
)
に至りては、只だその
瑰偉
(
くわいゐ
)
珍奇なるがために魂を
褫
(
うば
)
はれぬれば、今
復
(
ま
)
たその
髣髴
(
はうふつ
)
をだに語ることを得ざるならん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
脚本『象』に於いて見るに、次ぎのやうな簡単なる会話が如何によく、其の人物と生活と時代とを
髣髴
(
はうふつ
)
たらしめるであらう。
谷崎潤一郎氏の作品
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
僕はこの
一行
(
いちぎやう
)
の中に
秋風
(
しうふう
)
の舟を家と頼んだ
幇間
(
ほうかん
)
の姿を
髣髴
(
はうふつ
)
した。江戸作者の写した
吉原
(
よしはら
)
は永久に
還
(
かへ
)
つては来ないであらう。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
夜更けて温泉に浴し、静かに眠らうとしたが、心が落付いて来ると赤彦君の顔容が眼前に
髣髴
(
はうふつ
)
としてあらはれて来た。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
……
時
(
とき
)
に
靡
(
なび
)
きかゝる
雲
(
くも
)
の
幽
(
いう
)
なるさへ、一
天
(
てん
)
の
銀河
(
ぎんが
)
に
髣髴
(
はうふつ
)
として、
然
(
しか
)
も、八
甲田山
(
かふださん
)
を
打蔽
(
うちおほ
)
ふ、
陸奥
(
みちのく
)
の
空
(
そら
)
は
寂
(
さび
)
しかつた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
糠雨
(
ぬかあめ
)
のおぼつかなき
髣髴
(
はうふつ
)
の中に、一道の薄い烟が極めて絶え/″\に
靡
(
なび
)
いて居て、それが東から吹く風に西へ西へと吹寄せられて、
忽地
(
たちまち
)
雲に交つて了ふ。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
夫婦
(
ふうふ
)
は
此肉
(
このにく
)
に
刻
(
きざ
)
み
付
(
つ
)
けられた、
眼
(
め
)
と
鼻
(
はな
)
と
口
(
くち
)
とを
髣髴
(
はうふつ
)
した。
然
(
しか
)
し
其
(
その
)
咽喉
(
のど
)
から
出
(
で
)
る
聲
(
こゑ
)
は
遂
(
つひ
)
に
聞
(
き
)
く
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
なかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
神経的に燃えた。それは全く何の精神統一もない人の——彼自身のやうな人の
昂奮
(
かうふん
)
に
髣髴
(
はうふつ
)
として燃えた。思慮なく、理性を没却して、そのくせ力なく、ただ一気に燃えた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
一見人工を
加
(
くわ
)
へたる文珠菩薩に
髣髴
(
はうふつ
)
せり、
傍
(
かたはら
)
に一大古松あり、
欝
(
うつ
)
として此文珠
岩
(
いわ
)
を
被
(
お
)
へり、丘を
攀登
(
ばんと
)
して岩下に
近
(
ちか
)
づかんとするも
嶮崖
(
けんがい
)
頗甚し、小西君
及
(
および
)
余の二人
奮発
(
ふんぱつ
)
一番衆に先つて
上
(
のぼ
)
る
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
海の彼方には津軽の山が浮んで、山の左から汐首の岬まで、灰色の空を被いだ太平洋が、唯一色の強い色を湛へて居る。——其水天
髣髴
(
はうふつ
)
の
辺
(
あたり
)
にポツチリと黒く浮いてるのは、汽船であらう。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
おつたは
幾
(
いく
)
らいつても
竭
(
つ
)
きない
當時
(
たうじ
)
を
髣髴
(
はうふつ
)
せしめようとする
容子
(
ようす
)
でいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
なほ
熟視
(
みつ
)
む。……
髣髴
(
はうふつ
)
と
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
南画は胸中の
逸気
(
いつき
)
を写せば、他は
措
(
お
)
いて問はないと云ふが、この墨しか着けない松にも、自然は
髣髴
(
はうふつ
)
と生きてゐはしないか?
油画
(
あぶらゑ
)
は
真
(
しん
)
を写すと云ふ。
支那の画
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路は薄暮に近き山間を縫ひて、
杉樹
(
さんじゆ
)
の
蓊欝
(
おうゝつ
)
と繁茂せるところ、
髣髴
(
はうふつ
)
として一大奇景の眼下に
横
(
よこたは
)
れるを見る。されど崖高く、四邊深黒にして容易に之を辨ずる能はず。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
彼
(
かれ
)
はたゞ
坂井
(
さかゐ
)
へ
客
(
きやく
)
に
來
(
く
)
る
安井
(
やすゐ
)
の
姿
(
すがた
)
を
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
て、
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
から、
安井
(
やすゐ
)
の
今日
(
こんにち
)
の
人格
(
じんかく
)
を
髣髴
(
はうふつ
)
したかつた。さうして、
自分
(
じぶん
)
の
想像
(
さうざう
)
程
(
ほど
)
彼
(
かれ
)
は
墮落
(
だらく
)
してゐないといふ
慰藉
(
ゐしや
)
を
得
(
え
)
たかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
眸を凝らして海を望めば、
髣髴
(
はうふつ
)
の間、サンタが姿のこの火焔の波を踏みて立ち、その燃ゆる如き
目
(
ま
)
なざしもて我を責め我を訴ふるを視、耳邊忽ち又妾を殺せ、妾を殺せと叫ぶを聞く。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
それはただにその色ばかりではなく、羽全体が植物の芽生に
髣髴
(
はうふつ
)
して居た。生れ出るものには、虫と草との相違はありながら、或る共通な、或る姿がその中に啓示されて居るのを彼は見た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
村の郵便局からでは顏
馴染
(
なじみ
)
の局員の手前を恥ぢて、杖に
縋
(
すが
)
りながら二里の峻坂を
攀
(
よ
)
ぢて汗を拭き/\峠を越えた父の姿が
髣髴
(
はうふつ
)
して、圭一郎は極度の昂奮から自殺してしまひたいほど自ら責めた。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
俳優にはウイリヤム・セキスピヤと云へる人あり! 三十何年か
前
(
まへ
)
の日本は、
髣髴
(
はうふつ
)
とこの一語に
窺
(
うかが
)
ふ事が出来る。この本は
希覯書
(
きこうしよ
)
でも
何
(
なん
)
でもあるまい。
本の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
忽ち柔なる笛の音起れり。是れヂドが戀の始なるべし。戀といふものは我が未だ知らざるところなれど、この笛の音は、我に
髣髴
(
はうふつ
)
としてその面影を認めしめたり。忽ち角聲
獵
(
かり
)
を報ず。暴風又起れり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
菱川
(
ひしかは
)
の浮世絵に
髣髴
(
はうふつ
)
たる女や
若衆
(
わかしゆ
)
の美しさにも鋭い感受性を震はせてゐた、多情なる元禄びとの作品である。「元禄びとの」、——僕は敢て「元禄びとの」と言つた。
芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あれは平中の心の中には、
何時
(
いつ
)
も
巫山
(
ふざん
)
の
神女
(
しんによ
)
のやうな、
人倫
(
じんりん
)
を絶した美人の姿が、
髣髴
(
はうふつ
)
と浮んでゐるからだよ。平中は何時も世間の女に、さう云ふ美しさを見ようとしてゐる。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前に書き忘れたが、
鳴雪翁
(
めいせつをう
)
の画も面白く拝見した。昔、
初午
(
はつうま
)
に
稲荷
(
いなり
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、よく鳥居をくぐる
途
(
みち
)
に
地口
(
ぢぐち
)
の
行燈
(
あんどん
)
がならんでゐた。あれはその行燈の絵を
髣髴
(
はうふつ
)
させる所が甚だ風流である。
俳画展覧会を観て
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
十一月×日、予は本多子爵と共に、明子を
訪
(
と
)
ひぬ。明子は容色の幾分を減却したれども、猶
紫藤花下
(
しとうくわか
)
に立ちし当年の少女を
髣髴
(
はうふつ
)
するは、
未
(
いまだ
)
必しも難事にあらず。
嗚呼
(
ああ
)
予は既に明子を見たり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さうしてその煙の中に、ふだんから頭の中に持つてゐる、或疑問を
髣髴
(
はうふつ
)
した。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
のみならず文章も千古無窮に力を保つかどうかは疑問である。観念も時の支配の外に超然としてゐることの出来るものではない。我我の祖先は「神」と言ふ言葉に衣冠束帯の人物を
髣髴
(
はうふつ
)
してゐた。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
氏は罪悪の夜光虫が明滅する海の上を、まるでエル・ドラドでも探して行くやうな意気込みで、悠々と船を進めて行つた。その点が氏は我々に、氏の
寧
(
むしろ
)
軽蔑するゴオテイエを
髣髴
(
はうふつ
)
させる
所以
(
ゆゑん
)
だつた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは又先生の短歌や俳句にも
髣髴
(
はうふつ
)
出来ない訣ではない。同時に又体裁を成してゐることはいづれも整然と出来上つてゐる。この点では殆ど先生としては人工を尽したと言つても善いかも知れない。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
髣
漢検1級
部首:⾽
14画
髴
漢検1級
部首:⾽
15画
“髣髴”で始まる語句
髣髴著