露西亜ロシア)” の例文
旧字:露西亞
独逸ドイツ屹度きつと最後の独逸人となるまで戦ふだらう、露西亜ロシア人もまた最後の露西亜人となるまで戦ふだらうが、唯英吉利イギリス人は——さうさ
もし、清国政府が日本政府に対して悪感情を抱き、現在の好意的な中立の態度を放擲ほうてきして逆に露西亜ロシアに傾いて行ったら、どうなるか。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
戦争後ある露西亜ロシアの士官がこの陳列所一覧のためわざわざ旅順まで来た事がある。その時彼はこの靴を一目て非常に驚いたそうだ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
露西亜ロシアのムソルグスキーのような、本当の国民音楽家は、永久に現われないものだろうか、心ある人は歎きも悲しみもしておりました。
ベルリン会議のはじまる前の、ある夜、ビスマルクは、露西亜ロシアの宰相ゴルチャコフと、私的の夜会をひらき、その席で骨牌をした。
今昔茶話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蒙古の勢力はもはや五世紀も前になってしまったのに、今日までそれと同じ露西亜ロシアの勢力が残っているというは如何にも不思議である。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「大陸通という程でも無いがね、まあ露西亜ロシア物は大分集めた」と相川は思出したように、「この節、たツルゲネエフを読出した。 ...
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちょうど露西亜ロシアの捕虜がいるころで、みんなこの茶店へ三時の散歩にはやって来たもので、なかにひどく惚れこんでいるのもいた。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
文化年間、露西亜ロシアがエトロフに入り、北辺をさわがした。泉石はその刺戟を受け、二十歳前後の頃、北海道樺太カラフト沿海州の地図を写している。
或る支那帰りの商人は、アダを北京の南陽門通りの裏街の露西亜ロシア人の酒場で、彼女がフランス兵とふざけているのを見かけたと云うのだ。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
露西亜ロシアで革命党が爆裂弾を投げようが、日本で政府党が選挙に勝とうが、又は乗り換えを忘れようが、終点まで運ばれようが委細構わず
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どこに住んでも、——ずいぶんまた方々に住んで見たんだがね。僕が今住んで見たいと思うのはソヴィエット治下ちか露西亜ロシアばかりだ。」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ブン投げてしまうんだ。んだから——んな心掛けだから露西亜ロシアの国がああなったんだ。日本男児の断じて真似まねてならないことだ!
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
この若い露西亜ロシア婦人は令嬢が百日咳のやうな気味であるめ冷たい空気のはひらないやうにと部屋の戸にも廊下の端の戸にも気を配つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「それは第一が中華民国の上海シャンハイとか広東カントンとかいった方面から。第二は露西亜ロシアのウラジオから。第三は太平洋方面あるいはアラスカ方面から」
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
革命的感情が、全露西亜ロシアの悉ゆる階級に滲透した。露西亜語の研究につれて、若いエンマもまた革命思想の伝道者とその新思想に接近した。
乞食の名誉 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
お前達は欧米流の衛生思想を穿き違えている、いつかの露西亜ロシア人達などは生牡蠣なまがきを平気で食べたではないか、と云ったりした。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「大西郷が生きていて露西亜ロシアから帰って来るという評判が僕の小学校時代にあったが、鹿児島へ来て見ると実際生きている以上の感化だね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この尖端せんたんうえけているくぎと、へい、さてはまたこの別室べっしつ、こは露西亜ロシアにおいて、ただ病院びょういんと、監獄かんごくとにのみる、はかなき、あわれな、さびしい建物たてもの
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この時代の硯友社の作風や態度を仏蘭西フランス露西亜ロシアの近代作家に対するような心持で批評するのは時代を無視する色盲である。
露西亜ロシア人は冬外套シュウバの襟を立てるのでそのために特にこう出来てるんだそうだが、私の考えでは、これは例の過激派ひげを焼かない用心だと思う。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
日清戦争に依つて、東洋に於ける位置を確立した日本は、その発展途上の宿命として、露西亜ロシアと、衝突せねばならなかつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
青草を枕に寝転んでいた露西亜ロシア人が、俺の肩をひじで小突いて指で円い形をこしらえて、中指を動かしてみせた。そしてへ、へえ、へえと笑った。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
「ナポレオンが露西亜ロシアを敗走したのを単に寒気の襲来と防寒具の不足とに帰するような頭で、万象の葛藤を批判論断されてはたまりません……」
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分の小説は未製品であるから、此れ位にして切り上げるが、露西亜ロシアの小説家も、此頃婦人問題を小説の中に出してゐる。
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
げに露西亜ロシアの農民はあはれなる生活を送るもの多く、酸苦こもごもせまれどもこらへ、能く忍ぶは、神の最後のまつりごとに希望を置くと見えたり。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
露西亜ロシアの舞踊ニジンスキイ以後の芸術と、支那俳優の舞技と、すなわち東西両種の芸術を渾和こんわしたとか称するもので、男女両性の肉体的曲線美の動揺は
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
愛媛県知事安藤謙介君は露西亜ロシア学者で、あの人が露国の日本公使館にいた時分、露国の文部大臣であったか、とにかく位地の高い役人に会った時に
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
妻は、模様も分らなくなった風呂敷ふろしきを三角に折って露西亜ロシアじんのようにほおかむりをして、赤坊を背中に背負いこんで、せっせと小枝や根っこを拾った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
風の便りに聞けば、何とやら云う日本人が、つい一二年前北の方の海で露西亜ロシア人を対手あいてに、海賊を働いて、刑務所につながれたということではないか。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところへ闇雲やみくもに後から驀進して来た一つの高級自動車があった。あの露西亜ロシア風の駅逓の前に見たのがそれであった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ニニヨンは若いとき露西亜ロシアの貴族の料理頭を勤めた。欧洲の宮廷料理の粋はその時代を最後としてそこで滅びた。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
或る日、村の警衛に出ていた兵士は、露西亜ロシアの百姓が、銃のさきに背嚢を引っかけて、肩にかついで帰って来るのに出会した。銃も背嚢も日本のものだ。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
露西亜ロシアは地上のあらゆるものを乗越えて飛ぶ。他の国民と諸王国と諸帝国は傍へ寄って彼女に道を譲りながら、呆気にとられて流眄ながしめに見ている! ゴーゴリ
露西亜よ汝は飛ぶ (新字新仮名) / 百田宗治(著)
当時人口に膾炙せし「伐てよ懲せよ清国を」の軍歌の清国の二字に代ふるに露西亜ロシア国の四字を以てせしのみ、支那四百余洲を併呑すべしと放言せし口にて
左団扇ひだりうちわで暮らしていたら、今日、この露西亜ロシアとの戦争には果たしてこのようにトントンと勝てていたかどうか。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
大体ユーゴの言葉はブルガリアなぞと同じく露西亜ロシア語と同語源のスラヴ語だというのでしたが、そのスラヴ語が私にはわからないのだから、仕方ありません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
その時に私は大に心付こころづきました、成程なるほど露西亜ロシア欧羅巴ヨーロッパの中で一種風俗のかわった国だとうが、ソレに違いない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また日本の農民が露西亜ロシアの民藝を摸したとて何の意味があろう。工藝は模倣を許さず侵略を許さぬ。与えられた風土の岩の上に、工藝の城が固く築かれてある。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
陰惨なペトログラードや、モスクワオの生活をするものは、南露西亜ロシアの自然と生活をどんなに慕うだろう。また、囚人の行くシベリヤをどんなに眼に描くだろう。
北と南に憧がれる心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし今宵の私の心のムウドに沁々しみ/″\と親みをはこぶものは汝の死である。汝の埋められた露西亜ロシアの遠い片隅の一寒村の墓地の光景は今もありありと私の前に浮ぶ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
階下した土壇テラッスで飯を食っていますと、ゴイゴロフという肺病やみの露西亜ロシア人が、わたしのそばへやって来て、オイ、二階の先生、景気はいいか、というから、いや
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
露西亜ロシアの如き国状を醸し出すところの狂妄きょうもう陋悪ろうおの思想や感情が行われたら飢餓で死ぬ人も沢山出来るであろうが、もない限りは貧乏は生命に別状は無いものだ。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼は早速ドーブレクのやしきを抜け出してシャートーブリヤンの自邸へ帰った。そして最も得意とする露西亜ロシア貴族の変装に取りかかった。部下も自動車でやって来た。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
運命、人生——かつて芳子に教えたツルゲネーフの「プニンとバブリン」が時雄の胸にのぼった。露西亜ロシアすぐれた作家の描いた人生の意味が今更のように胸をった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
これは露西亜ロシアつねに知らぬ犬を呼ぶ名である。「シュッチュカ」、来い来い、何も可怖こわいことはない。
つい近ごろの新聞に、何とかいう露西亜ロシア人は音楽を色彩であらわすことに成功したという話があった。
偶言 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
彼は中学生対手あいての雑誌を編輯へんしゅうしている文学者の話した、某劇場の前にいた二人の露西亜ロシア女の処へ往って、葡萄ぶどう酒をたくさん飲まされて帰って来たと云う話を思いだした。
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ふとさっきこんな向う見ずの自分をつかまえても何んともうるさく云わなかったあの気さくな看護婦が露西亜ロシアの女のように襟巻でくるくると顔を包んでいたのを思い出すと
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
このような服装のできる、そして専門は露西亜ロシア文学の、独りで一軒の家の主人となって自由に暮していられる女性の生活が、伸子にはひどく悠々独立的なものに想像された。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)