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逝
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い
ふりがな文庫
“
逝
(
い
)” の例文
彼が手をかける迄もなく、自分できちんと畳み附けて
逝
(
い
)
ったらしい。古い帯も、持物も、すべてが几帳面に、その上に乗せてあった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母親は何やらモゾクサしてゐて、「
私
(
わし
)
もナ、ひよツとすると、此の冬あたりは
逝
(
い
)
くやも知れンてノ。」と
他言
(
ひとごと
)
のやうに平気でいふ。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ああ何もかも
逝
(
い
)
ってしまってくれ、私には何にも用はない。男と私は精養軒の白い食卓につくと、日本料理でささやかな別宴を張った。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私が
逝
(
い
)
ってしまうのはためになることです。死はよい処置です。神は、私どもがどうなればよいかを私どもよりよく知っていられます。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
父母に
逝
(
い
)
かれた孤児であった。が、日本橋の店の方は、古い番頭や手代達によって、順調に経営されていた。お島が柏屋の戸主であった。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
芦峅
(
あしくら
)
きってのその強力で冬の登山者に取って重宝がられたあの福松も、去年一月の劍のアクシデントで無惨に
逝
(
い
)
ってしまった。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
もう
冬
(
ふゆ
)
も
逝
(
い
)
ってしまうのだと、
体
(
からだ
)
を
円
(
まる
)
くして、
心地
(
ここち
)
いい、
暖
(
あたた
)
かな
風
(
かぜ
)
に
羽
(
はね
)
を
吹
(
ふ
)
かれながら、いままで
埋
(
う
)
もれていた
山
(
やま
)
の
林
(
はやし
)
や、また
野原
(
のはら
)
の
木立
(
こだち
)
が
春になる前夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
けれど、私の春は
逝
(
い
)
つてしまつた。しかし、それはあの佛蘭西の小花を私の手に殘して。ある氣持ちから、私はそれを捨てゝしまひたいのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
俄跛の姉妹のことを
呉
(
く
)
れ/″\も夫にたのんで
逝
(
い
)
つたお辻の死顔の
蒼
(
あお
)
ざめた
萎
(
しな
)
びた
頬
(
ほお
)
——お辻は五十で死んだのである。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
鴎外が
董督
(
とうとく
)
した改訂
六国史
(
りっこくし
)
の大成を見ないで
逝
(
い
)
ったのは鴎外の心残りでもあったろうし、また学術上の恨事でもあった。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
キンチャコフは、不運にも、ゴンドラが地上に激突したとき、当りどころが悪くて
脳震蘯
(
のうしんとう
)
を起こし、そのままあの世へ
逝
(
い
)
ってしまったそうである。
空中漂流一週間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
金打
(
きんちょう
)
して、耳もとに叫ぶと法外先生は微笑を洩らしたきり、それなり一言も口をひらかずに、
逝
(
い
)
ったのだった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
身につけて来た僅かの資本で今の所に文房具店を開き、幸に場所がよかったため相当に客足もついたが、間もなく老母は日光と空気と運動との不足のために
逝
(
い
)
った。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
この詩も近ごろ
逝
(
い
)
った人を
悼
(
いた
)
んだ詩であることから、詩の中の右将軍の惜しまれたと同じように、世人が上下こぞって惜しんだ幾月か前の友人の死を思うのであった。
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
其後
(
そのご
)
母の希望を
容
(
い
)
れて、
妻
(
さい
)
を迎え、子を生ませると、間もなく母も父の跡を追って
彼世
(
あのよ
)
へ
逝
(
い
)
った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
青木淳の
遺
(
のこ
)
して
逝
(
い
)
った手記の言葉が、太陽の光に
晒
(
さら
)
されたように、何の疑点もなくハッキリと
解
(
わか
)
って来た。彼女が、瑠璃子夫人であることに、もう何の疑いもなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
無数に生まれて一人一人に
異
(
かわ
)
った無量の
生涯
(
しょうがい
)
を
遺
(
のこ
)
して
逝
(
い
)
った人のなかで、よい人とよくない人と、優れた人と劣った人と、満足した人としなかった人とをくらべてみたら
最も楽しい事業
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
彼女は赤んぼにかえって、母の
懐
(
ふところ
)
にねむった夢を見たのだ、そして、間もなく
逝
(
い
)
ってしまった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかしそれも、せいぜい二、三日のうちで、四日、五日と経っても帰って来ない日がつづくと、やっぱりあの方は
逝
(
い
)
ってしまわれたのだという思いが身にしみるのであった。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
二十人はとうとう、その家族を残して、妻子はその主人に残されて
逝
(
い
)
ってしまわれたんだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
乳母 あゝ、かなしや!
死
(
し
)
なしゃった/\/\! もう
無效
(
だめ
)
でござります、もう
無效
(
だめ
)
でござります。あゝ、かなしや!……
逝
(
い
)
なしゃった、
殺
(
ころ
)
されさっしゃった、
死
(
し
)
なしゃった!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「この三人の中じゃ、一番先へ僕が
逝
(
い
)
きそうだ」と
復
(
ま
)
た足立が笑いながら言出した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
去年は草取頃に、婆様にはあ
逝
(
い
)
かれて、米と桶の銭を島の
伯父家
(
おじげ
)
に借りさあ行って
事
(
こと
)
うすましやした。悪い時にゃあ悪い事べえ続くもんで、その秋にゃ娘っ子が死にやしたかんない。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
年々変らない景物に対して、心に思うところの感懐もまた変りはないのである。花の散るが如く、葉の
落
(
おつ
)
るが如く、わたくしには親しかった
彼
(
か
)
の人々は一人一人相ついで
逝
(
い
)
ってしまった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と云うのは外でもなく、郷里の母が
脳溢血
(
のういっけつ
)
で突然
逝
(
い
)
ってしまったことです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だが、あのなつかしい、思い出ふかいクリスマスのお
爺
(
じい
)
さんはもう
逝
(
い
)
ってしまったのだろうか。あとに残っているのは、あの年とった頭の白髪と
顎
(
あご
)
ひげだけなのか。それでは、それをもらおう。
クリスマス
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
その秋地方に流行性感冒の
蔓延
(
まんえん
)
しました時、はつは年は取っても元気を出して、あちこちの看病に雇れていたのですが、とうとう自分も感染して、年寄の流感で、それなり
逝
(
い
)
ってしまいました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
悲しく
逝
(
い
)
った、浪路にして見れば、一たん、そこから
遁
(
のが
)
れて来た、松枝町の三斎屋敷になき
骸
(
がら
)
を持ちかえされて、
仰々
(
ぎょうぎょう
)
しく、おごそかな
葬
(
はぶ
)
りの式を挙げられようより、いのちを賭けた雪之丞の
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
なにかとりのこされたようなさみしい気持になりました。青春むなしく
逝
(
い
)
くを悲しむ。そうした感情が、呪文のようにも、また悔恨のようにも、苛立たしく、切なく胸のうちを通りぬけて行きました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「放してくれ、
此奴
(
こいつ
)
逝
(
い
)
わさにゃ、腹の虫が納るかい。」
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「驚いたなあ。
直
(
す
)
ぐ
逝
(
い
)
ってしまったんだね」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
逝
(
い
)
ってはいけない
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
けれど、ただ
力攻
(
ちからぜめ
)
して兵を損じることの不可なることを説いて、最後の一策を、味方のために、書き
遺
(
のこ
)
して
逝
(
い
)
ったものである。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
マドレーヌさん! ああ棺の中にはいっていなさる。もう
逝
(
い
)
ってしまわれた。もうだめだ。——いったいこれは何て訳のわからないことだ。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
行
(
ゆ
)
こうかもどろかオロラの下へ——という
感傷的
(
センチメンタル
)
な声は
市井
(
しせい
)
の
果
(
はて
)
から田舎人の
訛声
(
だみごえ
)
にまで唄われるようになった。そして最後にカルメンの悲しい唄声を残して彼女は
逝
(
い
)
った。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
世
(
よ
)
は
最早
(
もう
)
絶滅
(
をはり
)
ぢゃと
宣告
(
せんこく
)
せい! あの
二人
(
ふたり
)
が
逝
(
い
)
にゃったなら、
生
(
い
)
きてゐる
甲斐
(
かひ
)
はない!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
その夏も
逝
(
い
)
って秋となった。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、孔明に託して
逝
(
い
)
ったのである。孔明の生涯とその忠誠の道は、まさにこの日から彼の
真面目
(
しんめんもく
)
に入ったものといっていい。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところで、わしにいい機会がきた。ねえきみ、こう言っちゃなんだが、きみは今日
逝
(
い
)
っちまうんだろう。ところが、そういうふうに死なせられた者は、確かに前から富籤がわかる。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
明治二十九年十一月二十三日午前に、この一代の天才は二十五歳のほんに短い、人世の
半
(
なかば
)
にようやく達したばかりで
逝
(
い
)
ってしまった。けれど布は幾百丈あろうともただの布であろう。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
春が
逝
(
い
)
って夏が来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さいごの息をひくときには「——甥の
柴進
(
さいしん
)
に告げて、この恨みをはらしてくれ!」とくり返し言い
遺
(
のこ
)
して
逝
(
い
)
ったという。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「もう私は明日
逝
(
い
)
ってしまうのに、今日きて下さらないのはまちがってるわ。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
逝
(
い
)
った人を葬むるのに、そんな無作法なことってないと
腹立
(
はらだた
)
しかった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おそらく、武蔵が下り松で死んでいれば気持だけでも、彼女もあのまま
逝
(
い
)
ってしまったに違いなかった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが神の配剤である。神は天にあって、われわれ皆の者を見られ、大きな星の間にあって自分の
仕業
(
しわざ
)
を知っていられる。私はもう
逝
(
い
)
ってしまう。ふたりとも、常によく愛し合いなさい。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
訥升
(
とつしょう
)
沢村宗十郎の妻となって——今の宗十郎の養母——晩年をやすらかに
逝
(
い
)
ったが、これまた浅草今戸橋のかたわらに、手びろく
家居
(
かきょ
)
して、
文人墨客
(
ぶんじんぼっかく
)
に貴紳に、なくてならぬ酒亭の女主人であった。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
帯紐
(
おびひも
)
解
(
と
)
かず七、八日は必死に看病をしたけれど、とうとう
病床
(
とこ
)
に就いたまま
逝
(
い
)
ってしまったんですよ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ビヤンヴニュ閣下は、かくのごとき楽園より他の天国へと
逝
(
い
)
ったのであった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
急病で
逝
(
い
)
ってしまった。
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
逝
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“逝”を含む語句
逝去
御逝去
長逝
遠逝
夭逝
急逝
早逝
善逝
逝春
素逝
武良前野逝
御逝
失逝
逝去遊
逝囘
大曰逝
逝曰遠
逝水
逝者
逝者已如水
...