軽業かるわざ)” の例文
旧字:輕業
こっちへやって来たが心配するな。お前さん、軽業かるわざが出来るかい。両手と両足とで、この両側の壁を踏んまえて、穴蔵の天井に身体を
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まるで軽業かるわざのような芸当ですが、探偵団員たちは、日ごろから、いざというときの用意に、こういうことまで練習しておいたのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
で、往来の両側には、女芝居や男芝居の、垢離場こりばの芝居小屋が立っている。軽業かるわざ、落語、女義太夫——などの掛け小屋もかかっている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「うまく勤まるかどうだか。それにしても君ちゃん、お前の方はどうなるのだい、お前はあの軽業かるわざと一緒に旅に出る気なのかい」
小舎こやそとてからも、まちなかあるいても、この軽業かるわざ小舎ごやらしている、ドンチャン、ドンチャンのおとみみについたのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
危険を冒すことだけが登山の最大の意義だというんなら、それはスポーツの軽業かるわざ主義だよ。……君、君、そこでいびきなんかかいちゃ駄目だよ。
サンモリッツあたりのリンクで、軽業かるわざのような目ざましいスケイティングをやってる連中を見ると、大抵は専門家ばかりである。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
しかしこれは、いくらか乗馬の経験を持っている私にそう見えただけで、軽業かるわざ見物のつもりで来ている連中には気付かれないかも知れない。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その素性を知っているのが、闇太郎等の、ごくわずかな連中——軽業かるわざお初といわれるほどの女さえ、この庵の秘密は知らない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
私は現代が、夜光虫と欧羅巴ヨーロッパスタイルのグランド・ホテル・ド・横浜のダンシング・ホールと空中の軽業かるわざだと断定する。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
芸術より外に楽しみのある可き筈はないと、一途いちずに思い込んで居た私にとって、軽業かるわざの稽古にも等しい彼の遊戯が無意味に見えたのは当然なのです。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
殊に両国は西と東に分れていて、双方に同じような観世物や、軽業かるわざ、浄瑠璃、芝居、講釈のたぐいが小屋を列べているのだから、おたがいに競争が激しい。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ろくろ首が三味線をいている、それから顔は人間で胴体は牛だと称する奇怪なものや、海女あまの手踊、軽業かるわざ、こままわし等、それから、竹ごまのうなり声だ
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
見ると一人は手に剃刀かみそりとちり紙を持っている。彼女は順吉に命じて軽業かるわざのような恰好をさせて、もの慣れた顔つきで器用に剃刀をあつかって毛をりおとした。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
しかし参吉はきまえよく二人分の銭を出し、芝居を一つと軽業かるわざを見たのち、掛け茶屋であべ川餅を喰べた。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飛び上った時には寒くてふるえて居ましたが、しかし非常に愉快でした。妙なもので子供の時に見た軽業かるわざがよい所で役に立ったものだと大いに愉快を感じたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その晩、信州路を廻って、散々の不入に悩まされた軽業かるわざの一座が、安泊りに入る路用もなく、碓氷峠の出口に、古幟ふるのぼりを天幕にして、馴れた野宿をして居りました。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ほう二、三町の空地で、最初の貸自転車屋があり、借馬屋があり、花相撲や軽業かるわざもときどき興行、チャリネの曲馬も第一回はここで大当り、平素もなかなかの賑わいで
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
手品か軽業かるわざか足芸のようなものを見て、帰りに葦簾張りの店へはいって氷水を飲むか、あるいは熱い「ぜんざい」を食った。この熱いぜんざいが妙に涼しいものであった。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
磧も狭しと見世物小屋を掛けつらねて、猿芝居さるしばい、娘軽業かるわざ山雀やまがらの芸当、剣の刃渡り、き人形、名所ののぞ機関からくり、電気手品、盲人相撲めくらずもう、評判の大蛇だいじゃ天狗てんぐ骸骨がいこつ、手なし娘
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふくろの口から順々に這い出して火の気のない部屋の中を、寒そうにおずおず歩いたり、くつの先から膝の上へ、あぶない軽業かるわざをして這い上りながら、南豆玉なんきんだまのような黒い眼で、じっと
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
寺院がそう立揃わないうちは、真中の空地に綱わたりや、野天の軽業かるわざがかかっていた。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
火事の半鐘が鳴り、消防隊は大きな広辻に集り、そこであらゆる種類の軽業かるわざを行う。
茶の後、直ぐ川を渡って針葉樹林の生態せいたいを見に行く。はばけん程の急流に、ならの大木が倒れて自然に橋をなして居る。幹を踏み、こずえを踏み、終に枝を踏む軽業かるわざ、幸に関翁も妻も事なく渡った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
だから一向反対宣伝もらなければこの軽業かるわざテントの中に入って異教席というこの光栄ある場所に私が数時間窮屈きゅうくつをする必要もない。然しながら実は私は六月からこちらへ避暑ひしょに来てりました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二丁目のくま相撲すもう、竹川町の犬の踊り、四丁目の角の貝細工、その他、砂書き、阿呆陀羅あほだら活惚かっぽれ軽業かるわざなぞのいろいろな興行で東京見物の客を引きつけているところは、浅草六区のにぎわいに近い。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はぎ袖垣そでがきから老梅ろうばいの枝へと、軽業かるわざでも見せるようにげてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軽業かるわざの子らひるがへる柱より光る春かもや山はとよもす
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聞えよがしに大きく叫んで、ひょいと欄干を飛越すと、いきなり、もんどりうって、船の小縁こべりにぶら下った。命の瀬戸際せとぎわ軽業かるわざだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少年しょうねんは、綱渡つなわたりをしたり、さおのうえ逆立さかだちをしたり、いろいろの軽業かるわざをするようになるまでは、どれほど、つらいめをみたかしれません。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「……マアマア。そんげなトコロじゃ。どうじゃい小僧。ワシは軽業かるわざの親分じゃが、ワシの相手になって軽業がやれるケエ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
では犯人の人数が多くて、軽業かるわざでもやるように肩車をして、総一郎を吊りあげたろうかと考えるのに、これもちと可笑おかしい。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小芝居、手品、見世物、軽業かるわざ、——興行物の掛け小屋からは、陽気な鳴り物の音が聞こえ、喝采かっさいをする見物人の、拍手の音なども聞こえて来た。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「後ろから見ると、あの通り美しい女に見えるが、前に廻って見れば言語道断ごんごどうだんのものだ。さあ与八、ここに軽業かるわざがある」
カーテンの頂辺てっぺんへ登つて行つて綱渡りのやうな軽業かるわざをした仔猫の動作が、つい昨日のことのやうに眼に残つてゐる庄造は、腰のあたりがゲツソリと痩せて
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その中にも、軽業かるわざの玉水一座の絵看板がお静の注意をひきました。花形の太夫たゆう小艶こえんという二十四五の女で、かつては水茶屋のお静と張り合った両国第一の人気者。
小さいながら定小屋もあって、軽業かるわざ、奇芸の見世物まで、夜も人足ひとあしを吸い寄せているのであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
かぶ玉菜たまなと百姓を満載したFORD——フォウドは何国どこでも蕪と玉菜と百姓のほか満載しない——や、軽業かるわざ用みたいにばかにせいの高い自転車や、犬や坊さんや兵士や、やがて
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
演芸は少年二名の目まぐるしい器械体操式軽業かるわざに始まり、妙齢美人馬上の妙技、小形の馬車へ犬を乗せて大猿の馭者、一本足の大男が美人の肩に乗って危ない逆立ちなど大愛嬌。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
浅草へ行く積りであったがせっかく根岸で味おうた清閑の情を軽業かるわざの太鼓御賽銭おさいせんの音にけがすが厭になったから山下まで来ると急いで鉄道馬車に飛乗って京橋まで窮屈な目にあって
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けれども今日こんにちの文楽は僕の昔見た人形芝居よりも軽業かるわざじみたけれんを使つてゐない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
軽業かるわざ、女相撲ずもう江州音頭ごうしゅうおんど海女あま手踊ておどり、にわかといったたぐいのものがすこぶる多かった、その中でも江州音頭とか海女の手踊、女軽業などというものになると、これは踊りや芸その物よりも
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
まとがなくって弓の修業が出来ますか。軽業かるわざ手品てじなだって学ばねばならんのです。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぞっとするような見事な軽業かるわざをして見せることもあるのよ、どうですか諸君、素晴らしいって、こんな素晴らしいペンギン鳥が他にもう一羽いるというなら、本当にお目にかかりたいくらいだわ。
軽業かるわざだとか因果者師いんがものしだとかのかけ小屋が幾つも建てられ、色々なたべ物や玩具の露店が軒を並べ、ドンチャンドンチャンと大変な騒ぎです。
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしがります。」と、少年しょうねんはいいました。軽業かるわざをしていた、きたえられたからだは、やすやすとがけのぼって、かくしてあった、宝物たからものつつみをってきました。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女の軽業かるわざ足芸あしげいたぐいは多くは前の通りで、新たに加わったお君が「道成寺」を出すということが人気でありました。
さいしょは軽業かるわざの南左衛門という親方のところで、玉乗りやブランコの稽古けいこをさせられておりました。
このお初というのは、以前は、両国の小屋で、軽業かるわざの太夫として、かなり売った女だった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「な、な、なるほど、なるほど、さよか。特殊も特殊、まるで軽業かるわざのような推理だすな」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)