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蹲
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しやが
ふりがな文庫
“
蹲
(
しやが
)” の例文
軍治は路傍に
蹲
(
しやが
)
みこんで、歩いて来た道、眼の届かぬ行手に頭を廻し、母よ、母よ、と意味もなく、声もない呼声に胸をかきむしられた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
と
障子
(
しやうじ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
蹲
(
しやが
)
んで
居
(
ゐ
)
た
山男
(
やまをとこ
)
に
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
させる、と
此
(
これ
)
が、
今
(
いま
)
しがたつひ
其処
(
そこ
)
まで
私
(
わたし
)
を
送
(
おく
)
つてくれた
若
(
わか
)
いもの、……
此方
(
こつち
)
は
其処
(
そこ
)
どころぢや
無
(
な
)
い。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
座蒲團の上に
蹲
(
しやが
)
んで、火鉢に二本揃へて立ててある火箸を取つて、二たところへ立てて、それに手を載せて
煬
(
あぶ
)
るのである。
半日
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
立つたり
蹲
(
しやが
)
んだりしてる間に、何がなしに腹が脹つて來て、一二度輕く嘔吐を催すやうな氣分にもなつた。早く歸つて寢よう、と幾度か思つた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
直き側でサルタノフが拳銃を打つたのを、チエルケス人は
蹲
(
しやが
)
んで、弾に頭の上を通り越させました。その途端にサルタノフもチエルケス人も倒れました。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
▼ もっと見る
まごまごするな邪魔になる坐つて見て居れと云ひますから私はヘイと云つて龍馬の側へ
蹲
(
しやが
)
んで見て居りました。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
どれも同じことをしてゐて、白地の洋服が揉んだ紙にしか見えない、あん子は或る處をえらんで
蹲
(
しやが
)
んで砂を握つてゐたが、握つても乾いた砂は指の間から零れた。
神のない子
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
鶴子を負ふ可く、
蹲
(
しやが
)
むで後にまはす手先に、ものが冷やりとする。最早露が下りて居るのだ。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
父親はやや離れた裏の田圃の方で
蹲
(
しやが
)
んでゐた。母親は背戸の小流れで何か洗濯物をごしごしとやつてゐた。その家の縁側にはまだ汚れきつた襦袢一つで、兄と弟とが遊んでゐた。
神童の死
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
僕はその男の連れて行く所へ付いて行つて、
蹲
(
しやが
)
んだ。その男がこんな風に話し出した。
うづしほ
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
渚に
蹲
(
しやが
)
んで洗ひ物をして居る女もあつた。
向
(
むか
)
ひの岸へ渡つて並木
路
(
みち
)
づたひに上流へ歩み
乍
(
なが
)
ら市街の方を眺めた時、
薄黒
(
うすぐら
)
くなつた古塔の険しい二つの
尖
(
さき
)
に桃色の温かい夕日が
当
(
あた
)
つて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
城址
(
しろあと
)
にのぼり来りて
蹲
(
しやが
)
むとき石垣にてる月のかげの
明
(
あか
)
るさ
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
二人
蹲
(
しやが
)
んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ
夏の夜の博覧会は、かなしからずや
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
ところで彼氏
蹲
(
しやが
)
みます、寒がつて、足の指をば
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
家
(
うち
)
へ入ると、通し庭の
壁側
(
かべぎは
)
に据ゑた小形の
竈
(
へつつひ
)
の前に小さく
蹲
(
しやが
)
んで、
干菜
(
ほしな
)
でも煮るらしく、鍋の下を焚いてゐた母親が
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
安中と宇都宮とは、八の出した貨幣を見に出て来て、八に対しては何の警戒もせずに
蹲
(
しやが
)
んだ。八は勿論警戒を要するやうな態度をしてはゐないのである。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ブランの爺いさんは岩の上に
蹲
(
しやが
)
んで、向岸ばかり見詰めて、何時間立つても動きません。みんなが木の実を取りに行つても、爺いさんだけは立ちもしません。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
ト
向直
(
むきなほ
)
つて、
元二
(
げんじ
)
の
顏
(
かほ
)
をじろりと
見
(
み
)
るやうにして
招
(
まね
)
き、と
云
(
い
)
ふ
形
(
かたち
)
で
蹲
(
しやが
)
んだが、
何故
(
なぜ
)
か
無法
(
むはふ
)
に
憎
(
にく
)
かつた。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
物好きな男は立つたり
蹲
(
しやが
)
んだりして、この日ぐれの却々に暮れきらない空をにらみつけた。
末野女
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
紫の
蹲
(
しやが
)
んだ影して公園で、乳児は口に砂を入れる。
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
子供は
蹲
(
しやが
)
んで悲しみで一杯になつて、放つのだ
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
家へ入ると、通し庭の壁際に据ゑた小形の竈の前に小く
蹲
(
しやが
)
んで、干菜でも煮るらしく、鍋の下を焚いてゐた母親が、『
歸
(
けえ
)
つたか。お
腹
(
なか
)
が
減
(
へ
)
つたべアな?』
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
騒
(
さわ
)
ぐまい、
時々
(
とき/″\
)
ある……
深山幽谷
(
しんざんいうこく
)
の
変
(
へん
)
じや。
少
(
わか
)
い
人
(
ひと
)
、
誰
(
たれ
)
の
顔
(
かほ
)
も
何
(
ど
)
の
姿
(
すがた
)
も、
何
(
ど
)
う
変
(
かは
)
るか
知
(
し
)
んねえだ!
驚
(
おどろ
)
くと
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ふぞ、
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
いで
踞
(
せぐゝま
)
れ、
蹲
(
しやが
)
め、
突伏
(
つゝふ
)
せ、
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
げい。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はとある叢林の中に、
蹲
(
しやが
)
んで酒を酌んでゐた
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
僕は
蹲
(
しやが
)
んで 石を拾ふ
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
智惠子は猶去り難げに
恁
(
か
)
う言つた。そして、皆にも挨拶して一人宿の方へ歸つてゆく。月を浴びた其後姿を、吉野は少し群から離れた所に
蹲
(
しやが
)
んで、遠く見送つてゐた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
其
(
そ
)
の
息
(
いき
)
の
臭
(
くさ
)
い
事
(
こと
)
……
剰
(
あまつさ
)
へ、
立
(
た
)
つでもなく
坐
(
すは
)
るでもなく、
中腰
(
ちゆうごし
)
に
蹲
(
しやが
)
んだ
山男
(
やまをとこ
)
の
膝
(
ひざ
)
が
折
(
を
)
れかゝつた
朽木
(
くちぎ
)
同然
(
どうぜん
)
、
節
(
ふし
)
くれ
立
(
だ
)
つてギクリと
曲
(
まが
)
り、
腕組
(
うでぐみ
)
をした
肱
(
ひぢ
)
ばかりが
胸
(
むね
)
に
附着
(
くつつ
)
き
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
僕は
蹲
(
しやが
)
んでしまふ。
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
と同時に、腹の中が
空虚
(
からつぽ
)
になつた様でフラ/\とする。で、男の手を放して人々の
後
(
うしろ
)
に
蹲
(
しやが
)
んだ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
驚
(
おどろ
)
いて、じつと
見
(
み
)
れば、お
柳
(
りう
)
が
投
(
な
)
げた
卷煙草
(
まきたばこ
)
の
其
(
それ
)
ではなく、
靄
(
もや
)
か、
霧
(
きり
)
か、
朦朧
(
もうろう
)
とした、
灰色
(
はひいろ
)
の
溜池
(
ためいけ
)
に、
色
(
いろ
)
も
稍
(
やゝ
)
濃
(
こ
)
く、
筏
(
いかだ
)
が
見
(
み
)
えて、
天窓
(
あたま
)
の
圓
(
まる
)
い
小
(
ちひさ
)
な
形
(
かたち
)
が
一個
(
ひとつ
)
乘
(
の
)
つて
蹲
(
しやが
)
むで
居
(
ゐ
)
たが
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蛍のやうに
蹲
(
しやが
)
んでる
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
インバネスを着て、薄鼠色の中折を左の手に持つて、
螽
(
いなご
)
の如く
蹲
(
しやが
)
んで居る男と、大分埃を吸つた古洋服の鈕を皆
脱
(
はづ
)
して、蟇の如く
胡坐
(
あぐら
)
をかいた男とは、少し間を隔てて、共に海に向つて居る。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
インバネスを着て、薄鼠色の中折を左の手に持ツて、
螽
(
ばつた
)
の如く
蹲
(
しやが
)
んで居る男と、大分埃を吸ツた古洋服の釦は皆
脱
(
はづ
)
して、
蟇
(
ひき
)
の如く
胡坐
(
あぐら
)
をかいた男とは、少し間を隔てて、共に海に向ツて居る。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
驛員が二三人、驛夫室の入口に
倚
(
よ
)
つ
懸
(
かゝ
)
つたり、
蹲
(
しやが
)
んだりして、時々此方を見ながら、何か小聲に語り合つては、無遠慮に
哄
(
どつ
)
と笑ふ。靜子はそれを避ける樣に、ズッと端の方の腰掛に腰を掛けた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
松子は少し離れて
納戸色
(
おなんどいろ
)
の傘を杖に
蹲
(
しやが
)
んだ。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
“蹲(つくばい)”の解説
つくばい(蹲踞、蹲)とは、日本庭園の添景物の一つで露地(茶庭)に設置される。茶室に入る前に、手を清めるために置かれた背の低い手水鉢に役石をおいて趣を加えたもの。
(出典:Wikipedia)
蹲
漢検1級
部首:⾜
19画
“蹲”を含む語句
蹲踞
蹲居
蹲跼
蹲螭
落蹲
犬蹲
掻蹲
蹲石
蹲裾
蹲跪
蹲踞込
蹲躅
蹲込