しゅ)” の例文
陰惨忍刻にんこくの趣は、元来、このおんなにつきものの影であったを、身ほどのものが気付かなんだ。なあ、布気田ふげた。よしよし、いや、村のしゅ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの爺さんしようがないんですよ。それに小汚こぎたなくてしようがありませんや。」肴屋のわかしゅは後で台所口へ来て、そのことを話した。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時この長蔵さんは、誰を見ても手頃な若いしゅとさえ鑑定すれば、働く気はないかねと持ち掛ける男だと云う事を判然はんぜんさとった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乳母 はい、御機嫌ごきげんよう。……もし/\、あのひとは、ま、なんといふ無作法ぶさはふわかしゅでござるぞ? あくたいもくたいばかりうて。
翌日になりようや七所借なゝとこがりをして百両まとめて、日の暮々くれ/″\に大伴蟠龍軒の中の口から案内もなしで通りましたが、前と違い門弟しゅ待遇あしらいが違う。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あの飴屋は芝居茶屋の若いしゅでね」と、老人は話した。「飴細工が器用に出来るので、芝居の休みのあいだは飴屋になって稼いでいるんです」
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「芝になりたや箱根の芝に、諸国諸大名の敷き芝に、ノンノコセイセイ」「コチャエ、コチャエは今はやる、わかしゅが、提灯ちょうちん雪駄せったでうとてゆく」
私の母 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
と西引佐の小若こわかしゅが目の色を変えてついて来た。此方からも小若い衆が迎いに出た。罷り間違えば血の雨が降る。引率の先生達は随分心配したようだった。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これはホントにタマゲタ話じゃ。マッタクすごいよ成る程そうかと。お立会いしゅ合点がてんの行くまで。ザット御機嫌伺いまする。又と聞かれぬ地獄のチョンガレ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しの原様の女中しゅとおめえさまばかりだ。身ぎれいにしているは。だが篠原さんのは洋服だからおかしい。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
左団次の、新富町の家の稲荷いなり祭りなんていうと、おしょさんは夢中だ。それでもきまりが悪いので、むこうにゆくと子供しゅたちが大よろこびで——なんていっている。
引手茶屋何々の娘だと答えたが、その言葉の中に栄子は芸者を芸者しゅといい、踊子の自分よりも芸者衆の方が一だん女としての地位が上であるような言方をした。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
懐奘を初めて首座しゅそしょうじた夜、道元は衆に向かって言った、——当寺初めて首座を請じて今日秉払ひんぽつを行なわせる。しゅの少なきを憂うるなかれ。身の初心なるを顧みるなかれ。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「あの、もしえ、お若いしゅさん」不意にさむらいが声をかけた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
牛舎へも水が入りましたとわかしゅも訴えて来た。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こき使いながら、よその若いしゅと酒を飲んで
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おーい、みんな——わかしゅ、来ておくれ」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
じじいねずみに 若いしゅねずみ
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
「あのしゅと一緒だったら、お前だって今頃は乞食でもしていたろうよ。それでも生みの親が恋しいと思うなら、いつだって行くがいい」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
若いしゅ、板の間に手をかけて、分別ありそうに、傾いた。白いのを着た姿は、前門の虎に対して、荒神様こうじんさま御前立おまえだてかと頼母たのもしく見えたので。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若「あの井桁伊勢屋の客しゅの事を若旦那に話したら腹を立って、これぎり来ないと云いなますから悲しくってなりまへん」
「女郎屋の若いしゅらしいが、いくら昼間でもここらへ来て将棋をさしているようじゃあ、宿しゅくもこの頃はひまだと見えるね」
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
せつが一ぺん古榎ふるえのきになった事がありやす、ところへ源兵衛村の作蔵さくぞうと云う若いしゅが首をくくりに来やした……」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
警視庁にては新聞図書検閲の役人しゅどうかすると葉書にておのれを呼出し小使に茶を持運ばせて
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
皆のしゅ、聞いて下さい。私達はもう立派に諦めを付けました。二人の者は水の底で、鏡を見付けて、綱を結び付けて帰って来る途中で、何か悪いうおの餌食になったに違いない。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
女「若いしゅさんここでいいよ」とおりて。この車夫にチョットあいさつをし。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
と云いながら其処にありましたヌタの皿をってほうりましたから、皿小鉢は粉々になりましたが、他に若いしゅが居ないから中へ這入る人もない。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「アニ、はい、で、ござりますけんど、お客様で、ござんしねえで、あれさ、もの、呉服町の手代しゅでござりますだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白山はくさんから来たと云って、わかしゅが手紙を持って、迎いに来ましたよ。あっしが取次いだんだから、間違いはありません」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
甚兵衛君の隣りにははつさんという二十四五の若いしゅが坐っているが、この初さんがまた雲照律師うんしょうりっし帰依きえして三七二十一日の間蕎麦湯そばゆだけで通したと云うような青い顔をしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
湯帰りに師匠のところへ行って、一番うなろうという若いしゅも、今では五十銭均一か何かで新宿へ繰込む。かくの如くにして、江戸子えどっこは次第に亡びてゆく。浪花節なにわぶしの寄席が繁昌する。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あくる朝……つまりその二十六日の朝になって、番頭と若いしゅが、その日のうちに深川の製材所から河岸かしに着く筈になっているもみ板の置場を見に行くと、直ぐに屍体を発見して大騒ぎになった。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
友「これはほんの心ばかりだが、どうぞ親方とお内儀に上げて下さい、これは女中しゅ八人へ、これは男しゅへ、たしか出前持とも六人でしたねえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何の真似やら、おなじような、あたまから羽織をひっかぶった若いしゅが、溝を伝うて、二人、三人、胡乱々々うろうろする。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
留守を頼んで行った大家おおやの若いしゅと、そこの子供とが、広い家のなかを、我もの顔にごろごろしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
男は問屋の若いしゅであるらしく、大きい鯛を青籠あおかごに入れて、あたまの上に載せていた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お立ち会いしゅの大勢さまよ。これが私の洋行土産みやげじゃ。現代文化の影身かげみに付添う。この世からなる地獄の話じゃ。鳥がさえずり木の葉が茂り。花に紅葉もみじに極楽浄土の。中にさまよう精神病者じゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ぶらぶら土手の上をあるきながら、約三丁も来たと思ったら、向うに人影ひとかげが見え出した。月にかしてみると影は二つある。温泉へ来て村へ帰る若いしゅかも知れない。それにしてはうたもうたわない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
治「へゝ、なに仕合せでもありますまい、何うもヘヽ誠に不粋な人間で何も心得ませんからなア……貴方さまもお一方で、お子供しゅはございませんか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いやな音ねえ、⦆ッてうつつにそうおいいなさいますと、何と思ったのか、若いしゅが、大きな氷の塊を取って、いきなり、自分の天窓へッつけたんですって。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんだか世間がそうぞうしいから、いっそ今年はお見あわせにしようかと云っていたんですけれど、やっぱり若いしゅたちが納まらないので、いつもの通り押し出すことになったんです。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
若いしゅに声かけながら降りた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「若いしゅさん」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぐに村の若いしゅ大勢おおぜい参りましたけれども、其の甲斐もなくもう間に合いませんで、誠に情ないことでございます
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私でも、それでなきゃ誰か若いしゅでも着けてあげてね、そして伯母さんにおわびをしたらいでしょう。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
客「若いしゅさん、ちょいと若い衆さん、其処をお通りかえ、若い衆さん、ちょっと御尊顔を拝したいね、あなた」
確か三人づれで、若いしゅが見えました。やっぱり酒を御持参で。大分お支度があったと見えて、するめの足をかじりながら、冷酒ひやざけを茶碗であおるようなんじゃありません。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重「はい有難う存じます、どうぞ旦那さまへ宜しく仰しゃって下さいまし、お嬢さま御機嫌宜しゅう、若いしゅさん気を附けて下さい、小僧さん御苦労さま」
「若いしゅ愚痴ぐちより年よりの愚痴じゃ、聞く人もうるさかろ、かっしゃれ、ほほほ。のう、お婆さん。主はさてどこへ何を志して出てござった、山かいの、川かいの。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下の方が何か瘡毒そうどくねがいが利くとか申して女郎しゅや何かゞ宜くお詣りにまいって、泥でこしらえたる団子を上げます。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)