トップ
>
草双紙
>
くさぞうし
ふりがな文庫
“
草双紙
(
くさぞうし
)” の例文
旧字:
草雙紙
『一代女』の挿画は後世の
草双紙
(
くさぞうし
)
のように、物凄さを強調するものではないが、この蓮の葉笠の姿は何となく凄涼の気を帯びている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
戯作
(
げさく
)
、つまり昔の
草双紙
(
くさぞうし
)
——草双紙に何があるものですか、ただその時、その時を面白がらせて、つないで行けばいいだけの
代物
(
しろもの
)
です
山道
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
行燈
(
あんどん
)
の
燈
(
ひ
)
で
草双紙
(
くさぞうし
)
のようなものを読んでいた。それは微熱をおぼえる初夏の
夜
(
よ
)
であった。そこは
母屋
(
おもや
)
と離れた
離屋
(
はなれ
)
の部屋であった。
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「可哀想に、——良い娘でしたが——時折は、淋しかろうって、菓子を持って来てくれたり、
草双紙
(
くさぞうし
)
を持って来て貸してくれたり」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
おそらく、都会に育ったお蝶がその怪物に触れたのも初めてで、それを乗り物と感じたのは
草双紙
(
くさぞうし
)
の知識であったかも知れません。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「なにあれでも、実は
慷慨家
(
こうがいか
)
かも知れない。そらよく
草双紙
(
くさぞうし
)
にあるじゃないか。何とかの何々、実は海賊の張本
毛剃九右衛門
(
けぞりくえもん
)
て」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奥には
媚
(
なまめ
)
いた女の声などが聞えていた。
草双紙
(
くさぞうし
)
の絵にでもありそうな花園に灯影が青白く映って、夜風がしめやかに動いていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
世話と時代を一つにして永らくお聞きに入れましたお
馴染
(
なじみ
)
のお話でございますが、ちと昔の模様でございまして、
草双紙
(
くさぞうし
)
じみた
処
(
ところ
)
もございます。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それゆえ婆様も、私の姉様なぞよりずっと私のほうを可愛がって下さいまして、毎晩のように
草双紙
(
くさぞうし
)
を読んで聞かせて下さったのでございます。
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
十三歳に府立二中に入学したが、学科はそっちのけで、『太平記』や、『平家物語』をはじめ、江戸時代の
草双紙
(
くさぞうし
)
の中では
馬琴
(
ばきん
)
に私淑したとある。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
老眼鏡の力をたよりにそもそも自分がまだ
柳
(
やなぎ
)
の
風成
(
かぜなり
)
なぞと名乗って狂歌
川柳
(
せんりゅう
)
を
口咏
(
くちずさ
)
んでいた頃の
草双紙
(
くさぞうし
)
から最近の随筆『
用捨箱
(
ようしゃばこ
)
』なぞに至るまで
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それとも
狐狸
(
こり
)
の類のいたずらであろうか。だが、現代にそんな
草双紙
(
くさぞうし
)
めいた現象があり得ようとも思われなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
旧暦の六月末はもう土用のうちですから、どこのお稽古もお
午
(
ひる
)
ぎりで、わたくしもお隣りの家から借りて来た
草双紙
(
くさぞうし
)
などを読んで半日を暮らしてしまいました。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夫人はその時のことを追想して、
草双紙
(
くさぞうし
)
で読んだ
昔
(
むかし
)
物語を、そっくり現実に経験した様だったと言ってる。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
一体に小説という言葉は、すでに新しい言葉なので、はじめは
読本
(
よみほん
)
とか
草双紙
(
くさぞうし
)
とか呼ばれていたものである。が、それが改ったのは
戊辰
(
ぼしん
)
の革命以後のことである。
明治十年前後
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
私は拝借の分をお返ししながら、
草双紙
(
くさぞうし
)
の、あれは、
白縫
(
しらぬい
)
でありましたか、
釈迦八相
(
しゃかはっそう
)
でありましたか。……続きをお借り申そうと、行きかかった処でありました。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
草双紙
(
くさぞうし
)
も好んだが、これは私のうちには無かった。隣の
間室
(
まむろ
)
という家に草双紙を綴じ合わせたのがあったのを、四つ五つの頃からよく遊びに行って見ることにしていた。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
僕の
家
(
うち
)
の本箱には
草双紙
(
くさぞうし
)
がいっぱいつまっていた。僕はもの心のついたころからこれらの草双紙を愛していた。ことに「
西遊記
(
さいゆうき
)
」を翻案した「
金毘羅利生記
(
こんぴらりしょうき
)
」を愛していた。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
家に古くからあった
草双紙
(
くさぞうし
)
のどこを開けても絵があって、その絵の廻りに本文がびっしり仮名で埋めてあるのを、今頃の子供たちが新聞でも見るように読みつけていましたから。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
貸本屋の持って来る
草双紙
(
くさぞうし
)
を読みながら畳の上に寝ころんでいるという底の抜け方とか。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と、いうのを聴いて、浪路は、床の上で、膝にひろげていた
草双紙
(
くさぞうし
)
を投げ捨てるように
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
いくら女子供相手の
草双紙
(
くさぞうし
)
でも、あの荒唐無稽ぶりは私は許せないと思います。
仇討たれ戯作
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
草双紙
(
くさぞうし
)
とか、軍談とかいうような物には、大ぶん聞きかじりで通じていた。
私の母
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
百人一首はもとより、
草双紙
(
くさぞうし
)
その他、民間の
読本
(
よみほん
)
には全く字を用いずして平仮名のみのものもあり。また、
在町
(
ざいまち
)
の表通りを見ても、店の看板、
提灯
(
ちょうちん
)
、
行灯
(
あんどん
)
等の
印
(
しるし
)
にも、絶えて片仮名を用いず。
小学教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
余はとうとう夜の明けるまで一睡もせずに、怪し気な
蚊帳
(
かや
)
のうちに
辛防
(
しんぼう
)
しながら、まるで
草双紙
(
くさぞうし
)
にでもありそうな事だと考えた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
浄瑠璃と
草双紙
(
くさぞうし
)
とに最初の文学的熱情を誘い出されたわれわれには、曲輪外のさびしい町と
田圃
(
たんぼ
)
の景色とが、いかに豊富なる魅力を示したであろう。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
『——ね、いっその事、二階へあがって、お話しなさいな。右衛門七は、きょうはすこし、
風邪気
(
かぜけ
)
だと云って、
草双紙
(
くさぞうし
)
なんか読んで退屈しているんですから』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのまた海辺には人間よりも化け物に近い女が一人、腰巻き一つになったなり、身投げをするために合掌していた。それは「
妙々車
(
みょうみょうぐるま
)
」という
草双紙
(
くさぞうし
)
の中の
插画
(
さしえ
)
だったらしい。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたしも自分の家から古い
草双紙
(
くさぞうし
)
などを持って行って貸してやるので、金さんの方でも
他
(
よそ
)
から借りた本を貸してくれる。わたしはそのお蔭で、むかしの草双紙などを
大分
(
だいぶ
)
読みおぼえた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほんの
黄昏
(
たそがれ
)
の薄明りをたよりにして、
草双紙
(
くさぞうし
)
を読んだがためだという事ではあるが、そうした世帯の、
細心
(
ほそしん
)
の
洋燈
(
ランプ
)
の赤いひかりは、視力をいためたであろうし、その上に彼女は肩の凝る性分で
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
此の一席で
満尾
(
まんび
)
になります
故
(
ゆえ
)
、くだ/\しい所は省きまして、善人が栄え、悪人が
亡
(
ほろ
)
び、
可愛
(
かわ
)
いゝ同志が夫婦になり、失いました宝が出るという
勧善懲悪
(
かんぜんちょうあく
)
の
脚色
(
しくみ
)
は芝居でも
草双紙
(
くさぞうし
)
でも同じ事で
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お高はその中に手をやって二三冊の
草双紙
(
くさぞうし
)
のようなものを
執
(
と
)
った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「小説と申しますると、
草双紙
(
くさぞうし
)
の
類
(
たぐい
)
でございますか」
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それらには
蔵
(
くら
)
の二階の長持の中にある
草双紙
(
くさぞうし
)
の
画解
(
えとき
)
が、子供の想像に都合の好いような説明をいくらでも与えてくれた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
種員は
草双紙
(
くさぞうし
)
類
御法度
(
ごはっと
)
のこの頃いよいよ小遣銭にも窮してしまったため国貞門下の
或
(
ある
)
絵師と相談して
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ところがこの通りな
荒屋敷
(
あれやしき
)
、いつ来てみても釘付けなので、
業腹
(
ごうはら
)
だから今日は向うをコジ開けて、この部屋へ上がり込んで周馬の戻りを待っていたところが、たいそう
草双紙
(
くさぞうし
)
が積んであるから
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これぞ当時流行の
草双紙
(
くさぞうし
)
『田舎源氏』の作者として誰知らぬものなき
柳亭種彦翁
(
りゅうていたねひこおう
)
であった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「なるほど踊りでもおどりそうな顔だ。奥さんこの猫は油断のならない
相好
(
そうごう
)
ですぜ。
昔
(
むか
)
しの
草双紙
(
くさぞうし
)
にある
猫又
(
ねこまた
)
に似ていますよ」と勝手な事を言いながら、しきりに
細君
(
さいくん
)
に話しかける。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
家の娘は今高等女学校に通わしてあるがそれを見ても分る話で今日の若い女には活字の
外
(
ほか
)
は何も読めない。草書も変体仮名も読めない。新聞の小説はよめるが仮名の
草双紙
(
くさぞうし
)
は読めない。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
草双紙
(
くさぞうし
)
にある
猫又
(
ねこまた
)
の血脈を受けておりはせぬかと
自
(
みずか
)
ら疑うくらいである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
近頃はやる手文庫の
中張
(
うちば
)
りとか、又
草双紙
(
くさぞうし
)
の
帙
(
ちつ
)
などに用いたら案外いいかも知れないと思ったので、其場の出来心からわたくしは古雑誌の勘定をするついでに胴抜の長襦袢一枚を買取り
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こは
過
(
すぐ
)
る日八重わが書斎に
来
(
きた
)
りける折書棚の
草双紙
(
くさぞうし
)
絵本
(
えほん
)
の
類
(
たぐい
)
取卸
(
とりおろ
)
して見せける
中
(
なか
)
に
豊国
(
とよくに
)
が絵本『
時勢粧
(
いまようすがた
)
』に「それ
者
(
しゃ
)
」とことわり書したる女の前髪切りて
黄楊
(
つげ
)
の
横櫛
(
よこぐし
)
さしたる姿の
仇
(
あだ
)
なる
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
品川楼盛糸がことは当時『
有喜世
(
うきよ
)
新聞』に『
心中比翼塚
(
しんじゅうひよくづか
)
』とか題して浄瑠璃風に文飾して書きつづりしものあり。また春亭史彦といふ人のつづりし『
北廓花盛紫
(
さとのはなさかるむらさき
)
』と題せし
草双紙
(
くさぞうし
)
もあり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
春扇も歌川風の
草双紙
(
くさぞうし
)
を描きし
後
(
のち
)
遂に
板下画
(
はんしたえ
)
より陶器の
焼付画
(
やきつけえ
)
に転じぬ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その
傍
(
そば
)
の
煤
(
すす
)
けた柱に
貼
(
は
)
った
荒神様
(
こうじんさま
)
のお
札
(
ふだ
)
なぞ、一体に汚らしく乱雑に見える周囲の
道具立
(
どうぐだて
)
と
相俟
(
あいま
)
って、
草双紙
(
くさぞうし
)
に見るような何という
果敢
(
はかな
)
い
佗住居
(
わびずまい
)
の情調、また
哥沢
(
うたざわ
)
の節廻しに唄い古されたような
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“草双紙”の解説
草双紙(くさぞうし)は、江戸時代中頃から江戸で出版された絵入り娯楽本、赤本・黒本・青本・黄表紙・合巻の総称である。絵草紙(えぞうし)・絵双紙(えぞうし)・絵本(えほん)とも呼んだ。江戸の大衆本・江戸地本の中心を占めた。
(出典:Wikipedia)
草
常用漢字
小1
部首:⾋
9画
双
常用漢字
中学
部首:⼜
4画
紙
常用漢字
小2
部首:⽷
10画
“草”で始まる語句
草鞋
草
草履
草臥
草叢
草原
草木
草鞋穿
草花
草葺