もゝ)” の例文
この時彼我等のかたに對ひてその心をとめ、目をたゞもゝのあたりに動かし、いひけるは。いざ登りゆけ、汝は雄々をゝし。 一一二—一一四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
平次はそれを受取つて、鼻の先へ下げて見ると、内側がもゝから腰へかけて、むしり取つたやうに裂かれてゐるではありませんか。
かういつて、婆さんは俺の背中に、その人間離れをした白い皮膚のもゝを触れたりして、平気で湯を汲んだのであつた。
裸婦 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
あついから股引もゝひき穿かず、跣足はだし木屑きくづなかについたひざもゝむねのあたりはいろしろい。大柄おほがらだけれどもふとつてはらぬ、ならばはかまでも穿かしてたい。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若「いえ痛めやア致しませんが、只一体に痛くなりました、一体に草臥くたびれたので、もゝがすくんでちっとも歩けません」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
青木主膳はやりで突かれたもゝ繃帯ほうたいをしていたが、二度目に腕へ負傷してからも痛手いたでに屈せず働いていた。そして極くたまに法師丸の顔を見ることがあると
つツと立寄ツて白い布をる……天井の天窓あかりまどから直射する日光は、あきらかに少女の屍體を照らす……ただ見る眞ツ白な肌だ! ふツくりとした乳、むツつりした肩やもゝ
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
緩端えんばた平伏へいふくしたる齋藤茂頼、齡七十に近けれども、猶ほ矍鑠くわくしやくとしてすこやかなる老武者おいむしや、右の鬢先より頬をかすめたる向疵むかふきずに、栗毛くりげ琵琶びはもゝ叩いて物語りし昔の武功忍ばれ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
葬禮さうれいの納め物となすならば寺へこそをさめるはずなれ何ぞ燒場やきばへ納めると云はふあらんやサア尋常じんじやうに白状致せ不屆者めそれせめよと言葉の下より手先てさきの者共しもとあげて左右より彌十のもゝ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見れば種牛はもゝから胴へかけて四つの肉塊かたまり切断たちきられるところ。右の前足の股の肉は、既に天井から垂下たれさがる細引に釣るされて、海綿を持つた一人の屠手が頻と其血を拭ふのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
で薄いシヤツ一枚になつた私は、四肢にウンと力をいれて、ピシヤツと平手で景気好くもゝを叩きました。少し運動をしてやれ、と私は思つたのです。股の打たれた箇所には、手の痕が赤く残りました。
晩春の健康 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何処どこところつて、ねえ貴方あなた」と三千代みちよおつとを見た。平岡はもゝうへひぢせて、ひぢの上へあごせてだまつてゐたが、何にも云はずにさかづきを代助の前にした。代助も黙つて受けた。三千代は又酌をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼を下敷にするといふと、彼はもゝに噛み付いた
もゝが浮く、あしのうら
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「御浪人は跛者びつこのやうだが、あれも本當の跛者か。いつか首からもゝを釣つて僞跛を引いて居るのをつかまへたことがあるが」
かういつて、婆さんは俺の背中に、その人間離れをした白い皮膚のもゝを触れたりして、平気で湯を汲んだのであつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
後足あとあしもゝに張り、尾をそのあひより後方うしろにおくり、ひきあげて腰のあたりに延べぬ 五五—五七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
寝足ねあしになって居りますから歩くともゝがすくんでまいり、歩行がかないませんから、そこらの車へ乗ってうちへ行ったら楽だろうと思って、車へ乗ると腰が痛くなって堪らないから
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けると、ぶるりとした、貧乏動びんばふゆるぎと胴搖どうゆすりで、ふてくされにぐら/\と拗身すねみふるふ……はつとおもふと、ひだりあしもゝのつけもとから、ぽきりとれて、ポンと尻持しりもちいたてい
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「どうも、さうらしくないよ。お園の死骸のもゝのところに、血染の手形が着いてゐたが、あれは隨分大きかつたやうだな」
はぎは脛ともゝは股と固く着き、そのあはせめ、みるまにみゆべき跡をとゞめず 一〇六—一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
紅葉先生こうえふせんせいせつによると、「金魚麩きんぎよぶばゞもゝにくだ。」さうである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「すると、このひざの上——もゝの中程、二寸くらゐの幅で、血にまみれないところのあるのはどういふわけだ」
四のきれより二の腕成り、もゝはぎはらむねはみな人の未だみたりしことなき身となれり 七三—七五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「またばゞもゝだぜ。」
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もゝすそは、母親の手で僅かに隱されましたが、床を敷いて掻卷かいまきを引つ掛けて休んでゐるところをやられたらしく、斑々はん/\たる上半身を起して見ると、首から顏へかけて、突き傷が三四ヶ所