トップ
>
縷々
>
るる
ふりがな文庫
“
縷々
(
るる
)” の例文
この人を思う心も
縷々
(
るる
)
と言われるのに中の君は困っていて、恋の心をやめさせる
禊
(
みそぎ
)
をさせたい気にもなったか、
人型
(
ひとがた
)
の話をしだして
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
だが、これには、
縷々
(
るる
)
と、べつに——自分たちが仕える待賢門院のわびしい起居のさまや、このごろのお歌などが、しるしてあった。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女心が
縷々
(
るる
)
として感じてうたう自然発生の魅力ばかりを鑑賞されることにたよっていないで、女が考える、という合理的な事実を承認して
『静かなる愛』と『諸国の天女』:竹内てるよ氏と永瀬清子氏の詩集
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と言うて、
縷々
(
るる
)
自己の所信を述べ、故にかかる契約を無視すれば、正義を如何にせん、天下後世の識者の
嗤笑
(
ししょう
)
を如何にせん。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
丘の頂の林のなかの草屋根は滑らかなものになつて、そのなかから濃い白い煙が、
縷々
(
るる
)
と、ちやうど香炉の煙のやうに、一すぢに立ち昇つた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
▼ もっと見る
道場の方で
藁
(
わら
)
を打つ音。それと共に
縷々
(
るる
)
として糸を引くような、文句は聞き取れないながら断続した音律。お松は針先を髪の毛でしめしながら
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
大欠伸
(
おおあくび
)
と一緒に身を起した藤吉、
仮寝
(
うたたね
)
していたにしては、眼の光が強過ぎた。
胡坐
(
あぐら
)
を揺るがせながら、
縷々
(
るる
)
として始める。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
三
(
み
)
月めの終わりに、悟浄はもはやあきらめて、
暇乞
(
いとまご
)
いに師のもとへ行った。するとそのとき、珍しくも女偊氏は
縷々
(
るる
)
として悟浄に教えを垂れた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして
縷々
(
るる
)
として霊の恋愛、肉の恋愛、恋愛と人生との関係、教育ある新しい女の
当
(
まさ
)
に守るべきことなどに就いて、切実にかつ
真摯
(
しんし
)
に教訓した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
やがて
斎戒沐浴
(
さいかいもくよく
)
して
新
(
あらた
)
に化粧を
凝
(
こ
)
らした黛夫人が、香煙
縷々
(
るる
)
たる
裡
(
うち
)
に、白衣を纏うて寝台の上に横たわったのを、呉青秀が乗りかかって絞め殺す。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この句の線香は坐禅観法の人の座辺に立てたものかも知れぬが、
縷々
(
るる
)
たる香煙はなお多少蚊を
卻
(
しりぞ
)
ける力を持っている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
宮川の二階へ上って、裏窓の
障子
(
しょうじ
)
を開けると雪のつもった鄰の植木屋の庭が見える一室に坐るが否や、わたしは
縷々
(
るる
)
として制作の苦心を語りはじめた。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
実は
昨日
(
きのう
)
朝飯
(
あさはん
)
の時、文三が叔母に
対
(
むかっ
)
て、
一昨日
(
おととい
)
教師を番町に訪うて身の振方を依頼して来た趣を
縷々
(
るる
)
咄
(
はな
)
し出したが、叔母は
木然
(
ぼくぜん
)
として情
寡
(
すくな
)
き者の如く
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
縷々
(
るる
)
として
寂寞
(
じゃくまく
)
の境に立ち上る、細い細い
青烟
(
けぶり
)
の消えゆくを見るも傷ましく、幾たびも幾たびも
空想
(
おもい
)
を破る鐘の
響
(
ひびき
)
に我れ知らぬ暗涙をたたえたことであった。
面影:ハーン先生の一周忌に
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
定めて情を籠め思いを述べた優艶の文字が、
蚕
(
かいこ
)
の糸を吐くように
縷々
(
るる
)
繋がっているのかと思いのほか、いっさいの文句が単にその五文字に尽きているのである。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
棚の上には香爐があり、
縷々
(
るる
)
として煙は立っている。襖もあれば畳もある。普通の立派な座敷であった。
鵞湖仙人
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
倒れ懸けたる表の戸、手をもて開くるを要せず、身を
斜
(
ななめ
)
にして
容易
(
たやす
)
く
入
(
い
)
るに、いまだ燈火を点ぜざれば、ただこれ
暗澹
(
あんたん
)
物色を弁ぜず。悪臭
縷々
(
るる
)
来
(
きた
)
りて人を襲えり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「両方とも誠につまらぬ遺書にて、何らお話するほどの事なし」とはいったが、某氏の談によれば
縷々
(
るる
)
事情の複雑な関係があからさまにされていたという事である。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
だからあなたもぜひ信心をして、その病気を
癒
(
なお
)
せ——ということを
縷々
(
るる
)
として述べたてるのであった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
縷々
(
るる
)
数十回、今に至るまでこの物語を続けて来たのも、実は世の富豪に訴えて、いくぶんなりともその自制を請わんと欲せしことが、著者の最初からの目的の一である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
お雛妓らしい観察を
縷々
(
るる
)
述べ始めた。わたくしがかの女に何か
御馳走
(
ごちそう
)
の望みはないかと訊くと
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僕は
北京
(
ペキン
)
に行きたい、世界で一ばん古い都だ、あの都こそ、僕の性格に適しているのだ、なぜといえば、——と、れいの
該博
(
がいはく
)
の知識の十分の七くらいを
縷々
(
るる
)
と私に陳述して
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
恩顧の
隠密
(
おんみつ
)
古橋専介のむくろに並べて、善光寺辰こと辰九郎のなきがらをもいっしょに、お屋敷内の藩士たまりべやに安置しながら、香煙
縷々
(
るる
)
としてたなびく間に、いまし
右門捕物帖:20 千柿の鍔
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この自然の美しい香炉からは、神をたたえる白い煙が、高い蒼空に
縷々
(
るる
)
と昇っていた。そしてその頂上はここよりかなり下にある。ここから見ると可憐な山だ。さて目を転ずる。
山と雪の日記
(新字新仮名)
/
板倉勝宣
(著)
大江山捜査課長は
油汗
(
あぶらあせ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
う
暇
(
いとま
)
もなく、水を浴びたような顔をして、
縷々
(
るる
)
と
陳述
(
ちんじゅつ
)
した。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
細かいことをよく知っていて、そう云う風に例を引き出すと
縷々
(
るる
)
として際限がないのであったが、しかし婆やは、自分でも云う通り、妙子を恨んだり憎んだりしているのではなく
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
こういうふうにまッ先に口をきる自分の心境を、彼は低いこえで
縷々
(
るる
)
と述べはじめた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
新聞社を他へ
譲渡
(
ゆずりわた
)
すの止むを得ない事情を
縷々
(
るる
)
と訴えたかなり長い手紙を印刷もせず代筆でもなく一々自筆で
認
(
したた
)
めて何十通(あるいはそれ以上)も配ったのは大抵じゃなかったろう。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
唯、死に際して、
縷々
(
るる
)
予が呪ふ可き半生の秘密を告白したるは、亦以て卿等の為に
聊
(
いささか
)
自
(
みづか
)
ら
潔
(
いさぎよく
)
せんと欲するが為のみ。卿等にして若し憎む可くんば、即ち憎み、憐む可くんば、即ち憐め。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
電車のなかでも斜酣の話は、
縷々
(
るる
)
として尽きない。
採峰徘菌愚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
縷々
(
るる
)
陳述しているにすぎないと云っていい。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
縷々
(
るる
)
としてつきなかつた。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
そしてまた
燕青
(
えんせい
)
は、わしに代って、
庫
(
くら
)
の
鍵
(
かぎ
)
をあずかり、よく家事一切の留守をかたくして欲しいと、
縷々
(
るる
)
、言い渡しを、言い渡した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その部分では高見順はまるで
縷々
(
るる
)
として耳をつらぬき、心をつらぬかずんば、というような密度のきつい表現をしている。
一九四六年の文壇:新日本文学会における一般報告
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
時雄は芳子と父とを並べて、
縷々
(
るる
)
として文学者の境遇と目的とを語り、女の結婚問題に就いて
予
(
あらかじ
)
め父親の説を
叩
(
たた
)
いた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
秋の夜の静寂は、何やら物語を訴うるがごとくその
縷々
(
るる
)
たる
烏有
(
うゆう
)
のささやきに人はともすれば耳を奪われるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうして、例によってはっきりしない言葉でゆっくりゆっくりまだ細君の話を続けている。かなり際どい話を、実に素朴な表現で、
縷々
(
るる
)
として続ける。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
われら
稚
(
いとけな
)
き頃その名を聞きてさへ恐れて泣き止みしものをと心づけば、追想おのづから
縷々
(
るる
)
として糸を繰るが如し。その頃植物園門外の小径は水田に沿ひたり。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
吶々
(
とつとつ
)
として、しかも沈着に、純真に、
縷々
(
るる
)
この意味の数千言を語ったのが、
轟々
(
ごうごう
)
たる汽車の
中
(
うち
)
に、あたかも雷鳴を
凌
(
しの
)
ぐ、深刻なる独白のごとく私たちの耳に響いた。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
微かな細い道は、奥の方へ
縷々
(
るる
)
としてつづいている。いつこの道を人が歩いたか、余程久しい前から、足跡が絶えたと見える。草が生えて、全く道を消そうとしていた。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
亭主、チョッキのボタンをはめながら、どんな筋だいと、馬鹿にしきったような口調で
訊
(
たず
)
ねる。女房、
俄
(
にわ
)
かに上気し、その筋書を
縷々
(
るる
)
と述べ、自らの説明に感激しむせび泣く。
小説の面白さ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
などということを情こまやかに、
縷々
(
るる
)
とした文体で認めてあり、さらにそれから一変し——
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また、死といえば蟻、
螻蛄
(
けら
)
、
羽虫
(
はむし
)
になっても
縷々
(
るる
)
と転生してしまう暢気極まる死です。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし成瀬はまだ煙草を
啣
(
くは
)
へてゐたから、すぐにそれを下へ捨てると、
慌
(
あわ
)
てて靴で踏み消した。
幸
(
さいはひ
)
、ロオレンス先生は我々の机の間から立昇る、
縷々
(
るる
)
とした一条の煙に気がつかなかつた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
当人達でなければ読んでいるに
耐
(
た
)
えないような文句が
縷々
(
るる
)
として続いていた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
縷々
(
るる
)
と述べている。
チェーホフ試論:――チェーホフ序説の一部として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
周倉は、
哭
(
な
)
かんばかりにいった。真情をもって訴えれば、人をうごかせないこともあるまいと、
縷々
(
るる
)
、心の底から吐いてすがった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心理の追究は可能であるけれども、
縷々
(
るる
)
とかきくどく雅俗折衷文の余情脈々のリズムは、そのままには存在しない。
婦人と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
和泉屋の
額部
(
ひたい
)
に砂がついた。が、女はそれには何とも答えないで
縷々
(
るる
)
としてつぎのようなことをいいだした。
早耳三次捕物聞書:04 海へ帰る女
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
郡長は
卓
(
テーブル
)
の前に立って、卒業生のために
祝辞
(
しゅくじ
)
を述べたが、その中には軍国多事のことが
縷々
(
るる
)
として
説
(
と
)
かれた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
縷
漢検1級
部首:⽷
17画
々
3画
“縷々”で始まる語句
縷々綿々
縷々詳説