)” の例文
DS の昼と悪魔の夜と交々こもごもこの世をべん事、あるべからずとは云い難し。されどわれら悪魔のやからはそのさが悪なれど、善を忘れず。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、駆黴剤くばいざい浸染しみはかくしおおせぬ素姓をいう……、いまこの暗黒街をべる大顔役ボス二人が、折竹になに事を切りだすのだろう。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ほどなく勘定奉行の地位を得、またほどなく財政の鍵を握って、陸海軍の事をぶるの地位に上ったのも、当然の人物経済であります。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
アラスの重罪裁判をべていたドゥーエーの控訴院判事は、かくも広くまた尊敬されてる彼の名を、世間の人と同じくよく知っていた。
「すでに、おのれにやぶれている者が、何で外に勝てるものか。いわんや、世をべて、まとめ上げることなどができるわけはあるまい」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
警察署長が三つの消防組をべて各々の組長が号令をするのだった。号令につれて消防手の竿さおは右向き左向き縦隊横隊を繰り返すのだった。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
御二方がべ給うておられた天平のみ代は、云うまでもなく我が民族の生命力が思いきって開花爛熟らんじゅくしたような時代であった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
前文中には「マルヅック神は民をべ国を救わんがために朕を降せり、依って朕は国中に法を立て正義を行い、もって人民の幸福を増進せり」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
内には政府の分裂し外には諸外国に侮らるる国歩艱難かんなんの時に当たって、万民をべさせらるる帝に同情を寄せ奉るものの多い証拠であろうと。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あなたは日野城のあるじのお子だ、やがては父君に代わって軍をべ、国を治める大任がある。それを忘れてはいけません」
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ただに学堂教務をぶるのみならず学堂出身者の任命の詮衡せんこう及び進退黜陟ちゅっちょく等総てを委任するという重い権限で監督に任じた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
で、カムツァンにはそれぞれカムツァンの財産がありますが、それらを纒め一つにべたものをセラと言って居るのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そして深くその感覚をべてゆくと、どうも魚といふものは千古の美人であつて、古書や古画の中のまぼろしでもなく
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
なんでもないのにさういふ雨垂れ落ちを古くとりべた心が、細かいところはどこまでも微かく行つた茶庭の精神こころを、しぶさ以上のしぶさで感じた。
故郷を辞す (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
が、その裡に、衆僧が一斉に始めた読経の朗々たる声は、皆の心持を死者に対する敬虔な哀悼に引きべてしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
人のかみに立つて多くの部下をべてゐる者は、かうして、ひとの忠言を黙つて聞くだけの心掛が無くてはならぬ。だが、都合のい事には、今時の上役は
秋津洲あきつしま磯城島しきしまやまと、みな大和平原における大きな村の名であった。他の村々の君主も、大体において、おなじような信仰組織を持って、村をべていた。
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そこで松竹梅をそれに配しますと、松が裸子植物の代表、竹が単子葉類の代表、梅が双子葉類の代表という事になって、つまり植物の三界をべる事になります。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
燕のいきおいようやく大なるに及びて、諸将観望するもの多し。すなわ淮南わいなんの民を募り、軍士をがっして四十万と号し、殷に命じて之をべて、淮上わいじょうとどまり、燕師をやくせしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「もののふの大臣おほまへつぎみ」は軍をべる将軍のことで、続紀に、和銅二年に蝦夷えみしを討った将軍は、巨勢麿こせのまろ佐伯石湯さへきのいわゆだから、御製の将軍もこの二人だろうといわれている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ふるき代の富貴ふうき栄耀えようの日ごとにこぼたれ焼かれて参るのを見るにつけ、一掬いっきく哀惜の涙をとどめえぬそのひまには、おのずからこの無慚むざんな乱れをべる底の力が見きわめたい
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
百 人間の身にこそ長い年代であれ、一切の因果をべ給う大御おおみ力に取りては数日の様なものだ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
まことにどういふ言葉を用ゐてこのおほらかに高く、清らかに美しく、天地にたゞ獨り聳えて四方の山河をぶるに似た偉大な山嶽を讚めたゝふることが出來るであらう。
逍遙子が鴎外若しシエクスピイヤの千魂萬魂を一つにべたるものを見出さば、おのれこれを歐羅巴に吹聽して呉れんずといはるゝは、あはれめでたき厚誼かうぎなるものから
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
其名独逸ドイツ建国の歴史をぶる巨人ビスマルクの如きに候ふく、普仏戦争に際して、非常の声誉と、莫大の償金と、アルサス、ローレンスと、烈火の如き仏人の怨恨とをになふて
渋民村より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それはこの学校を何よりも美しく見せ、此町のあらゆる家並やなみをべてゐる中心であつた。そして或意味でそこの校長である父の誇りでもあり、そこへ通ふ生徒の憧憬の的でもあつた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
さあそうなると、このたびは武力を有するものが一番躍出おどりだしてこれを鎮定するということになって、奈破翁ナポレオンがついに一手にこれをぶるということになったのである。仏国にして既にしかりだ。
されどかしこにてこと危險あやふきを顧みざるは船手をぶる人々なるべし
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
世界をべる一つの意志の王国が出現する、ということだけだ。
ある時はヘーゲルが如萬有をわが體系にべんともせし
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
一体この世界を奥の奥でべているのは何か。
ひとつに ぶる ちからはないか
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
口づけさせて、取りべよ。
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
すべてをべ導くものは
乱世だ、乱調子の世だ、これをべるには、多少自分たちにつらくてもよい、厳格峻烈しゅんれつに臨まれてもいい。——その代りに
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に又百般の人事をべる「偶然」の存在も認めるものである。が、あらゆる熱情は理性の存在を忘れ易い。「偶然」は云はば神意である。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おそらく闘争は神代よりあった、上御一人をしてよろずのやからべさせたもうことは神の大御心の測りがたいところではあるまいか、ともある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、そのうちに、衆僧が一斉に始めた読経どきょうの朗々たる声は、皆の心持を死者に対する敬虔けいけん哀悼あいとうに引きべてしまった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
枢機官フェーシュが辞職することを拒んだので、アマジーの大司教ド・パン氏はリオンの管轄区をべていた。
ふるき代の富貴ふうき栄耀えようの日ごとにこぼたれ焼かれて参るのを見るにつけ、一掬いっきく哀惜の涙をとどめえぬそのひまには、おのづからこの無慚むざんな乱れをべる底の力が見きはめたい
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
大王の将士も、亦疲れずといわんや。それ大王のべたもう将士も、大約三十万には過ぎざらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大正十一年七月で先生のべられておられる成蹊高等女学校の生徒に野州の日光山で植物採集を指導することを依嘱せられ、同先生其他同校職員の方々と共に同山に赴いた時
まことに、どういふ言葉を用ゐてこのおほらかに高く、清らかに美しく、天地にたゞ獨り寂しく聳えて四方の山河をぶるに似た偉大な山嶽を讚めたゝふることが出來るであらう。
その海岸の広場にある王宮といっても、簡易な三層の漆喰建しっくいだてであるが、ともあれ、オーマンをべる大元首のいますところ。花火、水晶の燭架キャンドル眼眩まばゆいなかに、今宵の客人がいと静かに参上する。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
国外交通の隆盛、国富の膨脹ぼうちょう、各氏族の強大、あるいは人口増殖等によって国力は充実するとともに、由緒ゆいしょある氏族ならびに諸民の思想と生活をべることは容易ならぬ困難を伴ったであろう。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「関東のしめしをべる管領たるわたくしに、その力がなく、四隣御多事のなかを、遠く御援軍を仰ぎ、恐縮きょうしゅくにたえませぬ」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
検事は求刑するためにそこにいることを忘れ、裁判長は裁判をべるためにそこにいることを忘れ、弁護士は弁護するためにそこにいることを忘れていた。
景隆はかくの如き人の長子にして、其父の蓋世がいせいの武勲と、帝室の親眷しんけんとの関係よりして、斉黄の薦むるところ、建文の任ずるところとなりて、五十万の大軍をぶるには至りしなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
主権簒奪さんだつの武将が兵馬をべ、政事上の力は一切その手にゆだねられていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたしはこれを修正すべき理智の存在を否みはしない。同時に又百般の人事をべる「偶然」の存在も認めるものである。が、あらゆる熱情は理性の存在を忘れ易い。「偶然」は云わば神意である。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)