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稍々
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やや
ふりがな文庫
“
稍々
(
やや
)” の例文
それで思わず霊媒と手を取り合うようなこともあったんだという話をしましたが、私が行った時には、
稍々
(
やや
)
がさつな友人が出て来た。
あの世から便りをする話:――座談会から――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けれども、お鍋の腕力には
敵
(
かな
)
わない。無理無体に引立られ、がやがや喚きながらも
坐舗
(
ざしき
)
を連れ出されて、
稍々
(
やや
)
部屋へ収まッたようす。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
中津はひげ面のひげを青く剃り、
稍々
(
やや
)
ちゞれる癖のある、ほこりをかむった渦まける髪をきれいに
梳
(
くしけず
)
って、油の臭いをプンプンさしていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
事柄が
稍々
(
やや
)
複雑であるか或は用語が抽象的であると随分之に劣らぬ間違ひ話しでも一応は尤もらしく聞えることが往々ある。
芸術としての哲学
(新字旧仮名)
/
丘浅次郎
(著)
シルレルのエンゲルスの言葉に対する理解は
稍々
(
やや
)
皮相的に表現されていると感じられる点は次のような部分にも認められる。
バルザックに対する評価
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
それが政治家めいた笑ひ方であらう、彼は
稍々
(
やや
)
細い身体を反り身になつて豪放に笑ふのだが、途中で
咳
(
せ
)
いて、苦しさうに身体を曲げたりした。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
他の推古仏と同じように、その顔も
稍々
(
やや
)
下ぶくれで、
古樸
(
こぼく
)
端麗、少しばかり陽気で、天蓋の天人にもみらるる一種の童話的
面影
(
おもかげ
)
を宿している。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
「やあ、太郎さんの独楽は溝の中へ
落
(
おっこ
)
ちた。」と
囃
(
はや
)
しましたから太郎は口惜しがって、泥に汚れたのを草の葉で拭きとって
稍々
(
やや
)
力を入れて廻す。
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
むす子は
稍々
(
やや
)
内足で学生靴を
逞
(
たくま
)
しくペーヴメントに
擦
(
こす
)
り
叩
(
たた
)
きながら、とっとと足ののろい母親を置いて行く。ラッパズボンの
後襞
(
うしろひだ
)
が小憎らしい。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
肌寒いほど
稍々
(
やや
)
強く、風は吹いては過ぎた。やがて、闇の中に眼を輝かしながら、生きものゝやうに電車が走つて来た。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
ところが
僅
(
わず
)
か二里ばかりの堤を溯った頃になると、ゼーロンの跛は次第に露骨の度を増して
稍々
(
やや
)
ともすると危く私に私の舌を噛ませようとしたり
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
ただ茲に注意すべきことは、洗骨を境として寡婦の心理状態が一変して、それより
稍々
(
やや
)
放縦に流れる傾きがある云々。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
「私はまだ
耄碌
(
もうろく
)
はしてゐないつもりさ。監督が不行屆だの子供を任されないのなんて誰にも云はしやしませんよ。」と、祖母は
稍々
(
やや
)
興奮して云つた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
久しぶりで文学作品を読むと
流石
(
さすが
)
に面白くはあったが、南洋
呆
(
ぼ
)
けして粗雑になった私の頭には、
稍々
(
やや
)
微妙に過ぎ難解に感じられることが無いではなかった。
章魚木の下で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
登りもそこから
稍々
(
やや
)
急になるのであった。それにした所で、平地を歩くというのに較べて幾らか
勾配
(
こうばい
)
が強くなって来たというに過ぎない位のものであった。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
自分は今度は完全に床の上に起き上って、上を注意していたが此の時、
稍々
(
やや
)
異様な感じにおそわれはじめた。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
二郎が探しあぐんで、やっぱり気のせいだったかと、
稍々
(
やや
)
安堵を感じながら自分の部屋へ戻って来ると、そこに進一少年がいて、彼が這入るなり声をかけた。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今日と雖も
稍々
(
やや
)
之に類する困厄の信者の身に及ばざるを得ないのである、而かも信者は悲まないのである
聖書の読方:来世を背景として読むべし
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
例えば、
稍々
(
やや
)
江戸時代の雰囲気の出ていると思われる第十の「戯作」にしても、都会人中の極く
狭隘
(
きょうあい
)
なサークル内の人達の生活を描いているのに過ぎないのである。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
風が
稍々
(
やや
)
追手
(
おひて
)
になつたので、船頭は帆を低く張つて、濡れた
船尾
(
とも
)
の処で
暢気
(
のんき
)
さうに煙草を吸つて居る。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
稍々
(
やや
)
あって男が二三寸格子戸を開き、どうぞ、と声を掛けたので、いそいそと内部へ這入りましたが、男は私を玄関の
三和土
(
たたき
)
の
上框
(
あがりかまち
)
に座布団を置いて坐わらせた丈で
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
若し川沿いの台地の意とすれば、単語は南洋系で文法は国語、従って
稍々
(
やや
)
時代は降ることになる。
マル及ムレについて
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
燭
(
しょく
)
を
剪
(
き
)
り扇を
揮
(
ふる
)
って論ずる物静かに奥深き室の夜は愈々更けて沈々となった。一鉄がフト気がついて見ると、信長の坐を
稍々
(
やや
)
遠く離れて蒲生の小伜が端然と坐っていた。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
で、大抵自分の云ふ事が解る、理のある所には
屹度
(
きつと
)
同情する。然し流石に女で、それに
稍々
(
やや
)
思慮が有過ぎる傾があるので、今日の様な場合には、敢て一言も口を出さない。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
この稲垣の調子は、
何処
(
どこ
)
までも実に信頼しているように聞えた。それにお倉は
稍々
(
やや
)
力を得た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
神経的にびくっと私のかおを
稍々
(
やや
)
きびしい目つきで眺めた。ひいやりとして直ぐに答えた。
音楽時計
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一行から
稍々
(
やや
)
遠く、見る影もなく掘り返された石畳の上を、
華奢
(
きゃしゃ
)
な籐のステッキで叩き乍ら、ホテルの廊下を散歩して居る西洋人のように、
大跨
(
おおまた
)
で往ったり来たりして居ります。
古城の真昼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
現に
稍々
(
やや
)
大なる
石材
(
せきざい
)
を
打
(
う
)
ち
壞
(
くだ
)
き
押
(
お
)
し
缺
(
か
)
きて
漸次
(
ざんじ
)
目的
(
もくてき
)
の
形状
(
けいじやう
)
とせし
跟
(
あと
)
を
認
(
みと
)
むるを得るなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
小笠原の十文字
稍々
(
やや
)
長かった為めに、黒坂が十文字にからみとられ、既に危く見えたのを、小笠原槍を捨て、太刀をひきぬいて、備中守の兜を真向に撃ち、黒坂目くるめきながら
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その時、急に頭上の空が暗黒と化したかと思うと、
沛然
(
はいぜん
)
として大粒の雨が落ちて来た。雨はあたりの火照りを
稍々
(
やや
)
鎮
(
しず
)
めてくれたが、暫くすると、またからりと晴れた天気にもどった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
呉羽之介は
俄
(
にわ
)
かにほんのりと頬を染めて、
稍々
(
やや
)
はずかしげに
媚
(
こ
)
びて笑ったのです。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
呉家の血統を
繋
(
つな
)
ぎ残すべく、姉との黙契の下に家出したるものにして、これあるがために、その
行衛
(
ゆくえ
)
捜索に対する姉の態度は、
稍々
(
やや
)
不熱心の
嫌
(
きらい
)
なきに非ざりしやの疑を存する余地あり。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これは
稍々
(
やや
)
艮方
(
うしとら
)
へ寄っておりますので、折からの東風に黒々とした火煙は西へ西へと流れるばかり、幸い桃花坊のあたりは火の
粉
(
こ
)
もかぶらずにおりますが、もし風の向きでも変ったなら
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
飲み掛けた茶を下に置いて、これも黙ってお辞儀をした純一の顔は赤くなったが、お雪さんの方は
却
(
かえ
)
って平気である。そして
稍々
(
やや
)
身を反らせているかと思われる位に、真直に立っている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
廊下に上る石階の直ぐ左手に腰掛けてゐた四十四五の色の黒い眉尻の下つた一見区役所の雇と云つた風な顔付に
稍々
(
やや
)
滑稽味のある顔をした男が、頻りに其石階にぬぎ捨てた足駄を気にしてゐる。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
文明の教育
稍々
(
やや
)
普
(
あま
)
ねしと
雖
(
いえど
)
も、中年以上の
重
(
おも
)
なる人は迚も洋学の佳境に
這入
(
はい
)
ることは出来ず、
何
(
なん
)
か事を
謀
(
はか
)
り事を断ずる時には
余儀
(
よぎ
)
なく漢書を
便
(
たより
)
にして、万事ソレから割出すと云う風潮の中に居て
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
むせるような笑声とそれを圧しつける声が
稍々
(
やや
)
高く響いた。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
稍々
(
やや
)
西に廻った太陽が、赤く窓の桟の上に光を落していた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
しかし、
稍々
(
やや
)
手近過ぎた形だね。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
そして
稍々
(
やや
)
暗くなった。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
始終空想ばかりに
耽
(
ふけ
)
ッているでも無い※多く考えるうちには少しは
稍々
(
やや
)
行われそうな工夫を付ける、そのうちでまず上策というは
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
稲が深々と実って、
稍々
(
やや
)
低地に建てられた農家を
蔽
(
おお
)
うばかりである。それが
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
森蔭
(
もりかげ
)
にまでつづいた豊かなしかも
寥々
(
りょうりょう
)
たる風景を私は好む。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
見ると、
稍々
(
やや
)
灰色を帯びた二つの瞳は大して美麗ではないが、いかにもむくむくした体つきが何とも云えず愛らしい。
犬のはじまり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
次に
稍々
(
やや
)
昔の頃から今日まで宇宙の変遷を見物して居た積りに成つて見ると、人類の過去は略々次の如くである。
人類の誇大狂
(新字旧仮名)
/
丘浅次郎
(著)
宵の
稍々
(
やや
)
手すきの頃、
秀
(
しう
)
ちやんとみんなで親しく呼んでゐる青年が来た、おしげは、ああ、この人がゐたのを忘れてゐたと、すがりつきたい思ひがした。
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
慧鶴が何だろうと思って意識を
稍々
(
やや
)
恢復さすにつれ、それは河の流れのようにざわざわ浪立って見える。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
九月中旬の夜は
更
(
ふ
)
けて、
稍々
(
やや
)
肌
(
はだ
)
寒く、裏の土手下を甲武の貨物汽車がすさまじい地響を立てて通る。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
どんな
旱魃
(
かんばつ
)
が續いた時にも、水量の減じたことのないと云はれてゐた山ノ手の大井戸でさへ、一月十五日の二度目の大地震のためにすつかり調子を狂はせて、
稍々
(
やや
)
もすると
水不足
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
その小屋というのも大分壊れた
粗屋
(
あばらや
)
で壁の代りに立て廻した亜鉛板などが倒れている場所もある。しかしこの辺は沖から吹き
付
(
つけ
)
る北風が烈しいと見えて、家が
稍々
(
やや
)
南に傾いていた。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
行手の
嶮
(
けわ
)
しい
山径
(
やまみち
)
を越えなければならないかと思うと、急に背中の荷物が重味を増して来て、
稍々
(
やや
)
ともすると荘重な華麗な声調を要する筈の唱歌が震えて絶え入りそうになったが
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
稍
漢検1級
部首:⽲
12画
々
3画
“稍”で始まる語句
稍
稍〻
稍久
稍深
稍疲
稍然
稍事
稍傲
稍後
稍明