眷族けんぞく)” の例文
われわれどもの妻子眷族けんぞくを人質にさし出しましょう。それを以て、われら宿老どもが、尼ヶ崎まで参ることをお見のがしねがいたい。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森林の王鬼王丸が眷族けんぞくひきいて出陣したと早くも聞き伝えた妖精どもが谷々峰々から数を尽くし味方しようとせ加わったのである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そりゃ、親方悪い了簡りょうけんだろうぜ。一体俺達が、妻子眷族けんぞくを見捨てて、此処ここまでお前さんに、いて来たのは、何の為だと思うのだ。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「まア聴こうじゃないか、どんな怪談が出たんだ。三つ目小僧か、傘のお化けとか、たいがい怪談話には筋も眷族けんぞくもあるものだ」
途中が非常に不安だったけれど、ホテル住まいをつづけるよりは、早く自宅に帰って、一家眷族けんぞくの中に落ちつきたかったからだ。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
から天竺日本にあらとあらゆる阿修羅の眷族けんぞくを、一つところに封じ籠めて、夜な夜なかたきを呪うて居りまするぞ。やがてその奇特きどくを……。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは多分、弁信の前へ現われたピグミーと同一眷族けんぞくのものに属するのでしょう。そうでなければ、全く同一物かも知れません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蜜蜂は二度って二度逃げられ、今は空箱だけ残って居る。天井てんじょうの鼠、物置の青大将あおだいしょう、其他無断同居のものも多いが、此等これら眷族けんぞくの外である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
護送の役をする同心は、傍でそれを聞いて、罪人を出した親戚眷族けんぞくの悲慘な境遇を細かに知ることが出來た。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
その笑いに一家眷族けんぞくみな出てきて盛大に笑いこけたり、そこへ、話しに聞いたばかりで未だ実物を見たことのない日本人が、しかも夫婦で来ているとあって
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
人類も、またその数に洩れず、男女あって夫婦あり、夫婦あって親子あり、しかして兄弟姉妹あり、一家眷族けんぞくあり、しかして郷党きょうとうあり、社会あり、国家あるのである。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
今日こんにち餌食えじきゆえです。汝一人おのれいちにんならどうにか中くらいにでも食えようが、詮ずる処、妻子眷族けんぞく、つづいては一類一門のつながりに、稼がないではいられないからだよ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
切っても切れぬ同姓や眷族けんぞく、多年恩顧の頼み頼まれた武士、又は新規召抱ではあるが、家来は主の義勇を慕い知遇を感じ、主は家来の器量骨柄をでいつくしめる者共
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
答『むろん沢山たくさん眷族けんぞくがある。人霊じんれい天狗てんぐ動物霊どうぶつれい……必要ひつようおうじていろいろそろえてある……。』
サタンの眷族けんぞくは天を追われて地に下り、人類の世界を乗り取ってここに己が国を建てていた。
林町の連中も一家眷族けんぞくで市電よ。これは私は大賛成です。特に太郎が大馬鹿三太郎と改名しないために、大賛成です。来年小学校。これも近所の小学に入ることになります。
親子兄弟、親類眷族けんぞくかかあめかけももちろん持たない。タッタ一人のスカラカチャンだよ。うじ素性すじょうもスカラカ、チャカポコ。鞄一つが身上しんじょう一つじゃ。親は木の股キラクな風の。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
飛行機乗り飛行機より落るや新聞紙必号外を出しこぞって之を悲しむ。死者の眷族けんぞく悲嘆するは当然の事なり。世挙って此を悲しみ此を壮とするに至っては疑なきを得ざるなり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
眷族けんぞくや仲間が百名ちかく集っての盛大な酒宴が開かれ、盃は新郎新婦へ矢のようにとんだ。
「ホウ、こりゃなんとしたな。一家眷族けんぞくが、残らず一堂に揃って、鉛色の顔をしておるが」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
空の上で雷の眷族けんぞくが大騒ぎをしているような音がし、夏雲の中からプラチナの針金がきらめくような光のマスがあらわれたと思うと、間もなくそれが飛行機のかたちになった。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
凡そアテネの法律は、いやしくもアテネ人にして、これに対して不満を抱く者あらば、その妻子眷族けんぞくを伴うて、どこへなりともその意に任せて立去ることを許しているではないか。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
その稚子ちしまた眷族けんぞくなる件の諸魚が半竜半馬の相を具うるので照々たりといわん。
その時、あの傘張の翁の家は、運悪う風下にあつたに由つて、見る見る焔に包れたが、さて親子眷族けんぞく、慌てふためいて、逃げいだいて見れば、娘が産んだ女の子の姿が見えぬと云ふ始末ぢや。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つい一昨年おととしまで他人の住まいだった屋敷に、こけ猿の財産が埋ずめてあるなんてエのは、どう考えてもうなずけない話だから、藩士一同、それこそ、お稲荷さまの眷族けんぞくに化かされたような形。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なぜなら彼らは、老後において妻子眷族けんぞくにかしずかれ、五枚蒲団ぶとんの上に坐って何の心身の苦労もなく、悠々ゆうゆう自適の楽隠居らくいんきょをすることができるからだ。反対に西洋人は、老年になってからみじめである。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「一匹か。それとも、眷族けんぞくがとぐろでも巻いてるか!」
日本につぽん罷在まかりあ眷族けんぞく蛇類へびども、かの
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
眷族けんぞくに信子、千代子を加ふ。
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
檜の木片こつぱは私の眷族けんぞく
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
ただ三日目に、柴進の眷族けんぞく十数人が、発見された。思いがけない林の中で、急造らしい板屋ぶきの監房に押しこめられていたのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犬というものは、通常、善良なる畜類であって、決して悪魔の眷族けんぞくとはいえないが、ただその餓えたる時のみは正真の悪魔です。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……『真鍮しんちゅうの城の眷族けんぞくども』に迫害されるという事も、こういう意味から云う時は、肉身刑罰の一つとして甘受かんじゅすべきものかもしれません
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、女のは生長するのを待って結婚する、男のは自分達の眷族けんぞくにしてしまう。勿論もちろん、同族結婚などを頓着とんちゃくしているのでは無い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そういうあわれなモオリーが、「親父の幽霊」の眷族けんぞくともいうべきこのおれに、沙港シヤトルからアラスカまでつきまとわれなければならなかったというのは、たしかにひとつの不幸であった。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一体、俺たちが妻子眷族けんぞくを捨ててここまでお前さんについて来たのは何のためだと思うんだ。みんな、お前さんの身の上を気づかって、お前さんの落着く所を見届けたい一心からじゃねえか。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
問『各神社かくじんじゃには竜神様りゅうじんさまほかにもいろいろ眷族けんぞくがあるのでございますか?』
妻子眷族けんぞくに取捲かれてシンミリした余生を送るどころか、その研究が世に出る時は、自分の一生涯の破滅の時だ。飛んでもない野郎だというので、踏んで蹴られて、唾液つばを吐きかけられる時だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「王子が近いから、いずれ装束稲荷しょうぞくいなり眷族けんぞくが、千住あたりの同類へ嫁入するんだろうてえことでその晩は済んだが、驚いたことにそれから三日目の晩、また雨のショボショボ降る日、こんどは先のよりでっかい狐の嫁入があったんです」
日本の地に罷在まかりあ眷族けんぞく蛇類へびども
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
それまでの関羽は、さながら天魔の眷族けんぞくを率いる阿修羅王あしゅらおうのようだったが、はッと、偃月刀を後ろに引いて、駒の手綱を締めると
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これで何百年来この山国をさわがした𤢖の眷族けんぞくも、はたして全滅したであろうか。あるいなお其余類そのよるいが山奥にひそんでいるであろうか。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうしてそこには蛇使いの恐い恐いお婆さんが、沢山の眷族けんぞくを引き連れて、住んでいるそうでございます。壺神様のご神体はつるぎだそうでございます。
手持の船に一家眷族けんぞくを乗せてツーランに入津し、フェイフォに落着きたい意嚮らしかったが、海賊の嫌疑けんぎがあるので、大年寄がいい返事をしなかったら腹を立てて暹羅シャムのアユチャに行き
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それほどでございますから、月卿雲客、名将勇士たち、みなわたくしたちに取入って、入道殿の御前をつくろわんと致しました。わたくしたちの一家眷族けんぞくの末までも多分の恩賞がございました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのむごたらしい光景を額面の向って右の方から、黄金色の輿こしに乗った貴族らしい夫婦が、美々しく装うた眷族けんぞくや、臣下らしいものに取巻かれつつも如何いかにも興味深そうに悠然と眺めているのであるが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これ神々かみがみほかに、このくにには観音様かんのんさまとか、不動様ふどうさまとか、そのほかさまざまのものがございますが、わたくしがこちらで実地じっちしらべたところでは、それはただ途中とちゅう相違そうい……つまり幽界ゆうかい下層かそう眷族けんぞく
蒲生賢秀がもうかたひで以下の留守居衆が、信長の妻子眷族けんぞくをつれてことごとく日野の城へ退いていた後だし、町の家々にも、暖簾のれんも見えず商品の影もない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそらくの小女郎狐の眷族けんぞくであって、その復讐のために彼等もまた松葉いぶしのむごたらしい死を遂げたのであろう。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「気に入ったな、ひどく気に入った、地獄の頭は面白い、だが閻魔になったからには、赤鬼青鬼の眷族けんぞくがなけりゃあ、ちょっとニラミが利かねえなあ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)