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ふりがな文庫
“
相貌
(
そうぼう
)” の例文
新の
相貌
(
そうぼう
)
はかくのごとく威儀あるものにあらざるなり。渠は千の新を合わせて、なおかつ
勝
(
まさ
)
ること千の新なるべき異常の
面魂
(
つらだましい
)
なりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのとき、あの方の
相貌
(
そうぼう
)
が変った。眼が異様な光りを帯び、顔ぜんたいが細く、長くなるようにみえた。わたくしは眼をつむった。
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
週期的あるいは非週期的に複雑な変化の
相貌
(
そうぼう
)
を現わす環境に適応するためには人間は不断の注意と多様なくふうを要求されるからである。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
労働は以前のとおり続けられながらもすべてが動揺していた。そのはつらつとしたしかも
陰鬱
(
いんうつ
)
なる
相貌
(
そうぼう
)
を伝えることはとうていできない。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
幸子は今度のように富士山の傍近くへ来、朝に夕に、時々刻々に変化するその
相貌
(
そうぼう
)
に心ゆくまで親しむことが出来たのは始めてであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
俗にいう美人型の
面長
(
おもなが
)
な顔で、品格といい
縹緻
(
きりょう
)
といい、旗下の奥さんとして恥ずかしからぬ
相貌
(
そうぼう
)
の方で、なかなか立派な婦人でありました。
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
しかし
満
(
みつ
)
れば
虧
(
か
)
くるの
比喩
(
ひゆ
)
に
洩
(
も
)
れず、先頃から君江の
相貌
(
そうぼう
)
がすこし変ってきた。金青年に喰ってかかるような
狂態
(
きょうたい
)
さえ、人目についてきた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼らしい新味ある施政と威令とは、
沈澱
(
ちんでん
)
久しかった旧態を一掃して、文化産業の社会面まで、その
相貌
(
そうぼう
)
はまったく
革
(
あらたま
)
ってきた。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
会津の枯木山の方から流れ出て、男鹿へ注ぐ湯西川は、
相貌
(
そうぼう
)
甚だ複雑である。
激湍
(
げきたん
)
岩を
咬
(
か
)
んで、白泡
宙空
(
ちゅうくう
)
に散るさま、ほんとうに夏なお寒い。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
巨勢が「アトリエ」に入りて見しに、彼はこの三日がほどに
相貌
(
そうぼう
)
変りて、
著
(
し
)
るく
痩
(
や
)
せたる如く、「ロオレライ」の図の下に
跪
(
ひざまず
)
きてぞゐたりける。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして形態というものは、二種の
相貌
(
そうぼう
)
をもってはいないだろうか。それは道徳的であると同時に非道徳ではなかろうか。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
その鷲のような顔を始めとして、すべて厳酷な
相貌
(
そうぼう
)
が灯のひかりにいっそう強められて、この場合における不愉快な想像力をいよいよ高めました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
濃
(
こ
)
いみどりいろの顔面、
相貌
(
そうぼう
)
夜叉
(
やしゃ
)
のごとき櫛まきお藤が、左膳の
笞
(
しもと
)
の
痕
(
あと
)
をむらさきの
斑点
(
ぶち
)
に見せて、
変化
(
へんげ
)
のようににっこり笑って立っているのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかし
円
(
まろや
)
かな
相貌
(
そうぼう
)
と全躯にみなぎる深い光沢を仰ぐとき、天武天皇が
生涯
(
しょうがい
)
にわたって心奥に
憧憬
(
どうけい
)
されたあの久遠の和の光輝を思わないわけにゆかない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
珠数
(
じゅず
)
を首にかけ、手に
杖
(
つえ
)
をつき見るからに荒々しい姿だ。肉体を苦しめられるだけ苦しめているような人の
相貌
(
そうぼう
)
だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この男は沖縄人で
相貌
(
そうぼう
)
が内地人らしくないので
疾
(
と
)
うから
覘
(
ねら
)
われていたのだそうだと、当人が後に来ての話である。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
頭は円いし、
相貌
(
そうぼう
)
は立派ですし、祖父もあんな風ではなかったかと思ったのです。それで帰ってから兄たちにいいましたが、誰も相手にしませんかった。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
白昼、花々
匂
(
にお
)
う小路をさまよい、勝手な空想にふけっていれば、あなたはいつもぼくの身近く、
浄
(
きよ
)
らかな童女のような
相貌
(
そうぼう
)
で、ぼくにつき
纏
(
まと
)
っていたのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その秘密さえ解き得たならば、この事件はこれ
迄
(
まで
)
とは全く違った
相貌
(
そうぼう
)
を呈して来るかも知れませんからね
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もっともイタリー的らしく見えるそれらの
相貌
(
そうぼう
)
のあるもの、ルイーニ式の微笑、ティツィアーノ式の肉感的な平静な
眼差
(
まなざし
)
、アドリア海やロンバルディア平原の花は
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
台所に姿を現した女たちは、みんな
一筋繩
(
ひとすじなわ
)
ではゆかぬ
相貌
(
そうぼう
)
であったが、正三などの及びもつかぬ生活力と、虚偽を無邪気に振舞う本能をさずかっているらしかった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
県令はその当時埋葬に従事した土工らを大勢よび出してみると、いずれも
相貌
(
そうぼう
)
兇悪の
徒
(
やから
)
ばかりだ。
女侠伝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてそのグロテスクな
相貌
(
そうぼう
)
は、よほど近所の子供たちにとってはおそろしいものの一つであったと見えて母や子守や父親が、泣いている子を私の家の前へ連れて来て
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
その
渓
(
たに
)
を
出
(
い
)
でて
蜿蜿
(
えんえん
)
と平原を流るゝ時は
竜蛇
(
りゅうだ
)
の如き
相貌
(
そうぼう
)
となり、
急湍
(
きゅうたん
)
激流に怒号する時は
牡牛
(
おうし
)
の如き形相を呈し……まだいろ/\な例へや面白い
比喩
(
ひゆ
)
が書いてあるけれど……
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかし彼の長い
蒼白
(
あおじろ
)
い
相貌
(
そうぼう
)
の
一微塵
(
いちみじん
)
だも動いておらんから、彼の心のうちは無論わからない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あなたの世界をぼくは熱愛できないのです。あなたが利巧だとは思わない。然し、あなたは近代インテリゲンチャ、不安の
相貌
(
そうぼう
)
を
具
(
そな
)
えている。余りでたらめは書きますまい。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
有能な読者は、他人の書いたものの中に、作者がこれに記し止め、かつこれに
具
(
そな
)
わっていると思ったものとは別個の
醍醐味
(
だいごみ
)
をしばしば見い出して、それに遙かに豊かな意義と、
相貌
(
そうぼう
)
とを
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
虚言の害でさえもが主としてそのうちに混入する阿諛に依るのである。真理は単純で率直である。しかるにその裏は千の
相貌
(
そうぼう
)
を
具
(
そな
)
えている。偽善が阿るためにとる姿もまた無限である。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
貫一はその
相貌
(
そうぼう
)
の
瞥見
(
べつけん
)
に
縁
(
よ
)
りて、
直
(
ただ
)
ちに彼の性質を
占
(
うらな
)
はんと
試
(
こころむ
)
るまでに、いと善く
見極
(
みきは
)
めたり。されども、いかにせん、彼の相するところは始に疑ひしところと
頗
(
すこぶ
)
る一致せざる者有り。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
取澄してさえいれば、
口髭
(
くちひげ
)
などに威のある彼のがっしりした
相貌
(
そうぼう
)
は、誰の目にも立派な紳士に見えるのであった。小野田は
切
(
きり
)
たての
脊広
(
せびろ
)
などを着込んで、のっしりした態度を示していた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
真理はどこかになければならぬ
筈
(
はず
)
にもかかわらず、争いだけが真理の
相貌
(
そうぼう
)
を呈しているという解きがたい
謎
(
なぞ
)
の中で、訓練をもった暴力が、ただその訓練のために輝きを放って白熱している。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
薄い唇と、深く落ち窪んだ閉ざされた眼——その衰え果てた
相貌
(
そうぼう
)
は、何かしら誇りかな幸福の色を浮かべていた。彼を担架に移したとき、人々は手を開かせて、紅い花を抜きとろうとした。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
その丘の如き
相貌
(
そうぼう
)
を呈したものが他日の峻峰とならぬと誰が断言出来よう。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
女御
(
にょご
)
の宮方は皆父帝のほうによく似ておいでになって、王者らしい
相貌
(
そうぼう
)
の
気高
(
けだか
)
いところはあるが、ことさらお美しいということもないのに、この若君は貴族らしい上品なところに
愛嬌
(
あいきょう
)
も添っていて
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「成功者は
相貌
(
そうぼう
)
からして違っていますね」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
単に微気候学的差別のみならず、また地質の多様な変化による植物景観の多様性も日本の土地の
相貌
(
そうぼう
)
を複雑にするのである。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おもながの、気品の高い
相貌
(
そうぼう
)
で、いかにも政宗の
末子
(
ばっし
)
らしく、その
眉間
(
びかん
)
には威厳のあるするどさと、ねばり強い剛毅な性格があらわれていた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
痩躯
(
そうく
)
長面、いつも
鳳眼
(
ほうがん
)
きらりとかがやいて、近ごろの曹操は、威容気品ふたつながら
相貌
(
そうぼう
)
にそなわってきた風が見える。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渠は紳士というべき
服装
(
いでたち
)
にはあらざるなり。されどもその
相貌
(
そうぼう
)
とその髭とは、多く
得
(
う
)
べからざる紳士の
風采
(
ふうさい
)
を備えたり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ばかに長い刀をさしているせいか、
武骨
(
ぶこつ
)
で豪放に見えるのだが、人物も、武骨で豪放なのだろう。
精悍
(
せいかん
)
な
相貌
(
そうぼう
)
をしている。顔ぜんたい、大あばただ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
天が一国民の表面に描くあらゆる
相貌
(
そうぼう
)
は、その底にあるものと隠密なしかし整然たる平衡を保ち、底のあらゆる動揺はまた表面の波紋を生ぜしむる。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし、楠公は古今の武将の中でも智略に
勝
(
すぐ
)
れていた人であったことは争われぬ歴史上の事実でありますから、智の方面に傑出した
相貌
(
そうぼう
)
の顔に作りました。
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
相貌
(
そうぼう
)
こそやつれたれ常にかわらぬヒョロ長い細田弓之助氏がこっちへセカセカと歩いて来るではありませんか。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
允成は寧親にも
親昵
(
しんじつ
)
して、
殆
(
ほとん
)
ど
兄弟
(
けいてい
)
の如くに遇せられた。
平生
(
へいぜい
)
着丈
(
きだけ
)
四尺の
衣
(
い
)
を
著
(
き
)
て、体重が二十貫目あったというから、その堂々たる
相貌
(
そうぼう
)
が思い遣られる。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
娘はまだ顔も
腫
(
は
)
れ、短刀で刺した喉の傷口に巻いてある白い布も目について、見るからに胸もふさがるばかり。変わり果てたこの娘の
相貌
(
そうぼう
)
には、お民が驚きも一通りではない。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この青白さは病身のせいではなく、生まれながらの殺人者の
相貌
(
そうぼう
)
なのであろう。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
飛鳥仏
(
あすかぶつ
)
にみられる微笑は全く消え去っている。
白鳳
(
はくほう
)
の温容もない。むしろ受難の
相貌
(
そうぼう
)
と
云
(
い
)
ってもいいものがうかがわれる。私には、このみ仏が身をもって天平の
深淵
(
しんえん
)
を語っているように思われる。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
そのように判然たる区別が存しているにもかかわらず、人間の眼はただ向上とか何とかいって、空ばかり見ているものだから、吾輩の性質は無論
相貌
(
そうぼう
)
の末を識別する事すら到底出来ぬのは気の毒だ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうしてまだ粉飾や
媚態
(
びたい
)
によって自然を
隠蔽
(
いんぺい
)
しない
生地
(
きじ
)
の
相貌
(
そうぼう
)
の収集され展観されている場所にしくものはないようである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
色の黒い頬骨の出たぶこつな顔である、眉も眼も尻下りだし、口は大きいし、どう
贔屓
(
ひいき
)
めに見てもぶおとこという
他
(
ほか
)
に批評のしようがない
相貌
(
そうぼう
)
だ。
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“相貌”の意味
《名詞》
顔つき。人相。容貌。
(出典:Wiktionary)
相
常用漢字
小3
部首:⽬
9画
貌
常用漢字
中学
部首:⾘
14画
“相貌”で始まる語句
相貌端荘