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じか
ふりがな文庫
“
直
(
じか
)” の例文
叔父の家は広い植木屋の地内で、
金目垣
(
かなめがき
)
一つ隔てて、
直
(
じか
)
にその道路へ接したような位置にある。垣根の
側
(
わき
)
には、細い乾いた
溝
(
みぞ
)
がある。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それがわからない訳ではないけれども、こんどこそ
直
(
じか
)
に「父」と対面できると思っていた秀之進にとっては、少なからぬ失望だった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
無論誠吾が
直
(
じか
)
に逢ったのではないが、
妻
(
さい
)
に云い付けて断らした。それでもその子は期日までに国へ帰って差支なく検査を済ましている。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
町を曲がると、海のにおいが
直
(
じか
)
に
面
(
おもて
)
に打って来た。岸和田の船着場である。この地方の産物を積んだ五百石船がそこについていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
出来るならば、手紙でなく、お前に
直
(
じか
)
に会って話したい。けれどもそれは出来ないことだ。それゆえ斯うして手紙を書いて送る。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
本来は
江戸前
(
えどまえ
)
風に蒸しにかけないで、関西風に
直
(
じか
)
に焼くがいい。醤油のたれを甘くしないで、直焼きにしたものの方が茶漬けには適する。
鱧・穴子・鰻の茶漬け
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
蜻蜓
(
とんぼ
)
や
蝉
(
せみ
)
が化し飛ぶに必ず草木を
攀
(
よ
)
じ、
蝙蝠
(
こうもり
)
は地面から
直
(
じか
)
に舞い上り能わぬから推して、仙人も足掛かりなしに飛び得ないと想うたのだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
牛ノ首から
直
(
じか
)
に茶臼岳に上るのは、岩が危険なので、安全を期する為には西側を
搦
(
から
)
み、荷置場に出て頂上に向う方がよい。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
浜屋が自分で、
直
(
じか
)
に父親に話をして、当分のうちどこかに囲っておこうと言出したときに、お島はそれを拒んで言った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その道についてはダージリンから
直
(
じか
)
に東北に出でニャートンを通って行く道もあり、その横に桃溪の間道もあります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「親の半兵衛はいよいよお吉と福松を、一緒にする気だったようで、容易にウンと言わないお吉に、本人の福松が
直
(
じか
)
に逢ってみる気になったんでしょう」
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何、頼まれる方では造作のないこと、本人に取っては何かしら、様子の分らぬ
廓
(
くるわ
)
のこと、一大事ででもあるようだから、
直
(
じか
)
にことづかった品物があるんです。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
直
(
じか
)
に根岸庵を
訪
(
おとな
)
いて華厳の滝壺にて採りたる葉広草、戦塲が原の菖蒲の花など贈る。
夜深
(
よふ
)
けて家に帰る。
滝見の旅
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
同志
之
(
の
)
者にて去年来別して懇意の間柄ゆえ、この者の
伝手
(
つて
)
をもって元方の片山に
直
(
じか
)
談判させ、御国名を出さぬよう値段も格安に鉛硝石共買入させるよう致されたい。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
ブラウの水が威勢よく流れている、その流に
直
(
じか
)
に家の建っているところがある。そういう処は古代その儘の家が残っているので、伊太利のヴェネチアを連想せしめる。
ドナウ源流行
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
これあるによって現在鳴子の縄を手にする場合の実感が、
直
(
じか
)
にわれわれにも伝わって来るのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
婆さんが出てから振返って見ると、朱塗りの丸盆の上に椀と飯茶碗と香物がのせられ、箱火鉢の傍の畳に
直
(
じか
)
に置いてあった。陽子は立って行って盆を木箱の上にのせた。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
自分はどうしても一遍本家の兄さんに
直
(
じか
)
談判をして、お金の問題を解決しないことには気が済まない、自分は洋行は止めにしたし、今急に結婚すると云うのでもないが
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その人の資本の一部を動かして、日本との
直
(
じか
)
取り引きを始める算段であるという事、シカゴの住まいはもう決まって、借りるべきフラットの図面まで取り寄せてあるという事
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これを
譬
(
たと
)
えば、毒物を以て
直
(
じか
)
にこれを口に
喰
(
く
)
らわしめずして、その毒を
瓦斯
(
ガス
)
に製し空気に混じて吸入せしむるが如し。これを無情といわざるを得んや。鬼蛇の名称
差支
(
さしつかえ
)
なかるべし。
教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
病
(
わずら
)
って死にましたから、
直
(
じか
)
に聞いた訳ではねえが、おッかさんが家を出なさる時、おやじの身持ちがよくなかった、罪はおやじにあったのだと、大きくなってから聞いております。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
戴きたい事は山々でございますが、
私
(
わたくし
)
が持って帰っては
迚
(
とて
)
も受けませんから、お慈悲
序
(
つい
)
でに恐れ入りますが、貴方が持って往って
直
(
じか
)
に親父にお渡し下されば親子の者が助かります
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
米友は単純な頭をいろいろに
捻
(
ひね
)
ってみたけれど結局、米友の知恵ではどうしてもその間の消息がわからないから、これは
直
(
じか
)
に行って掛合ってみるよりほかはないと思案を固めました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その光りで照し出されたのは、あさましく
荒
(
すさ
)
んだ座敷だけでなかった。荒板の牀の上に、
薦筵
(
こもむしろ
)
二枚重ねた姫の座席。其に向って、ずっと離れた壁ぎわに、板敷に
直
(
じか
)
に坐って居る老婆の姿があった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
ことに話によれば、あの甲府の家主も女を
直
(
じか
)
には知らないのである。
早耳三次捕物聞書:03 浮世芝居女看板
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
入口の庭が広く取ってあって、台所の
側
(
わき
)
から
直
(
じか
)
に裏口へ通り抜けられる。家の建物の前に、幾坪かの土間のあることも、農家の特色だ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
高木は
雨外套
(
レインコート
)
の下に、
直
(
じか
)
に
半袖
(
はんそで
)
の薄い
襯衣
(
シャツ
)
を着て、変な
半洋袴
(
はんズボン
)
から余った
脛
(
すね
)
を丸出しにして、
黒足袋
(
くろたび
)
に
俎下駄
(
まないたげた
)
を引っかけていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「……そんなことがございますかしら、
他処
(
よそ
)
のむすめを欲しいからといって、親をも通さず
直
(
じか
)
に気持を訊くなどということが」
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「はい。……
畏
(
おそ
)
れ多いことにござりますが、この
文状
(
ふじょう
)
ばかりは、
直
(
じか
)
に、お渡しせいと、申しつかって参りましたので」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここでもやはり
手洟
(
てばな
)
をかんだ手で
直
(
じか
)
に椀を
拭
(
ぬぐ
)
ってその椀に茶を注いでくれます。それを嫌がって飲まぬとむこうで
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
いますから忍んで飲まねばならぬような始末。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
男衆は両手を池の上へ出しながら、橋の欄干に
凭
(
もた
)
れて
低声
(
こごえ
)
で云う。あえて
忍音
(
しのびね
)
には及ばぬ事を。けれども、……ここで云うのは、
直
(
じか
)
に話すほど、間近な人に皆聞える。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
要するに鉋で削れた縮緬皺の土肌に(古えの作風、素焼きしないで生のままのとき)火度に強い釉薬を
直
(
じか
)
に厚く掛けて焼くとき、必ずちぢれるのがカイラギとなって現われる。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
斯
(
こ
)
う
為
(
し
)
ようとか、アヽ為ようとか云えば、ドウか長州に
行
(
いっ
)
て
直
(
じか
)
に話をして下さい、又長州ならドウか薩州に行て
直談
(
じきだん
)
を頼むと云て、一切の面倒を他に嫁して、
此方
(
こっち
)
はドウでも宜いと
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
新旧政府から発行の一分銀三百十一個を以て新金百円に引換くれるよう願出ているが、造幣寮規制に照せば、
直
(
じか
)
に引換るという主意ではなく、三百十一個を百円に均しいものと
見做
(
みな
)
し
明治の五十銭銀貨
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
君「
私
(
わたくし
)
のは
何
(
ど
)
うぞ御免あそばして、殿様が
直
(
じか
)
に御覧あそばさないで下さい」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それでも殿様に、
直
(
じか
)
にお目通りを致さねば申し上げられないことなのだそうでございます。それがため、小島様も服部様も、わたしにお殿様へお取次ぎ申してみるように、お頼みでございました」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「それをお前の手から、相手へ
直
(
じか
)
にやったのか」
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これは三千代が
直
(
じか
)
に代助に話した所である。代助はその時三千代の顔を見て、やっぱり何か心配の為じゃないかしらと思った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折角
(
せっかく
)
知人が同じ山の上に来ている。この人の帰京も近づいたろう。病気はどうか。こう思った。彼の足は学校から
直
(
じか
)
に停車場の方へ向いた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この中村家にひきとられて二年あまりになるが、
直
(
じか
)
に
主人
(
あるじ
)
に呼ばれるようなことはかつてなかったからである。
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
拙者が
直
(
じか
)
に、蜂須賀村の小六殿へお目にかかり、ようく理非をわけてお話しいたそう。——どうじゃ、さすれば、こよいの地獄も見ず、ここも互いの血を流さずにすむが
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あら、しっとりしてるわ、
夜露
(
よつゆ
)
が
酷
(
ひど
)
いんだよ。
直
(
じか
)
にそんなものに腰を掛けて、あなた
冷
(
つめた
)
いでしょう。
真
(
ほん
)
とに
養生深
(
ようじょうぶか
)
い
方
(
かた
)
が、それに御病気
挙句
(
あげく
)
だというし、悪いわねえ。」
木精(三尺角拾遺)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
○網に
直
(
じか
)
にのせて焼くことは禁物である。網にくっついて始末がわるくなるからである。
生き烏賊白味噌漬け
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そうして、月に一二度ぐらいずつ
袋戸棚
(
ふくろとだな
)
から出して、
桐
(
きり
)
の箱の
塵
(
ちり
)
を払って、中のものを
丁寧
(
ていねい
)
に取り出して、
直
(
じか
)
に三尺の壁へ
懸
(
か
)
けては、眺めている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お春は言付けられて、
釣瓶
(
つるべ
)
から
直
(
じか
)
に若旦那の手へ水を掛けて、すこし紅くなった。お仙も無心に眺めていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「じゃあしようがない」来太はかがんで靴の
紐
(
ひも
)
を解いた、「……失敬して
直
(
じか
)
に御主人に会うよ」
花咲かぬリラ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
実はと訳をいって、お
金子
(
かね
)
は預けておこうとすると、それは本人へ
直
(
じか
)
にといって承知しません。無理もないと引返して、夜も寝ないで今朝、起きがけに行くともう居ないんです。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まして知らないおじさんから——しかも離れてばかり見ていた武者から、
直
(
じか
)
に頭に手を載せてもらったので、大きな眼は忽ち得意にかがやいて、いつものお
喋舌
(
しゃべ
)
りがすぐ出て来た。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なべから
直
(
じか
)
に食べることも出来ませんし、
俎
(
まないた
)
の上から直接口に入れるわけにも参りませんから、この場合、ぜひとも食器というお料理のきもの、あるいは家とでもいうものが要るのであります。
料理する心
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そんなに気になさるなら、御自分で
直
(
じか
)
に調べて御覧になるが
好
(
い
)
いじゃありませんか。そうすればすぐ分るでしょう。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“直”の意味
《名詞》
(じき)
(じか)
(あたい/あたえ 歴史的仮名遣い:あたひ/あたへ)古代日本において、県主等に与えられた姓。
(すぐ)将棋の棋譜での用語で、駒をまっすぐ前に進めること。
《形容動詞》
(じき)短い期間のうちに、すぐにと言うわけではないが、そうなるまでに大きな変化はなく。
(出典:Wiktionary)
直
常用漢字
小2
部首:⽬
8画
“直”を含む語句
正直
直接
直下
素直
真直
直道
直立
驀直
強直
直衣
眞直
立直
硬直
直角
御直
直後
直面
宿直
直々
直截
...