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かんしゃく
ふりがな文庫
“
疳癪
(
かんしゃく
)” の例文
私が
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して、湯呑みで酒を飲もうとしたら、毒になるから、毒になるからと言ッて、お前さんが止めておくれだッたッけねえ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
赤坊が泣き叫ぶのを聞くことは、めったになく、又私はいま迄の所、お母さんが赤坊に対して
疳癪
(
かんしゃく
)
を起しているのを一度も見ていない。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
友達は皆私を変人とか仙人とか云ったが
或
(
あるい
)
はそうかも知れぬ。又ある者は一種の
疳癪
(
かんしゃく
)
持ちと評したが、これはたしかに事実である。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
弟の彼も鎌を持たされたり、苗を運ばされたりしたが、吾儘で気薄な彼は直ぐ
嫌
(
いや
)
になり、
疳癪
(
かんしゃく
)
を起してやめてしまうが例であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
灸は薬だからと、灸好きの祖母が許すので、
疳癪
(
かんしゃく
)
もちの母は、祖母へ対して不服な時も、父へ対して不満なときも、子供の皮膚を焼いた。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
かつ二人の密偵が見当ちがいの場所をいかにも「犬」らしく捜し回って
疳癪
(
かんしゃく
)
を起こしているさまを想像すると彼はおかしかった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
お杉は
嘲
(
あざけ
)
るように高く笑った。
如何
(
いか
)
にも
他
(
ひと
)
を馬鹿にした態度である。もう
斯
(
こ
)
うなっては我慢も堪忍も
能
(
でき
)
ぬ。市郎の
疳癪
(
かんしゃく
)
は一時に爆発した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それはまだ半分も縫い上げられてはいなかった。葉子の
疳癪
(
かんしゃく
)
はぎりぎり募って来たけれども、しいて心を押ししずめながら
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そういう発作的な
疳癪
(
かんしゃく
)
は半ば病態のせいで、穏やかな精神はそれに
与
(
くみ
)
していなかった。がその疳癪のために、彼の身体はひどく揺り動かされた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ラジオ流行の時節にも到底救われない旧人だと見えて、酒の座などで、いきなり、ワァワァワァと唸られると、それこそカッと
疳癪
(
かんしゃく
)
が起って来る。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
先程より
疳癪
(
かんしゃく
)
の
眥
(
まなじり
)
を
釣
(
つ
)
り上げて手ぐすね引て待ッていた母親のお政は、お勢の顔を見るより早く、込み上げて来る小言を一時にさらけ出しての
大怒鳴
(
おおがなり
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それを見た祖母はますます
疳癪
(
かんしゃく
)
にさわったと見えて、ほかのことにまでも
叱言
(
こごと
)
を言い始めた。祖母はまたつづけた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
お行儀がよくなったせいではなく、息が切れて、しばらくは後が続かなかったせいでしょう。どもりが
疳癪
(
かんしゃく
)
を起したように、一生懸命
閾
(
しきい
)
を引っ
叩
(
ぱた
)
いております。
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黄の優しい心づかいを承知していながら、それがうるさいので、少し
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して大きい声で云いました。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
三方四方面白くなくて面白くなくて、果ては
焦
(
じ
)
れ出す
疳癪
(
かんしゃく
)
に、当り散らさるる仲働きの婢は途方に暮れて、何とせんかと泣き顔の浮世のさまはただ不思議なり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
そこに
疳癪
(
かんしゃく
)
が
拘泥
(
こうでい
)
していそうだが、これがために獰猛の度はかえって減ずると云っても好いような特徴であった。——この坑夫が始めてこの時口を
利
(
き
)
いた。——
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ彼には弱者の能力の程度がうまく
呑
(
の
)
み込めず、したがって、弱者の
狐疑
(
こぎ
)
・
躊躇
(
ちゅうちょ
)
・不安などにいっこう同情がないので、つい、あまりのじれったさに
疳癪
(
かんしゃく
)
を起こすのだ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
他家
(
よそ
)
には
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して、随分御新造様方を
手込
(
てごみ
)
になさるお
宅
(
うち
)
さえ有りますじゃアございませんか
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そう言って
極
(
きめ
)
つけそうな目をして、小野田は
疳癪
(
かんしゃく
)
が募って来るとき、いつもするように
口髭
(
くちひげ
)
の毛根を引張っていたが、調子づいて父親を
欵待
(
もてな
)
していた彼女に寝込まれたことが
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
川島家にては
平常
(
つね
)
にも恐ろしき隠居が
疳癪
(
かんしゃく
)
の近ごろはまたひた燃えに燃えて、慣れしおんなばらも幾たびか手荷物をしまいかける
間
(
ま
)
に、朝鮮事起こりて
豊島牙山
(
ほうとうがざん
)
の号外は飛びぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
偏屈の
源因
(
げんいん
)
であるから、
忽
(
たちま
)
ち青筋を立てて了って、
的
(
あて
)
にしていた
貴所
(
あなた
)
の
挙動
(
ふるまい
)
すらも
疳癪
(
かんしゃく
)
の種となり、
遂
(
つい
)
に自分で立てた目的を自分で
打壊
(
たたきこわ
)
して
帰国
(
かえ
)
って了われたものと拙者は信ずる
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこへきて民子が明けてもくれてもくよくよして、人の眼にもとまるほどであるから、時々は物忘れをしたり、呼んでも返辞が遅かったりして、母の
疳癪
(
かんしゃく
)
にさわったことも度々あった。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そのころ習い初めた琴を
弾
(
ひ
)
くことさえ止められて、一人で人形を
抱
(
かか
)
えては、遊び相手を欲しがって常は
疳癪
(
かんしゃく
)
を恐れて避けている弟をもお祖母様の
傍
(
そば
)
に呼んで
飯事
(
ままごと
)
の
旦那
(
だんな
)
様にするのであったが
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
疳癪
(
かんしゃく
)
をおこしたような、大尉の大きな声に、びっくりして英夫が見ると
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
それから全くの浪人となって
旦
(
あした
)
に暮を
料
(
はか
)
らずという体だったが、奇態に記憶のよい男で、見る見る会話が
巧
(
うま
)
くなり、古道具屋の
賽取
(
さいと
)
りしてどうやらこうやら
糊口
(
ここう
)
し得たところが生来の
疳癪
(
かんしゃく
)
持ちで
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
(何しろあそこは、虎の門と半蔵門と日比谷との三つの電車の交叉点ですから、無理もないのですが)もどかしくなって
疳癪
(
かんしゃく
)
を起こされたと見えて、いきなり『こらっ』と怒鳴られたもんですから
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
郷里
(
くに
)
の実家に、落附こうとすればするほどあたしはジリジリしてくる。どうして好いのか、笑って見たり、怒って見たり、
疳癪
(
かんしゃく
)
をおこしてばかりいる。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
監督の武士と捕虜との間に
日々
(
にちにち
)
衝突が絶えなかった。朝高も
終局
(
しまい
)
には
疳癪
(
かんしゃく
)
を
起
(
おこ
)
して、彼等を
悉
(
ことごと
)
く斬れと命じた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
日ごろならばそんな挙動をすぐ
疳癪
(
かんしゃく
)
の
種
(
たね
)
にする葉子も、その朝ばかりはかわいそうなくらいに思っていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
父は寝られないと
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して、夜中に灰吹をぽんぽん
敲
(
たた
)
くのが癖だ。
煙草
(
たばこ
)
を
呑
(
の
)
むんだと云うが、煙草は
仮託
(
かこつけ
)
で、実は、腹立紛れに敲きつけるんじゃないかと思う。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
此家の
主人
(
あるじ
)
は彼小笠原に剣を
抛
(
なげう
)
つ可く
熱心
(
ねっしん
)
勧告
(
かんこく
)
したが、一年後の今日、彼は陸軍部内の
依怙
(
えこ
)
情実に
愛想
(
あいそう
)
をつかし
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して休職願を出し、北海道から出て来たので
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
最後には私も
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して、もう一度兄を探し出して精神病院へ入れてしまうんだと云いました。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
宮廷の管弦楽は彼の指揮のもとに、ライン地方でかなりの名声を得た。そしてジャン・ミシェルは、その格闘者めいた体格と激しい
疳癪
(
かんしゃく
)
とで、広く人の
噂
(
うわさ
)
になっていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
時々破裂する伯父の
疳癪
(
かんしゃく
)
(その故に伯父はやかまの伯父と、甥や姪たちから呼ばれていた。)
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
お噂を致しておりましたが実に夢の様な心持でございましてねえ、それは貴方とは別段に中が
好
(
よ
)
くってねえ、旦那が
毎
(
いつ
)
も
疳癪
(
かんしゃく
)
を起しておいでなさる時にも、関取がおいでなさいますと
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お島は帯をときかけたままの姿で、押入に
倚
(
よっ
)
かかって、組んだ手のうえに
面
(
おもて
)
を伏せていた。
疳癪
(
かんしゃく
)
まぎれに
頭顱
(
あたま
)
を振たくったとみえて、
綺麗
(
きれい
)
に結った島田髷の根が、がっくりとなっていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
一生独身で通したヘンデル、激情家で皮肉屋で大食で
疳癪
(
かんしゃく
)
持ちで、そのくせ、悲しいアリアを涙を流しながら書いたヘンデルは、破産の直後でさえも慈善事業に背を見せるようなことをしなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
ここに怪しいことのございますのは、お俊の様子がひどく変ったことでございます、なんとなく私を看護するそぶりが前のようでなく、つまらぬことに
疳癪
(
かんしゃく
)
を起して私につらく当るのでございます。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「どうしたの。また
疳癪
(
かんしゃく
)
を
発
(
おこ
)
しておいでだね」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
どっちを割るんだと云えば無論頭を割るんだが、幾分か壁の方も割れるだろうくらいの
疳癪
(
かんしゃく
)
が起った。どうも歩けば歩くほど
天井
(
てんじょう
)
が邪魔になる、左右の壁が邪魔になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
開いてる。
疳癪
(
かんしゃく
)
まぎれに私の顔まで
唾
(
つば
)
を飛ばした。ああ、お
祖父
(
じい
)
さんを殺すかもしれない……。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
気に入った句が拾いだせないので、
疳癪
(
かんしゃく
)
をおこし、取りちらかした
書籍
(
しょもつ
)
を、手あたり次第に引っつかんで
投
(
ほう
)
りだしたとき、ふとした動機で桜津が思いちがいをしたのだった。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
源三郎はもう我慢も勘弁も出来なくなって、不平と
疳癪
(
かんしゃく
)
が一時に爆発したのであった。
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
打ち
据
(
す
)
えられさえしても、
屠所
(
としょ
)
の羊のように柔順に黙ったまま、葉子にはまどろしく見えるくらいゆっくり落ち着いて働く愛子を見せつけられると、葉子の
疳癪
(
かんしゃく
)
は
嵩
(
こう
)
じるばかりだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「お
出
(
いで
)
なされませ、
関
(
かま
)
うもんかね、
疳癪
(
かんしゃく
)
まぎれに何言うたて……」
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ふたたび何かの機会がありさえすれば、ますますひどく
疳癪
(
かんしゃく
)
を破裂さした。その極端な
癇癖
(
かんぺき
)
は、年とともにつのってきて、ついに彼の地位を困難ならしめた。彼はみずからそれに気付いた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
夕立を野中に避けて、
頼
(
たより
)
と思う一本杉をありがたしと
梢
(
こずえ
)
を見れば
稲妻
(
いなずま
)
がさす。
怖
(
こわ
)
いと云うよりも、年を取った人に気の毒である。行き届かぬ世話から出る
疳癪
(
かんしゃく
)
なら、
機嫌
(
きげん
)
の取りようもある。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
前回に書いた舞踊研究会の「
空華
(
くうげ
)
」の時、松岡さんと、私の好みと、鈴木鼓村さんの
箏曲
(
そうきょく
)
とがぴったりしたので、松岡さんが進んで会員となられたのだが、今度は、その松岡さんが随分お
疳癪
(
かんしゃく
)
で
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「
喧
(
やかま
)
しい、
引込
(
ひっこ
)
んでいろ。」と、市郎は
疳癪
(
かんしゃく
)
を
起
(
おこ
)
して
呶鳴
(
どなり
)
付けた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼は自分の感じ方を他人に
強
(
し
)
いまいといくら控えても、やはり寛大な措置には出られなかった。以前の激しい性質がまだすっかりは抑圧されていなかった。そして時とすると
疳癪
(
かんしゃく
)
を起こした。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
疳
漢検1級
部首:⽧
10画
癪
漢検1級
部首:⽧
21画
“疳癪”で始まる語句
疳癪持
疳癪玉
疳癪声
疳癪筋