トップ
>
田圃道
>
たんぼみち
ふりがな文庫
“
田圃道
(
たんぼみち
)” の例文
真赤
(
まっか
)
な
達磨
(
だるま
)
が
逆斛斗
(
さかとんぼ
)
を打った、忙がしい世の
麺麭屋
(
パンや
)
の看板さえ、遠い鎮守の鳥居めく、
田圃道
(
たんぼみち
)
でも通る思いで、江東橋の停留所に着く。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
窓の外は同じような
田圃道
(
たんぼみち
)
ばかりで、おりおりそこに客を載せてゆっくり歩いている人力車なんぞが見える。刈跡から群がって雀が立つ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
え、道ですか? 茂木の入り口のところで右に細い
田圃道
(
たんぼみち
)
がありますがね。なんでも人通りの少ないはずのところに足跡が多かったらそこを
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
駅から一丁ほど
田圃道
(
たんぼみち
)
を歩いて、撮影所の正門がある。白いコンクリートの門柱に
蔦
(
つた
)
の新芽が這いのぼり、文化的であった。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ここらは以前の千代田村と日比谷村のあいだを通っている奥州街道の
田圃道
(
たんぼみち
)
が開けているので、もっと、江戸城の周囲に寄れば、太田
道灌
(
どうかん
)
以後
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
田圃道
(
たんぼみち
)
の稲田のいきれの強い真夏の暑い日中を
辿
(
たど
)
つたり見知らぬ村の子供の群れに交つて小川に水を浴びたりして次から次に親類の家を泊り歩いた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
乞食
(
こじき
)
に化けて観音裏の
田圃道
(
たんぼみち
)
を歩いていた庄三郎は、佐藤与茂七に逢って衣服を取りかえた。与茂七は宅悦の家で借りて来た提燈も庄三郎にやって
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「関東の平原はいいですね。暁のもやに包まれた杉木立。夕べの雨の
田圃道
(
たんぼみち
)
。火のような赤トンボが飛ぶ秋の空……」
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
町から東のO村まで二里ばかりの、樹蔭一つない稲田の中の
田圃道
(
たんぼみち
)
を歩いて行った。向うへ着いたときに一同はコップに入れた黄色い飲料を振舞われた。
さまよえるユダヤ人の手記より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「いま、
彼方
(
むこう
)
の
田圃道
(
たんぼみち
)
を
歩
(
ある
)
いてくると、ひきがえるが、かまきりをのもうとしていた。」と、
話
(
はな
)
されました。
宿題
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私達は村はずれの
田圃道
(
たんぼみち
)
を通って、ドロ柳の若葉のかげへ出た。谷川には
鬼芹
(
おにぜり
)
などの毒草が茂っていた。小山の
裾
(
すそ
)
を選んで、三人とも草の上に足を投出した。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
麦稈帽
(
むぎわらばう
)
をかぶつた
単衣
(
ひとへ
)
に
絽
(
ろ
)
の古びた羽織を着たかれの姿は、午後の日の暑く照る
田圃道
(
たんぼみち
)
を静かに動いて行つた。町は
市日
(
いちび
)
で、近在から出た百姓がぞろ/\と通つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
白粉
(
おしろい
)
のはげかかった顔を洗いなどしてから、裏の
田圃道
(
たんぼみち
)
まで出て来たが、
濛靄
(
もや
)
の深い
木立際
(
こだちぎわ
)
の農家の土間から、
釜
(
かま
)
の下を
焚
(
た
)
きつける火の影が、ちょろちょろ見えたり
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
今でも芝居なぞで玉子の
藁苞
(
わらづと
)
を見ると、それを
提
(
さ
)
げて
田圃道
(
たんぼみち
)
を○○町へ辿る小学生を思い浮べる。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
軽い
藁草履
(
わらざうり
)
をはいて、お弁当を用意して、昼近い時分に二人は出かけました。町をはづれると
田圃道
(
たんぼみち
)
で、それから桑畑の中を通つて、細い一すぢの道が山の方へ向つてゐます。
時男さんのこと
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
君ちょっと
肩
(
かた
)
を
叩
(
たた
)
いてくれとか、雨のふる日は納屋にはいって竹の
簀子
(
すのこ
)
を編もうとか、ある一処にとくさを植え合い顔をつき寄せたり、二人で
植木溜
(
うえきだめ
)
に行くために
奥馬込
(
おくまごめ
)
の
田圃道
(
たんぼみち
)
を行き
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
やがて七、八間も
田圃道
(
たんぼみち
)
を通り抜けた時、善八はあとを見かえりながら云った。
半七捕物帳:61 吉良の脇指
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
田圃道
(
たんぼみち
)
を東の方へ人の足音がした。やがてパチ/\と
拍手
(
かしわで
)
の音が
闇
(
やみ
)
に響く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
小池の
拵
(
こしら
)
へる麥笛を奪ひ取つたことや、秋の頃二人で
田圃道
(
たんぼみち
)
を歩いて、小池が稻の穗の重さうに
垂
(
た
)
れて
實
(
みの
)
つたのを拔き取り、
籾
(
もみ
)
を噛んでは白い汁を吐き出すのを
眞似
(
まね
)
して、お光も稻の穗を拔き
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
どこまでつづくかと思われるほど長い
田圃道
(
たんぼみち
)
もあった。垣根に
山茶花
(
さざんか
)
や菊などの咲いている静かな村もいくつか通った。そうした道を君子は母の背に負われたり、また手を
曳
(
ひ
)
かれて歩いたりした。
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
慣れない
田圃道
(
たんぼみち
)
を、忍耐と、目測と、
迂廻
(
うかい
)
とを以て進むものですから、見たところでは、眼と鼻の距離しかないあの森の、銀杏の目じるしまで至りつくには、予想外の時間を費しているものらしい。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
四郎左衛門は市中を一走りに
駈
(
か
)
け抜けて、
田圃道
(
たんぼみち
)
に出ると、刀の血を
道傍
(
みちばた
)
の小河で洗つて
鞘
(
さや
)
に納め、それから道を転じて
嵯峨
(
さが
)
の三宅左近の家をさして行つた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
途中で日がまったく暮れて、さびしい
田圃道
(
たんぼみち
)
を一人てくてくと歩いて来ると、ふとすれ
違
(
ちが
)
った人が
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
一里半ばかり、鼻のもげるような
吹曝
(
ふきさら
)
しの寒い
田圃道
(
たんぼみち
)
を、
腕車
(
くるま
)
でノロノロやって来たので、
梶棒
(
かじぼう
)
と一緒に
店頭
(
みせさき
)
へ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が
硬張
(
こわば
)
っていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ホタルの飛び交う
田圃道
(
たんぼみち
)
を、私は、うつむいたまま夢中で歩いて、家についたのは十一時を回っていた。母は、なんにもいわないで、熱いうどんを、ザルに一ぱい煮てくれた。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私
(
わし
)
も
腹立紛
(
はらたちまぎ
)
れじゃ、
無暗
(
むやみ
)
と急いで、それからどんどん山の
裾
(
すそ
)
を
田圃道
(
たんぼみち
)
へかかる。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこの
田圃道
(
たんぼみち
)
から、湖の波打際までのあいだ約一町ぐらいな幅は、いちめんな葭におおわれているのである。乗り入れた面々は、みな葭の根の生えているやわらかい湿地に気づかなかった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燈火
(
あかり
)
が盛んにかがやいて客や女中の声がやかましいのに、この裏庭は、垣根一重を境にして、一間ほどの
田圃道
(
たんぼみち
)
につづいては、威勢よく今年の稲が夕風に
戦
(
そよ
)
いで、その間に鳴く
蛙
(
かわず
)
が、足音を聞いては
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と私達も
田圃道
(
たんぼみち
)
をその方へ急いだ。一番先に走りついた私は忽ち
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
後
(
おく
)
れた
女
(
おんな
)
の
人
(
ひと
)
は、
旗
(
はた
)
を
振
(
ふ
)
りながら、
田圃道
(
たんぼみち
)
を
走
(
はし
)
ってきました。
とびよ鳴け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
九月の
田圃道
(
たんぼみち
)
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二人は
田圃道
(
たんぼみち
)
にかゝりました。と出逢ひ頭に、森の中から出て來た男、ハツと面喰つた樣子で、
頬冠
(
ほゝかぶ
)
りのまゝ通り過ぎます。横顏だけしか見えませんが、二十五六の小意氣な男です。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私
(
わし
)
も
腹立紛
(
はらだちまぎ
)
れぢや、
無暗
(
むやみ
)
と
急
(
いそ
)
いで、それからどん/\
山
(
やま
)
の
裾
(
すそ
)
を
田圃道
(
たんぼみち
)
へ
懸
(
かゝ
)
る。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そして
夜鴉
(
よがらす
)
のような群ら影を躍らせて児屋郷の長い
田圃道
(
たんぼみち
)
を駆け
競
(
きそ
)
った。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平八郎は瀬田に、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
人家に立ち寄つて保養して跡から来るが好いと云つて、無理に
田圃道
(
たんぼみち
)
を百姓家のある方へ往かせた。其
後影
(
うしろかげ
)
を暫く見送つてゐた平八郎は、急に身を起して焚火を踏み消した。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
田圃道
(
たんぼみち
)
にはまだ朝の露が残つて
居
(
ゐ
)
た。
私
(
わたし
)
の足袋はしとどに濡れた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
三
人
(
にん
)
は、また
田圃道
(
たんぼみち
)
を
歩
(
ある
)
いて、
往来
(
おうらい
)
へ
出
(
で
)
ました。
小さな妹をつれて
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
すぐに
連
(
つ
)
れられて
參
(
まゐ
)
つたんです。
生肝
(
いきぎも
)
を
藥研
(
やげん
)
でおろされる
方
(
はう
)
がまだしもと
思
(
おも
)
ひました、
其
(
そ
)
の
仙人
(
せんにん
)
に
連
(
つ
)
れられて——
何處
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
くのかと
存
(
ぞん
)
じますと、
田圃道
(
たんぼみち
)
を、
私
(
わたし
)
を
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
たせて、
仙人
(
せんにん
)
が
後
(
あと
)
から。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
秩父在
(
ちちぶざい
)
に昔から己の内に縁故のある大百姓がいるから、そこへ逃げて行こうというのだ。
爺
(
じ
)
いの背中で、上野の焼けるのを見返り見返りして、
田圃道
(
たんぼみち
)
を逃げたのだ。秩父在では己達を歓迎したものだ。
里芋の芽と不動の目
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
日が
経
(
た
)
って医王山へ花を採りに、私の手を
曳
(
ひ
)
いて、
楼
(
たかどの
)
に朱の
欄干
(
てすり
)
のある、温泉宿を忍んで裏口から
朝月夜
(
あさづきよ
)
に、
田圃道
(
たんぼみち
)
へ出た時は、
中形
(
ちゅうがた
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に
襦子
(
しゅす
)
の帯をしめて、鎌を一挺、
手拭
(
てぬぐい
)
にくるんでいたです。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あれ、はんけちを
田圃道
(
たんぼみち
)
で落して来て、……」
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
田圃道
(
たんぼみち
)
を楽しそう。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
田
常用漢字
小1
部首:⽥
5画
圃
漢検準1級
部首:⼞
10画
道
常用漢字
小2
部首:⾡
12画
“田圃”で始まる語句
田圃
田圃路
田圃側
田圃径
田圃面
田圃中
田圃伝
田圃向
田圃組
田圃脇