父御てゝご)” の例文
しかし父御てゝごのおいいつけでござりますから是非なく承引なされまして、ひらい殿のひめぎみを一たんはおもらいになりましたものゝ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ため辛苦しんくの程察し入る呉々もよろこばしきことにこそして其のくしは百五十兩のかたなれば佛前へそなへて御先祖其外父御てゝごにも悦ばせ給へと叔母女房ともくち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしやう不運ふうんはゝそだつより繼母御まゝはゝごなり御手おてかけなりかなふたひとそだてゝもらふたら、すこしは父御てゝご可愛かわゆがつて後々のち/\あのためにもなりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ おゝ、ロミオ、ロミオ! 何故なぜおまへはロミオぢゃ! 父御てゝごをも、自身じしんをもてゝしまや。それがいやならば、せめてもわし戀人こひゞとぢゃと誓言せいごんしてくだされ。
上つ方の姫御前が、さえをお習ひ遊ばすと言ふことが御座りませうか。それは、近来もつとしもざまのをなごの致すことゝ承ります。父君がどう仰らうとも、父御てゝご様のお語は御一代。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
このひとが父御てゝごのしろをせめおとした一方の旗がしらかと、おさなごゝろにもにくゝおぼしめしましたものか、ふと秀吉公のかおをおさしなされ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
犧牲ぎせいにしてもおまへさまのおこゝろうかゞさききてかへねんはなし父御てゝごさまの今日けふおほ人非人にんぴにん運平うんぺいむすめ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カピ妻 はて、其方そなた仁情深なさけぶか父御てゝごをおちゃってぢゃ。其方そなた愁歎なげきわすれさせうとて、にはかにめでたいをおさだめなされた、わし其方そなたつひおもひがけぬめでたいを。
どんなに父御てゝごや母御が草葉の蔭でうれしく思っていらっしゃるか知れない、いずれは尉殿の子息に報いて来て、末は必ずめでたいことがあるに違いありませぬ
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
目鼻めはなだちよりかみのかゝり、ならびのところまでたとはおろ毋樣はゝさまそのまゝのうまれつき、奧樣おくさま父御てゝごといひしは赤鬼あかおにらうとて、十ねん以前まへまではものすごいひからせておはしたるものなれど
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ロミオ、父御てゝごうちへおぢゃれ。あそこでまうぞ。
太閤でんかはあのお方の父御てゝごをほろぼし、母御をころし、御兄弟をさえ串ざしになされたおん身をもって、いつしかあのお方をわがものにあそばされ、親より子にわたる二代の恋を
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するどはらつておたかどのことばばかりはうれしけれど眞實まことやらなにやらこゝろまで芳之助よしのすけあやにくたず父御てゝごこゝろ大方おほかたれてあり甲斐性かひしよなしのいやになりてえんちどがさに計略三昧けいりやくざんまいかゝりし我等われらわなのうちのけもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父御てゝごは白井備後守とて天が下の大名小名に知られ給うたお方でござりますと、そう聞かされてからはひとえに菩提ぼだいの心を起し、十三と云う歳の五月の末つかた、大雲院で四十八夜の別時の念佛を初め
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さへぎりそれでは御存ごぞんじのきならん父御てゝごさまとあにとのなかにおはな成立なりたつておまへさまさへ御承知ごしようちならば明日あすにも眞實しんじつ姉樣あねさまいやか/\おいやならばおいやでよしと薄氣味うすきみわろきやさしげのこゑうそまことあまりといへばあまりのこと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)