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焦
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じ
ふりがな文庫
“
焦
(
じ
)” の例文
これが親分を
焦
(
じ
)
らして、自分から乗出させる魂胆と知りながらも、平次はツイこう威勢の良い「馬鹿野郎」を飛ばしてしまいました。
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
例の如くややしばし
音沙汰
(
おとさた
)
がなかった。少し
焦
(
じ
)
れ気味になって、また呼ぼうとした時、
鼬
(
いたち
)
か
大鼠
(
おおねずみ
)
かが
何処
(
どこ
)
かで動いたような音がした。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、——彼の行動が遅いので、早くしろとうながすように、外の者は
焦
(
じ
)
れているのであろう。高窓から垂れている縄が左右に動いた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
染井の化物屋敷はまた化物屋敷で、神尾主膳はあの時の
井戸釣瓶
(
いどつるべ
)
の怪我からまだ枕が上らないで、横になりながら
焦
(
じ
)
れきっています。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
妻に対する虚栄心の発現、
焦
(
じ
)
らされながらも夫を
腕利
(
うできき
)
と思う妻の満足。——この二つのものだけでは到底充分な説明にならなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
それでも善兵衛は容易に承知しないでさんざん
焦
(
じ
)
らした挙げ句に、おまえの娘をくれるならば譲ってやると言い出したのでございます。
蜘蛛の夢
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ひょっとしたら舞い込むのかもしれない幸運の期待で、自分の心を
苛立
(
いらだ
)
たせ
焦
(
じ
)
らすのは、何とまあわくわくして面白いんだろう!
富籤
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
朝なんぞ、
煖炉
(
だんろ
)
に一度組み立てた薪がなかなか燃えつかず、しまいに私は
焦
(
じ
)
れったくなって、それを荒あらしく引っ掻きまわそうとする。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と
焦
(
じ
)
れてガチリと音させ、よう/\錠をはずし木戸をひらき、出てまいりますと、只
何
(
なん
)
にも言わず伊之吉に取りすがって
顫
(
ふる
)
えております。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
すこし
焦
(
じ
)
らしてやれ——意地悪も手つだって、すったもんだ、なかなか
諾
(
うん
)
と言わないから、山城守は引っ込みがつかないで往生している。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
待侘びて独りで
焦
(
じ
)
れていると、
軈
(
やが
)
て目差すお糸さんが膳を下げに来たから、此処ぞと思って、
極
(
きま
)
りが悪かったが、思切って例の品を呈した。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
今日急に必要が出来て或る書類を探し始めたのだが、二十分経っても更に見当らないので、気短の彼はそろ/\
焦
(
じ
)
れて来た。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
焦
(
じ
)
れつたい話である。が、事実は、この通りで、巡査は堪忍袋の緒を切らず、車夫どもは反抗の限度を守つてゐるのである。
北支物情
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
彼女は
焦
(
じ
)
れた。でも次第次第に彼女は決闘場から後じさりに離れて行った。そっと忍び出る小娘のようにおどおどしながら。
決闘場
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
滯留
(
とうりう
)
する宿さへ分れば分別はまた何うにでも付く、八時二十五分を違約して、男を
焦
(
じ
)
らしておいた方が、口説の種にもなつて好いやら知れぬ。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
素戔嗚
(
すさのお
)
はそろそろ
焦
(
じ
)
れ出しながら、
突慳貪
(
つっけんどん
)
に若者の
請
(
こい
)
を
却
(
しりぞ
)
けた。すると相手は
狡猾
(
こうかつ
)
そうに、じろりと彼の顔へ眼をやって
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
待っても待っても藤沢さんが来ないので、自分は
焦
(
じ
)
れてしまった。なかなか寒いから、それでおやめにしたのだろうか。
日記:08 一九二二年(大正十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
黙ったまま、彼は妻の
膝
(
ひざ
)
に手をのばした。妻は自分から抱かれてきた。その
頬
(
ほお
)
がひどく冷たいのに、妻は
焦
(
じ
)
れるように、すぐに
喘
(
あえ
)
ぐ呼吸になった。
待っている女
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その時私は先生が日頃私たちに云つてお出になつたことゝはまるで違つた態度で社会といふものをお説きになるのが
焦
(
じ
)
れつたいやうに思はれました。
S先生に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
とたちまち彼女はまともに相手の顔を見つめながら、勝ち誇ったような微笑をにっと浮かべる。アリョーシャはいっそう
羞
(
はに
)
かんで
焦
(
じ
)
れるのであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
無類に模範的におとなしい彼は何を聞いても耳にはいらなかったし、何も言いたいことを持っていなかった。とうとう塚原は
焦
(
じ
)
れて足を踏み鳴らした。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
泡を吐き、舌を
噛
(
か
)
み、ぶつぶつ小じれに
焦
(
じ
)
れていた、赤沼の三郎が、うっかりしたように、思わず、にやりとした。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どこへも行きやしないさ。お前が怠儀そうにして歩いているから私は一緒に歩くのが
焦
(
じ
)
れったくなったばかりさ」
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
髪の留め針が室の方々に落ち散った。なかなか覚えにくい言葉に出会うと、
躾
(
しつけ
)
の悪い子供のように
焦
(
じ
)
れったがった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
にんじんは
焦
(
じ
)
れて、日の照りつける真下に、突っ立ったまま、じっとしている。彼は、
親爺
(
おやじ
)
のすることをみている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
つい
焦
(
じ
)
れつたくなると漢語調の歌をうたふのは、
代紋
(
かへもん
)
と稱して提燈や傘などにつける紋章に
梯子
(
はしご
)
の
印
(
しるし
)
を付け、自烈亭居士と號して狂歌などを詠んだ祖父
文学的自叙伝
(旧字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
卓子
(
テーブル
)
の上から、床の上に下ろされた壺が、まるで中に生きものが入っているかのように、さも
焦
(
じ
)
れったそうに揺れている。何か、入っているのだろうか。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それにしても、犬武士風情のくせしてゐて、親王樣のお首を打ち落すなど、よく/\惡業の強い人間だと思へて私も亦、
焦
(
じ
)
り焦りと新しい憎しみに
煽
(
あふ
)
られた。
滑川畔にて
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
茶家の指導を受けよ……と
焦
(
じ
)
れったそうに警鐘を乱打しておられる一幕芝居、果たして警鐘価値ありて、その希望通り現実的に効果が見られるものであろうか
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
三方四方面白くなくて面白くなくて、果ては
焦
(
じ
)
れ出す
疳癪
(
かんしゃく
)
に、当り散らさるる仲働きの婢は途方に暮れて、何とせんかと泣き顔の浮世のさまはただ不思議なり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
ですから、時江さんが避ければ避けるほど、貴方の幻をしっくりと
嵌
(
は
)
め込むのに、
焦
(
じ
)
れだしてきたのですが、折よくこの樹立の中で、私は
人瘤
(
ひとこぶ
)
を探し当てました。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
少し杉を伐ったので、冬は白いものが人を
焦
(
じ
)
らす様にちら/\
透
(
す
)
いて見えるのが、却て
懊悩
(
おうのう
)
の種になった。あの杉の森がなかったら、と彼は幾度思うたかも知れぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
松岡は吸殻を噛んで棄てると、
忌々
(
いまいま
)
しそうに
焦
(
じ
)
れついて、舌打ちをした。女の眼は謝まっているようなおどおどしさに取紛れて、そして急に物が言えそうもなかった。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と止せばいいのに
痣
(
あざ
)
旦那は
頻
(
しき
)
りに見たがるから、余り
焦
(
じ
)
らして虫でも出ると悪いと思って、乃公は写真を渡してやった。是も姉さん達の悪戯で、痣が沢山拵えてある。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
むかし連歌師の
紹巴
(
ぜうは
)
が松島を見に仙台へ下つた事があつた。仙台のお城では目つかちの政宗公が、夏の日の長いのに
焦
(
じ
)
れて、独りで肝癪を起してゐるところであつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
石黒の細君は
焦
(
じ
)
れたのか
照
(
て
)
れたのか、いきなりわっと泣きだし、なにかいいながらむやみに顔をこするので、鼻のあたまや頬がひっぱたかれたように
赧
(
あか
)
どす色になった。
予言
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「どうしたというのです、まだ着物も着換えないで……。いつでも私はおまえのために待たされなければならないのですよ。ほんとに
焦
(
じ
)
れったいことだね、リザヴェッタ」
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
焦
(
じ
)
り焦りしながら、矢つぎ早やに手紙を書いてはメッセンヂャアボーイに届けさせて居ります。
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
新一はこんな際にも拘らず、何か人を
焦
(
じ
)
らすような云い方をして、幽かに微笑をさえ浮べた。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
行列をつくつて切符を買つたのだが、母は財布がどうかして
旨
(
うま
)
く開かないのに
焦
(
じ
)
れて、齒で引き裂いたが、さうすると金は地へ落ちるし、傍で見てゝおれは母の顏が怖かつた。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
収 (
焦
(
じ
)
れったく)どうしても糞もあるもんか。来られないと言ったら来られないんだ。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
緋と水色の縮緬でこしらへた
薬玉
(
くすだま
)
の簪ももつてゐた。お国さんはなにか新しいのを買つてもらふと自慢してみせておきながらよく見ようとすれば袂へかくしたりして人を
焦
(
じ
)
らせる。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
両力士たちまち飛びかかってかまんとしても、猿ぐつわ互いに
焦
(
じ
)
れ込んで揉み合うばかり。やっと捻じ倒して勝負はあったが一向栄えず、次も次もこんな工合で闘犬の味はさらになし。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
然るにそうしたせっかくの千載一遇の歓会なのに、とかく、圓朝はふさぎ込んでばかりいる、何話し掛けても生返事ばかり、男の
意
(
こころ
)
が読めなくて思わず小糸が
焦
(
じ
)
れて涙ぐみかけたとき
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
あたしをペテンに懸けるのあ、お前さんみたいな頓馬でなくつたつて、ちよつくら難かしいんだからね。あたしやよくよく我慢をしてゐるんだけれども、後になつて
焦
(
じ
)
れなさんなよ……。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:05 五月の夜(または水死女)
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「しばらくの間あの方を
焦
(
じ
)
らして、憂鬱を忘れさせてあげる方法が分つたわ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
鈴木女教員は机の上に両腕を
這
(
は
)
わせながら訊いた。しかし、どんなに突っ込んで訊いても、房枝は
微
(
かす
)
かに顫えながら彼女の顔を見詰めるだけだった。彼女の気持ちはますます
焦
(
じ
)
れていった。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
左
(
と
)
に
右
(
か
)
く二葉亭は八門
遁甲
(
とんこう
)
というような
何処
(
どこ
)
から切込んでも
切崩
(
きりくず
)
す事の出来ない論陣を張って、時々奇兵を放っては
対手
(
あいて
)
を
焦
(
じ
)
らしたり悩ましたりする
擒縦
(
きんしょう
)
殺活自在の思弁に
頗
(
すこぶ
)
る長じていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
大祭司は
焦
(
じ
)
れてきて、会議の中央に立ち上がり、被告たるイエス様に向かい
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
すると、お清の奴、さんざん
焦
(
じ
)
らした揚句に、一時間も奥に引込んで、自分一人でかそれとも誰かの智恵をかりてか、そこの所は分らないがね、一世一代の名句をひねり出したのさ。句に曰く
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
“焦”の解説
焦(しょう)は、西周時代の諸侯国。
『史記』周本紀によると周の武王は神農氏の末裔を焦(現在の河南省三門峡市陝州区)に封じたとある。
『竹書紀年』の記載によると、周の幽王七年(紀元前775年)焦は虢によって滅亡した。
(出典:Wikipedia)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
“焦”を含む語句
焦燥
焦慮
焦躁
焦心
焦点
焦立
焦々
焦眉
焦土
焦熱
焼焦
焦死
黒焦
焦茶
日焦
焦茶色
焦臭
焦熱地獄
小焦
麦焦
...