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水甕
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みずがめ
ふりがな文庫
“
水甕
(
みずがめ
)” の例文
水呑場——とは云っても、自然に湧き出す地下水を
水甕
(
みずがめ
)
に受けているに過ぎなかった。それはこの片盤では、突当りの坑道にあった。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
湯呑が一つしかなかったので、私はもう一度お勝手へ行って、
水甕
(
みずがめ
)
からくんで呑みました。——二度お勝手へ行ったわけですが、水を
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
井戸端の
水甕
(
みずがめ
)
に冷やしてあるラムネを取りに行って宵闇の板流しに足をすべらし
泥溝
(
どぶ
)
に片脚を踏込んだという
恥曝
(
はじさら
)
しの記憶がある。
海水浴
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あの人は卓の上の
水甕
(
みずがめ
)
を手にとり、その水甕の水を、部屋の隅に在った小さい
盥
(
たらい
)
に注ぎ入れ、それから純白の手巾をご自身の腰にまとい
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
喉
(
のど
)
の
渇
(
かわ
)
いた人たちがいないというわけでもなかったが、その渇きは
水甕
(
みずがめ
)
よりもむしろ酒びんをほしがるような
類
(
たぐ
)
いのものだった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
グラナダあたりの
旅人宿
(
ポクダ
)
の土間で、土器の
水甕
(
みずがめ
)
の並んだ間に、
派出
(
はで
)
な縫いのある
財布
(
アルフォリヨ
)
を投げ出したお百姓たちが、何かがやがや議論しながら
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
況
(
いわ
)
んや俺の心境は明鏡止水、明月天に在り、
水甕
(
みずがめ
)
に在りだ。そんな軽薄な奴の息子にかけ換えのないお前を遣る訳に行かん。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
植源の庭には、大きな
水甕
(
みずがめ
)
が三つもあった。お島は男の手の足りないおりおりには、その一つ一つに、水を
盈々
(
なみなみ
)
汲込まなければならなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのとき、一人の
乙女
(
おとめ
)
が垂れ下った柳の糸の中から、
慄
(
ふる
)
える両腕に
水甕
(
みずがめ
)
を持って現れた。それは兵部の宿禰の命を受けた訶和郎の妹の
香取
(
かとり
)
であった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
瓦は別として、「あらやち」(荒焼)と呼ぶ
南蛮焼
(
なんばんやき
)
と、「じょうやち」(上焼)と呼ぶ陶器とである。南蛮の方は
無釉
(
むゆう
)
のもので、主に
泡盛壺
(
あわもりつぼ
)
や
水甕
(
みずがめ
)
を作る。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
水甕
(
みずがめ
)
を割る力を持っているのだから、これを利用して
槓杆
(
こうかん
)
と
線条
(
せんじょう
)
のメカニズムを考案すれば、深夜、最も温度の下ったときに、天井から短剣を落としたり
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ある朝彼は山へ行く途中、ちょうど部落のはずれにある
噴
(
ふ
)
き
井
(
い
)
の前を通りかかると、あの娘が三四人の女たちと一しょに、
水甕
(
みずがめ
)
へ水を
汲
(
く
)
んでいるのに
遇
(
あ
)
った。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また『
水甕
(
みずがめ
)
』の昭和十年この方数十回にわたり、
松原三夫
(
まつばらみつお
)
氏の正徹伝が載っていて、伝記研究の
白眉
(
はくび
)
である。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
次の段に乗せてあった
摺鉢
(
すりばち
)
と、摺鉢の中の
小桶
(
こおけ
)
とジャムの
空缶
(
あきかん
)
が同じく
一塊
(
ひとかたまり
)
となって、下にある火消壺を誘って、半分は
水甕
(
みずがめ
)
の中、半分は板の間の上へ転がり出す。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
水甕
(
みずがめ
)
を綱でくくって、それを手で
提
(
さ
)
げて行く。サマリイの女のように肩に乗せることはしない。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
以前に幅の広い
薄板
(
うすいた
)
をまげてとじた桶、または
水甕
(
みずがめ
)
をもって水をはこんでいたころには、これに手をつけてひっさげるなどということは、想像もおよばぬ話であった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
(舎衛城郊外の池、呪術師の娘水を汲みに来り、
水甕
(
みずがめ
)
を水に浸せし儘、景色に見入りて居る。)
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大勢がどやどや駈寄って、口々に荒い言葉で
指図
(
さしず
)
し合って、燃えついている障子を屋根から外へ
抛
(
ほう
)
りだしたり、バケツや
手桶
(
ておけ
)
で
水甕
(
みずがめ
)
の水を
掬
(
すく
)
ってきたりした。父の目も血走った。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
突然、流し元の
水甕
(
みずがめ
)
でポチャリと水の跳ねた音がありましたのでな、
何気
(
なにげ
)
なくひょいと
覗
(
のぞ
)
いて見ましたところ、クルクルとひとりでに水が渦を巻いていたと言うので厶りまするよ。
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
エルカラとコラヴァとカスワとイラルから成る
多美児
(
タミル
)
族が、カランダガラの山腹に、峡谷に、平原に、カラ・オヤの河べりに、
白藻苔
(
セイロン・モス
)
の
潰汁
(
かいじゅう
)
で、
和蘭更紗
(
オランダさらさ
)
の
腰巻
(
サアロン
)
で、腕輪で、
水甕
(
みずがめ
)
で
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
大は人間がすっぽり入ってしまうシナの大
水甕
(
みずがめ
)
から、小は
掌
(
てのひら
)
にかくれる古代エジプトの香油入れまで、彼の好みにより集められた瓶・壺の類が所せましと並べられて、一種の壮観を呈していた。
蒐集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
これはもう頭自体が
水甕
(
みずがめ
)
にほかならないと信じるようになるのであった。
勉強記
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
花瓶はちょっと
縁
(
えん
)
どおいが、
水甕
(
みずがめ
)
だって時計だってすぐ新しく買い込まにゃならぬ。そうなると、商人は素晴らしく
儲
(
もう
)
かるではないか。なにしろべら棒に沢山売れることになっているからなあ。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
口切りの茶の湯もできぬようでは、茶の湯の
冥加
(
みょうが
)
も尽き果てた。お身どもは南蛮貿易をなさるゆえ、呂宋の壺など、
水甕
(
みずがめ
)
にするほども貯えてござるだろうが、と持ちかけるようなことをいった。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
としゑが台所の
水甕
(
みずがめ
)
を覗くと、俺が汲んで来ると素早く手桶を下げた。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
まっくらな家の中を、人々は盲のように手でさぐりながら、
水甕
(
みずがめ
)
や、
石臼
(
いしうす
)
や
大黒柱
(
だいこくばしら
)
をさぐりあてるのであった。すこしぜいたくな家では、おかみさんが
嫁入
(
よめい
)
りのとき持って来た
行燈
(
あんどん
)
を使うのであった。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
女の眼が大きな
水甕
(
みずがめ
)
の胴体に吸いつけられた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
日吉は、
水甕
(
みずがめ
)
の
蓋
(
ふた
)
をあけて見て
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ガラッ八、今朝食った物へ、みんな封印をしろ。鍋や皿ばかりでなく、
水甕
(
みずがめ
)
も
手桶
(
ておけ
)
も一つ残らずやるんだ、解ったか」
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
手のもげかかった仏像、傷ものの陶磁器、エキゾチックな
水甕
(
みずがめ
)
や
花瓶
(
かびん
)
、刀剣や
鍔
(
つば
)
や
更紗
(
さらさ
)
の珍らしい
裂
(
きれ
)
なども集めていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
乙女
(
おとめ
)
たちの一団は
水甕
(
みずがめ
)
を頭に
載
(
の
)
せて、
小丘
(
こやま
)
の中腹にある泉の傍から、
唄
(
うた
)
いながら
合歓木
(
ねむ
)
の林の中に隠れて行った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この窯は昔北九州地方でよく描かれた松絵の
大捏鉢
(
おおこねばち
)
や
水甕
(
みずがめ
)
を、一番近年まで焼いていたところであります。近頃また再興しましたが雄大な作品であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
台所には水棚も
水甕
(
みずがめ
)
も無く、漬物桶を置いたらしい杉丸太の上をヒョロ長い
蔓草
(
つるぐさ
)
が
匍
(
は
)
いまわっていた。空屋特有の湿っぽい、
黴臭
(
かびくさ
)
い臭いがプンと鼻を衝いた。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これに反してその素材を用いて作り上げられた間に合わせの体系や理論の生命は必ずしも長くはない。場合によってはうちの台所の
水甕
(
みずがめ
)
の生命よりも短いこともある。
空想日録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
茶の湯も何も
要
(
い
)
らぬ事にて、のどの渇き申候節は、すなわち台所に走り、
水甕
(
みずがめ
)
の水を
柄杓
(
ひしゃく
)
もてごくごくと牛飲仕るが一ばんにて、これ利休の茶道の奥義と得心に及び申候。
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
若い女が頭に
水甕
(
みずがめ
)
を載せて出て来る。地面に
胡座
(
あぐら
)
をかいている青年一が呼び停める。
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
タミル人は、この
錫蘭
(
セイロン
)
島の奥地からマドラスの北部へかけて、彼らの熱愛する古式な
長袖着
(
キャフタン
)
と、
真鍮
(
しんちゅう
)
製の
水甕
(
みずがめ
)
と、金いろの腕輪とを大事にして、まるで
瘤牛
(
ジイプ
)
のように山野に
群棲
(
ぐんせい
)
していた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
僕はいまだに目に見えるように、顔の赤い水屋の
爺
(
じい
)
さんが
水桶
(
みずおけ
)
の水を
水甕
(
みずがめ
)
の中へぶちまける姿を覚えている。そう言えばこの「水屋さん」も
夢現
(
ゆめうつつ
)
の境に現われてくる幽霊の中の一人だった。
追憶
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
水甕
(
みずがめ
)
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
台所で
水甕
(
みずがめ
)
のひっくらかえる音などを聞きつけて、隣に借家していた大学生が裏口へ飛び出して来てくれた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お勝手の
水甕
(
みずがめ
)
——早支度をするので飯炊きの権三郎が前の晩からくみ込んで置いた水の中には、馬を三十匹も
斃
(
たお
)
せるほどの恐ろしい毒が仕込んであったのです。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今日作るものと焼き始めた頃のものと、さしたる相違はないと思える。それほど作るものは時代離れがしている。湯通し、
蓋附土鍋
(
ふたつきどなべ
)
、
蓋無
(
ふたなし
)
土鍋、
捏鉢
(
こねばち
)
、
水甕
(
みずがめ
)
いずれも特色がある。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
薪
(
まき
)
も割ってもらわなくちゃこまるし、
糠味噌
(
ぬかみそ
)
もよく
掻
(
か
)
きまわして、井戸は遠いからいい気味だ、毎朝
手桶
(
ておけ
)
に五はいくんで来て台所の
水甕
(
みずがめ
)
に、あいたたた、馬鹿な亭主を持ったばかりに
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それから途方に暮れたまま、来るともなく台所に来て
水甕
(
みずがめ
)
のまわりを見廻しているうちにヤットわかったね。水甕の上の
杓子
(
しゃくし
)
や
笊
(
ざる
)
を並べた棚の端に、重曹の瓶と
匙
(
さじ
)
が一本置いてあるんだ。
無系統虎列剌
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
中庭の土に埋め込んだ
水甕
(
みずがめ
)
に金魚を飼っている。Sがたんせいして世話したおかげで無事に三冬を越したのが三尾いた。毎朝廊下を通る人影を見ると三尾
喙
(
くち
)
を並べてこっちを向いて
餌
(
えさ
)
をねだった。
藤棚の陰から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかもそれらの窯がしばしば寄り添って建てられ、遠くには青い海、近くには緑の林があるのですから、絵のような光景であります。その大きな窯で盛に大きな
水甕
(
みずがめ
)
を焼きます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そこで、深夜の酔歩がはじまる。
水甕
(
みずがめ
)
のお家をあこがれる。教養人は、弱くてだらしがない、と言われている。ひとから招待されても、それを断ることが、できない種属のように思われている。
豊島与志雄著『高尾ざんげ』解説
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「もっとも、たいがい出て来ました。
翌
(
あく
)
る日か、遅くて三日目くらいには、誰かが見付けます。簪が火鉢の灰の中に突っ立っていたり、
擂粉木
(
すりこぎ
)
が仏壇の中にあったり、徳利が
水甕
(
みずがめ
)
の中に沈んでいたり」
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
常設された小店で色々なものが見つかる。
蒸器
(
むしき
)
、
黒釉
(
くろぐすり
)
の
薬煎
(
やくせん
)
や
蓋物
(
ふたもの
)
、または大きな
水甕
(
みずがめ
)
など、買わないわけにはゆかない。近くの窯やまた遠くは谷城あたりからも来るようである。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
益子は東京に一番近い大きな窯場とて、東京の台所で用いられる雑器の多くは、この窯から運ばれます。鍋、
行平
(
ゆきひら
)
、
片口
(
かたくち
)
、
擂鉢
(
すりばち
)
、土瓶、火鉢、
水甕
(
みずがめ
)
、塩壺など様々のものを作ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
水
常用漢字
小1
部首:⽔
4画
甕
漢検1級
部首:⽡
18画
“水”で始まる語句
水
水際
水底
水溜
水上
水面
水晶
水嵩
水車
水瓶