トップ
>
放
>
ほう
ふりがな文庫
“
放
(
ほう
)” の例文
湯呑みは、長い間使わずに
放
(
ほう
)
ってある。すると、女中のオノリイヌが、その中へ、ランプの金具を
磨
(
みが
)
く赤い
磨
(
みが
)
き砂を
容
(
い
)
れてしまった。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それで僕が六号活字を受持つてゐる時には、
性質
(
たち
)
の
好
(
よ
)
くないのは、大抵
屑籠
(
くづかご
)
へ
放
(
ほう
)
り込んだ。此記事も全くそれだね。反対運動の結果だ
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ええ、芝公園
増上
(
ぞうじょう
)
寺の
境内
(
けいだい
)
に若い女の
絞殺
(
こうさつ
)
体が二つ、
放
(
ほう
)
り捨てられていたというんです。ちょっと新聞の記事を読んでみましょうか——
探偵会話 下駄を探せ:――芝公園 女の殺人事件――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自叙伝は、ほんの少し書き出されただけで
放
(
ほう
)
ってあった。あとを続けようとして机に向っても心はいつもあらぬ事にのみそれて行った。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
「
放
(
ほう
)
り出されたくなかったら、いまのまま
温和
(
おとな
)
しくしていろ」と彼は云った、「人がましいことを考えると悲しいおもいをするぞ」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
正勝はそう言って、巡査の乗っている馬の
轡
(
くつわ
)
を捉えた。巡査は手綱を
放
(
ほう
)
って、馬から下りた。そして、長靴のままで露台へ上がっていった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
死んだ人間はまだ沖に
放
(
ほう
)
りっ
放
(
ぱな
)
しになっているのに何が善後策だ。その弔慰の方法も講じないまま自分達の尻ぬぐいに取りかかるザマは何だ。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼の人が来れば仕事の有る時は、一人
放
(
ほう
)
って置いて仕事をし、暇な時は寄っかかりっこをしながら
他愛
(
たあい
)
もない事を云って一日位座り
込
(
こ
)
んで居る。
秋風
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると、三之助は、いきなり手綱を
放
(
ほう
)
り出した。何をするのかと見ていると、露草の中に坐って、馬の顔の下から、武蔵へ両手をついていった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どうしてあんな奴をこの辺に
放
(
ほう
)
っておくんでしょう。
私
(
あたし
)
の前歯二本を抜けなんて、ほんとに恐ろしいわ。髪の毛ならまた
生
(
は
)
えもしようが、歯はね。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「この次から、あまり長い間
放
(
ほう
)
つておくことは無しにしようじやないか?」と彼は、真顔で卑怯な相談を持ちかけた。
毒気
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
凝如
(
じつ
)
としていても
爲方
(
しかた
)
が無いので、バレツトも
平筆
(
ふで
)
も、臺の上に
放
(
ほう
)
ツたらかしたまゝ、ふいと
起
(
た
)
ツて
室
(
へや
)
の内を
歩
(
あるき
)
廻ツて見る。それでも氣は變らない。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
と、ランチにまたロップを
放
(
ほう
)
る。ランチはまた
波飛沫
(
なみしぶき
)
を上げ上げ、半弧をえがいて、ぽつぽつぽつと引き返してゆく。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
もし下稽古があまり進んでいなかったら、そして
紛擾
(
ふんじょう
)
の起こる恐れで制せられていなかったら、クリストフはすべてを
放
(
ほう
)
り出したかもしれなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は月の光でその文字面をちらりと
眺
(
なが
)
め、それからその時計を遠く海のなかへ
放
(
ほう
)
り投げてわっと泣きだしました。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「パラソルを取ってちょうだい」と、ジナイーダは言って、——「まあわたし、あんな所へ
放
(
ほう
)
り出してしまったわ。だめ、そんなにわたしの顔を見ちゃ。 ...
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
そういう時に、自力で
起
(
た
)
ちあがる腹を決めるのが、
夙
(
はや
)
くから世間へ
放
(
ほう
)
り出されて、苦しんで来た彼女の強味で、諦めもよかったが、転身にも
敏捷
(
びんしょう
)
であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんなことを
為
(
す
)
る奴もあるが、俺の方ではチャンと見張りしていて、そんな奴あ
放
(
ほう
)
り出してしまうんだ。それにそう
無暗
(
むやみ
)
に連れて来るって訳でもないんだ。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
その行燈の下に幸内は、水を浴びせられたままで
放
(
ほう
)
って置かれてありました。主膳はその傍へ寄って来て
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いやね、障子に
放
(
ほう
)
ったりしちゃ。壁にでも……屋根にでも……投るものよ。いいからいらっしゃい。」
黒点:――或る青年の「回想記」の一節――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
油を
打
(
ぶ
)
ッ
注
(
か
)
け、
駒下駄
(
こまげた
)
を片手に
提
(
さ
)
げ、表の戸を半分明け、身体を
半
(
なか
)
ば表へ出して置いて、手らんぷを死骸の上へ
放
(
ほう
)
り付けますと、見る/\内にぽっ/\と
燃上
(
もえあが
)
る
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
、五日も六日も、そのまゝ
放
(
ほう
)
たらかしとくなんて、平気でそんなことがぬかせる奴は人間じゃねえぞ!
土鼠と落盤
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
ぼくは動く気がしないので、ながいあいだ
放
(
ほう
)
っておいたが、どうしてもノックをやめないんだ。
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
どうもあんまり長い間
放
(
ほう
)
つてあるので、心に懸つて仕様がないもんですからね。私考へたんですよ、水橋にあればこちらでちよい/\おまゐりもして下さるんだしするから、この際それを
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
いやさ、
転
(
ころ
)
ばぬ
前
(
さき
)
の
杖
(
つえ
)
だよ。ほんにお願いだ、気を着けておくれ。若い人と違って
年老
(
としより
)
のことだ、
放
(
ほう
)
り出されたらそれまでだよ。もういいかげんにして、
徐々
(
やわやわ
)
とやってもらおうじゃないか。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金太郎は
急
(
きう
)
に、一切のことを
誰
(
たれ
)
かに話して、自分とその
老
(
ろう
)
人とが同じ危
險
(
けん
)
状態にあつたことを現在世
界
(
かい
)
中で自分だけが知つてゐるといふこの
祕密
(
ひみつ
)
から、いちはやく解
放
(
ほう
)
されたい
衝
(
せう
)
動をうけた。
坂道
(旧字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
外国人——
仏蘭西
(
フランス
)
人以外——のほうつき廻っていそうな通りを選んで、精々こっちも
放
(
ほう
)
つきまわっているんだが、もっとも、そう言ったからって、ただ漠然とほうつき廻っているんじゃない。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
其処
(
そこ
)
では人が死ぬと、蓆で包んで、
後世山
(
ごしょうやま
)
と証する籔の中に
放
(
ほう
)
ったが、その家族や親戚朋友たちは、
屍
(
しかばね
)
が腐爛して臭気が出るまでは、毎日のように後世山に訪れて、死人の顔を覘いて帰るのであつた。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
さうぢや わしは
殺
(
ころ
)
すことがきらひぢやから
放
(
ほう
)
つておいたよ
小熊秀雄全集-22:火星探険―漫画台本
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「私は二日以上あなたを
放
(
ほう
)
ってはおきませんよ。」
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
娘 あの人、一人、
放
(
ほう
)
つといていいの。
迷子になつた上等兵(ラヂオドラマ)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
まだ暮れたばかりの夏の
宵
(
よい
)
のことだった。不意に起った銃声に、近所の人々は、夕食の
箸
(
はし
)
を
放
(
ほう
)
りだして、井戸端のところへ集ってきた。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これが石油を
襤褸
(
ぼろ
)
に
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
まして、火を着けて、下から
放
(
ほう
)
り
抛
(
な
)
げたところですと、市川君はわざわざ
崩
(
くず
)
れた
土饅頭
(
どまんじゅう
)
の上まで降りて来た。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「私は自分のしたことを知っています、こうなることも覚悟していました、お願いですから私のことを
放
(
ほう
)
っておいて下さい」
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いい心掛けにはなりてえものだ。お人よしの三次を
放
(
ほう
)
って、いろは茶屋のお
品
(
しな
)
とたくさんふざけておいでなさい」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ザロメがいくら呼びかけても
無駄
(
むだ
)
だった。彼は一口も飲み下すことができなかった。いつでもかならずたたむ
胸布
(
ナフキン
)
を、そのまま食事の上に
放
(
ほう
)
り出した。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
お金ばかりほしがっているんです。どうぞ私を牢に入れないで下さい。小さい児なのに、この冬の最中に勝手にしろといって往来に
放
(
ほう
)
り出されるんです。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「ナニおじさん、大丈夫だよ、この先生はいつでも
酔払
(
よっぱら
)
ってるんだから
放
(
ほう
)
っとけば一人で帰るよ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鍋や何かの物を掴み出して食ったり、
種々
(
いろ/\
)
の
器物
(
もの
)
を
放
(
ほう
)
ったりして何うも……それに旦那のない
後
(
のち
)
に此のお
内儀
(
かみ
)
さんが正直な気性だから、身代限を出す時にも大概の
横著
(
おうちゃく
)
の奴なら
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
放
(
ほう
)
って置くより外に仕方がなかった。暫くすると、突然泣き止んだ。余りにそれが突然だったので、皆は呆気にとられてしまった。依子はだしぬけに立ち上って、向うへ逃げていった。
子を奪う
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
あのときばかりは船長以下、
舵
(
かじ
)
もコンパスも
放
(
ほう
)
りっぱなしにして、みんながいっしょにすがりついて、
船橋
(
ブリッジ
)
をごろごろころがった
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
過去の不可思議を解くために、自分の思い通りのものを未来に要求して、今の自由を
放
(
ほう
)
り出そうとするお前は、馬鹿かな
利巧
(
りこう
)
かな
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
風邪をひくじゃないか、寝床へ入れてやればいいさ、いつもは、
放
(
ほう
)
っておいても独りではいるんだ、と幸坊は云った。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
花君
(
かくん
)
。こうお世話をかけては恐縮です。もうご家族なみに、
放
(
ほう
)
っておいていただいたほうがありがたいですよ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういう
執拗
(
しつよう
)
なやり方は、
噂
(
うわさ
)
の種となった。農家の人々はそれを笑っていた。クリストフが何者であるか知られてしまった。人々は笑いながらも彼を
放
(
ほう
)
っておいた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三度目には
怖
(
おそ
)
れて近づく人もなく
放
(
ほう
)
ってあったのを、剛情な男があって、なにを、それは時のめぐり合せだ、物の祟りなんぞは、箱根から東にはねえ、なんぞと言って、
無銭
(
ただ
)
同様で引受けて
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
放
(
ほう
)
っといて、出かけてばかりいるのを許してくれ。
二つの途
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
元来が
放胆
(
ほうたん
)
をもって知られている佐々砲弾だったけれど、涯しない天涯に
放
(
ほう
)
りだされては、心細くならないではいられなかった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「そりゃ
解
(
わか
)
り切った話だね。今にもむずかしいという大病人を
放
(
ほう
)
ちらかしておいて、誰が勝手に東京へなんか行けるものかね」
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十五にしかならない、田舎の小娘に手を出し、子供を二人も産ませておいて
放
(
ほう
)
り出す。しかも子供の一人を「自分の子ではない」と難くせをつけた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
放
常用漢字
小3
部首:⽁
8画
“放”を含む語句
放擲
放下
追放
放棄
放蕩
放縦
突放
解放
放心
放浪者
遣放
放火
開放
放肆
放免
奔放
放任
放埒
手放
出放題
...