手袋てぶくろ)” の例文
その男は、おかをこえて、ブランブルハーストえきからあるいてきたとみえ、あつい手袋てぶくろをはめた手に、黒いちいさなかわかばんをさげていた。
「じゃ、あなたをどうするの? わたし、あなたを愛していなくって?」そう言うと彼女は、手袋てぶくろの先で、わたしの鼻をたたいた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ひざまへちてた、ひとツのはう手袋てぶくろ格恰かくかう出来できたのを、わたしつて、てのひらにあてゝたり、かふうへツけてたり
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「どんなにか手袋てぶくろは、うちかえりたいとおもっているだろう。」とかんがえると、政雄まさおは、どうかしてさがしてきてやりたい気持きもちがしたのであります。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし若い男や女が、二重廻にじゅうまわしやコートや手袋てぶくろ襟巻えりまきに身をよそおうことは、まだ許されていない時代である。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あれ、ほゝてのひらへもたせてゐる! おゝ、あのほゝれようために、あの手袋てぶくろになりたいなア!
頭蓋骨は、その外側を鍍金して髑髏杯を作るため、右手は、爪をつけたまま皮を剥いで手袋てぶくろとするためである。シャクの弟のデックの屍體もさうした辱しめを受けて打捨てられてゐた。
狐憑 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
このご馳走ちそうをつくるあいだ、わたしは人間のにおいがつかないように注意して、牛のほふったばかりのあたたかい血へひたした手袋てぶくろをはめ、また私の息がこのの肉へふきかからないように、マスクをかけた。
ヤナギは毛糸の手袋てぶくろおぬぎ!
子供こどもは、なんとおもいましたか、そのあか手袋てぶくろ自分じぶんのほおにすりつけました。また、いくたびとなく、それに接吻せっぷんしました。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もみくちやにしたので、吃驚びつくりして、ぴつたりをついてたゝみうへで、手袋てぶくろをのした。よこしはつたから、引張ひつぱつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
頭蓋骨ずがいこつは、その外側を鍍金ときんして髑髏杯どくろはいを作るため、右手は、つめをつけたまま皮をいで手袋てぶくろとするためである。シャクの弟のデックの屍体もそうしたはずかしめを受けて打捨てられていた。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
去年きよねん夏頃なつごろから稼場かせぎば姿すがたはじめ、川風かはかぜあきはやぎ、手袋てぶくろした手先てさきこゞえるやうなふゆになつても毎夜まいよやすまずにるので、いまでは女供をんなどもなかでも一ばん古顔ふるがほになつてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
うたぐるのかい? おれはちゃんと見たんだぜ。ズボンのさけ目と手袋てぶくろのやぶれたところから、はっきりくろぼうのようにまっ黒なはだがみえたんだ。おめえなんか、どう思っていたかしらねえがね
政雄まさおは、ねえさんからこさえてもらいました、あか毛糸けいと手袋てぶくろを、学校がっこうからかえりに、どこでかとしてしまったのです。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
毛糸の手袋てぶくろめ、白足袋しろたび日和下駄ひよりげたで、一見、僧侶そうりょよりは世の中の宗匠そうしょうというものに、それよりもむしろ俗か。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男は、かみさかれた手袋てぶくろとズボンのすそを、しゃがみこんでしらべていたが、そのままくるりとむきをかえ、いちもくさんに旅館りょかんの中にかけこみ、足音あしおともあらく、じぶんの部屋へやにはいってしまった。
毛糸けいと手袋てぶくろめ、白足袋しろたびに、日和下駄ひよりげたで、一見いつけん僧侶そうりよよりはなか宗匠そうしやうといふものに、それよりもむしぞく
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかもゆきなすゆびは、摩耶夫人まやぶにんしろほそはな手袋てぶくろのやうに、まさ五瓣ごべんで、それ九死一生きうしいつしやうだつたわたしひたひそつり、かるむねかゝつたのを、運命うんめいほしかぞへるごとじつたのでありますから。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爾時そのとき母様おつかさんわたし手袋てぶくろこしらえてくだすつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)