感慨かんがい)” の例文
ついに、このかもめは、きたをさしてながたびのぼりました。かれは、去年きょねんきた時分じぶんのことなどをおもしていろいろの感慨かんがいにふけりました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
天下てんか役人やくにんが、みな其方そちのやうに潔白けつぱくだと、なにふことがないのだが。‥‥』と、但馬守たじまのかみは、感慨かんがいへぬといふ樣子やうすをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ちょうぜんとして感慨かんがいにふけっていると、とつぜん猟犬フハンは二つの耳をきっと立てて尾をまたにはさみながら、地面の上をかぎまわった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
故山に帰る心事 だんだん日本に近づくに従って私は非常の感慨かんがいに打たれて、どうも日本に帰るのがはずかしくなった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「然うさ、五十百歩ひやくぽさ」と、友は感慨かんがいへないといふふうで、「少許すこしめて、少許知識ちしきおほいといふばかり、大躰だいたいおいて餘りたいした變りはありやしない。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
埠頭バンドを埋めた黒山の群衆のなかから、日の丸の旗がちらちら見えるのに、負けてきた、という感慨かんがいが、今更いまさらのように口惜くやしく、済まないなアとみあげて来ました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
蘿月らげつは悲しいとかさびしいとかふ現実の感慨かんがい通過とほりこして、だ/\不思議ふしぎな気がしてならない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一隊いつたい三十有餘名いうよめい三年さんねん以來いらい馴染なじみ水兵等すいへいらは、わかれをしまんとて、輕氣球けいきゝゆう周圍ぐるり取卷とりまいたが、たれ一言いちごんはつするものい、なかには感慨かんがいきはまつて、なみだながしたものもあつた。
こうつくづく自分の生まれたこの村を遠くから眺めて、深い感慨かんがいにふけるようなこともなかった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
仕方がないので故けうに對して惜別の感慨かんがいにふけるといつたやうな目的で自轉車をひつぱり出した。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
自分が追放中に生れたということにも多少の感慨かんがいはあったにもせよ、むしろこの世に生をうけた小さな生命に対する愛情あいじょうせつなさだけが止みがたきものに変っているのである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
大沢は、以上のことをぶちまけて次郎に話したあと、いかにも感慨かんがい深そうに言った。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
往時わうじかへりみて感慨かんがいもよふすのとき換骨脱體くわんこつだつたいなる意味いみはじめてかいしたるのおもひあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
彼は寂しい狭い感慨かんがいふけった。彼は郡山の古道具屋で見付けた「神魚華鬘之図しんぎょけまんのず」を額縁に入れて壁に釣りかけ、縁側に椅子いすを出して、そこから眺めた。初夏の風がそよそよと彼を吹いた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、對局たいきよくしながらフトへんにをかしくなつて、そんな感慨かんがいらした事もある。
いはんや明日よりはまつたく人跡いたらざるの地をさぐるに於てをや、嗚呼ああ予等一行はたして何れの時かよく此目的をたつするを得べき、想ふて前途のこといたれば感慨かんがい胸にせまり、ほとんどいぬる能はざらしむ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
あれからたった半年、今目の前にをこぐ可憐かれんな姿は、深い感慨かんがいをそそるものがある。時代に順応じゅんのうする子どもというもの。半年前の彼のことを、いえば今は恥ずかしがる大吉なのを知っている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そのさいだれよりも感慨かんがいふかそうにえたのは矢張やは良人おっとでございました。
なぜならば、彼には、余りに多くの感慨かんがいがあったからである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いろいろな感慨かんがいが胸にあふれて歩くともなく歩いてくると、かれは町の辻々つじつじに数名の巡査が立ってるのを見た、町はなにやら騒々しく、いろいろな人が往来し
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
にん無限むげん感慨かんがいで、えなくなるまで、いっしょに、そのとりかげ見送おくっていたのであります。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、いかにも感慨かんがい深かそうにうなずいて
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
万里ばんり異域いいき同胞どうほうの白骨を見ようとは、富士男にとってあまりに奇異きいであり感慨かんがい深きことがらであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
これをくと、さすがにだまっていたいしも、感慨かんがいえないふうで
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)