)” の例文
そして、判った以上、すぐに、命ぜられた役を、出来るだけ早く果したいと、気が、いてきた。それで、大きく、幾度もうなずいて
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
漸く驛遞の家に着いたので、あすの馬をあつらへ、そこから四五町さきの宿屋へ案内されるまでがまた一里も歩く樣に氣がかれた。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
図書 (きつつ)おなさけ余る、お言葉ながら、活きようとて、討手の奴儕やつばら、決して活かしておきません。早くお手に掛け下さいまし。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気がいておりましたせいか、ここの処に鯛の骨が刺さりまして、痛くてたまりませんので……実は先年、講習会へ参りました時に
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あるいは機先を制して、むこうから逆寄さかよせに押しかけて来るかもしれない。下世話げせわのことわざにもある通り、いては事を仕損ずる。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何彼なにかにつけてき立てられるような心持がするに相違ない。僕はお祖父さんお祖母さんを観察して、時には心細かろうと察している。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
気がくし、足は自由にならない。沼水はかなり深かった。介は膝まで濡れた足をもどして、半町ほど後ろから、堤へ這い上がった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は彼女に話しかけたかつたけれど、手は鐵のやうな握り方で、掴まれてゐた——私はいて行けないやうな大胯でき立てられた。
私の心持ちは仕事のことや、家のことやでき立っているけれど、からだはこの炬燵の中にどっしりと坐り込んでしまったようだ。
帰途 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
「おばあさんにつかい道のあるものというのは何だね?」と旅人はおばあさんの話が廻りくどいので、こうき立てて聞きました。
でたらめ経 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
なぜだだらなどと呼ばれるかというに、少しいてくるとどもる癖がある、ことに自分の姓名を云う段になると、どうしても舌がもつれて
だだら団兵衛 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小春日和こはるびよりの暖かさに沿道の樹々の色も美しく輝いていましたが、木村さんは先へ心がくと見えて、あまり口をききませんでした。
暗夜の格闘 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「やあ、どうもこいつは弱った。……お願いというのはいったいどんなことけえ。……気がくからね、手ッ取り早くやってくだせい」
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まごまごしている雇婆をてて、ひやのままの酒を、ぐっと一息にあおると、歌麿の巨体は海鼠なまこのように夜具の中に縮まってしまった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆめおわらい下さるまじく、いずれは再び七年後に、この山頂にて御面談仕るべく、まずは一筆、こころのくまましるし残し申候。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「オイどうしたの? お前どうしたの?」ときこんで問うたが、妻はその凄い眼で自分をじろりと見たばかりで一語も発しない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「さあ、若いものは遅くなると危いで、化粧つくりなどはいい加減にして、早くおいでと言うに。」と、婆さんはやるせなくき立てた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼がすっかり得意になって、自然にきこんで音楽上の手柄話を始めると、頭から両親に怒鳴りつけられた。母は彼をひやかした。
顔を洗っているとき、彼は下女にくるまを二台云いつけるお延の声を、あたかも自分がてられでもするように世話せわしなく聞いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
井谷がいつものき込むような早口でしゃべるのを聞いていると、随分この人はと思うところもあったけれども、段々聞いて行くうちに
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「珍しくおきですね。もうひとっ走り——、参りました! 参りました! ちょうどいま柳橋ですが、これから先はどっちでござんす」
とこのまなこから張り切りょうずる涙を押えて……おおおれは今泣いてはいぬぞ、忍藻……おれも武士もののふの妻あだに夫を励まし、むこいたぞ。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
もうその時は私も形振なりふりは関わず、ただ燻んでひやりと冷たいあの街道の空気に浸り度い心がいた。私も街道に取憑とりつかれたのであろうか。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この混乱の場にあって、お怪我あっては一大事と、梨本御門跡なしのもとごもんぜき様をおきたて申し、従者ともども裏の門から、資朝はお帰し申し上げた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こう決定してからは一日も早く文学と終始した不愉快な日本の生活からのがれるべく俄にき立って、入露の準備をするためにほとんど毎日
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
えっ、その水棲人とはどこにいるって⁈ まあまあ、かせずにブラジル焼酎ピンガでも飲んでだね、リオの秋の四月から聴きたまえ
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
毎朝実枝にさんざんきたてられるまでクニ子はひと時花畑に入りこんでジキタリスの花の数をかぞえてみたり、向日葵ひまわりと背比べをしたり
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
私よりも彼の方がきだした。私達はすぐに外へ出た。風のないうち晴れたいい日だった。私には凡てが喜びに躍ってるように感ぜられた。
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「いいとも。そうしようではないか。——だが、まあ、どんな奴だか早く見せてくれ」殿はいかにも好奇心をおさえ難そうにかせられた。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
然らずば何となく気がいて、出て行けがしにされるようなひがみが起って、どうしても長く腰を落ち付けている事が出来ない。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
平中は侍従を引き寄せながら、かうその耳にささやかうとした。が、いくら気はいても、舌は上顋うはあごに引ついた儘、声らしいものは口へ出ない。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お届け下さりませ、届け先は……それはこの手紙の表に書いてありまする、こうしている間も心がく、それではお頼み申しましたぞえ……
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼らはイエスを揺り起こして「先生、私どもの亡ぶるを顧み給わぬか」と、き込んでなじり気味に訴えました(四の三八)。
……そんなわけどすよって、あんたはんももう好い時節の来るまであまり気をかんとおきやす。この話いたらあきまへん。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
『まあ、何うしませう、先生? こんなに暗くなつちやつた。』と、暫らくあつて松子は俄かに気がき出したやうに言つた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
イヤ、そんなにき立てることはない。カラクリ仕掛けなんぞないけれど、わしはここを出るのだ。ホラ見給え、これが探偵の七つ道具だ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしはあなたを慰めてあげようと思って、大変気がいているんです。ほんのちょっとわたしにいい空気を吸わせて下さい。
れったいというか、苛立いらだたしいというか、我々の方でも少しき込んだ傾きはあったが、どうにもらちがあかないのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
その工場がこの不景気で危くなったときいて、あぶらやではきはじめた。すぐ返済してくれ、さもなければ裁判にかけると威かしたという。
凍雲 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
『いいや、決して悪いことなんか』と、若者はき込んで答えると同時に、傷口からまた血が洩れたのでしょう、苦しそうに咳き込みました。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それには、いいかんがえがあることです。はやくなさらないとだめですから……。」といって、くもは、まりをきたてました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
(しづ)(きこんで)鬼ですとも。鬼以上かも知れない。あなたには、あの人の真のおそろしさが、まだわかっていらっしゃらないのです。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「いいや、今更やめることは出来ないぞ、」とノズドゥリョフは、っときこんで言った。「勝負は始まったのだから!」
しかしそれが鳴り止むと、今度はチッキンチッキンとせはしい音が続く。逃げろ、逃げろ、とその音はかしてゐるやうだ。
童話 (新字旧仮名) / 原民喜(著)
そうなると気がくので、わたしはひとまず我が家へ戻るやいなや、日ごろ自分が信用しているFという雇い人を呼んだ。
と頼めど持來らず徳利などに入るゝに及ばず有合す碗石わんいし五器ごきにも汲み來れときてもいつかな持ち來らず四人爐を圍みて只風雅の骨髓に徹するを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
金色こんじきに秋の日射の斜なし澄みとほる中、かなかなは啼きしきるなり、きて啼き刻むなり、二つ啼き、一つ啼き、また、こもごもに啼きはやむなり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
横になれたら、さぞいいだろうに、母親のペラゲーヤが、ならんで歩きながら、彼女をきたてる。ふたりは奉公口をみつけに、町へいそぐのだ。
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
去年から親達はいてゐたが、肝腎の息子がゆつくりしてゐた。しかし此頃では彼もさうしてはゐられなくなつて來た。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
『そやよつて、もつと待ちまへうと言ひましたのやがな。あんたがあんまりきなはるよつて、ばちが當りましたのや。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)