“急:せ” の例文
“急:せ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治52
泉鏡花32
岡本綺堂21
夢野久作13
夏目漱石12
“急:せ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸19.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語9.1%
文学 > 日本文学 > 戯曲5.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「まあき込まずとよう聞け。……ところでまず、その前に聞くが、お前は昨日きのう来た時に両親はもう居らんと云うたノ」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
兼「左様そういちゃア尚分らなくならア、此のからす/\かんざえもんとア此間こねえだ御新造が来た夕方の事でしょう」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いいや、今更やめることは出来ないぞ、」とノズドゥリョフは、っときこんで言った。「勝負は始まったのだから!」
「オイどうしたの? お前どうしたの?」ときこんで問うたが、妻はその凄い眼で自分をじろりと見たばかりで一語も発しない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
節子はいそいそと支度した。子供等がき立てる中で新しい白足袋しろたびなぞを穿いて、一番おくれて家を出た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「へい、へい。どうぞおきにならないで下さい。折角せっかく、はかったのがこぼれますから。へいと、これはあなた。」
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
子供の声、甲高かんだかな女の声などがそれに交つて、朝湯にはひつて居る私を早く早くとき立てるやうにきこえた。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「これこれ一式氏一式氏、何を云われる、つまらないことを! 命の取りやり、さあ参るぞ!」次第にくのは集五郎である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はからざりき、かずに/\とつゞけるのをいて、ひらけば向島むかうじまなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私の心持ちは仕事のことや、家のことやでき立っているけれど、からだはこの炬燵の中にどっしりと坐り込んでしまったようだ。
帰途 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
「まあくなよ、君、くなよ!」とオリヴィエは彼に答えた。「黙って、口をきかないで、耳を傾けてみたまえ……。」
持ち返って手入れせよと、素人の豊後守から指図さしずをされ融川はさっと顔色を変えた。き立つ心を抑えようともせず、
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『まあ、何うしませう、先生? こんなに暗くなつちやつた。』と、暫らくあつて松子は俄かに気がき出したやうに言つた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お縫 はて、くには及ばぬ。さう事が判つたからは、いちの叔父樣とも御相談して、また分別の仕樣もあらう。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
話の方によほど気がくのであろう? どうも顔色が悪い、土気つちけ色をして、もうこれは生きてる人間の顔色ではない。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「む……。あの時は、うつつだった。自分からいったのではなく、そなたの言葉に、気がくまま、うんと、答えただけであった」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王允が再びきこんでなじったので、人々は、彼の返答いかにと、固唾かたずをのんで、曹操の白い面にひとみをあつめた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その咆哮ほうこうかれるように、正成は「……元成どの。思い過ごし召さるな」と、顔を振って、すぐ次の語へ移った。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『そやよつて、もつと待ちまへうと言ひましたのやがな。あんたがあんまりきなはるよつて、ばちが當りましたのや。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
善悪にかかわらず、うかつに返事をしないのが信西の癖であった。彼は今夜もしばらく黙って考えているので、忠通はすこしいた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はややき込みながら、「率爾そつじながら、少々ものを尋ねるが、その出家と申すは、年の頃はどれぐらいじゃ」と、きいた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
相手は腰を浮かしながら、あののあとを待ち兼ねる。早くとき立てられる気がする。近寄れぬものはますます離れて行く。情ない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だが、清二が工場疎開のことをかすと、「被服支廠から真先に浮足立ったりしてどうなるのだ」と、あまり賛成しないのであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
路はぬかつて歩きにくかつた。解けかかつてグシヨグシヨした雪路は、気がいてゐても、なかなかはかどらなかつたのだ。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
図書 (きつつ)おなさけ余る、お言葉ながら、活きようとて、討手の奴儕やつばら、決して活かしておきません。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また、母親が食卓にスープを運ぶ時のためにも、音楽をもっていた——その時彼は、ファンファーレを鳴らしてきたてた。
源内先生は、あまり機嫌のよくない顔で、空の一方を睨んで突っ立っていられたが、だしぬけに、ひどくき込んだ調子で、
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
然らずば何となく気がいて、出て行けがしにされるようなひがみが起って、どうしても長く腰を落ち付けている事が出来ない。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
漸く驛遞の家に着いたので、あすの馬をあつらへ、そこから四五町さきの宿屋へ案内されるまでがまた一里も歩く樣に氣がかれた。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「オイ、おふくろ、なにをしているんだい? ……。おれをきたてておいては何日いつも自分がまごまごしていやがる」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こよいは、泊っていられない。すぐ行ってすぐ帰るつもりである。心がくので、徳願寺にも立ち寄らず、長岡佐渡は、駒を早めた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人心地のあるお顔はなく、みずからとうとなさるおひとりもない。仲時は、そこの一堂をさしながらおき立てした。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、き立て、やがてその恵瓊が来るまでの間にと、風呂所にはいって、水を浴び、清衣に着かえ、潔斎けっさいして待っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という夫婦のことばに、偽りがあろうとも思われませんし、そうとすれば、またほかを探す心もくので、久米之丞以下の郷士達は、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えっ、その水棲人とはどこにいるって⁈ まあまあ、かせずにブラジル焼酎ピンガでも飲んでだね、リオの秋の四月から聴きたまえ
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そうなると気がくので、わたしはひとまず我が家へ戻るやいなや、日ごろ自分が信用しているFという雇い人を呼んだ。
曲者は顔を包んでいる。どうやら年は若いらしい。心がいてでもいると見えて、走るがように歩いて行く。主殿の方へ行くのである。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きょうは何だか気がくので、わたしは人車くるまに乗って根津へ駈けつけると、先生はもう学校へ出た留守であった。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その戸を背に刀を避けた魚心堂は、お妙をき立てて庭を走って行く。黒い影が二つ、築山を廻って消えようとしている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「やあ、どうもこいつは弱った。……お願いというのはいったいどんなことけえ。……気がくからね、手ッ取り早くやってくだせい」
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「わッ」と、それを見た室内の者は驚きの声を筒抜かせたが、かっき立ち怒ったのは花婿武者所鬼王丸であった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、逃げられるほど追いたくなるのがこの道の人情とやら、ことにはなにしろきの字のこと、まあいては事を仕損じる。
まつらす電車でんしやかぜに、春着はるぎそで引合ひきあはごころ風情ふぜいなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五郎も気はく。そして、共に門外へは出たが、高徳は、郎党わずかを連れたのみで、ここの今木城の兵をひきつれて行く様子はなく、
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、湧井半太夫と、青砥弥助とは、駕をき立てて、たッたと駈けだした。そして、真っすぐに浜町の千坂家の下屋敷へ。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人は気の抜けたようになっている私をき立てて、こんどは改めて表玄関から名刺を出し、吉岡五郎氏に面会を求めた。
情鬼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
部屋の口へ立った伯父の鳥羽蔵が、もうき立てているのだった。まるで常日頃の遊山ゆさんにでも誘うようにである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「珍しくおきですね。もうひとっ走り——、参りました! 参りました! ちょうどいま柳橋ですが、これから先はどっちでござんす」
美佐子はきたてるようにして言った。そして、彼女は大急ぎで顔の白粉おしろいなおしにかかった。
秘密の風景画 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そう決心すると、柳沢が今晩もまた行ってお宮を呼びはしないかと思われて、気がけて少しも猶予してはいられない。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
笹村はかさかさと北風に鳴るその音を耳にしながら、き立てられるような心持で、田舎へ送る長い原稿を書いていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ゆめおわらい下さるまじく、いずれは再び七年後に、この山頂にて御面談仕るべく、まずは一筆、こころのくまましるし残し申候。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「彼のほうでは確かに君を知っているよ。彼は君を見たことがあるに違いない」と、バグリオーニはき込んで言った。
お清は頬を膨らまして、ふーっと酒臭い息を吐いた。それから、また彼の顔をじっと見つめながら、心持ちき込んだ調子で云い出した。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と、一人の先生が教室の窓から大声で叫んだ。同時に、お浜のいかにもきこんだらしい、かん高い声が近づいて来た。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私は彼女に話しかけたかつたけれど、手は鐵のやうな握り方で、掴まれてゐた——私はいて行けないやうな大胯でき立てられた。
彼は、いくぶんき込んだ。彼女は、呼吸いきがつまりさうになり、やつと口籠りながら、これだけのことを云つた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「どこだ、何というか、うむ、はやく言わんか。」とき立てられて、トむねをついて猶予ためらって、悪いことをしたと思った。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おき立てするようですが、昨日きのう、中堂からやかましくいい渡されておりますゆえ、今朝はすこしも早く御下山をねがいます」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為憲にいわれてから、急に定遠は腹を極めた。両軍の矢交ぜを見ないうちに、何しろ、常陸を離れてしまうに限ると、気がかれたのだ。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀政もこの時は、多くの味方を得たので、ためらいなく、さきに駈けた部下の一部を救うためにも、きに急いて、追撃戦へ移っていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わずか四、五人の武者がそこらにいたに過ぎない。秀吉に、馬を馬をとかれて、彼らはうろたえ気味に、駈け廻りつつ、口々に答えた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、そんなにき立てるには及ばない」と、外記がうしろから声をかけた時には、女房の姿はもう見えなかった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「まあ、くな。野良狐めが巣を食っているところはこのあたりにたくさんある。まず手近の森から探してみようよ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
潜りのすぐ向う側まで来た足音がまると、お延はまずこう云って誰何すいかした。彼はなおの事き込んだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助は清に命じた通りを、小六に繰り返して、早くしてくれとき立てた。小六は外套マントがずに、すぐ玄関へ取って返した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
六郎 どうして無暗に遣られるものか。飛んでもないことだ。いくら年が若いと云つていてはいけない。まあ、待ちなさい。待ちなさい。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「さあ、若いものは遅くなると危いで、化粧つくりなどはいい加減にして、早くおいでと言うに。」と、婆さんはやるせなくき立てた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お久美は、何となくきつかれるような思いで、目的地に重大な用事を持っている人のように、いつの間にか、裾をからげていそいでいた。
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)
微風にびんの毛を吹かせながらかず焦心あせらず歩いて行くものの心の中ではどうしたものかと、策略を巡らしているのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いいとも。そうしようではないか。——だが、まあ、どんな奴だか早く見せてくれ」殿はいかにも好奇心をおさえ難そうにかせられた。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
下らない事をしたものだと思うけれ共、いたり、あんまり喜んだりするときっとこんな事を仕出来すのが私の癖だ。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私よりも彼の方がきだした。私達はすぐに外へ出た。風のないうち晴れたいい日だった。私には凡てが喜びに躍ってるように感ぜられた。
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
大公の面前で、怒りたって指揮棒を投げすて、激しいき込んだ声で楽員のだれかを詰問しながら、気でも狂ったように足を踏み鳴らした。
かつしやるな。山裾やますその、双六温泉すごろくをんせんへ、湯治たうぢさつせえたひとだんべいの。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、相手の事務室に飛び込むなり、直ぐ決闘を申込んだ。ヰルヒヨオはきこんだ大宰相の顔をじろ/\見て、気味が悪い程落付いてゐた。
女はイベットが再びテーブルに眼を落し平気で勝負に身を入れ出すと、小田島をむしるようにき立てて其所そこを離れた。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しゃんと調ったお悦と、き心に肩を揃えて、私は、——瀬戸物屋で——骨董こっとうをも合わせて陳列した、山近き町並の冬の夜空にも
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と剣をふるい、胸前むなさき目懸けて突込みしが、心きたる手元狂いて、肩先ぐざと突通せば、きゃッと魂消たまぎる下枝の声。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わけをただしている暇もないき方なので、源内は、とにかく駕をかえして、先へ急いでゆく黙蛙堂もくあどうについて行った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、盧植が、早く立去れかしと、玄徳を眼でき立てていると、それまで、檻車の横にたたずんでいた張飛が、突然、
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外では、扈従こじゅうきたてていたし、局々つぼねつぼねでは、不意を知った女房たちが、いちどに灯を濡らして泣き乱れていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それには、いいかんがえがあることです。はやくなさらないとだめですから……。」といって、くもは、まりをきたてました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
生絹の声はやや鋭いほどき込み、蘆売りはそのときにはもう小路をまがり、べつの小路にまがろうとする時だった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「そないからしゅう云わんといて。急かされたら尚のことかあッとしてしもて何もも分らんようになるがな」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「まてまて、物事はそうむやみといてはならぬ。なる程、あの夜ちと邪魔立てしたが、それにしても身共の命迄狙うとは何としたことじゃ」
『いいや、決して悪いことなんか』と、若者はき込んで答えると同時に、傷口からまた血が洩れたのでしょう、苦しそうに咳き込みました。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お増は、浅井がもう帰っている時分だと思うと、電車のなかでも気がくのであったが、隠居にいわれたことなどが、繰り返し考え出された。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
梓川の本流がうす暗い緑色になって、浅く流れている、青海原の強い潮流が一筋、き込んで、古代ながらの大木の
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「ね君、ね。僕こんなところに来ていると心寂しくって、……気が苛立ってたまらない。Hはそんなに勉強してるかね。」とぎ込んでいる。
遠野へ (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
彼女はき込んでる小娘のように、ごく早くやたらに読み散らしながら、つめの先で書き抜きをたどっていた。
心のいている二人は、そこにいる眇目の男のことなどは忘れてしまって、灯のかげの暗い村の方角へ駈け出した。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すそを下ろして、ややかれ気味に、お綱の入ったのと一緒に、その編笠を持ってやりながら、手代の新吉も同じ奥へ姿をかき消す……。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その急なるを知り、またからまる二人をあしらいつつ、弦之丞は隙あるごとに、お綱へ向って叫びを投げた。しきりと手を振ってきたてた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太兵衛、久佐衛門、善助たちも、それにかれて、別れのことばもそこそこ、駒の足にならって駆けて行った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
らぬことなれば佛性ほとけしやう旦那だんなどのつるに、こゝろおにやおのづとおもぼてりして
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
上がりきらぬうちから熊蔵くまぞうがこうくと、雁六がんろくひたいのきずで、片目かために流れこむをおさえながら、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、あわただしい陣払いの支度を、足下から火のつくばかり、旗本小姓の面々に、き立てている人と変っていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども先方では今朝にも彼の報告を待ち受けているように気がくので、彼はさっそく田口家へ電話を掛けた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして度外どはずれにんだ調子で、お延の言葉を一刻も早く否定しなければならないという意味に取れる言葉づかいをした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)