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忌々
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いまいま
ふりがな文庫
“
忌々
(
いまいま
)” の例文
子を育てる五月頃になるとよく鶏を盗まれて
忌々
(
いまいま
)
しく思った村の若者達は、其穴を掘って狐を退治した時にも
石椁
(
せっかく
)
には触れなかった。
山と村
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それが
西八条
(
にしはちじょう
)
へ
籠
(
こ
)
められた
後
(
のち
)
、いきなり、この島へ流されたのじゃから、始はおれも
忌々
(
いまいま
)
しさの余り、飯を食う気さえ起らなかった。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手におえない
夥
(
おびただ
)
しい宝に陶酔した顔を挙げて、時々ニヤリニヤリとするのを、手柄をフイにした佐吉は
忌々
(
いまいま
)
しく
睨
(
ね
)
め付けております。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
つまり、コルシカが勝ったのだ! これで以後
忌々
(
いまいま
)
しいマルセーユ人は、
牛角力
(
コンバ
)
に関する限りあまり大きな
法螺
(
ほら
)
は吹かないであろう。
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
がんりきが縦横無尽に場を荒すのを神尾主膳も
忌々
(
いまいま
)
しがっていたが、一座の連中もみんな忌々しがっていました。主膳は堪り兼ねて
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
忌々
(
いまいま
)
しい顔をして、迫って行ったが、ふと、自分の右手の指先から、たらたらと温いものが垂れるので、何気なく
肱
(
ひじ
)
を上げてみると
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
引越して来た日から舌うちしていた
忌々
(
いまいま
)
しい
煉瓦塀
(
れんがべい
)
は、土台から崩れて、彼の借家の狭い庭に倒れ込み、その半分をふさいでしまった。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
その
老獪
(
ろうかい
)
なやり口を思うと、蟹江はまったく
忌々
(
いまいま
)
しい気分になってきます。しかしこれは忌々しがってばかりもいられないことでした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
心の底からこみ上て来る
忌々
(
いまいま
)
しさを耐へかねて、彼女は書物を伏せると一刻も家にぢつとしてゐられないやうな気持ちで一杯になつた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
と僕は今更
忌々
(
いまいま
)
しかった。但馬君が時折腕力を出すのも無理はないと思った。瞞された上に小説まで
貶
(
けな
)
されたのではやり切れない。
妻の秘密筥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼はそれを
忌々
(
いまいま
)
しく思い、その反動として、今度は、伯父の死についてあくまで冷静な観察をもち続けようとの
心構
(
こころがまえ
)
を固めるのである。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
又蔵は
忌々
(
いまいま
)
しいのと、一方には提重の女からいじめられる苦しさとで、だんだん
強面
(
こわもて
)
に平助に迫るので、こちらもうるさくなって来た。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこを離れた大佐はさも
忌々
(
いまいま
)
しげに、【どうして世間は、こんなくだらない、嘘八百の噂に迷わされるのだろう?】とつぶやいた。
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
まだ
忌々
(
いまいま
)
しさが残つて居たが、それも
空腹
(
すきつぱら
)
には勝てず、足を緩めて、少し動悸が治まると、梅沢屋と云ふ
休坂下
(
やすみざかした
)
の蕎麦屋へ入つた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
右衛門は如何に
聡明
(
そうめい
)
怜悧
(
れいり
)
な女でも、矢張り女だから、
忌々
(
いまいま
)
しくもあり、勘忍もしがたいから、定石どおり焼き立てたにちがい無い。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
毎年の元旦に玄関で
平突張
(
へいつくば
)
らせられた
忌々
(
いまいま
)
しさの
腹慰
(
はらい
)
せが
漸
(
やっ
)
とこさと出来て、
溜飲
(
りゅういん
)
が
下
(
さが
)
ったようなイイ気持がしたと
嬉
(
うれ
)
しがった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
……お前は僕を
騙
(
だま
)
そうとするんじゃないだろうね? 近づこうとするとすぐ消えてしまうあの
忌々
(
いまいま
)
しい
幻影
(
まぼろし
)
ではないんだろうね?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
しかもこれらのあまりといえば変化のなさすぎるような心の
印象
(
イメージ
)
の後には、何か
忌々
(
いまいま
)
しい動揺が起ろうとしているように思えた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
自転車の男が帰ってゆくと、懐中の子を女房へ渡して、鷲尾は裏口から
田圃
(
たんぼ
)
の方へ出た。
己
(
おの
)
れが
忌々
(
いまいま
)
しいような、情ないような気持だった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
がそれも朝から晩までこの
忌々
(
いまいま
)
しい柵を眺めて暮さなければならない若い女の身にしてみれば至極無理もない話だ、などと考えるのだった。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
幾度となくザビーネについて吐いた冷評を、クリストフからないがしろにされたのが、いかにも
忌々
(
いまいま
)
しく思われるのであった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そうして人並でないわが健康状態については、
毫
(
ごう
)
も責任がないものの如き
忌々
(
いまいま
)
しさを感じた。その時島田は彼に向って突然こういった。——
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
◎
紀州高野山
(
きしゅうこうやさん
)
の道中で、
椎出
(
しいで
)
から
神谷
(
かみや
)
の中間に、
餓鬼坂
(
がきざか
)
と云うがある、霊山を前に迎えて
風光明媚
(
ふうこうめいび
)
な
処
(
ところ
)
に、こんな
忌々
(
いまいま
)
しい名の坂のあるのは
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
彼は肝腎の話を妨げられて
忌々
(
いまいま
)
しと云う風で顔に一方ならぬ不機嫌の色を浮べて居る、殆ど眉の間に八の字の皺を寄せて居ると云っても好い
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「
中根
(
なかね
)
だな、
相變
(
あひかは
)
らず
爲樣
(
しやう
)
のない
奴
(
やつ
)
だ‥‥」と、
私
(
わたし
)
は
銃身
(
じうしん
)
で
突
(
つ
)
き
上
(
あ
)
げられた
左
(
ひだり
)
の
頬
(
ほほ
)
を
抑
(
おさ
)
へながら、
忌々
(
いまいま
)
しさに
舌打
(
したう
)
ちした。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
「だが
忌々
(
いまいま
)
しい畜生! ここまで判っているのに、実際やってみると、巨人金庫はびくりとも動かないのだ」と帆村は唇を
獏鸚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
かれはかれの考えていることの嘘だらけなのに
忌々
(
いまいま
)
しがって、そこらに大声挙げて何か正実な言葉をかたりたい気がした。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それだのに、ふん、
忌々
(
いまいま
)
しい。お前なんかに家の中をかきまわされてたまるもんか。出て行け、出て行け、今出て行け……
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
我ながら
忌々
(
いまいま
)
しくおもう程に、あなたが恋しいのです、待ちきれないのです、という程の歌で、此処の「ゆゆし」は
忌々
(
いまいま
)
し、
厭
(
いと
)
わしぐらいの意。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「歯に喰ひあてし」という言葉の
響
(
ひびき
)
に、
如何
(
いか
)
にも砂を
噛
(
か
)
むような
味気
(
あじき
)
なさと、
忌々
(
いまいま
)
しさの
口惜
(
くちお
)
しい情感が現われている。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そして小使室に駈けこんだが、彼は自分のその行動がきゅうに
忌々
(
いまいま
)
しくなってそこから振りかえりざま声を荒くした。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
三年の独身は、
漸
(
ようや
)
く四十の声を聞いたばかりで早老人の心を味わせた。それを考えた時は、岸本は
忌々
(
いまいま
)
しく思った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
勝代は、「何でああ変人なのであろう。家じゅうで私だけが同情してやってるのじゃないか」と
忌々
(
いまいま
)
しく感じた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
そして、そういう自分自身が
忌々
(
いまいま
)
しかった。こういう状態は堪らないと思った。此度の機会には、真正面から保子に凡てをぶちまけてやろうと決心した。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
娘の兄らしい兵隊は無言で、親爺らしい百姓が
頻
(
しきり
)
に詫びた。娘は俯向いてこそこそと降りた。
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
って
忌々
(
いまいま
)
しいが叱り飛す張合もない。災難だと諦めた。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「なんだ、
査公
(
おまわりさん
)
でねえだ」と、一人の若者、
獅子鼻
(
ししっぱな
)
を
動
(
うごか
)
しつつ
忌々
(
いまいま
)
し気にいうと、中に交った頬被りの三十前後の女房、
黄
(
きいろ
)
い歯を現わしてゲラゲラと笑い
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
「
首途
(
かどで
)
に、くそ
忌々
(
いまいま
)
しい事があるんだ。どうだかなあ。さらけ
留
(
や
)
めて、一番新地で飲んだろうかと思うんだ。」
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と噛んで含めるように云いつつ正木博士はさも
忌々
(
いまいま
)
し気に、舌に粘り付いた葉巻の屑を床の上に吐き棄てた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
額から首筋にかけて汗のふき出るのがはつきりと判つて、それは拭ふのも
忌々
(
いまいま
)
しい位だ。獲物がばつたりと止まつて、誰の竿ももう大分永い間空しく動いてゐる。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
「知っているもいないもないです」彼は
忌々
(
いまいま
)
しそうに云った。「奴も駅裏の沼地に住んでいるんです」
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
そうして
理
(
わけ
)
もなくむしゃくしゃと腹が立って、運転手に渡した五円紙幣までが
忌々
(
いまいま
)
しくなった。——だが、あの半死の少女を浚って行く泥棒もあるまいじゃないか。
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「ほんとうに
忌々
(
いまいま
)
しいたらありゃしない。ひとの
失敗
(
しくじり
)
を自分の
幸福
(
しあわせ
)
にするなんて。今度出逢ったが最後、この剣でもって思いきりみなの
復讐
(
しかえし
)
をしてやらなくっちゃ。」
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私は、いつの間にか女の足下の方へ腰を、下していたことを
忌々
(
いまいま
)
しく感じながら、立ち上った。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
急いで朝飯かき込み岡崎氏と停車場に
馳
(
か
)
けつくれば
用捨気
(
ようしゃげ
)
もなき汽車進行を始めて吐き出す煙の音乗り遅れし吾等を嘲るがごとし。珍しき事にもあらねど
忌々
(
いまいま
)
しきものなり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
父のその様子を、小初は気の毒な
儚
(
はかな
)
い気持ちで見送ったが、結局何か
忌々
(
いまいま
)
しい気持になった。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
こう云って女は男の
膝
(
ひざ
)
の上に掛けている
毛布
(
ケット
)
を引き
退
(
の
)
けて、自分が男の膝に腰を掛けた。自分のちょっと
間
(
ま
)
の悪いような気のしたのが
忌々
(
いまいま
)
しい。男の不機嫌なのが忌々しい。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
相手は、看護婦のうちの最も美しいのではなく、最も身持の悪い奴であつたのも
忌々
(
いまいま
)
しい。
最も早熟な一例
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
池を離れてからは、短い雑木や芒の山で、日を
遮
(
さえぎ
)
るものがなく、暑さは前にも増して
烈
(
はげ
)
しい。人夫の間違で、草刈道を三、四丁迷い込んで跡へ戻った時は、少々
忌々
(
いまいま
)
しかった。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
瑠璃子は、父の顔を見上げながら、オズ/\
訊
(
き
)
いた。父は、口にするさえ、
忌々
(
いまいま
)
しそうに
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ようようその場を取り繕って寺を出たが、皆
忌々
(
いまいま
)
しがる中に、宇平は
殊
(
こと
)
に落胆した。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
忌
常用漢字
中学
部首:⼼
7画
々
3画
“忌々”で始まる語句
忌々敷
忌々敷相