たま)” の例文
旧字:
しかし、ピストルのたまがとびだすころには、金色のかたまりは、もう警官の背中をとおりこして、ずっと下のほうに落ちていました。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たまは飛びますが、関金せきがねの噛み合わせが、どうやっても、原品のようにつくれませぬ。もう一息、工夫いたせばと思っておりますが」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごおーっと一陣の風をまき起しながら、二千米、一千米、わが高角砲のたまの煙につつまれても、びくともせずに降りて来る。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
胸のまんなかを大砲のたまで貫かれてなお生きてる者があるとしたら、おそらくその時のフォーシュルヴァンのような顔つきをするだろう。
九ちょうの猟銃りょうじゅうは一度に鳴った。距離きょりは近し、まとは大きい、一つとしてむだのたまはなかった。ぼッぼッぼッと白い煙がたって風に流れた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「さあ、飛ぶんだ、ヤッロー、たまをつめかえないうちに!」と、さけびながら、モグリドリの巣にとびのって、いそいできしをはなれました。
彼は銃を持ちなおして雑木ぞうきにかくれて松の下の方へ往った。そして、ねらいを定めて火縄を差した。強い音がしてたまの命中した手応てごたえがあった。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
洗面場で手を洗ってその手をふくハンケチの中からピストルのたまを乱発させるという卑怯千万ひきょうせんばんな行為であるにかかわらず
映画雑感(Ⅳ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たまは額を貫通しているらしく、ベロリと皮の剥けた眉間のあたりに、ピンセットを入れて警察医はしきりに弾の摘出をしているらしい様子でした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
(李の手より受取って見る。)連発銃で、まだたまが篭めてあるらしい。これは証拠物だから保管して置かなければなりません。(卓の上に置く。)
青蛙神 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四五 猿の経立ふったちはよく人に似て、女色を好み里の婦人を盗み去ること多し。松脂まつやにを毛にり砂をその上につけておる故、毛皮けがわよろいのごとく鉄砲のたまとおらず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三発! 四発! 五発! 六発! そして最後のたまが尽きた時に、彼女は自分のひたいのコメカミから、ぬるぬるとして赤いものが、糸のように引いてくるのを知った。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
たぶん、すずめをたすけたいばかりに、おやすずめががわりになったらしく、いっしょにげればよかったものを、ただ一だけ、じっとして、たまたったのでした。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのたまけむりの消えやらぬうちに、われは野獣のゆるがごとき獰猛どうもうなる叫び声を高く聞けり。モルガンはその銃を地上に投げ捨てて、おどり上がって現場より走り退きぬ。
或日「それ飛行機」というので、急いで地下室に入りましたら、台所の屋根を打抜いてたまが落ちました。けれども地下室にいましたので、それほど音は聞えませんかった。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
危ないなたまにうたれはしないか、と眺めていると、囲い場の柵にしてあった牧夫の赤い腹巻をひょいと角に引っ掛けて行って、その闘牛師の鼻っ先で振り廻し振り廻しして
引き出しの奥に一ちょうのピストルが見えた。それはブラウンが学生時代に買ったもので、かつて使われたことがなかった。クリストフはこわれた箱の中に、数個のたまを見出した。
しかしたまがこめてないことがわかり、狂人か酔っ払いだと思われて、行くままにされた。
もっとも、船はまだ入江の中にはいた。監督官はその船に声をかけた。すると中からだれかの声が答えて、月明りのところへ出ないようにしろ、さもないとたまを喰らうぞ、と言った。
でありますからあるいは仕事に少しのつらいことがあるとしても、我々も又戦争で敵のたまを浴びながら闘っている兵隊さんと同じ気持と覚悟をもってやっていたゞきいと思うのです。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
黒ひげの男は、ひと声たかくさけんで、警官のかたごしにピストルをつきだし、つづけざまに五発、透明人間のいるらしい方向ほうこうにむけてぶっぱなした。たまはうなりをしょうじてんでいった。
しかしこの現象が春日の下のかげろうと同じ現象であり、更に進んでは、大砲のたまに対する空気の抵抗や、飛行機のプロペラの研究に利用されていることは、知らない人が多いであろう。
「茶碗の湯」のことなど (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
たまが敵方から飛んで来たようにお見せになる丈けが御苦心でございましょう」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その六つのたまをぬいてポケットにをさめ、ピストルを腰にさしました。そして、しまリスの籠をさげ、バイオリンをかゝへて、朝日をあふぎながら口笛をふいて、ほかの町の方へやつていきました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
おれのたまは調子づいたとみえて うつたびに景気のいい旗が上った
射撃について (新字新仮名) / 竹内浩三(著)
水木 たまきずを負っているそうなが、腕は立つそうだな?
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
しかし駕籠には、無双鉄壁たまよけの御紋どころがある。
モレロはたまをぬき出すと、その仕事にかかった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たまが走るんだね。」
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
跳びつくには、間があり過ぎるし、身を起せば、同時にたまが来るにちがいない。その全神経をつかっても足りない気構えのなかで
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍曹がガヴローシュの上に飛びかかろうとした時、荷車はたまとなって一押しに投げやられ、軍曹の上に激しくつきかかった。
ガンたちは、たまがとどかないほど高いところを飛んでいますが、男は、ついってみたくなって、思わずダン、ダンと二発射ってしまいました。
「ウン、そうだって。お巡りさんが、うしろからピストルをうったら、カーンといってたまがはねかえったっていうぜ。」
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうして庭のすぐ横手のがけ一面に茂ったつつじの中へそのピストルのたまをぽんぽん打ち込んで、何かおもしろそうに話しながらげらげら笑っていた。
B教授の死 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかもあまりに急いで、たまの届くところまで近寄らないうちに火蓋ひぶたを切ったので、鳥はそのまま飛び去ってしまった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
イバンスは銃をとってごうぜん一発うったが、たまはむなしく音を立てて闇中あんちゅうをとび、手ごたえはさらになかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小笠原島へ出て行った『最上』と『千代田』『秋津洲』は、B国艦隊と出あったが、どうしたのかB国艦隊は、わが遊撃隊を見ても、たまとうとしない。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
不敵の男なればただちつつを差し向けて打ち放せしにたまに応じて倒れたり。そこにけつけて見れば、身のたけ高き女にて、解きたる黒髪はまたそのたけよりも長かりき。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかし、たまは、急所きゅうしょをはずれたので、おおかみは、ゆきうえおどがって、げてしまいました。
むなく一発、威嚇いかくに発射した。再び白煙が濛々と立ち込めて、たまは窓硝子ガラスを貫いて、大空へ飛び去った。鼻をつんざく硝煙の香に、顔色変えてやっと夫人が手の動きを止めた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「クリストフ!……たまが出ません!……」
たまがはいつてるから、用心しろ」
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
二度目のたまは、あわてて姿を隠しかけた日本左衛門の近くをかすッて、ド——ンという音波が眠れる山ふところを揺すぶりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
シャンヴルリー街はカラビン銃のたまが届くくらいの長さしかなかった。ボシュエは即座に両手を口のまわりにあてて通話管とし、そして叫んだ。
万一これに一発のたまを与えたならば、熱病其他そのたの怖るべきたたりこうむって、一家は根絶ねだやしになると信じられている。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それで約一キロメートル前方の山腹で一斉いっせい射撃の煙が見えたら、それから一秒余おくれてたまが来て、それからまた二秒近くおくれて、はじめて音が聞こえるわけである。
耳と目 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たまはあたったのでしょうか? 豹はうち殺されたのでしょうか。いや、いや、相手は魔法の怪獣です。一ぱつや二はつのピストルで、殺されるようなやつではありません。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だれでも、こうした光景こうけいるなら、生物せいぶついのちのとうとさをるものは、かみすくいをいのったでありましょう。正吉しょうきちも、こころのうちで、どうかたまのはずれるようにとねがっていました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、みんながたまのとどくところに近づかないように、うまくかばってやりました。
然るを隣なる猟師之を怪み、ひそかうかがひ置きて、深夜に彼に先だち行きて待つに、思はず例の者に行逢ひたり。鬼とや思ひけんたまこめて打ちたり。打たれて遁げければ猟師も帰りぬ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)