平家へいけ)” の例文
そのうち牛若うしわかはだんだんものがわかってました。おとうさんが平家へいけのためにほろぼされたことを人からいて、くやしがってきました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
原士はらし衆の詰めているふもとの木戸へ行って、この大変をおらせしようと存じ、急いで、平家へいけの馬場から降りてきたところでございます
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おご平家へいけを盛りの櫻にくらべてか、散りての後の哀れは思はず、入道相國にふだうしやうこくが花見の宴とて、六十餘州の春を一夕いつせきうてなに集めてみやこ西八條の邸宅。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おれはただ平家へいけの天下は、ないにかぬと云っただけじゃ。源平藤橘げんぺいとうきつ、どの天下も結局あるのはないにかぬ。この島の土人を見るがい。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして摘草つみくさほど子供こどもにとられたとふのを、なんだかだんうらのつまり/\で、平家へいけ公達きんだち組伏くみふせられ刺殺さしころされるのをくやうで可哀あはれであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この附近に、平家へいけ落武者おちむしゃの墓があったといわれている一叢ひとむらの林があったので、伯父が見に行って見たら、それが全部白檀の林だったのだそうである。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
寺男は、ただ意外いがいに思いながら、音のするほうへ近づいていきました。いったところは平家へいけもん墓場はかばでありました。いつか雨はりだしていました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
これは自然のものではなくて平家へいけ一門の首領が良港を作ろうとして造ったものだと言ってある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
現実世界は山を越え、海を越えて、平家へいけ後裔こうえいのみ住み古るしたる孤村にまでせまる。朔北さくほく曠野こうやを染むる血潮の何万分の一かは、この青年の動脈からほとばしる時が来るかも知れない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「やあ/\あれなるは、平家へいけの大将・清盛入道きよもりにふだうとおぼえたり。いざ、めし捕れエ!」
プールと犬 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
これはな、平家へいけさんの御紋じゃ。源平合戦で敗れた平家さんの落武者は、源氏げんじの追討が、えッときびしいもんじゃけえ、日本国中の山奥に逃げこんだんじゃが、このあたりにも来なさったんじゃ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いにしへの『熊野道くまのみち』であるから、石が敷いてあるが、今は全く荒廃して雑草が道を埋めてしまつてゐる。T君は平家へいけの盛な時の事を話し、清盛きよもりが熊野路からすぐ引返したことなども話して呉れた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
道長みちながは、「この世をばわが世とぞ思う」と歌った。権力独占の事実を、後人に告白している。藤原氏の世は乱れた。地方に住まっていた源氏げんじ平家へいけは、かくて必然に、その勢力を得てきたのである。
為朝ためともれいの二十八をつれて西にしもんまもっておりますと、そこへ清盛きよもり重盛しげもり大将たいしょうにして平家へいけ軍勢ぐんぜいがおしよせてました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼の俊寛は「平家へいけ女護によごしま」の登場人物の一人ひとりである。が、倉田くらた菊池きくち両氏の俊寛は、俊寛のみを主題としてゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平家へいけもん運命うんめいも、いよいよきわまり、安徳天皇あんとくてんのうをいただいた二位尼にいのあま水底すいていふかくしずむだんになると、いままで水をうつたようにしんとしていた広間ひろまには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
翌日よくじつあめ晴間はれまうみく、箱根はこねのあなたに、砂道すなみち横切よこぎりて、用水ようすゐのちよろ/\とかにわたところあり。あめ嵩増かさまながれたるを、平家へいけ落人おちうどすさまじきたきあやまりけるなり。りてづく、また夜雨よさめたき
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いにしえの「熊野道くまのみち」であるから、石が敷いてあるが、今は全く荒廃して雑草が道を埋めてしまっている。T君は平家へいけさかんな時の事を話し、清盛きよもりが熊野路からすぐ引返したことなども話してくれた。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
今にもひる小島こじまの頼朝にても、筑波つくばおろしに旗揚はたあげんには、源氏譜代の恩顧の士は言はずもあれ、いやしくも志を當代に得ず、怨みを平家へいけふくめる者、響の如く應じて關八州は日ならず平家のものに非ざらん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
平家へいけ大将たいしょう清盛きよもりは、源氏げんじにかたきをられることをこわがって、義朝よしとも子供こどもつけしだいころそうとかかりました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
成親なりちかの卿の天下同様、平家へいけの天下より悪いかも知れぬ。何故なぜと云えば俊寛は、浄海入道じょうかいにゅうどうより物わかりがい。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天下てんか勢力せいりょくを一もんにあつめて、いばっていた平家へいけも、とうとう源氏げんじのためにほろぼされて、安徳天皇あんとくてんのうほうじて、だんうらのもくずときえてからというもの、この壇ノ浦いったいには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おなじ場所では余り沢山たくさんには殖えないものなのであろうか知ら? 御存じの通り、稲塚いなづか稲田いなだ粟黍あわきびの実る時は、平家へいけの大軍を走らした水鳥みずどりほどの羽音はおとを立てて、畷行なわてゆき、畔行あぜゆくものを驚かす
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとかねてから為朝ためとものゆくえをさがしていた平家へいけかって、為朝ためとも油断ゆだんをねらって、大勢おおぜいにおそいかかってつかまえてしまいました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おれはびょうたる一平家へいけに、心を労するほど老耄おいぼれはせぬ。さっきもお前に云うた通り、天下は誰でも取っているがい。おれは一巻の経文きょうもんのほかに、つるまえでもいれば安堵あんどしている。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
牛若うしわかもなく元服げんぷくして、九郎義経くろうよしつねのりました。そしてにいさんの頼朝よりともをたすけて、平家へいけをほろぼしました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
源氏げんじ平家へいけ敵味方てきみかたかれてちからくらべをしようというおおいくさだ。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)