市場いちば)” の例文
市街まち中程なかほどおほきな市場いちばがある、兒童こども其處そこへ出かけて、山のやうに貨物くわもつつんであるなかにふんぞりかへつて人々ひと/″\立騒たちさわぐのをて居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
カーポンサッコは既にフィエソレを出でゝ市場いちばにくだり、ジウダとインファンガートとは既によき市民となりゐたり 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あるお百姓ひゃくしょうさんが、牝牛めうし市場いちばっていって、七ターレルで売ってきました。かえり道に、池のはたをとおらなければなりませんでした。
……トラックに積んで、市場いちばにさへもつて行けば、何んにも苦労は入りません。……市場で、適当に、処理してくれます。
十年…… (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
現にあなたもお父さまもまだここにいらっしゃらなかったころは、わたしワーニャ伯父さんと一緒に、よく市場いちばへ粉を売りに行ったものですわ。
今日、市場いちばの方からランブュトー街へはいってゆくと、右手に、モンデトゥール街と向き合った所に、一軒の籠屋かごやがある。
このジャンとピエールとは初めの間は市場いちばなどに行って、あわれな声を出して自分のかたわを売りものにして一銭二銭の合力ごうりきを願っていましたが
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いちといつても、いま市場いちばではなく、商人しようにんみせつらねてゐる町通まちどほりで、そこには、いま街路樹がいろじゆたものをゑたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おまえ、ごくろうだけれど、市場いちばまで牛をつれて行って、いいひとをみつけて、なるたけたかく売って来ておくれな。
ジャックと豆の木 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
君たちは市場いちばの悪い空気で家を毒されるままにしている。君たちの芸術と思想とは三分の二以上悪変させられてる。
かねさんは、それをにいくらしいのです。こう一は、市場いちばほうると、チン、チン、ジャン、ジャン、というおとがきこえてくるようながしました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふと老人は市場いちばの後ろの一けんの店にはいった。店の外に古い鉄砲てっぽうだの、金モールのへりのついた服だの、ランプだの、さびたかぎだのがつるしてあった。
市場いちばとてちゞみの市あるは、まへにいへる堀の内十日町小千谷をぢや塩沢しほざはの四ヶ所也。初市はついち里言りげんにすだれあきといふ。雪がこひのすだれあくをいふ也、四月のはじめにあり
明治の御代みよになってもややしばらくのあいだは、郵便脚夫ゆうびんきゃくふという者が、これも棒の片はしに荷をゆわえつけて走っていたほかに、東北地方の市場いちばに行って見ると
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『あたしたちの仲間でもない、あんなよその鳥の歌を聞くなんて! そんなこと、愛国的といえるでしょうか? 市場いちばへ行く手かごさんに、きめていただきたいわ!』
群集年活ラ・ヸイ・ウナニムは世人に顧みられないで絶滅に成つて居るが、この若い詩人は劇場、珈琲店キヤツフエ、競馬場、寄席よせ、音楽堂、市場いちばと云つた風の題目を好み、多数人の群居した心理を歌ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
バグダツドの市場いちばの噴きの上には大きい無花果いちぢくが葉を拡げてゐます。その噴き井の右ゐるのはハアヂと名乗つた先刻の商人、左にゐるのは水瓶みづかめをさげた、美しい一人ひとりの娘です。
三つの指環 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「こいつあおれの知ったことじゃねえや。」と彼は、最後に肩を一つすくながら、言った。「市場いちばから来た連中がしでかしたんだからな。奴らにもう一つ持って来させりゃいい。」
農産物はその種類の何たるを問はず低廉無此るものは市場いちばへ出荷するもその運賃さへとれぬやうな次第ことに当地方のいちご耕作者のごとき実に惨澹さんたんたるものにて破綻はたん又破綻、目も当てられぬ有様
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
少しゆるやかにする位の事はむろんあるべきはずですが、あるいは博奕ばくちをしたり公々然こうこうぜん汚穢おわい振舞ふるまいをしたり、神聖に保たるべき寺の中の騒しい事なお市場いちばより甚しいというに至っては言語道断ごんごどうだんの次第で
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一 このぶた、ちびすけ、市場いちばへまいった。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
廣場に、旅館ホテルに、市場いちばに、住居すまひ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いまか市場いちば武蔵野むさしの
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
市場いちばで種々な手品を使ってみせた。一つの屋台店を持っていたが、それにラッパと次の掲示とをつけていた。
「ある町の市場いちば井戸いどの夢だったよ。いままではさけがわきでていたのに、それがかれちまって、水さえもでなくなっちまったんだよ。どうしたわけなんだろうね。」
かあさんは、やっとゆうはん後片付あとかたづけがわって、りょうちゃんをつれて、市場いちばへいかれました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
裸体はだかの車夫が引ける武者絵の人力車に相乗あひのりせる裸体人はだかびと、青物市場いちばなどに見る如き土間に売品ばいひんを並べたる商家よ、中形ちゆうがた湯帷巾ゆかたを着たる天草をんなよ、あなさがな、悪きは数へさふらふまじ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
クリストフは人込みの逆流のために戦場の先端まで押し出されていた。彼はなんらの憎悪をもいだいてはしなかった。ちょうど村の市場いちばにでもいるような気で、愉快に押されたり押したりしていた。
市場いちばへ、市場へ、乾葡萄入プラムケイキかいに
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
れかかると、いつのまにか、市場いちばあつまっていた百しょうたちのかげってしまいました。
百姓の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夕方ホテルの裏に当る青物市場いちば魚市場うをいちばを過ぎて最も奮い市街を散歩したが、狭い間口の雑貨店が不調和に濃厚な色彩を見せたのと、人間の風采ふうさいひどきたないのとが上海シヤンハイの旧城内によく似て居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ある日、ルノアール市場いちばの一軒の酒屋の門口で、濃い頤髯あごひげのあるイタリー音調のひとりの男が、車除石の上に上って、神通力を発散してるかと思われるような不思議な文を声高に読み立てていた。
市場いちばへジャックをやったれば
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
市場いちば町などには、労働者や学生や区隊の者など息を切らしてる人々が、宣言書を読み、「武器を取れ!」と叫び、街燈をこわし、馬車の馬を解き放し、街路の舗石しきいしをめくり、人家の戸を打ち破り
手品師てじなしは、ひがしほうくに市場いちばで、わかおんなが、きれいなはなっているのをって、そのしま庭園ていえんってかえることになりました。また、眼鏡屋めがねやは、ふねなかで、望遠鏡ぼうえんきょううつくしいつぼと交換こうかんしました。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
市場いちばほうから、あるいてきた。」
ペスをさがしに (新字新仮名) / 小川未明(著)