小用こよう)” の例文
もう少し前に小用こように起きたのにとか、今夜は寝つかれないで、二時頃までは眼がえていたのにとか、ことごとく残念そうである。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
亭主はさぞ勝手で天窓あたまから夜具をすっぽりであろうと、心に可笑おかしく思いまする、小宮山は山気はだに染み渡り、小用こようしたくなりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小用こように立って下りてくる時には、足がふらふらしていた。それでも大したことはないと云い張って、薬も手当も一切断った。
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてお昼になると、何処どこかの家を歩いて、小用こようを足したり、病人の買物などを手伝ったりして、「残飯」を買うお金をこしらえて来るのである。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「昨夜ここへ泊ったわよ、ほら、その蒲団があの人のじゃないの。お小用こようにでもいったんじゃないかしら、だけどこうなると、一々気味がわるいわねえ」
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
恰度その時は小用こようを足したくなつたので部屋を立つた。ところがふと廁の中で急な胸騒ぎに襲はれた。今自分がかうしてゐる間に父の書斎で何事かゞ起る。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
杉と檜と鬱蒼として繁って、真昼でも木下闇こしたやみを作っているらしいところに行き、柵のところで小用こようを足した。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから、試験場へ入る前に、もう胸がおどって仕方がないので、水を飲んで、お小用こようして、その後で『仏さま』を念じました。すると大分落ち付きました。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこで一緒に小用こようを足して、廊下づたいに母屋の方へまわって来ると、どこかで、ひそひそ話し声がする。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
渡邊祖五郎はしきりに様子を探りますが、少しも分りません、夜半よなかに客が寝静ねしずまってから廊下で小用こようしながら見ますと、垣根の向うに小家こやが一軒ありました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その時に梯子はしごのテッペンから落ちて打ちました腰が、この通り痛みまして、小用こようにもうて参ります位で、すんでの事に生命喪いのちうしないをするところで御座いました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
退き臥床ふしどに入ければ夜は深々しん/\降積ふりつもる雪に四邊あたり䔥然しめやかにていひきの聲のみ聞えるにぞばん建部たてべの兩人は今や/\と窺ふをりお島は藤三郎を抱上いだきあげ小用こよう連行つれゆくてい持成もてなし座敷々々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
年配三十七八、深川生れを自慢している男ですが、荷揚人足から正直さを見込まれて、浪花屋のお勝手向きの小用こようを足し、時には飯も炊けば、庭も掃くといった調法者です。
いつまでたっても、きょうだいがお小用こようからかえってないので、山姥やまうばはのそのそさがしに出てました。がたつきがちょうどのぼりかけて、にわの上はかんかんあかるくえました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
婆様ばあさま小用こようが出ないか。船に乗つてしまうと面倒だからな』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼は枕許の手燭てしょくに火をつけて、小用こように起き上った。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
杉とひのき鬱蒼うつさうとしてしげつて、真昼でも木下闇こしたやみを作つてゐるらしいところに行き、さくのところで小用こようを足した。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
小用こようを足しに下りていった。階段に一歩足をかけると、そこの板がきしった。彼はぎくりとした。その後で、何のために驚いたのか自分でも分らなくなった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
一つくぐって鳩尾みずおちからひざのあたりへずり下った、その扱帯の端を引上げざまに、ともしを手にして、柳の腰を上へ引いてすらりと立ったが、小用こように、と思い切った。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小用こように行きたいから是非出してくれ、もし出さなければ倉の中で用を足すが好いかといって、網戸の内外うちそとで母と論判をした話はいまだに健三の耳に残っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はらさんと思ひしは貧苦ひんくせまりし老人のおろかなり折節をりふし臺所だいどころの男共小用こようおきしが裏口うらぐちの明てありしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は、仲入りに廊下ろうかへ出ると、すぐに妻を一人残して、小用こようを足しに参りました。申上げるまでもなく、その時分には、もう廻りの狭い廊下が、人で一ぱいになって居ります。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
是から寝衣ねまき姿なりで、ずうッと起上って障子を開け、廊下伝いに往って便所へ這入り、小用こようすのでございましょうが、此のまた便所の永いことやゝ三十分ばかりも這入って居ります
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
証拠が山ほどあるし、お駒を殺すほど怨んでるのは、新吉の外にはないはずだが、困ったことに、お駒の殺された時刻は、酒と花合せに夢中で、新吉は小用こようにも立たないと解っているんだ
小用こように行くなんて人をだまして、そんなところにがっているのだな。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
……それからお小用こように行こうと思って起上りがけに、こっちを向いてスヤスヤ眠っている母の顔を何の気もなく見ますと、口を少しいて、頬が真赤で、額が瀬戸物のように真白く透きとおっていて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今門前を通り掛ったらちょっと小用こようがしたくなったから拝借に立ち寄ったんだと云ったんで大笑をしたが、老梅君と君とは反対の好例として新撰蒙求しんせんもうぎゅうに是非入れたいよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尾籠びろうながら、わたしはハタと小用こようこまつた。辻便所つじべんじよなんにもない。家内かない才覺さいかくして、避難場ひなんばちかい、四谷よつや髮結かみゆひさんのもとをたよつて、ひとけ、けつゝ辿たどつてく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
富「大した事もありません、恐れ入りましたが一寸小用こようを致しますから」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おかあさん、おかあさん、お小用こように行きたくなりました。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生憎あいにく、その内に、僕は小用こように行きたくなった。
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「番頭さんの小用こようは長いのかえ」
ある夜一番目の姉が、夜中よなか小用こように起きたあと、手を洗うために、潜戸くぐりどを開けると、狭い中庭のすみに、壁をしつけるようないきおいで立っている梅の古木の根方ねがたが、かっと明るく見えた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて小用こようした様子、雨戸をばたりと開けるのが聞えた、手水鉢ちょうずばち柄杓ひしゃくひびき
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此方こちら居得いどくだから小用こようを達して茶をいれたり何かする。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やが小用こようした様子やうす雨戸あまどをばたりとけるのがきこえた、手水鉢てうづばち干杓ひしやくひゞき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分は先刻さっきから少しも寝なかった。小用こように立って、一本の紙巻を吹かす間にもいろいろな事を考えた。それが取りとめもなく雑然と一度に来るので、自分にも何が主要の問題だか捕えられなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新「小用こようがたしてえが」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなわびし、うたてくもかゝるさいに、小用こようがたしたくなつたのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小用こようをたして帰ると、もの陰から、目をまるくして、一大事そうに
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)