さむさ)” の例文
如何いかんとなれば、人間にんげん全體ぜんたいは、うゑだとか、さむさだとか、凌辱はづかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレツトてき恐怖おそれなどの感覺かんかくから成立なりたつてゐるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひるかりしてけものしよくとし、夜は樹根きのね岩窟がんくつ寝所ねどころとなし、生木なまきたいさむさしのぎかつあかしとなし、たまゝにて寝臥ねふしをなす。
晝のあつさ地球のために、またはしば/\土星のために消え、月のさむさをはややはらぐるあたはざるとき 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ある建具はやぶれた此の野中の一つ家と云った様な小さな草葺くさぶきを目がけて日暮れがたから鉄桶てっとうの如く包囲ほういしつゝずうと押寄おしよせて来る武蔵野のさむさ骨身ほねみにしみてあじわった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
鉄瓶てつびんの湯気は雲をくことしきりなれど、更に背面を圧するさむさ鉄板てつぱんなどや負はさるるかと、飲めども多くひ成さざるに、直行は後をきてまず、お峯も心祝こころいはひの数を過して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
深いなかから、とめどもなく千筋ちすじを引いて落ちてくる。火鉢が欲しいくらいのさむさである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かほばせめでたく膚かちいろなる裸裎らていの一童子の、傍に立ちてこれを看るさま、アモオルの神童に彷彿はうふつたり。人の説くを聞くに、このさかひさむさを知らず、數年前祁寒きかんと稱せられしとき、塞暑針は猶八度を指したりといふ。
「一杯けんじましょう。今年のさむさはまた別だね。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
如何いかんとなれば、人間にんげん全体ぜんたいは、うえだとか、さむさだとか、凌辱はずかしめだとか、損失そんしつだとか、たいするハムレットてき恐怖おそれなどの感覚かんかくから成立なりたっているのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
熊のたる跡へすはりしにそのあたゝかなる事巨燵こたつにあたるごとく全身みうちあたゝまりてさむさをわすれしゆゑ、熊にさま/″\礼をのべ猶もたすけ玉へと種々いろ/\かなしき事をいひしに
ひさし人気ひとけの絶えたりし一間のさむさは、今にはかに人の温き肉を得たるを喜びて、ただちにまんとするが如くはだへせまれり。宮は慌忙あわただしく火鉢に取付きつつ、目を挙げて書棚しよだなに飾れる時計を見たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
生活難の合間あいま合間に一頁二頁と筆をった事はあるが、きょうもよおすと、すぐやめねばならぬほど、うえさむさは容赦なくわれを追うてくる。この容子ようすでは当分仕事らしい仕事は出来そうもない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
パンの破片かけら紙屑かみくづうしほねなど、さうしてさむさふるへながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたふやうにしやべす、大方おほかた開店かいてんでも氣取きどりなにかを吹聽ふいちやうしてゐるのでらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
空腹すきはらにおよんでさむさたへず、かくては貴殿おみさまともなひて雪をこぐことならず、さいぜんのはなしにおみさまのふところ弁当べんたうありときゝぬ、それを我にあたへたまふまじきや、たゞにはもらふまじ、こゝに銭六百あり
一時ひとしきりさむさ太甚はなはだしきを覚えて、彼は時計より目を放つとともに起ちて、火鉢の対面むかふなる貫一がしとねの上に座を移せり。こは彼の手に縫ひしを貫一の常に敷くなり、貫一の敷くをば今夜彼の敷くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
パンの破片かけら紙屑かみくずうしほねなど、そうしてさむさふるえながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたうようにしゃべす、大方おおかた開店かいてんでもした気取きどりなにかを吹聴ふいちょうしているのであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
空腹すきはらにおよんでさむさたへず、かくては貴殿おみさまともなひて雪をこぐことならず、さいぜんのはなしにおみさまのふところ弁当べんたうありときゝぬ、それを我にあたへたまふまじきや、たゞにはもらふまじ、こゝに銭六百あり