外面そとも)” の例文
おどろいて窓のところに寄ってみると、これはまた凄い外面そともの光景! 外は、まるで昼間のように、まぶしい光に充ちみちていた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
横浜! 横浜! とあるひは急に、或はゆるく叫ぶ声の窓の外面そとも飛過とびすぐるとともに、響は雑然として起り、ほとばしづる、群集くんじゆ玩具箱おもちやばこかへしたる如く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
受付の十蔵、卓にひじを置き煙草たばこ吹かしつつ外面そともをながめてありしがわが姿を見るやその片目をみはりて立ちぬ、その鼻よりは煙ゆるやかにでたり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
雪を払ひてにじり入り、まづ慇懃いんぎんに前足をつかへ、「昨日よりの大雪に、外面そともいずる事もならず、洞にのみ籠り給ひて、さぞかし徒然つれづれにおはしつらん」
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
未申ひつじさるのあたりに月があって、外面そともをかなり明るく照していましたから、老人の眼にもはっきりとわかります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そばには可愛かあゆちご寐姿ねすがたみゆ。ひざの上には、「無情の君よ、我れを打捨て給ふか」と、殿の御声おこゑありあり聞えて、外面そともには良人をつともどらん、更けたる月に霜さむし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
外面そともは又外面で、士卒各々かぶとの緒をめ、鉄砲の火縄に火をささぬばかりにし、太刀たちを取りしぼって、座の中に心を通わせ、イザと云えばオッと応えようと振い立っていた。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
余が此の北奥の洞庭西湖に軽鞋けいあいを踏入れし時は、風すさび樹鳴り物凄き心地せられて、仲々に外面そともに出でゝ島の夜景を眺むべき様もなかりき。しかれどもわれ既に扶桑衆美の勝地にあり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
あふち外面そともかげ つゆおちて、さみだれるゝかぜわたるなり(前大納言忠良さきのだいなごんたゞよし
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
としごろもつゐくらゐ、わたし二人ふたり夫婦ふうふのやうでじつ抱合だきあかたちえて、……あやしいをんなと、ぐにで、暖炉ストーブはいにされましたが、外面そともからひた/\る……むかひのゆきけむりつゝんで、つきした
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きぬそそぐ水にかあらし芽楊の外面そとも光りて波紋のみ見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外面そともの壁には一面のおはぐろ花
知ろしめされ賜うて後水尾帝ごみづをてい御製ぎよせいに「あはれさよ夜半よは捨子すてごなきやむは母にそへゆめや見つらん」とは夜更よふけ外面そともの方に赤子あかご泣聲なくこゑの聞えしは捨子にやあらんと最とあはれに聞えたりしが兎角するうちに彼泣聲なきごゑの止たりしかば如何せしやらんと思ひぬるうち又もや泣出しけるほどさていましば泣止なきやみしは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をんなまど障子しやうじひらきて外面そともわたせば、むかひののきばにつきのぼりて、此處こゝにさしかげはいとしろく、しもひき身内みうちもふるへて、寒氣かんきはだはりさすやうなるを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫に引添ひて宮はこの室を出でんとして、思ふところありげにしばらく窓の外面そともうかがひたりしが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
とたんに外面そともに女の声して呵々からからと打笑いぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僕は外面そともの気配に聞き耳をたてながら
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
外面そともにはふる雪のなにごともなく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
女はまどの障子をらきて外面そともを見わたせば、向ひののきばに月のぼりて、此処こゝにさし入る影はいと白く、霜や添ひし身内もふるへて、寒気ははだに針さすやうなるを
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今の待つ身は待たざる人を待つ身なる、その口惜くちをしさをもだえては、在るにも在られぬ椅子を離れて、歩み寄りたる窓の外面そともを何心無く打見遣うちみやれば、いつしか雪の降出でて、薄白く庭に敷けるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そばには可愛かはゆちご寐姿ねすがたみゆ、ひざうへには無情むじやうきみれを打捨うちすたまふかと、殿との御聲おんこゑあり/\きこえて、外面そともには良人をつともどらんけたるつきしもさむし、たとへば良人をつといま此處こゝもどらせたまふとも
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)