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きょうがい
ふりがな文庫
“
境涯
(
きょうがい
)” の例文
敦子
(
あつこ
)
さまが、こちらで
最初
(
さいしょ
)
置
(
お
)
かれた
境涯
(
きょうがい
)
は
随分
(
ずいぶん
)
みじめなもののようでございました。これが
敦子
(
あつこ
)
さま
御自身
(
ごじしん
)
の
言葉
(
ことば
)
でございます。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
日夜数知れぬ多くの人に名を呼ばれている
境涯
(
きょうがい
)
の身であれば、商売を
廃
(
や
)
めるからとて、一々馴染みの客に断って往くわけのものでもない。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
あまりに昇進の早いのを
嫉
(
ねた
)
む同輩のために
讒
(
ざん
)
せられて、山口藩和歌山藩等にお預けの身となったような
境涯
(
きょうがい
)
をも踏んで来ている。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
『多年、連れ添うては来たが、身を町人の
境涯
(
きょうがい
)
に落して見れば、家風に合わぬ
其方
(
そなた
)
、
何日
(
いつ
)
かは去ろうと考えていたのじゃ……』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大抵人は
境涯
(
きょうがい
)
に化せられるものであって、どうもそこへ行って見ると自然にありがたくならなくちゃならんようになって来る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
一つには自分がこれらの言を充分に味わう
境涯
(
きょうがい
)
に達しない、すなわち自己の
非
(
ひ
)
を
悟
(
さと
)
らず自己の弱点を察しないゆえである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
オリヴィエは若かった。そして、生来の悲観性にもかかわらず、不幸な
境涯
(
きょうがい
)
にもかかわらず、やはり生きていたかった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
慚愧
(
ざんき
)
不安の
境涯
(
きょうがい
)
にあってもなお
悠々
(
ゆうゆう
)
迫らぬ趣がある。省作は泣いても
春雨
(
はるさめ
)
の曇りであって
雪気
(
ゆきげ
)
の
時雨
(
しぐれ
)
ではない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
安値
(
あんちょく
)
の
報酬
(
ほうしゅう
)
で
学科
(
がっか
)
を
教授
(
きょうじゅ
)
するとか、
筆耕
(
ひっこう
)
をするとかと、
奔走
(
ほんそう
)
をしたが、それでも
食
(
く
)
うや
食
(
く
)
わずの
儚
(
はか
)
なき
境涯
(
きょうがい
)
。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
応変自由なること、鐘の
撞木
(
しゅもく
)
に鳴るごとく、
木霊
(
こだま
)
の音を返すがごとく、
活溌
(
かっぱつ
)
、
轆地
(
ろくち
)
の
境涯
(
きょうがい
)
を
捉
(
とら
)
えました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「三河屋の旦那はそれでもよく文吉の世話をしたそうですよ、いくら注ぎ込んでも、貧乏性は仕方のないもので、あの通りその日暮しの
境涯
(
きょうがい
)
から足が洗えません」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いや、それくらいで済めばよいが、悪くすれば食うに食なく
纏
(
まと
)
うに衣なき
境涯
(
きょうがい
)
にまで落ちねばなるまい。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
このうらやむべき
境涯
(
きょうがい
)
にいたって、はじめて婆羅門アウルヤ学派の知識と名乗り、次ぎの世に生まれ変わりたいと思うものをも、自由自在に望むことが許されるのである。
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そしてそういう
境涯
(
きょうがい
)
のために、天国的にジャン・ヴァルジャンはコゼットの父となった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いろいろ考えぬいた
揚句
(
あげく
)
、私は遂に一案を思付いた。それは甚だ
突飛
(
とっぴ
)
な解決法であった。しかし現在の私のような
境涯
(
きょうがい
)
にあっては致し方のないことだ。読者よ、
呆
(
あき
)
れてはいけない。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
陸上の美しい色彩に目を転じなければならぬような
境涯
(
きょうがい
)
に進出して来たのであろうか。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこで、自分自身の妻に、別人として、再度の恋愛をするという、奇怪な
境涯
(
きょうがい
)
に入る。これがやはり、旧作「一人二役」や「
石榴
(
ざくろ
)
」において、私が最も興味を持った境涯なのである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「この船にだって遊び半分ではいられません。ルミもやはりあなたと同じようにたくさん勉強をしなければなりません。とても青空の下で旅をして回るような自由な
境涯
(
きょうがい
)
ではないでしょう」
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
自分の算盤玉でやって行く商人の自由な
境涯
(
きょうがい
)
を
羨
(
うらや
)
ましがっている。息子が義兄の店で勤め上げて一本立ちにして貰えるならこの上はない。その意味から既に先方へ
諾意
(
だくい
)
を表していたのである。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「どうだね。あの例の子が——私の忘れたことのないあの子が——ひょっとして——いやほんとに、
隣家
(
となり
)
のその気の毒な娘みたいな
境涯
(
きょうがい
)
におちこむようなことも、ないとはいえないだろう。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
即
(
すなわ
)
ち
種々
(
いろいろ
)
ある手段によって
三摩地
(
さまち
)
の
境涯
(
きょうがい
)
に入れば自ら五官の力を借りずに事物を正しく知ることが出来る、古来聖人君子の説かれた
教
(
おしえ
)
は皆この五官の
迷
(
まよい
)
を捨てよと云う事に他ならないのである。
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
秋から冬になって
時雨
(
しぐ
)
れた日もたびたびあった。そのたびたびの時雨に
逢
(
あ
)
ったということも住み馴れた心持にぴったりと当て
嵌
(
はま
)
るものだ。
侘
(
わ
)
び住んで居る静かな人の
境涯
(
きょうがい
)
がおのずから描かれておる。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
どちらにも進まれないような
境涯
(
きょうがい
)
に座して苦しんでいます。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
その時になると、彼は中津川の問屋の仕事を家のものに任せて置いて京都の方へ出かけて行くことのできる香蔵の
境涯
(
きょうがい
)
をうらやましく思った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
父親の親類というのはどこにもなく、
生命
(
いのち
)
の綱とも
杖
(
つえ
)
とも柱とも頼んでいた弟に死なれてからは本当の母ひとり娘ひとりのたよりない
境涯
(
きょうがい
)
であった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それからモー四百
余年
(
よねん
)
、
私
(
わたくし
)
の
境涯
(
きょうがい
)
はその
間
(
あいだ
)
に
幾度
(
いくど
)
も
幾度
(
いくど
)
も
変
(
かわ
)
りましたが、しかし
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
も
尚
(
な
)
おその
時
(
とき
)
戴
(
いただ
)
いた
御鏡
(
みかがみ
)
の
前
(
まえ
)
で
静座
(
せいざ
)
黙祷
(
もくとう
)
をつづけて
居
(
お
)
るのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
長い間のあこがれの的であった人と逢う瀬を楽しむ
境涯
(
きょうがい
)
になったものゝ、それから後も皮肉屋の女の癖は改まらず、やゝもすれば意想外な
悪戯
(
いたずら
)
を考え出して
嬲
(
なぶ
)
りものにし
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これは
希臘
(
ギリシア
)
の
擬古狂詩
(
ぎこきょうし
)
の断片をざっと飜訳したものだそうだ。それと同じような意味を父の
敬蔵
(
けいぞう
)
は
老荘
(
ろうそう
)
の思想から採って、「渾沌未分の
境涯
(
きょうがい
)
」だといつも小初に説明していた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
げんに人間が生理的にも貧弱にできあがっており、その大多数が粗野で、愚かで、すこぶるみじめな
境涯
(
きょうがい
)
にある以上、誇りとかなんとかいっても、なんの意味があるでしょうか。
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
いかに
忙
(
いそが
)
しい人といえどもかの実行の範囲内にあると思うし、また
希
(
こいねが
)
わくは一年に一回ぐらい一週間なり十日間なりほとんど俗事を忘るるごとき
境涯
(
きょうがい
)
に入ることができるならば
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
実に
清浄
(
しょうじょう
)
の
境涯
(
きょうがい
)
でございます。家の
主
(
あるじ
)
は長く止まって一切蔵経を読んで貰いたいという希望でありますけれども、私はただ雪峰を越す時季を待つために逗留して居るのでございます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
鰻まで出て
芝居
(
しばい
)
をやって見せたというありさまだったから、まずまずこれまでにはない愉快な日であった。極端に自由を奪われた
境涯
(
きょうがい
)
にいて見ると、らちもない事にも深き興味を感ずるものである。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
ということは、あらゆる貧乏人、あらゆる家族所有者の、
羨望
(
せんぼう
)
の
的
(
まと
)
である所の、
此上
(
このうえ
)
もなく安易で自由な身の上を意味するのだが、柾木愛造は不幸にも、その
境涯
(
きょうがい
)
を楽しんで行くことが出来なかった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わしの
境涯
(
きょうがい
)
は餓鬼道より少しもまさってはいない。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
彼らが
境涯
(
きょうがい
)
の困難であればあるだけ、そのこころざしも堅く、学問も確かに、著述も残し、天文、地理、歴史、語学、数学、医学、農学、化学
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そんな親類があって、こんどそれだけの金を出してくれるくらいならば、そもそもあんな卑しい
境涯
(
きょうがい
)
に身を沈めない前に泣きついて行くはずである。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
それは
場所
(
ばしょ
)
の
変更
(
へんこう
)
と
申
(
もう
)
すよりは、むしろ
境涯
(
きょうがい
)
の
変更
(
へんこう
)
、
又
(
また
)
は
気分
(
きぶん
)
の
変更
(
へんこう
)
と
申
(
もう
)
すものかも
知
(
し
)
れませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
深編笠
(
ふかあみがさ
)
の二人侍が訪ねて来るところで、この唄を
下座
(
げざ
)
に使っているのを図らずも聴いたが、
与市兵衛
(
よいちべえ
)
、おかや、お軽などの
境涯
(
きょうがい
)
と、いかにも取り合わせの
巧
(
うま
)
いのに感心した。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
実にこれを説明するにも涙がこぼれる程哀れな
境涯
(
きょうがい
)
にあるのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そういう正香は諒闇の年を迎えると共に
大赦
(
たいしゃ
)
にあって、多年世を忍んでいた
流浪
(
るろう
)
の
境涯
(
きょうがい
)
を脱し、もう一度京都へとこころざす旅立ちの途中にある。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
盲人の不自由な
境涯
(
きょうがい
)
を出来るだけ体験しようとして時には盲人を
羨
(
うらや
)
むかのごとくであった彼が後年ほんとうの盲人になったのは実に少年時代からのそういう心がけが影響しているので
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
いったん飛騨の山のような奥地に引ッ込んでしまえば容易に出て来られる
境涯
(
きょうがい
)
とも思われなかったからで。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すでに
落飾
(
らくしょく
)
の
境涯
(
きょうがい
)
にあるというほど一変した京都の方の様子も深く心にかかりながら、半蔵は妻籠本陣に一晩泊まったあとで、また連れと一緒に街道を踏んで行った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“境涯”の意味
《名詞》
境涯(きょうがい)
立場。地位。身分。
身の上。境遇。
(出典:Wiktionary)
境
常用漢字
小5
部首:⼟
14画
涯
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“境”で始まる語句
境内
境
境界
境遇
境目
境地
境川
境木峠
境木
境論