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困憊
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こんぱい
ふりがな文庫
“
困憊
(
こんぱい
)” の例文
日中は軽やかに声を立てる者も無い。何所を見ても、
擾乱
(
ぜうらん
)
し
困憊
(
こんぱい
)
してゐて、その中に、一脈の静寂の気も漂つて居るのが感じられる。
秋の第一日
(新字旧仮名)
/
窪田空穂
(著)
越前屋の支配人吉三郎は、長途の旅に
困憊
(
こんぱい
)
し尽した姿ながら、
埃
(
ほこり
)
だらけの顔にも豊かな微笑を浮べて、皆んなの前に近づくのでした。
銭形平次捕物控:149 遺言状
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
翌日壮助は自分の机にもたれながら、
困憊
(
こんぱい
)
のうちにうとうとと眠るともなく夢幻の境を辿っている時、突然川部の来訪に驚かされた。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
彼の顔に疲労と、悪天候と、肉体の
困憊
(
こんぱい
)
と、ほとんど一昼夜も続いた自分自身との闘争のために、ほとんど醜いくらいになっていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
自分の
困憊
(
こんぱい
)
の状察すべしである。
恰
(
あたか
)
も此時、
洋燈
(
ランプ
)
片手に花郷が戸を明けた。彼は極めて
怪訝
(
くわいが
)
に堪へぬといつた様な顔をして、盛岡弁で
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
人々は疲労
困憊
(
こんぱい
)
その極に達してしまって、今そこを歩いていたかと思うと
直
(
ただち
)
にバッタリと
殪
(
たお
)
れてその貴い生命を落すと云う事は
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
一時
(
ひととき
)
の
間
(
あいだ
)
、ここにこうしているのか、それとも一年も前から同じように寝ているのか、彼の
困憊
(
こんぱい
)
した心には、それさえ時々はわからない。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし、もしそれにしても、なおこのうえ海港の罷市が持続するなら、このときを頂点として
困憊
(
こんぱい
)
するものは支那商人に変っていくのだ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
静子の心は千々に乱れたが、昼よりの疲れに、今は身心ともに
困憊
(
こんぱい
)
して、そのまゝ子供の枕許へウト/\と寝崩れて
終
(
しま
)
った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
自分が
困憊
(
こんぱい
)
してるのを見て彼らは、卑しい
怨恨
(
えんこん
)
を含んでるのではないことを証明したがってるのだと、彼は想像した。そしてそれに感動した。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
まず汝らの軽兵をさし向けておいて、後、彼の疲労
困憊
(
こんぱい
)
を見すましてからいちどに大軍をおしすすめて
伐
(
う
)
つ。予も、やがて漢中へ行くであろう
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
全然、犯人の嘲笑癖が生んだ産物にすぎないのだ。つまり、この三つのものには、僕等の
困憊
(
こんぱい
)
状態が諷刺されているのだよ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
先祖以来茨城の
結城郡
(
ゆうきぐん
)
に居を移した地方の豪族として、多数の小作人を使用する長塚君は、彼等の獣類に近き、恐るべく
困憊
(
こんぱい
)
を
極
(
きわ
)
めた生活状態を
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
困憊
(
こんぱい
)
した体を海ぎわまで持って行って、どうした
機
(
はずみ
)
でフラフラと死ぬ気にならないものでもないと思うと、きゅうに怖しくなって足が
竦
(
すく
)
んだ。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
搾れるだけ搾り取つた最後の
殘骸
(
ざんがい
)
から、命がけの力で噛み取ることだけが許されてゐた。だから彼等は搾取するそのことだけに疲勞
困憊
(
こんぱい
)
してゐた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
この重苦しい
困憊
(
こんぱい
)
しきつた退屈が、彼の心の奥底に巣喰うて居る以上、その心の持主の目が見るところの世界万物は、何時でも、一切、何処までも
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
咄嗟
(
とっさ
)
に考えた範之丞、これも白鉢巻に白襷、袴の股立ちとり上げた姿、甲斐甲斐しくはあったが疲労と
困憊
(
こんぱい
)
とに、クタクタになっている姿を踊らせ
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その初めの日は
帰途
(
かえり
)
に
驟雨
(
しゅうう
)
に会い、あとの一日は朝から雨が横さまに降った。かれは授業時間の
間
(
あいだ
)
々を宿直室に休息せねばならぬほど
困憊
(
こんぱい
)
していた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
無為な
困憊
(
こんぱい
)
のなかにいた時、まるで昨日のことででもあったように、それではひとつ調べて参りましょうと云った高倉利吉を、うん、そうだな——と
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
だが、御安心下さいませ、この疲れは
困憊
(
こんぱい
)
の疲れというわけではございません、安息の疲れなのでございます。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
悲境を打開する方法を勤勉に求めずに賭博に求めるような
困憊
(
こんぱい
)
した性格においては、渇望するものを手に入れる方法として容易に殺人を思いつくであろう。
黒い手帳
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
困憊
(
こんぱい
)
の彼はこの病床に
這
(
は
)
い上り、少しく
安堵
(
あんど
)
を覚えたのではあるまいか。もとより
之
(
これ
)
は、私の俗な独断である。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私の全身は蒼ざめ此処で最早あなたに跨っていられないくらい、
困憊
(
こんぱい
)
しきってふらふらになっているのだ。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
人が飢えて疲労
困憊
(
こんぱい
)
している時は、これに食物を与えることが神の御心であり、神本位ということである。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
しかし、今夜、脚をいため、疲労
困憊
(
こんぱい
)
して里へ下っても、それが自分の故郷というわけでもないし、また明日の道中だってどんなことがあるかわからないのだ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
困憊
(
こんぱい
)
した女記者を尻目にかけて、彼女は一枚の名刺を手渡すと、既に通りかかった車にのると、疲労したからだをクッションに埋めて都会の大桟橋を右に折れた。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
舞台に立って、
児島高徳
(
こじまたかのり
)
に投げられた
雑兵
(
ぞうひょう
)
が、再び起上って打向ってくるはずなのが、投げられたなりになってしまったほど、彼らは疲労
困憊
(
こんぱい
)
の極に達していた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
汽船に着くや否や、我々は疲労
困憊
(
こんぱい
)
の極、寝台にもぐり込んだ。翌日も降雨。正午肥後の岸に着き、海岸から五マイル離れた場所に投錨した。それ程遠浅なのである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
甲斐は
太息
(
といき
)
をついた。甲斐は自分がいかにも弱く、無力で、しかも
困憊
(
こんぱい
)
しきっているのを感じた。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ジャン・ヴァルジャンは
困憊
(
こんぱい
)
して家に帰ってきた。そういう遭遇は彼にとっては大きな打撃であり、そのために心に残された思い出は、彼の全身を
震盪
(
しんとう
)
するかと思われた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私の暮れの仕事は、かうしてはじめから
蹉跌
(
さてつ
)
して了つた。私は、甚しく疲労
困憊
(
こんぱい
)
してゐるにも拘らず、最も不健康な消費面に沈溺して、その間中、
敢
(
あ
)
へて他事を顧なかつた。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
ところへ、五年目に起った大不作は彼等一族を、まったく
困憊
(
こんぱい
)
の極まで追いつめてしまった。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
英国巡洋艦の攻撃を受けて以来八時間……飲まず食わず、一刻の休みもなく働き
尽
(
づく
)
めだった一同の上に、ようやく極度の疲労と
困憊
(
こんぱい
)
の色とは影濃く迫りきたったのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
夜中頃、
困憊
(
こんぱい
)
してうとうとしかけた慧鶴の耳に火口から東海面へ二度ほど何やら弾ねる音がして、夜目にも火口の火気は急に衰えた。暁方に見ると煙はすっかり止まっていた。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つかみどころなき焦心、私の今朝の胃のふが、菜っぱ漬けだけのように、私の頭もスカスカとさみしい風が吹いている。極度の疲労
困憊
(
こんぱい
)
は、さながら生きているミイラのようだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
肉体的の
困憊
(
こんぱい
)
のため病的になった想像力が彼の周囲にあらわした怪奇な幻像——それを彼は現実であると信じたのだ——によって孤独感をまぬがれた、という話を聞いたことがある。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
弟子達の
困憊
(
こんぱい
)
と
恐惶
(
きょうこう
)
との間に在って孔子は独り気力少しも
衰
(
おとろ
)
えず、平生通り絃歌して
輟
(
や
)
まない。従者等の
疲憊
(
ひはい
)
を見るに見かねた子路が、いささか色を
作
(
な
)
して、絃歌する孔子の
側
(
そば
)
に行った。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その日頃の
困憊
(
こんぱい
)
した気持が顔に出ていることは、自分でもよくわかっていた。
早春
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
からりと悪夢からさめたような感じでもあったが、頭脳のそこにこびり着いた
滓
(
かす
)
は容易に取れなかった。そして机の前に坐っていると、不眠つづきの躯のひどく
困憊
(
こんぱい
)
していることも解った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お手前らの
困憊
(
こんぱい
)
がお耳に達し、なんとかして公儀の手をもって真のこけ
猿
(
ざる
)
を発見してやりたいものじゃと、わしにお言葉が下がったので、届かぬながらもこの愚楽が、大岡越前守殿と相談のうえ
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかるに少しばかりの幸福が
降
(
くだ
)
ってきた今、精神的冒険をやめて、いくらか端正な生活へ、普通人的な関係へ踏み入り、職務と栄誉をにない、妻子を獲た今に及んで、自分はもう
困憊
(
こんぱい
)
して已むのだ。
悩みのひととき
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
然るに群馬栃木の中に、この新奇なる古河市兵衛の輩が
跋扈
(
ばつこ
)
して、新たに居留地を
拵
(
こしら
)
へ、法律あれども法律を行ふことが出来ない。人民如何に
困憊
(
こんぱい
)
に陥るとも、農商務大臣の目には少しも見えない。
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
そうして彼は疲労と
困憊
(
こんぱい
)
との二様にいじめまくられるのであった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
会計ノ吏
申稟
(
しんひん
)
シテ
云
(
いわ
)
ク。
凡
(
およ
)
ソ遠国ニ赴任スル者日ニ行クコト十里ニシテソノ地ニ到レバ則三十日以内ニ
餼
(
き
)
ヲ賜フノ例ナリ。コノ行ヤ生路ニシテカツ連雨泥濘ヲ以テ従者
困憊
(
こんぱい
)
シ程限ヲ破ルコト二日ナリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
かかる
間
(
ま
)
も
収
(
をさ
)
まり難き
困憊
(
こんぱい
)
はとりとめもなくうち
歎
(
なげ
)
く。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
越前屋の支配人吉三郎は、長途の旅に
困憊
(
こんぱい
)
し盡した姿乍ら、
埃
(
ほこり
)
だらけの顏にも豊かな微笑を浮べて、皆んなの前に近づくのでした。
銭形平次捕物控:149 遺言状
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「なに、討ち損じたと……あの赤壁から潰走した敗残
困憊
(
こんぱい
)
の兵でありながら、なお羽将軍の強馬精兵をも近づけぬほど、曹操はよく戦ったと申さるるか」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしその拘束は彼をひどく
困憊
(
こんぱい
)
さした。そのあとで自分自己をまた見出すとたいへんうれしかった。というのは、彼は自分自身を見失ったからである。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
日
(
ひ
)
は
懊惱
(
あうなう
)
と
困憊
(
こんぱい
)
の
裡
(
うち
)
に
傾
(
かた
)
むいた。
障子
(
しやうじ
)
に
映
(
うつ
)
る
時
(
とき
)
の
影
(
かげ
)
が
次第
(
しだい
)
に
遠
(
とほ
)
くへ
立
(
た
)
ち
退
(
の
)
くにつれて、
寺
(
てら
)
の
空氣
(
くうき
)
が
床
(
ゆか
)
の
下
(
した
)
から
冷
(
ひ
)
え
出
(
だ
)
した。
風
(
かぜ
)
は
朝
(
あさ
)
から
枝
(
えだ
)
を
吹
(
ふ
)
かなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
先輩の弥次郎兵衛、喜多八は、京都で
梯子
(
はしご
)
を一梃売りつけられたのでさえも、あの通り
困憊
(
こんぱい
)
しきっている。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“困憊”の意味
《名詞》
困 憊(こんぱい)
ひどく疲れること。
(出典:Wiktionary)
困
常用漢字
小6
部首:⼞
7画
憊
漢検1級
部首:⼼
16画
“困憊”で始まる語句
困憊期
困憊彷徨