はな)” の例文
「そんぢやとなり旦那だんなにでもようくはなしてもらつたらくかもんねえぞ、それよりほかあねえぞおめえ」ばあさんの一人ひとり卯平うへいむかつていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
公然単独ひとりで墓参に行くと、そこには必ず誰か彼女を待って居るものがあった、所謂誘拐される四日前も二人はあった、そして女は降りかかる結婚問題をはなしたのだね
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
忠告の仕方が気に喰わないの、丹治と云ッたがしゃくに障るのと云ッて絶交する、まるで子供の喧嘩けんかのようで、人に対してはなしも出来ないじゃないか。ネ、オイ笑ッてしまおう
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
附て道中をなされましとはなしながらに行所を此所こなた松陰まつかげより忽然ぬつと出たる畔倉重四郎ものをも云ずうまうへなる飛脚の片足かたあしをばつさりと切付きりつけたり飛脚はアツと馬よりころげ落るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其の時聴衆みな言ってえらく、ばかりの佳作を一節切のはなずてに為さんはおしむべき事ならずや、宜敷よろしく足らざるを補いなば、あっぱれ席上の呼び物となるべしとの勧めにもとづ
そういう折にはいつも観音かんのん様とその裏の六地蔵様とにおまいりするだけで、帰りには大抵並木町なみきちょうにある母方のおばさん(其処そこのおじさんはきん朝さんというはなだった。……)
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
退屈の余りには種々のはなしを始めて、中にはのろけ噺しもするし、随分猥褻なこともいっているので、私は始めてそんな噺しを聞いて面白くもあったが、また厭わしくなって来た。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
こんな化物ぞろいのはなしは日本にもあって、一休和尚讃州旅行の節、松林中に古寺あって僧三日と住せず、化物出ると聞き、自ら望んで往き宿る。夜五こうになれば変化へんげ出て踊り狂う。
人の家に行きたる家が己が家なり。故にその家の先祖は己が先祖なり。ゆるがせにする事なかれ。また先祖の行状功績等をもくわしく心得置き、子供らへ昔噺むかしばなしの如くはなし聞かすべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
すると、いつの間にかそばへ来て坐った、野だが、鈴ちゃん逢いたい人に逢ったと思ったら、すぐお帰りで、お気の毒さまみたようでげすと相変らずはなし家みたような言葉使いをする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さてその翌朝になると、番人夫婦が甲斐甲斐かいがいしく立働たちはたらいて、朝飯の卓子テーブルにも種々いろいろの御馳走が出る、その際、昨夜ゆうべの一件をはなし出そうかと、幾たびか口のさきまで出かかったが、フト私の胸にうかんだのは
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と清正自身がはなしていることになっている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに奥坐舗では想像おもいやりのない者共が打揃うちそろッて、はなすやら、笑うやら……肝癪かんしゃく紛れにお勢は色鉛筆を執ッて、まだ真新しなすういんとんの文典の表紙をごしごしこすり初めた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かさね夫婦の語らひ迄約せし上は貴殿とても一方ならぬ御中なりとことばはしに長庵が曲輪くるわの樣子つぶさにはなし又此程は絶て遠ざかられし故小夜衣は明暮あけくれ思ひわづらひて歎息かこちうらみし事などを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは高瀬船たかせぶね船頭夫婦せんどうふうふが、りてもりなくても自分じぶん家族かぞく唯一ゆゐいつ住居すまゐであるへさきつくられたはこのやうなせばいせえじのなかはなしてこゑであつた。乳呑兒ちのみごこゑまじつてきこえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「まるではなの話を聞くようでござんすね」とは細君の批評であった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「オヤ誰方かと思ッたら文さん……さみしくッてならないからちっとおはなしにいらッしゃいな」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うちあに作藏は當時たうじ江戸麹町三丁目にて村井長庵といひ立派りつぱなる醫者いしやに成て居るとの由ゆゑ出府しゆつぷして兄の長庵に委細ゐさいはなたのまんものと委敷くはしく手紙てがみしたゝめて長庵方へおくりける其文面ぶんめんいは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あるひ勘次かんじとのあひだおもつたほどのこともないだらうと、ほどよいことに卯平うへいはなした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「まるではな洒落しゃれのようね。首尾よくけむいたの?」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)