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否応
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いやおう
ふりがな文庫
“
否応
(
いやおう
)” の例文
旧字:
否應
否応
(
いやおう
)
いわさずに彼を寺中へ引き入れて、西廊の薄暗い一室へ連れ込むと、そこには麗卿が待ち受けていて、これも男の無情を責めた。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
彼はその渇望に、幼年時代からすでにさいなまれていて、他人にもそれを求め、
否応
(
いやおう
)
なしにそれを他人へも押しつけようとしていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
口をそろえて、長屋の者、遠い旅立ちの
門
(
かど
)
でも見送るように、涙にくれるお綱を
促
(
うなが
)
して、手を取らんばかり、
否応
(
いやおう
)
なく外へ出る……。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
続きに続いた親しいものの死から散々に
脅
(
おびやか
)
された彼は
復
(
ま
)
たしてもその光景によって
否応
(
いやおう
)
なしに見せつけられたと思うものがあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
恐らく二人に手を引いてもらいたいと直接に
否応
(
いやおう
)
なしに承諾させるつもりであろうと、かれらは、不気味な憂慮を感じ入っていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
「ハハハ遠慮か。まあ来たまえ」と青年は
否応
(
いやおう
)
なしに高柳君を公園の真中の西洋料理屋へ引っ張り込んで、
眺望
(
ちょうぼう
)
のいい二階へ陣を取る。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
容姿といい才能といい、これ程の女性ならば主上のお悩みも晴れるであろうと相談した結果、小督は
否応
(
いやおう
)
なしに内裏に上ることになった。
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
否応
(
いやおう
)
いわさずに彼を寺中へ引き入れて、西廊の薄暗い一室へ連れ込むと、そこには麗卿が待ち受けていて、これも男の無情を責めました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あっても私が
否応
(
いやおう
)
なしに引っ張り出しますから、その人の方は大丈夫ですが、蒔岡さんの方はあなたが引き
請
(
う
)
けて下さいますね
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼女は
否応
(
いやおう
)
なしに私を連れだして汽車に乗せてしまい、その汽車が一時間も走って麦畑の
外
(
ほか
)
に何も見えないようなところへさしかかってから
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
岡は不意に人が現われたので非常に驚いたふうで、顔をそむけてその場を立ち去ろうとするのを、葉子は
否応
(
いやおう
)
なしに手を握って引き留めた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
売女
(
ばいた
)
根性の——江戸一番の性悪娘を、この錦太郎に押し付け、
否応
(
いやおう
)
言わせぬ祝言をさせようというのは、みんなそのためだ。
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、何といつても此処が籍元だからといふ理由で、
否応
(
いやおう
)
なしになすりつけて行つてしまつた。無論三軒ばかり見せて歩いた結果であつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
憧憬
(
どうけい
)
と歓喜を与えつつ
否応
(
いやおう
)
なしに我々をひきよせるのだ。その下に
伽藍
(
がらん
)
があり、
諸々
(
もろもろ
)
のみ仏が
在
(
いま
)
す。朝夕多くの善男善女が祈願を
捧
(
ささ
)
げている。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
こんな
次第
(
わけ
)
で河原老人は特別関係だったが、
他
(
ほか
)
の同僚とも追々懇意になった。殊に英語の同僚は交渉が多いから、
否応
(
いやおう
)
ない。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だから、私いやだったのに、圭子姉さんたら、
否応
(
いやおう
)
なしに私に押しつけるんだもの。ご免なさいね。でも、二階へ上げて、話した方がいいわ。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ア
屹度
(
きっと
)
殺したろう、殺したといやア黙ってるが云わなけりゃア仏様を本堂へ持って行って
詮議方
(
あらいかた
)
するというから、驚いて
否応
(
いやおう
)
なしに種を
明
(
あか
)
した
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ことに
亜米利加
(
アメリカ
)
人なんか「
手作り
(
ハンド・メイド
)
」とさえ聞けば、どんなに
桁
(
けた
)
はずれな高値をも即座に肯定して、随喜の涙とともに
否応
(
いやおう
)
なしに買い取って行く。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そうしてお前が、第八回目の手紙を書くようになったときには、お前は
否応
(
いやおう
)
なしに、ピポスコラ族に
出会
(
であ
)
った話を書かなければならないだろう。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「しかし、これからは、
否応
(
いやおう
)
なしに、おまえがたは、
俺
(
おれ
)
たちのいくところへついてこなければならない。」といいました。
河水の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
袴広太郎とかいう
小童
(
こわっぱ
)
に、
搦
(
かす
)
め取られたお前ではないか、もしその筋へ突き出されてみろ。島原の残党キリシタンとして、
否応
(
いやおう
)
なしに火あぶりだ。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その小犬を取返して、断髪令嬢の破れかけたハートを修繕しなければならぬ責任を、
否応
(
いやおう
)
なしに負わされてしまった。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
けれども女の方でも後には、そんな考えでのみこちらの扶助を甘んじて受けていなかったことは、長い間の
経緯
(
いきさつ
)
で
否応
(
いやおう
)
なしに承知しているはずであった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その場から連れて戻って、
否応
(
いやおう
)
なしに、
旦
(
だん
)
を
説付
(
ときつ
)
けて、たちまち
大店
(
おおだな
)
の手代分。大道稼ぎの猿廻しを、
縞
(
しま
)
もの揃いにきちんと取立てたなんぞはいかがで。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
哀れなる千代さんよ! 千代さんは見知らぬ男に
否応
(
いやおう
)
なしにおしつけられた。千代さんは自分で選んだ愛人があった。その愛人のもとに救いを求めに来た。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
お祖母さんがさっき言ったそんな言葉が、そのうちに、彼の記憶を
否応
(
いやおう
)
なしに遠い過去にねじ向けて行った。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それには
渡左衛門尉
(
わたるさえもんのじょう
)
を、——
袈裟
(
けさ
)
がその愛を
衒
(
てら
)
っていた夫を殺そうと云うくらい、そうしてそれをあの女に
否応
(
いやおう
)
なく承諾させるくらい、目的に
協
(
かな
)
った事はない。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
否応
(
いやおう
)
なく疑いが外の人へ掛ッて行きます、論より証拠には貴方さえも無理に疑いを外の人へ持て行こうと
成
(
なさ
)
ッて居るでは有ませんか、
先
(
ま
)
ア
能
(
よ
)
く考えて御覧なさい
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
いったんこうと言い出しなすった事は
否応
(
いやおう
)
なしにやり遂げるお方だから、とうとうあの通りになったンで。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一家を挙げて秋の
三月
(
みつき
)
を九州から南満洲、朝鮮、山陰、
京畿
(
けいき
)
とぶらついた旅行は、近づく運命を
躱
(
かわ
)
そうとてののたうち廻りでした。然し
盃
(
さかずき
)
は
否応
(
いやおう
)
なしに飲まされます。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
途法
(
とほう
)
にくれた蘿月はお豊の帰って来るまで、
否応
(
いやおう
)
なく留守番にと
家
(
うち
)
の中に取り残されてしまった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
という
錦
(
にしき
)
の
御旗
(
みはた
)
が、握りしめていた手からすっぽりと引っこ抜かれ、がっちり両手で握っていたものの正体がじつは透明な空白だったことに
否応
(
いやおう
)
なく気づかされたぼくは
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
……ところで、何かの
動機
(
はずみ
)
でそのからざが切れると、
否応
(
いやおう
)
なしに地面の上に隕ちて来る。お前も覚えがあるだろう、えらい勢いで鉢合せをすると、眼から火が出たという。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
矢張り
否応
(
いやおう
)
なしに苦しい
痛恨
(
こんちりさん
)
を頼りに踏んで来たものにちがひない。たとひそれは皺くちやな、何の
反古
(
ほご
)
か知れない程の紙であらうと、あの人はとに角それに堪へたのだ。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
最終
(
しまい
)
には
取捉
(
とッつか
)
まえて
否応
(
いやおう
)
なしに格子戸の内へ入れて置いては出るようにしていたが、然うすると前足で格子を引掻いて、悲しい悲しい血を吐きそうな
啼声
(
なきごえ
)
を立てて
後
(
あと
)
を慕い
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
しかしどこにのがれても人々はその忌まわしい制度をもって追いかけて引っつかみ、もしできるならばその者をかれらの乱暴な結社の仲間に
否応
(
いやおう
)
いわせず加わらせてしまう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
そうしてるうちに、一時脱れていた重い責任が、
否応
(
いやおう
)
なしにふたたび私の肩に
懸
(
かか
)
ってきた。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
この堂の前に立ってまず
否応
(
いやおう
)
なしに感ずるのは、やはり天平建築らしい確かさだと思う。あの簡素な構造をもってして、これほど偉大さを印象する建築は他の時代には見られない。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
で、
否応
(
いやおう
)
なしにつかまえられて、岩氏はこの長柄川の人柱にされてしまったのです。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼は、
曾
(
かつ
)
て長篇の枠どりに幻滅したときから既に、純粋に虚無の人ではなかったであろうか。主義の上のことを言うのではない。彼の内なる
否応
(
いやおう
)
ない生命の営みのことを指すのである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
そして帰京すると、ほどなく山崎氏は道具箱をしょって出掛けて来られ、是非弟子にしてもらいたいというので、もはや
否応
(
いやおう
)
をいう処でもないからそのまま弟子ということになったのです。
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「あなたは、
否応
(
いやおう
)
なく、当分の間は、その
装
(
なり
)
でいなければなりませんよ。」
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
これを聞くと父親は物凄い顔をして、もしその家に貸金でもある場合は早速、その家の当主を呼び付け家の若ものゝ監督がよくない
廉
(
かど
)
で即刻返金を命じた。命令に対して相手に
否応
(
いやおう
)
は言わせなかった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もう
否応
(
いやおう
)
なしに決ったかたちで、ミネは見おくることになった。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
それが私たちに旅行を中止することを
否応
(
いやおう
)
なく決心させた。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「よし。
否応
(
いやおう
)
なしに返事をさせてやろう」
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
否応
(
いやおう
)
は言わせません、一つ弾いてごらん
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
たいていの事が
否応
(
いやおう
)
なしに進行します。万事が腹の底で済んでしまいます。それで
上部
(
うわべ
)
だけはどこまでも理想通りの人物を
標榜
(
ひょうぼう
)
致します。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
意外な親切者に、爺さんはむしろ
狼狽
(
ろうばい
)
していた。強右衛門は
否応
(
いやおう
)
を待たず、彼の背から軽桟を取って、自分の逞しい肩にかけた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日常
(
しょっちゅう
)
それを返さなけりゃ成らない、と責められて、
否応
(
いやおう
)
なしに成さるようなことは有りませんか——私はね、それで苦しくって
堪
(
たま
)
りません。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“否応”の意味
《名詞》
拒否と容認。否(いな)むことと応じること。
(出典:Wiktionary)
否
常用漢字
小6
部首:⼝
7画
応
常用漢字
小5
部首:⼼
7画
“否”で始まる語句
否
否々
否定
否應
否認
否諾
否縁
否乎
否唯
否早