野村の行っている法律事務所は、父が面倒を見たいわばお弟子の経営で、彼は無給で見習いをしているのだから、可成勝手が出来るのだった。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
時は可成のろのろと、然し尊重に過ぎて行く。今朝、或は今日の午後、日附の上で、彼はもう何哩か私に近づき始めたのだ。幸福な海路を! 我が愛する者に。
日記:06 一九二〇年(大正九年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
笛吹川の上流(東沢と西沢) (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
沙漠の砂の一つ一つに充ちている寂しみを舞台の上に漲らせることは可成の難事ではあるまいか。
ダンセニーの脚本及短篇 (新字新仮名) / 片山広子(著)
私のやうな少年の目には可成のお婆さん(大へん美し過ぎるお婆さんではあつたが)に見えたけれど、やつと四十位だつたのではなからうか。或はもつと若かつたのかもしれない。
紙屋でも苦い面をするようだったが、こっちはそれに気がつかなかった、そうしてあちらの店で一〆買い、こちらの店で一〆買って、可成質の違わぬものを買い集めたものであったが
と同時に彼はふと可成重大な事に気がついた。それは彼が二川家から重明の自殺の報知を受けない事だった。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
私、どうしても嫌いな男や、私に何も呉れ無かった男にはいくら最後でも何にも遣る気はしないけど、あなたは可成、私の望みにかなって下さったわね。ムッシュウ・小田島。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余り沢山読んでいないので分らないけれども、一寸した短篇ながら、“The Juryman”の主人公の心持は、可成作者自身の生活に対する頷きを現わしているものではないだろうか。
最近悦ばれているものから (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
同一の作家にした所が、前のと全然異つた作品を書かないものとは限りません。現にストリントベリイなどは自然主義時代とその以後とに可成かけ離れた作品を書いてゐます。