処々ところ/″\)” の例文
旧字:處々
まだ、朝早あさまだき、天守てんしゆうへからをかけてかたちくもむらがつて、処々ところ/″\物凄ものすさまじくうづまいて、あられほとばしつてさうなのは、かぜうごかすのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
処々ところ/″\売って歩きますが、もとより稽古が好きで、ひまの時は、水を汲みましょうお湯をわかしましょうなどと、ヘエ/\云ってまめに働きます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余は無言のまゝに彼れをすわらせ其傷をあらたむるにるほど血の出る割にはたいした怪我にもあらず、れど左の頬を耳より口まで引抓ひっかゝれたる者にして処々ところ/″\に肉さえ露出むきいでたれば痛みはこそと察せらる
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
歩いてうちいつか浅草公園の裏手うらてへ出た。細いとほりの片側かたがはには深いどぶがあつて、それを越した鉄柵てつさくむかうには、処々ところ/″\冬枯ふゆがれして立つ大木たいぼくしたに、五区ごく揚弓店やうきゆうてんきたならしい裏手うらてがつゞいて見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一階目いつかいめゆかは、いまよぎつたに、とびらてまはしたとるばかりひろかつた。みじかくさ処々ところ/″\矢間やざまひと黄色きいろつきで、おぼろおなじやう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見れば畳も持出して売りやアがったと見えて、根太ねだ処々ところ/″\がれて、まア縁の下から草が出ているぜ、実にうもひどいじゃアないか、えゝおい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひと馬鹿ばかにしてるではありませんか。あたりのやまでは処々ところ/″\茅蜩殿ひぐらしどのどろ大沼おほぬまにならうといふもりひかへていてる、なゝめ谷底たにそこはもうくらい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この絞りの蚊帳というは蚊帳に穴が明いているものですから、処々ところ/″\観世縒かんじんよりしばってあるので、其の蚊帳を吊り、伴藏は寝※ねござを敷き、独りで寝ていて、足をばた/\やっており
素人目しろうとめにも、こののぼり十五ちやう、五十六まがり十六けいまをして岩端いはばな山口やまぐち処々ところ/″\、いづれもかはる/″\、みづうみ景色けしきかはりますうちにも、こゝは一だんぞんじました。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いろ真蒼まつさをで、血走ちばしり、びたかみひたひかゝつて、冠物かぶりものなしに、埃塗ほこりまみれの薄汚うすよごれた、処々ところ/″\ボタンちぎれた背広せびろて、くつ足袋たびもない素跣足すはだしで、歩行あるくのに蹌踉々々よろ/\する。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今度こんどへびのかはりにかにあるきさうで草鞋わらぢえた。しばらくするとくらくなつた、すぎまつえのき処々ところ/″\見分みわけが出来できるばかりにとほところからかすかひかりすあたりでは、つちいろみなくろい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)