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凄惨
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せいさん
ふりがな文庫
“
凄惨
(
せいさん
)” の例文
旧字:
凄慘
安岡は研ぎ出された
白刃
(
はくじん
)
のような神経で、深谷が何か正体をつかむことはできないが、
凄惨
(
せいさん
)
な空気をまとって帰ったことを感じた。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
そして、私のそのかすかな身ぶるいのなかを氏の作品の「羅生門」の
凄惨
(
せいさん
)
や「地獄変」の怪美や「奉教人の死」の幻想が
逸早
(
いちはや
)
く横切った。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そのほか、せまい
間道
(
かんどう
)
や、
嶺
(
みね
)
みちでも、およそ敵兵の出没と、小ゼリ合いの見えぬ所はなく、夜もひるも、
凄惨
(
せいさん
)
なこだまだった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だれもその
凄惨
(
せいさん
)
な裏面には気づく者はなかった。第一どうしてそんなことが推察し得られたろう? 印度にはそういう沼がいくらもある。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それが
巫女
(
みこ
)
の魔法を修する光景に形どって映写されているようであるが、ここの伴奏がこれにふさわしい
凄惨
(
せいさん
)
の気を帯びているように思う。
音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
宇田川小町と
謳
(
うた
)
われた非凡の
艶色
(
えんしょく
)
は、死もまた奪う由なく、八方から浴びせた提灯の光の中に、
凄惨
(
せいさん
)
な美しいものさえ
醸
(
かも
)
し出しているのです。
銭形平次捕物控:200 死骸の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
真っ黒に焼けた柱の燃え残りが、あちらこちらに不気味に突っ立って、テラスの
混凝土
(
コンクリート
)
の
床
(
ゆか
)
だけが残っているのが、何ともいえぬ
凄惨
(
せいさん
)
さです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
こもの下には捜しまわったその小娘の
死骸
(
しがい
)
が、見るも
凄惨
(
せいさん
)
な形相をして、あおむけになりながら横たわっていたからです。
右門捕物帖:30 闇男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
対外的のことは
暫
(
しばら
)
く
措
(
お
)
くとしても、国内的にみれば
欽明
(
きんめい
)
朝より推古朝にいたるおよそ五十年のあいだは、眼を
蔽
(
おお
)
わしむる
凄惨
(
せいさん
)
な戦いの日々である。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
フッと気がついたときには、あの
凄惨
(
せいさん
)
な小田原の隧道の上かと思いの外、身はフワリと
軟
(
やわらか
)
いベッドの上に、長々と横になっているのでありました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ただわかるのは、線と色との調和と、それから描かれた人物の陰深にして
凄惨
(
せいさん
)
な表情。そうして見ているうちに、温和があり、威厳がある半面の相。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これが、ひや酒となると、
尚
(
なお
)
いっそう
凄惨
(
せいさん
)
な場面になるのである。うなだれている番頭は、顔を挙げ、お内儀のほうに少しく
膝
(
ひざ
)
をすすめて、声ひそめ
酒の追憶
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あるものは足を吊られて、
逆
(
さか
)
さまに噴気孔に下げられている。それは
一幅
(
いっぷく
)
の
凄惨
(
せいさん
)
な地獄絵図でなくて何であろう。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
五十八 けれど日没の
凄惨
(
せいさん
)
な光景を見た者は、明日の日があろうとは思えなかった。ただ絶望するのみであった。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
吹きまくる雪に包まれて、国老の屋敷は森閑と鎮りかえっていた……胸に喰込むような、
凄惨
(
せいさん
)
な叫びであった。急に板の引裂けるような物音だったが……。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暗灰色の夕空、濃い
闇
(
やみ
)
につつまれてゆく野ッ原——、何もかも窒息させられてしまい、この
凄惨
(
せいさん
)
な景色のどこに「春」が
潜
(
ひそ
)
んでいるなどと考えられようか⁈
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
その、もの
哀
(
がな
)
しげな太い響は、この光景にさらに
凄惨
(
せいさん
)
な趣を加えるようであった。やがてサイレンが
歇
(
や
)
むと、教官は自分の演じた効果に大分満足したらしく
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
すると怪しや三人の姿は、彼の威勢に恐れたものかパッとそのまま消え失せたが、家の上と
覚
(
おぼ
)
しい方角から、声を揃えて唄う声が、
凄惨
(
せいさん
)
として聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして女は極めて緩く鈍く薄笑いに笑った。それは笑いというべきものであったか、何であったか分らぬ、如何なる画にも彫刻にも無い、
妖異
(
ようい
)
で
凄惨
(
せいさん
)
なものであった。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
表情のない仮面のような顔であった。歯と歯の間からとび出す
凄惨
(
せいさん
)
な音を聞きながら、「金作——」と彼は口のなかで云った。想像のなかで弟を呼んでみたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
道の両側になった樹木の枝には、
凄惨
(
せいさん
)
な
海嘯
(
つなみ
)
の日の光景を思わすように、ぼろぼろになった
衣服
(
きもの
)
や縄ぎれが引っかかっていた。それを見ると壮い漁師の心は暗くなった。
海嘯のあと
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
凄惨
(
せいさん
)
な努力を一年ばかり続けたのち、ようやく、生きることの
歓
(
よろこ
)
びを失いつくしたのちもなお表現することの歓びだけは生残りうるものだということを、彼は発見した。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
場面が
凄
(
すご
)
い
筈
(
はず
)
なのに、すこしも
凄惨
(
せいさん
)
さがなく、どことなく伸び伸びしているのは、島抜け法印の、持って生れた
諧謔味
(
かいぎゃくみ
)
が、空気を
和
(
なご
)
やかなものにしているせいであろう。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
先頃キネマ倶楽部で上場されたチェーラル・シンワーラーの「ジャンダーク」は大評判の大写真で、
別
(
わ
)
けてもその
火刑
(
ひあぶり
)
の場は
凄惨
(
せいさん
)
を極めて、近来の傑作たる場面であった。
活動写真
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
それにしても、このような恐ろしい
最期
(
さいご
)
をとげるとは! あまりにも
凄惨
(
せいさん
)
だ。ひどい屈辱だ。亡き人を思いおこして、死別の苦痛をやわらげるよすがとするものは何もない。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
大仏殿の二階で全く逃げ場がない避難者たちの喚き叫ぶ声は、夜空に
凄惨
(
せいさん
)
なひびきをつたえた。大焦熱の地獄、焔の底の罪人も、これほどとは思われぬ
阿鼻
(
あび
)
の地獄であった。
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
這入った
刹那
(
せつな
)
に私の見たものは、
瞳
(
ひとみ
)
の据わった、一種
凄惨
(
せいさん
)
な感じの
籠
(
こも
)
ったナオミの眼でした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
主水は高野を下山して、紀州家をたよって身を寄せた、加藤家と高野山の争いもそうであったが、紀州家を
対手
(
あいて
)
として、争いを起そうと決心した加藤家は、
凄惨
(
せいさん
)
な覚悟を据えた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
ただ一と声、
凄惨
(
せいさん
)
な
咆哮
(
ほうこう
)
が響いたかと思うと、虎は矢のように第二の突撃をこころみた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今度は、
周章
(
あわて
)
ずに、
直
(
す
)
ぐ下りて見たが、何んともいいようのない
凄惨
(
せいさん
)
な場面だった。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
と家従たちが
諫
(
いさ
)
めるのを退けてしいて出て来たのである。しかも遠距離ですぐにも行き着くことのできない道は夕霧をますます悲しませたのであった。山荘は
凄惨
(
せいさん
)
の気に満ちていた。
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そこが何より、この場面仕掛の見せ所だったのである。それから、ホレイショの
凄惨
(
せいさん
)
な独白があって、それが終ると、頭上の金雀枝を微風が揺り、
花弁
(
はなびら
)
が、雪のように降り下って来る。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
全盛期を過ぎた
伎芸
(
ぎげい
)
の女にのみ見られるような、いたましく
廃頽
(
はいたい
)
した、
腐菌
(
ふきん
)
の
燐光
(
りんこう
)
を思わせる
凄惨
(
せいさん
)
な
蠱惑力
(
こわくりょく
)
をわずかな力として葉子はどこまでも倉地をとりこにしようとあせりにあせった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その階下に屍体を横たえて放火したものらしく、しかも火勢が非常に猛烈であったため、腹部以下の筋肉繊維は全然、黒き毛糸状に炭化して骨格に
絡
(
から
)
み付き、
凄惨
(
せいさん
)
なる状況を呈していたと言う。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
夜々
綢繆
(
ちうびう
)
の思ひ絶えざる
彷彿
(
はうふつ
)
一味の調は、やがて絶海の孤島に
謫死
(
てきし
)
したる大英雄を歌ふの壮調となり
五丈原頭
(
ごぢやうげんとう
)
凄惨
(
せいさん
)
の秋を
奏
(
かな
)
でゝは人をして
啾々
(
しうしう
)
の
鬼哭
(
きこく
)
に泣かしめ、時に
鏗爾
(
かうじ
)
たる暮天の鐘に和して
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「どうしたら、ええんだ!」——
終
(
しま
)
いに、そう云って、
勃起
(
ぼっき
)
している
睾丸
(
きんたま
)
を握りながら、裸で起き上ってきた。大きな身体の漁夫の、そうするのを見ると、身体のしまる、何か
凄惨
(
せいさん
)
な気さえした。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
観客席は今までの
凄惨
(
せいさん
)
陰鬱な気分から開放されてにわかに陽気になる。
闘牛
(
コリダ
)
と比べて、これは確かに
呑気
(
のんき
)
しごくな、きわめて力の入れがいのある——つまり、牛を代表に立てた対市競技だからである。
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
子供はその
凄惨
(
せいさん
)
な光景に思わず目を
掩
(
おお
)
ってしまう。……
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
墳墓から出でたる者が、
洞窟
(
どうくつ
)
から出でたる者を脅かし
狼狽
(
ろうばい
)
させる。獰猛なるものは
凄惨
(
せいさん
)
なるものを恐れる。
狼
(
おおかみ
)
は幽鬼に出会ってあとに退く。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
犬射
(
いぬい
)
ノ馬場で斬り死をとげ、じつに
凄惨
(
せいさん
)
な全滅をみてしまったが、原因は一に、味方とたのんでいた者が、俄に、裏切りに出たことにあった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭を
胡果
(
くるみ
)
の
殻
(
から
)
のように叩き潰されたお萩の死体は、物馴れた八五郎の眼にも
凄惨
(
せいさん
)
で、二度と調べて見る気も起させません。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのまに館がひとり、山村がいち人、あとの四人を残りの近侍達が斬りすてて、広場の砂礫は
凄惨
(
せいさん
)
として血の海だった。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
凄惨
(
せいさん
)
限
(
かぎ
)
りなき
空中墳墓
(
くうちゅうふんぼ
)
! おおこの奇怪きわまりなき光景を望んで気が変にならないでいられるものがあり得ようか。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いいえ、疑わぬどころか!
凄惨
(
せいさん
)
とも、陰惨とも、申訳ないとも、気の毒とも……聞いているうちに私は、何ともかともいおうようのない気がしてきたのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
国威の
昂揚
(
こうよう
)
する偉大な時代を背景としつつ、一方では
凄惨
(
せいさん
)
な地獄絵は幾たびか展開されていたのであった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
かならず
凄惨
(
せいさん
)
に吠えあって、主人としての私は、そのときどんなに恐怖にわななき震えていることか。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
重傷者の来て
呑
(
の
)
む泉。つぎつぎに火傷者の来て呑む泉。僕はあの泉あるため、あの
凄惨
(
せいさん
)
な時間のなかにも、かすかな救いがあったのではないか。泉。泉。泉こそは……。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ただ「
船弁慶
(
ふなべんけい
)
」で
知盛
(
とももり
)
の幽霊が登場し、それがきらきらする
薙刀
(
なぎなた
)
を持って、くるくる回りながら進んだり退いたりしたその
凄惨
(
せいさん
)
に美しい姿だけが
明瞭
(
めいりょう
)
に印象に残っている。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
これはまた一段の修羅場だ——という一句によって推察せられる如く、先夜の池田屋斬込みに幾倍する
凄惨
(
せいさん
)
の場面が、この京洛の一角のいずれかで展開せられたに相違ない。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
このあと、船には身分ある者は乗せても下郎は乗せるなといって、武士たちは、雑人が船に近寄れば太刀、長刀で打ち払う。船をめぐって味方同志の
凄惨
(
せいさん
)
な場面が展開された。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
“凄惨”の解説
凄惨
(出典:Wikipedia)
凄
常用漢字
中学
部首:⼎
10画
惨
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“凄惨”で始まる語句
凄惨狠毒