“凄惨:せいさん” の例文
“凄惨:せいさん”を含む作品の著者(上位)作品数
海野十三9
吉川英治7
太宰治6
佐々木味津三5
ヴィクトル・ユゴー4
“凄惨:せいさん”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史40.0%
文学 > フランス文学 > 小説 物語13.5%
芸術・美術 > 演劇 > 映画2.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
電纜工場の入口を一歩入ると、凄惨せいさんきわまりなき事件の、息詰まるような雰囲気ふんいきが、感ぜられるのだった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはよく整い、よく接合し、鱗形うろこがたに並び、直線をなし、均斉きんせいを保ち、しかも凄惨せいさんな趣があった。
国威の昂揚こうようする偉大な時代を背景としつつ、一方では凄惨せいさんな地獄絵は幾たびか展開されていたのであった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
這入った刹那せつなに私の見たものは、ひとみの据わった、一種凄惨せいさんな感じのこもったナオミの眼でした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こもの下には捜しまわったその小娘の死骸しがいが、見るも凄惨せいさんな形相をして、あおむけになりながら横たわっていたからです。
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
それは笑いというべきものであったか、何であったか分らぬ、如何なる画にも彫刻にも無い、妖異ようい凄惨せいさんなものであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
五十八 けれど日没の凄惨せいさんな光景を見た者は、明日の日があろうとは思えなかった。ただ絶望するのみであった。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
私は続日本紀しゃくにほんぎをひもとくたびに驚くのは、そこにしるされた凄惨せいさんな天平の地獄図である。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
それから、ホレイショの凄惨せいさんな独白があって、それが終ると、頭上の金雀枝を微風が揺り、花弁はなびらが、雪のように降り下って来る。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
安岡は研ぎ出された白刃はくじんのような神経で、深谷が何か正体をつかむことはできないが、凄惨せいさんな空気をまとって帰ったことを感じた。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
凄惨せいさんかぎりなき空中墳墓くうちゅうふんぼ! おおこの奇怪きわまりなき光景を望んで気が変にならないでいられるものがあり得ようか。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それが巫女みこの魔法を修する光景に形どって映写されているようであるが、ここの伴奏がこれにふさわしい凄惨せいさんの気を帯びているように思う。
貫一は仏像を背負ったまま、今夜は倒れた刑事の方へ近づいた。月光の下に展開する凄惨せいさんな光景。
ジャン・ヴァルジャンは再び声を低めたが、こんどはもう単に鈍い声ではなくて凄惨せいさんな声だった。
四時になってようやく、切られし頭死せりと大時計の凄惨せいさんな音が叫んでから、著者は息をつくことができ、精神の自由をややとりもどすのだった。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
今度は、周章あわてずに、ぐ下りて見たが、何んともいいようのない凄惨せいさんな場面だった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ただ、その凄惨せいさんな面を流れくだる涙は、心ない検断所の荒くれどもをさえ、しゅんとさせていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほか、せまい間道かんどうや、みねみちでも、およそ敵兵の出没と、小ゼリ合いの見えぬ所はなく、夜もひるも、凄惨せいさんなこだまだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
意味も、はっきりしないのだが、やはり、この世のものでない凄惨せいさんさが、感じられるのである。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして、私のそのかすかな身ぶるいのなかを氏の作品の「羅生門」の凄惨せいさんや「地獄変」の怪美や「奉教人の死」の幻想が逸早いちはやく横切った。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
——それ等の凄惨せいさんな光景は、一つの懐中電灯でまざまざと照らし出されているのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その、ものがなしげな太い響は、この光景にさらに凄惨せいさんな趣を加えるようであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
僕はあの泉あるため、あの凄惨せいさんな時間のなかにも、かすかな救いがあったのではないか。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
歯と歯の間からとび出す凄惨せいさんな音を聞きながら、「金作——」と彼は口のなかで云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
フッと気がついたときには、あの凄惨せいさんな小田原の隧道の上かと思いの外、身はフワリとやわらかいベッドの上に、長々と横になっているのでありました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただわかるのは、線と色との調和と、それから描かれた人物の陰深にして凄惨せいさんな表情。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
凄惨せいさん! 東京高裁棚田判事、同僚井沢判事と決闘す。長崎県大村市、孤島の大惨事」
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
大きな身体の漁夫の、そうするのを見ると、身体のしまる、何か凄惨せいさんな気さえした。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
いいえ、疑わぬどころか! 凄惨せいさんとも、陰惨とも、申訳ないとも、気の毒とも……聞いているうちに私は、何ともかともいおうようのない気がしてきたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
島の者はむろん、旅の者まで集って、山の林には、凄惨せいさんな、ものものしさが騒いでいた。そのうちに、神社の掃除男や、社家の人々が、色をかえて、駈けて来た。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが、ひや酒となると、なおいっそう凄惨せいさんな場面になるのである。うなだれている番頭は、顔を挙げ、お内儀のほうに少しくひざをすすめて、声ひそめ、
酒の追憶 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すると怪しや三人の姿は、彼の威勢に恐れたものかパッとそのまま消え失せたが、家の上とおぼしい方角から、声を揃えて唄う声が、凄惨せいさんとして聞こえて来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
真っ黒に焼けた柱の燃え残りが、あちらこちらに不気味に突っ立って、テラスの混凝土コンクリートゆかだけが残っているのが、何ともいえぬ凄惨せいさんさです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
観客席は今までの凄惨せいさん陰鬱な気分から開放されてにわかに陽気になる。
凄惨せいさんな努力を一年ばかり続けたのち、ようやく、生きることのよろこびを失いつくしたのちもなお表現することの歓びだけは生残りうるものだということを、彼は発見した。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
凄惨せいさんというか、惨虐というか、畳一、二畳ほどは一面の血の海で、その血に染まっている相手がうら若い美貌びぼうのあだものだけに、むごたらしさもまた一倍だったからです。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
へいのそとにすだく虫の声も悲しく、凄惨せいさんな光景であった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鉄の枠のなかのそれらの凄惨せいさんな横顔を、私は恐怖の念で眺めた。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
それは一幅いっぷく凄惨せいさんな地獄絵図でなくて何であろう。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
子供はその凄惨せいさんな光景に思わず目をおおってしまう。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
先頃キネマ倶楽部で上場されたチェーラル・シンワーラーの「ジャンダーク」は大評判の大写真で、けてもその火刑ひあぶりの場は凄惨せいさんを極めて、近来の傑作たる場面であった。
活動写真 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
道の両側になった樹木の枝には、凄惨せいさん海嘯つなみの日の光景を思わすように、ぼろぼろになった衣服きものや縄ぎれが引っかかっていた。それを見ると壮い漁師の心は暗くなった。
海嘯のあと (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主水は高野を下山して、紀州家をたよって身を寄せた、加藤家と高野山の争いもそうであったが、紀州家を対手あいてとして、争いを起そうと決心した加藤家は、凄惨せいさんな覚悟を据えた。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
私は凄惨せいさんな感じに打たれて思わず眼を伏せてしまった。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
火事が轟々ごうごう凄惨せいさんの音をたてて燃えていた。
新樹の言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その階下に屍体を横たえて放火したものらしく、しかも火勢が非常に猛烈であったため、腹部以下の筋肉繊維は全然、黒き毛糸状に炭化して骨格にからみ付き、凄惨せいさんなる状況を呈していたと言う。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鬼村博士は、どの市民よりも、ずっとずっと早くから、あの凄惨せいさんきわまる事件を忘れてしまったかのような面持で、何十年一日の如き足どりで化学研究所に通い、実験室に、立籠たてこもっていた。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
黒いその影は、つづいて右に走ると、さらにいち人見事に刺客を斬ってすてた。そのまに館がひとり、山村がいち人、あとの四人を残りの近侍達が斬りすてて、広場の砂礫は凄惨せいさんとして血の海だった。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
先夜の池田屋斬込みに幾倍する凄惨せいさんの場面が
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この怒濤のなかには、戦いを凄惨せいさんにする太い感情が波打っている。猛烈な槍の走り、うなってゆく太刀のきらめき。それが、思う敵とぶつかるやいな、すぐ惨烈な血けむりとなって、いたるところに、
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのたびに凄惨せいさんの気がみなぎった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
うわーッという凄惨せいさんな人間の叫び!
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その戦闘の光景は凄惨せいさんをきわめた。
お萩の死体を取込んで、ザッと飾った部屋へ、八五郎は通されました。頭を胡果くるみからのように叩き潰されたお萩の死体は、物馴れた八五郎の眼にも凄惨せいさんで、二度と調べて見る気も起させません。
私にのこのこついてきて、何かそれが飼われているものの義務とでも思っているのか、途で逢う犬、逢う犬、かならず凄惨せいさんに吠えあって、主人としての私は、そのときどんなに恐怖にわななき震えていることか。
と——見るまに、中の生命は断末のあえぎをあげて、なんと名状しようもない——耳をおおわずにはおられない、凄惨せいさんな震動を刻むようにさせて、船板とつづらの間を、噛むがごとく、ガタガタといわせた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は立って、たもとからがま口を出し、ひらくと、銅銭が三枚、羞恥しゅうちよりも凄惨せいさんの思いに襲われ、たちまち脳裡のうりに浮ぶものは、仙遊館の自分の部屋、制服と蒲団だけが残されてあるきりで
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
山荘は凄惨せいさんの気に満ちていた。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やがて絶海の孤島に謫死てきししたる大英雄を歌ふの壮調となり五丈原頭ごぢやうげんとう凄惨せいさんの秋をかなでゝは人をして啾々しうしう鬼哭きこくに泣かしめ、時に鏗爾かうじたる暮天の鐘に和して
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
断末魔の形相もものすごくのけぞっていたものでしたから、あまりな凄惨せいさんにおもわず右門も顔をそむけていたようでしたが、しかし、そむけつつもその秀抜かぎりない両のまなこは烱々けいけいとして寸時の休みもなく
井伏さんは、今でもそれは、お苦しいにはちがいないだろうが、この「青ヶ島大概記」などをお書きになっていらした頃は、文学者の孤独または小説の道の断橋を、凄惨せいさんな程、強烈に意識なされていたのではなかろうか。
『井伏鱒二選集』後記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
佐久間勢八千は戦死傷、脱落者をのぞき、三分の一にも足らぬかに見えたが、それはことごと潰乱かいらんの兵、逆上の将で、呶号喧騒どごうけんそうは、たがいの心理を、実状以上、凄惨せいさんなものにし合っている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして自分たちは、やがて結婚して、それに依って得た歓楽よろこびは、必ずしも大きくはありませんでしたが、その後に来た悲哀かなしみは、凄惨せいさんと言っても足りないくらい、実に想像を絶して、大きくやって来ました。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
なんたる凄惨せいさん
こうした、凄惨せいさんな光景を、小高い築山つきやまの、灌木かんぼくの蔭から、じっとみつめて、にたりにたり、白い歯をあらわして、笑っているのが、いつの間にか、ふたたび、広海屋の屋敷うちに忍び入って来た、長崎屋だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
かつて滋幹は幼少の折に、父の跡をつけて野路を行き、青白い月光の下で凄惨せいさんな場面を目撃したことがあったが、あれは秋の真夜中の鋭くえた月であって、今日のようなどんよりした、綿のように柔かく生暖かい月ではなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
全盛期を過ぎた伎芸ぎげいの女にのみ見られるような、いたましく廃頽はいたいした、腐菌ふきん燐光りんこうを思わせる凄惨せいさん蠱惑力こわくりょくをわずかな力として葉子はどこまでも倉地をとりこにしようとあせりにあせった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そのときの探題襲撃は、見事、菊池方のやぶれに帰し、寂阿武時以下、一族郎党三百余人は、犬射いぬいノ馬場で斬り死をとげ、じつに凄惨せいさんな全滅をみてしまったが、原因は一に、味方とたのんでいた者が、俄に、裏切りに出たことにあった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、うっかり注射でもおこたろうものなら、恐水病といって、発熱悩乱の苦しみあって、果てはかおが犬に似てきて、四ついになり、ただわんわんと吠ゆるばかりだという、そんな凄惨せいさんな病気になるかもしれないということなのである。
北方においてはポーランドをそのひつぎのうちにくぎづけにする金槌かなづちの名状すべからざる凄惨せいさんな響き、全ヨーロッパ中にはフランスをうかがってるいら立った目つき、身をかがむる者はつき倒し、倒るる者の上には飛びかからんと待ち構えてる
どんな芝居であったかほとんど記憶がないが、ただ「船弁慶ふなべんけい」で知盛とももりの幽霊が登場し、それがきらきらする薙刀なぎなたを持って、くるくる回りながら進んだり退いたりしたその凄惨せいさんに美しい姿だけが明瞭めいりょうに印象に残っている。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
世の中に、どんな珍景が多いにしろ、この酒盛ほど、めずらしいものは少ないだろう——しかも、場面がすごはずなのに、すこしも凄惨せいさんさがなく、どことなく伸び伸びしているのは、島抜け法印の、持って生れた諧謔味かいぎゃくみが、空気をなごやかなものにしているせいであろう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)