まし)” の例文
明日あしたから引っ込んでるがいい。店へなんぞ出られると、かえって家業の邪魔になる。奥でおん襤褸ぼろでもつづくッてる方がまだしもましだ。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お葉は覚悟をめた。𤢖わろ見たような奴等の玩弄おもちゃになる位ならば、いっそ死んだ方がましである。彼女かれは足の向く方へと遮二無二しゃにむにと進んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
次いで糧食乏しくなりて人相食あいはむにおよんだ、その時一婦人坐して餓死するよりはいっそインディアンか野獣に殺さるるがましと決心して
どうぞしてものにせうとまっしゃるのぢゃが、あのよなひとふよりは、わし蟾蜍ひきがへるうたはうがましぢゃ、とうてな、あの蟾蜍ひきがへるに。
早速右の肩がこぶの様にれ上がる。明くる日は左の肩を使ふ。左は勝手が悪いが、痛い右よりまだましと、左を使ふ。直ぐ左の肩が腫れる。両肩の腫瘤こぶで人間の駱駝が出来る。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
早速右の肩がこぶの様にれ上がる。明くる日は左の肩を使う。左は勝手かってが悪いが、痛い右よりまだましと、左を使う。直ぐ左の肩が腫れる。両肩りょうかた腫瘤こぶで人間の駱駝が出来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
俳優やくしゃの誰とかにてるッて御意の上……(私は人の妾やよって、えらい相違もないやろけれど、畜生に世話になるより、ちっとはましや。旦那に頼んで出世させて上げる、来なはれ、)
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「とても、想像も出来ないくらいの吝嗇漢けちんぼでな。監獄の中の懲役人だって、あれよりゃましな暮らしをしていまさあね。あいつの家じゃあ、みんなを飢え死にさせてしまったのですからね。」
「そんなだつたら四十字迄はいいでせう、泣かれるよりかましですからね。」
のがるゝこそましならめさりながら如何なる因果の報いにや我幼少えうせうにて父におく艱難辛苦かんなんしんくの其中に又母をもうしなひしかど兩親の遺言ゆゐごんを大事に守り江戸にて五ヶ年の千しん萬苦ばんくも水のあわありたふくみつるあは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
立たして置いて奥さんは新聞紙で帽子をこしらえて乃公の頭にかぶせた。いくら見せしめの為めだってあんまり人を馬鹿にしている。「これでも仮髪よりかましだ」と言ったら、奥さんは火のようになって怒った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼に打たれて、光榮の死を遂ぐる事ましならむ。 110
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
「それじゃお前、初めの話と違うぞえ、そのくらいなら日本橋にいた方がまだしもましだ。続いて今までおればよかったに。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
おとなしい彼女は世間にもう顔向けができないように思って、その事実の有無うむを弁解するよりも、いっそ死んだ方がましであると一途に思いつめた。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
萠黄色もえぎいろの、活々いき/\としたうつくしい眼附めつきわしよりも立派りっぱぢゃ。ほんに/\、こんどのお配偶つれあひこそ貴孃こなたのお幸福しあはせであらうぞ、まへのよりはずっとましぢゃ。
いかなる理由ありてか、紀州でウグちゅう魚に刺されたら、一日ばかり劇しく痛み、死ぬ方がましじゃなど叫ぶ時、女の陰毛三本で創口をかば治るという。
両手に提げるより幾何いくらましだが、使ひ馴れぬ肩と腰が思ふ様に言ふ事を聴いてくれぬ。天秤棒に肩を入れ、えいやつと立てば、腰がフラ/\する。膝はぎくりと折れさうにからだ顛倒ひつくりかへりさうになる。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
支那にある活動小屋のましなのは、大抵米国人の経営で、そんなのを数へ立ててみると、彼是かれこれ八十余りもあるが、それが揃ひも揃つて観客けんぶつの一万五千をもれる事が出来ると聞いては一寸驚かれる。
あゆの大きいのは越中の自慢でありますが、もはや落鮎になっておりますけれども、放生津ほうじょうづたらや、氷見ひみさばよりましでありまするから、魚田ぎょでんに致させまして、吸物は湯山ゆさん初茸はつたけ、後は玉子焼か何かで
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
買ってもどった天秤棒で、早速翌朝から手桶とバケツとを振り分けににのうて、汐汲しおくみならぬ髯男の水汲と出かけた。両手に提げるより幾何いくらましだが、使い馴れぬ肩と腰が思う様に言う事を聴いてくれぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見につるし上られたまゝしたる體ゆゑ重四郎も流石さすが氣の毒に思ひハヽア僧主は僧主だけ正直な者然し打殺うちころさるゝ迄云ぬと言ふは武士にもました丈夫な精神たましひ天晴々々あつぱれ/\感心した然し彼の掃部めは三五郎が殺したと心得しは鐵扇てつせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
逝かば却つてましならむ、汝のために斯く願ふ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
手前てめえのような能なしを飼っておくより、猫の子を飼っておく方が、はるかにましだ。」とか、「さっさと出て行ってくれ、そうすれば己も晴々せいせいする。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うなるからはいっそのこと、どん底まで真直まっすぐに降りて行って、のお杉の安否をたしかめた方がましかも知れぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
れぞくだされ、たれぞ! ひいさまがなしゃってぢゃ! おゝ、かなしや/\、うまれなんだがましであったものを! はや火酒しゃうちうってくだされ! 殿とのさまえ、おくさま!
また仏教に摩睺羅伽まほらかてふ一部の下等神ありて天、竜、夜叉、乾闥婆けんだつば、阿修羅、金翅鳥がるら緊那羅きんならの最後にならんで八部を成す。いずれも働きは人よりましだが人ほど前途成道の望みないだけが劣るという。
麋鹿並びに猛獸を屠ふることこそましならめ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
苟且かりそめの平和より真面目の争はまだましです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いや、の乞食すらも満足にできるかうだか解ったものでは無い。うなると、人間よりも犬の方がいっましである。お葉は犬にも劣った重太郎の不幸に泣いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あっしはまた、どうせ死んでるんだから、なまじい顔でも見ちゃ、かえっていい心持がしねえだろうから、見ない方がましだという考えで……それにあのころは、小野の公判があるんで
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
世間には親の病気を癒す為に身を売る娘もあるそうだが、いっそその方がましであったろう。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「一生職人で終る人間だね。それでも田を踏んで暮す親よりかいくらかましだろう」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「私は何だか一向不調法ですが……娘の方はいくらかましでござんす。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この唄はむしろこの人々と共に亡びてしまう方がましかも知れない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)