交際つきあ)” の例文
「眠れるかどうか、やってみる……赤酒をください。三十CCぐらい……心臓というのは気むずかしいやつでね、交際つきあいきれないよ」
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大分だいぶ相違のある事は、長く交際つきあって来た私によくわかっていましたけれども、私の神経がこの家庭に入ってから多少かどが取れたごとく
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あああのお屋敷でございますか、あれは世間普通のお方とは、交際つきあいもしなければ交際つきあってもくれない、特別の人のお屋敷なのですよ」
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その膜の向うでは、人間が人間らしく本当に交際つきあっている。が、彼らが一旦自分に向うとなると、皆その膜を頭からかぶっている。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何ぞ知らん、ただの交際つきあいになってみると、ただの俗人以上の何ものでもなかったりする。いや俗衆以下の場合さえ往々にある。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
切って貰いたいネ。俺たちと交際つきあっていれば、泥を握ることはあっても、黄金の冠を拾うようなことにはますます縁どおくなるよ
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのペトゥルーシカのいうことにはですねえ、うちの旦那は申し分のない旦那で、これまでも立派な人たちとばかり交際つきあってきたようだ。
我輩が飲む間は、交際つきあはぬといふ。情ないとは思ふけれど、其様そんな関係で、今では娘の顔を見に行くことも出来ないやうな仕末。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
多「おめえは今年の十五夜から交際つきあっていて、口と心と違った事はねえから正直な人だと思っていたが、おめえ遊ぶじゃアねいなア」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女が、殆んど、飯を食わず、三食とも、うどんだという、噂はきいていたが、交際つきあうまでは、あんまり気にしていなかった。
うどんのお化け (新字新仮名) / 古川緑波(著)
「あら、だつて、信兄さまのことなら、流石さすがは外人と交際つきあつてるだけあつて、なかなかハイカラだつて、何時かおつしやつたぢやないの?」
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そしてこれからの交際つきあいは近頃でいう言葉のアミでございますかな。そういえば僕とこちらのお母さんもアミでございますかな
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一所に交際つきあってくれたら、翌日あすとは言わず帰り次第藤沢(宿場女郎の居る処)をおごってやるが、と言えば四人よつたり顔見合わせ
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何んだ、禿ちゃびんの宇佐美さんか、あんまり変な事を言うと、これからいくら拝んでも交際つきあってやらないからいい」
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
大塚警部は私よりも十五六ぐらい年上で、二三度一緒に飲みに行ってからというもの、同輩みたように交際つきあっている。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
娘ももう年頃になったことやさかい、わたしも今までとは交際つきあいがちがて来まっしゃろ。今まで通り旧弊な髪結うてたら娘の嫁入り先に阿呆にされまんがな。
俗臭 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それだから嬢様も此の人ばかりには真面目に交際つきあつて少しもお調戯からかひなさらなかつたが、困つた事には好人物といふだけで、学問才幹共に時代遅れだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
それから、彼女は彼女流に、人を掌中にまるめる、というより人と面白く交際つきあって、ささやかな愛情のやりとりをすることに、気を紛らすのであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
今は同等に交際つきあっていても、いつかは自分の上に立つものにちがいなかった。いや、——立っていたものであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
先生も亦かゝる周圍の中に暮してゐるのであるが、しかも擦れつからしの態度をとつて、人々を心中馬鹿にしながら尚且つ平氣で交際つきあつて行くのであつた。
それはお前の一克いっこくというものだ。そんなに擯斥ひんせきしたものではない。何と言っても書記官にもなっている人だ。お前も少しはを折って交際つきあって見るがいい。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
長庵とはおやじの幸兵衛が交際つきあっていて幸吉もっているので、山城守に挨拶することも忘れて、いきなり、長庵に獅噛しがみつくようにして言ったのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そんなときには、えらい人とも交際つきあわねばならんことが出来て来るけ、碁は知っとけ、きっと、役に立つ。おれが、指南してやる。……それにしても、……
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
岩野泡鳴氏は、議論をすると随分厚かましい事を言ひ出し兼ねないが、交際つきあつてみれば罪のないい男である。
さうして、いやいやながら鹿田と交際つきあつてゐるうちに、漸く鹿田の性格の變化に氣が付いた。夏休前東京で會つた時とは違つて、非常に沈默家になつて居る。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「私のようなものでも、どうぞ姉と思って交際つきあって頂戴ね。磯野さんにも、芳村の弟のつもりで、これから力になっていただくことに私お願いしたんですからね。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私はAがあゝ云つた言葉の中に、『俺に交際つきあつてゐないと損だぞ。』といふやうな、友情の脅威が自ら含まつてゐるのを、何よりもしやくさはつて聞き取つたのだつた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
「折竹さん、海獣けものとばかり交際つきあってて、あたしを忘れちゃ駄目だよ。一度、ぜひ伺わせて貰うからね」
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
どういふ人だとも知れない上に、はじめて口を聞いたゞけなのだけれど、冷吉はもう久しく交際つきあつてゐでもするやうな氣になつて、言はれる儘に行くかたを手探りした。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
切ったぞ! 都中の人達はみんな君のことを気違いだと云ってるんだ! 君なんかと交際つきあってたら
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
交際つきあっておると、頼もしくなってきたし、わしの一家のような悲惨な目に逢うと、せめて、深雪一人だけでも、ああしてまで、深雪のことを想うてくれる庄吉の手に
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「あんな義理を知らない人と、誰が交際つきあうものかね。私なんか今怒ッちゃア損だから、我慢して口を利いてるんさ。もうじきお正月だのに、いつ返してくれるんだろう」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
だんだん交際つきあってみるにしたがい、なかなか硬骨こうこつで、一たび言い出すと決してあとへ退かぬ人もあるし、また外部から見るといかにも凛々りりしく、ころもかんに至り袖腕そでわんに至り
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
縣内の上役と見れば誰彼の選り好みなしに交際つきあって、すこぶる受けがいいという評判であった。ナターリヤ・ヴァシーリエヴナはT市の人々の尊敬をほしいままにしていた。
あんな奴と君、——交際つきあっちゃ危険ですよ。辰馬銀行頭取の息子には相違ないが、ありゃ君、——多分君は何も知らないんだろうとは思っていたが、××会の首領なんだよ。
黒猫十三 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「どうしたんだえら、夫婦喧嘩ふうふげんくわでもしたか」醫者いしや毎日まいにち百姓ひやくしやう相手あひてにしてくだけて交際つきあ習慣しふくわんがついてるので、どつしりとおほきな身體からだからかういふ戯談じようだんるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其上そのうへ近年は世の中の物騒ぶつさうなのにれて和上の事を色々いろ/\に言ふ者がある。最も在所の人の心を寒からしめた馬鹿々しい噂は、和上は勤王々々と云つて諸国の浪士に交際つきあつてる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
お蔦 (頬杖をついて見下している)取り的さん、そんな人に交際つきあってないで、さッさと行っておしまい、とどの詰りは、二つ三つ殴られた揚句に、いくらか銭をとられちまうよ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
なるべくあんな生意気な人とは交際つきあはないやうになさいなんて、甘く私をお瞞しなすつたのも、みんなそんな思召があつたからなんでしやうとこの声ははや打曇りてよくは聞こへず。
当世二人娘 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
斯様した我の心意気が解つて呉れたら従来いままで通り浄く睦じく交際つきあつて貰はう、一切が斯様定つて見れば何と思つた彼と思つたは皆夢の中の物詮議、後に遺して面倒こそあれやく無いこと
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
一体、機関庫助役の片山と言う人は、もう部下達も相当期間交際つきあってたんですが、どうもまだ、時々人を不審がらせる様な変な態度に出るのが、彼等には甚だ遺憾に思われてたんです。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
今、君は余計なことを考える必要はないから、なるべく沢山仲のいい友達を作るようにしなければならない。つまらない活動写真を一緒に見に行ったり出来るだけ親切に交際つきあったりして。
交際つきあえば交際うほど、親しくすればするほど、味の出て来る人である。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
もし、彼等が私を愛しなければ、それだけ、私も、事實、彼等を愛しない。さうして、彼等は、彼等の仲間の一人と、氣心を合し得ないやうな者に對しては、優しく交際つきあふ義務を持たなかつたのだ。
無遠慮で、口が惡くて、人好きはしなかつたが、交際つきあつて見ると堅固な道徳的感情を有つてゐる事が誰にも解つた。彼は自分の職務に對する強い義務心と共に、常に弱者の味方たる性情を抱いてゐた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
親しく交際つきあうと誰でも善人に違いないがさてその善人が社会に向ってする事はどうだというのに物を約束してもなかなかあてにならず、事が起ると他人の迷惑を顧みないで自分の勝手ばかりしたがるし
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
物を言うにも歯にきぬを着せねえようにして交際つきあおうじゃねえか
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お前はどうも交際つきあえば交際うほど人を甘くみてよくないたちだ、溝店どぶだなで隣合っていた時代はわしのことを先生と呼んだ。……おまえはな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ミミイ嬢には気の毒だが、もう長々と交際つきあっているわけにはゆかない。そこでこれから顛末てんまつは筋だけを追って話すことにする。
御兄おあにいさんは貴夫あなたのために心配していらっしゃるんですよ。ああいう人と交際つきあいだして、またどんな面倒が起らないとも限らないからって」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)