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主
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しう
立出しなりと始終の事とも物語り然るに
主親のお
罰にや
途中に於て惡漢どもに欺かれ既に一命も
失はんとせし程の危難に
逢たるを
廿歳といふも
今の
間なるを、
盛りすぎては
花も
甲斐なし、
適當の
聟君おむかへ申し
度ものと、一
意專心主おもふ
外なにも
無し、
主人大事の
心に
比らべて
世上の
人の
浮薄浮佻
取らん事思ひも
寄らず今云事の
僞りにも
有まじ
主の爲の出來心にて盜みに來りしと
正直に云ふ事の
憫然なれば此金を汝に與へん間
主人の
難儀を
救ひ妻を
澄まさば
宜かるべけれど
夫すら
彼の
人見捨てゝは
入り
難かるべしとてつく/″\と
打歎けど
人に
見すべき
涙ならねば
作り
笑顏の
片頬さびしく
物案じの
主慰めながら
我れ
先づ
乱るゝ
蓴の
戀はくるしき
物なるにや
成るとは
見えて
覺束なき
人の
便りを
も
取戻して
消光度無ては
叶はぬ金子故
主の爲には親をも
捨る
習ひ後日に我が首を
切るゝ如きは
容易と思ひ道ならぬ事
乍ら
盜みに參りしと
有の
儘に語りければ彼の男是を
御恨み申は
罪のほども
恐ろしゝ
何ごとも
殘さず
忘れてお
主さまこそ二
代の
御恩なれ
杉原三
郎といふお
人元來のお
知人にもあらず
况てや
契りし
事も
何もなし
昨日今日逢しばかり
若かもお
主さまの
戀人に
未練のつながる
筈はなし
御縁首尾よく
整のへて
睦ましく
暮し
給ふを
何ならんと
小走りして
進み
寄りつ
一枝手折りて一
輪は
主一
輪は
我れかざして
見るも
機嫌取りなり
互の
心は
得ぞしらず
畔道づたひ
行返りて
遊ぶ
共なく
暮す
日の
鳥も
寐に
歸る
夕べの
空に
行く
雲水の
僧一人たゝく
月下の
門は
何方ぞ
浦山しの
身の
上やと
見送くれば
見かへる
笠のはづれ
兩女ひとしくヲヽと
呌びぬ