ぐう)” の例文
ぐうせしことはなはだあつし小千谷をぢや北越ほくゑつ一市会いつしくわい商家しやうか鱗次りんじとして百物そなはらざることなし。うみる事わづかに七里ゆゑに魚類ぎよるゐとぼしからず。
なお、自分のために、堀尾茂助までが、千載せんざいぐうの決戦主戦場から除かれて、残留組に廻されたのは、何とも気のどくの感に堪えない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔子を国賓こくひんとしてぐうしようという国はある。孔子の弟子の幾人いくにんかを用いた国もある。が、孔子の政策を実行しようとする国はどこにも無い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ぐうすること峻烈しゅんれつであったのはそういう冷やかし半分のおおかみ連を撃退げきたいする手段でもあったと云うが皮肉にもそれがかえって人気を呼んだらしくもある邪推じゃすい
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人一倍したゝかな魂と力を持つた半兵衞を討ち取る望もなく、心ならずも折を狙つて月日を過してゐるうち、昨夜といふ昨夜こそは、まことに千ざいぐうの時節到來
其所そこ發掘はつくつ機會きくわいた。千載せんさいの一ぐう。それに參豫さんよしたは、じつ採集家さいしふかとしての名譽めいよ此上このうへい。
陛下もなるほどそうか、それではちんも遠来の大使をぐうするに最敬礼をもってせんといわれ、使節も陛下もともに侮辱を最敬礼と心得て実行されたという話がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
管仲夷吾くわんちういご(一)潁上えいじやうひとなりわかときつね鮑叔牙はうしゆくが(二)あそぶ。鮑叔はうしゆく其賢そのけんる。管仲くわんちう貧困ひんこんにして、つね鮑叔はうしゆくあざむく。鮑叔はうしゆくつひ(三)これぐうし、もつげんさず。
女がふりかえって微笑しながら、「初めより桑中そうちゅう無くして、すなわ月下げっかぐう有り、偶然にあらざるに似たり」と持ちかけたので、喬生は、「弊居咫尺へいきょしせき佳人かじんく回顧すべきや否や」
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
自分たちは過去三年間、未嘗いまだかつてこの中学の先生から諸君を以てぐうせられた事は、一度もない。そこで毛利先生のこの「諸君」は、勢い自分たち一同に、思わず驚嘆の眼を見開かせた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
悪魔よ来たれ。わしは汝に今こそ親しく呼びかけるぞ。わしは三界さんがい怨霊おんりょうというもののできる理由を今こそ知った。わしのごとくぐうせられて死んだものの霊が、怨霊おんりょうにならずして何になるのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ぐうせしことはなはだあつし小千谷をぢや北越ほくゑつ一市会いつしくわい商家しやうか鱗次りんじとして百物そなはらざることなし。うみる事わづかに七里ゆゑに魚類ぎよるゐとぼしからず。
そこへかもも鴨、断然そんな手輩てあいとは、金の切れが違う西門慶という大鴨がかかったのだから、婆としては千ざいの一ぐうだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「相澤樣が御墨附を受取に行つた時、千ざいぐうの思ひだつたらう。お前は前の晩用意しろと言ひ付けられると、早速青竹を切つて來て水鐵砲をこさへた、これだよ」
佐助をぐうするに手曳き以上のあつかいはしていないようなので奉公人共も二人の間に間違いがあろうとは思っても見なかったむしろ主従の区別が有り過ぎ情味がとぼしいほどに思えた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
降将李陵は一つの穹盧きゅうろと数十人の侍者じしゃとを与えられ賓客ひんきゃくの礼をもってぐうせられた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わしが生きている間、わしをいかにぐうしたか。それをわしは永劫えいごうに忘れぬぞ。この世界はゆがめる世界だ。善が滅び悪が勝つ世界だ。あゝ、なきにおとる世界だ。かかる世界は悪魔の手に渡すがいい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
おそらく日本の侮辱法ぶじょくほうの最大なるものは「しりをまくってたたく」ことであろうが、西洋ではこの方法を実行することができない。そのかわりに双手を開いてはなの前にならべて人をぐうする侮辱法がある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と、蘭花らんかまぶたにすぐ涙をうかべ、この零落れいらくの恩人をぐうするに、細やかな心かぎりを見せたのはいうまでもない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべて春松検校がその内弟子をぐうする様を真似厳重げんじゅうに師弟の礼をらせたかくして大人おとなたちの企図したごとくたわいのない「学校ごッこ」が続けられ春琴もそれにまぎれて孤独こどくを忘れていたのであるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この良人の肉親は、またその妻である人も、自分を、弟の妻とはまったくていないことがよく分った。飽くまで白拍子あがりの遊びぐうしているのである。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長の進出を、直ちに、自分の進出とし——自分の千ざいぐうとした者など、ほとんど稀れだといっていい。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そいつア惜しい。二龍山など行かずに、都頭武松も、こっちへ来てくれたら、どんなに歓呼かんこして迎えたかもしれねえのに、千ざいぐうの機を逃がしたようなもんだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千載せんざいの一ぐうだぞ」と、功名手柄を励ましたが、ひとり沮授そじゅの出陣だけは、ひとと違っていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「合戦中は、夜ごと、名馬が厩で悲しみましょう。この千ざいぐうときにつながれて置かれては」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(どうだ、貴公も行かないか。ぜひ一口入れ。吾々が世に浮かび出る千ざいの一ぐうが来たのに、その機会をがすなどという法があるものか。——なあ御新造、そうじゃないか)
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身は緑林りょくりんにおき、才は匹夫ひっぷ、押して申しかねますなれど、きょうの日は、てまえにとって、実に、千ざいの一ぐうといいましょうか、盲亀もうき浮木ふぼくというべきか、逸しがたい機会です。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしそれは彼の千ざいぐうであり彼のたましいを燃やすに足るものではあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御身は曹操に篤うぐうせられて、都を去る折、彼の情誼にほだされて、他日かならずこの重恩に報ぜんと、誓ったことがおありであろうが——今、曹操は烏林に敗れ、その退路を華容道かようどうにとって
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青毛あおに騎乗して、名を成すべかりしを、ふと、その若駒わかごまの故障から、思い止まって、脾肉ひにくかこっていた渡が——天高き秋の仁和寺競馬を、千載せんざいぐうのときと、ふたたび手につばしていることである。
いやでも上野介が邸外へ出ねばならぬその千ざいぐう機会おりを——
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが軍の行くを迎えて礼する者は麾下きかに加えてぐうせん。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何ぞ、ぐうするの、無礼。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)