だく)” の例文
だくしからざれば死だ。我輩はいたずらに人命を絶つことを好まぬ。だが、我輩の慈悲心には、場合によって例外あることを記憶せよ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
武蔵はそれにだくか否かを答えるよりも、あのどじょうひげの——青木丹左という者の成れの果てを思いもかけず、思いっていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だくを宿するなし、という子路の信と直とは、それほど世に知られていたのだ。ところが、子路はこの頼をにべも無くことわった。ある人が言う。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
代助は慎重な態度で、いてゐた。けれども、父の言葉が切れた時も、依然として許だくの意を表さなかつた。するとちゝはわざとおさえた調子で
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
因って儂は、その必用のある処を問う。磯山告ぐるに、彼是間ひしかんの通信者に、最も必用なるを答う。儂熟慮これをだくす。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
だくと答へようとした、ふまでもない、この美人はたとひ今は世にき人にもせよ、まさに自分の恋人に似て居るから。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
公子夫婦は聞きて、さらばその詩をば我等こそ最初に聽くべけれと宣給ふ。我は直ちにだくしつれど、心にはこの本讀ほんよみ發落なりゆきいかにと氣遣はざること能はざりき。
僕はまた元のような緊張と昂奮を感じ乍ら、訪問をだくすると共に、自ら第一番に此の室をはしり出ました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
虎髯大尉こぜんたいゐ本名ほんめい轟大尉とゞろきたいゐであつた。『だく。』とこたえたまゝ、ひるがへして前甲板ぜんかんぱんかたはしつた。
花里が小主水の差金さしがねで身請をだくしますと直ぐ、伊之吉のもとへ品川から使い屋が飛んでまいった。
「一だくは重んじるけれど、僕は将来の為めに、こゝで一つめをつけて置きたいんだ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
孫子そんしいはく、『まへすなはむねひだりひだりみぎみぎうしろすなはよ』と。婦人ふじんいはく、『だく』と。約束やくそくすでき、すなは(五)鈇鉞ふゑつまうけ、すなはこれ(六)れいしんす。
彼女の師外川先生も、自身新英蘭ニューイングランドで一時白痴院はくちいんの看護手をしたことがあると云うて、彼女の渡米に賛同した。お馨さんは母の愛女であった。母は愛女の為に其望を遂げさすべく骨折る事をだくした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
〔評〕政府郡縣ぐんけんふくせんと欲す、木戸公と南洲と尤も之を主張す。或ひと南洲を見て之を説く、南洲曰くだくすと。其人又之を説く、南洲曰く、吉之助の一諾、死以て之を守ると、他語たごまじへず。
一二町にして友に別離わかれを告げんことを望む。友だくせず。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
孔子曰く、だく、吾まさに仕えんとすと。——陽貨篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
目を奪ひ命を奪ふだくわし
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
彼はだくした。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかし、重蔵は容易にだくの一語を与えなかった。彼の侠勇を象徴した濃い眉の下には、それを反省する聡明のまなこがいつまでも閉じられていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やゝとき乘客じようかくは、活佛くわつぶつ——いまあらたにおもへる——の周圍しうゐあつまりて、一條いちでう法話ほふわかむことをこひねがへり。やうや健康けんかう囘復くわいふくしたる法華僧ほつけそうは、よろこんでこれだくし、打咳うちしはぶきつゝ語出かたりいだしぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だくと云えばどっちへ転んでもさいわいである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
容易にだくしそうにも無い。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
一 結婚をだく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
これほど真摯しんしな声も、まだ相手の心をつにはたらないのか、依然としてその人の横顔は冷たく、だくの一語を洩らさない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されども本間が死期の依頼を天に誓いし一だくあり、人情としては決して下枝を死なすべからず。さりとていでて闘わんか、我が身命は立処に滅し、この大悪人の罪状を公になし難し。ああ公道人情両是非ふたつながらこれひなり
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もちろん、貴下にも充分な恩賞を約してよい。……だくか非か。即時、隠密の者に、御意のほどをおもらしねがう
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と本来の義胆ぎたんから、たちどころに、彼も腹をすえて、仲間入りの一だくを宋江まで申し出た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸いにも、黄蓋は武具兵粮ひょうろうつかさどる役目にあれば、丞相だに、だく! とご一言あれば、不日、呉陣を脱して、呉の兵糧武具など、及ぶかぎり舷に積載してお味方へ投じるでござろう
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、だくとも否とも答えない。ただ使者の真田弁次郎の容子ようすばかり見まもっていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武士には、一だくを重んじるという事がござりますぞ。事情を打明けて、この娘、頼むと仰せられたあの涙を、なぜ今お持ちなさらぬのか。よろしいおもらい申そうと、その時云った然諾ぜんだく
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だくすに一書を以てした。政職から荒木村重へ宛てたてがみである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だくか。否か」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だく
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)